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ミステリの祭典

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復讐の白き荒野

作家 笠井潔
出版日1988年04月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2023/07/02 14:06登録)
読んだのは2000年4月に原書房から出版された版で、講談社文庫版(1991年9月)をもとに加筆・修正されたものだという注記がついています。最初に発表されたのは1988年、ソ連の謀略を背景にした、知床半島でのシーンから始まる作品です。どのように変更されたのかわかりませんが、ソ連崩壊後10年近くたってからの加筆・修正ということになります。
作者はあとがきで、「ル・カレ作品に代表的である「本格的な」スパイ小説をめざしている。」としていますが、読んでいてル・カレ、あるいはアンブラーのようなシリアス・スパイ小説という感じはしませんでした。むしろスピレインあたりをより劇画的にしたような作品になっています。意外性のあるスリリングな展開は確かにおもしろいのですが、話の裏が大げさすぎて、次々に黒幕のそのまた黒幕の、と明らかになっていく重層的構造は、かえって馬鹿馬鹿しく思えてしまいました。

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