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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.635 6点 冷えきった週末
ヒラリー・ウォー
(2013/08/03 20:42登録)
田舎町警察のフェローズ署長シリーズ最終作。
警察小説の元祖みたいに言われるヒラリー・ウォーですが、87分署やマルティン・ベック、メグレなどとは(その各々にももちろん違いはあるにしても)ずいぶんちがいます。マクベイン等は警察の様子、雰囲気-様々な事件が日々起こり、多くの刑事が飛び回っているといった-に筆を費やしているわけですが、少なくとも本作にはそのような感じは全くありません。事件と捜査過程はむしろイギリス謎解きミステリっぽい印象を受けました。警察に対する人々の対応などに、ああそうか、彼はアメリカ作家だったなと思ったりしたものです。最後には一つの手がかりから、作中の表現を借りれば「実験的推理」なるデクスターにも近いと思えるほどの推理が展開されます。
ただし、事件と直接関係ない登場人物たちの最終扱いが中途半端な感じがする点は不満でした。


No.634 6点 雪冤
大門剛明
(2013/07/30 23:12登録)
死刑と冤罪の問題を扱った社会派ミステリという一般的評価はそのとおりですが、裁判シーンもなく、地味なストーリーでもありません。最初からかなりエンタテインメントしています。しかし、だからといってテーマに対するアプローチが浅いわけではなく、登場人物たちの対話を通して何度も丁寧に熱く語られます。さらにちょうど半ばあたりで起こる出来事には驚かされました。このあたりまでは文句のつけようがないほどです。
しかし、最後の解決部分には不満がありました。まず八木沼の派手な立ち回りは、その後の展開から見ても不必要でしょう。また真相については、なぜそこまでの覚悟をしたのか心理的に説得力がありません。どんでん返しの連続についても、北村薫氏の選評どおり逆効果だと思いますし、論理的にも、終章の証拠文書が、いつ、なぜ書かれたものなのか、偶然(全く証拠にならない)とする以外説明がつきません。


No.633 5点 赤いキャデラック
ジョー・ゴアズ
(2013/07/26 22:28登録)
原題直訳だと「最終通告」となるゴアズのDKAシリーズ第2作は、最初のうちは一般的な位置づけのとおりハードボイルド系という印象だったのですが、後半殺人が起こってからは、ある意味第1作以上にパズラー的、特にクロフツを連想させられる展開になっていました。まあトリックが、凝ってはいてもクロフツに比べると平凡な発想なのはしかたないですが。しかし、ゴアズの方が組織的な捜査が行われているという点は本作の特徴を示しています。DKAはもちろんダン・カーニイ率いる私立探偵事務所なわけですが、単独行動の多いフレンチ警部より警察小説的なチームワークで、犯人に迫っていきます。
最後はまたハードボイルドっぽい締めくくり方になるのですが、この決着のつけ方には疑問を感じました。またその直前の倉庫のシーンは、最後にカーニイも言っているとおり犯人にとってあまりに無意味なことで、不満が残りました。


No.632 6点 メグレとひとりぼっちの男
ジョルジュ・シムノン
(2013/07/22 22:17登録)
ぼろぼろの空家で暮らしていた殺された浮浪者は、なぜか髪や爪をきれいに手入れしていた。このなかなか魅力的な謎は、しかしすぐにあっさりと解き明かされてしまいます。当時のパリではそんなこともあったのかと、妙なところにびっくりしました。二人の匿名女から似たような問い合わせの電話がかかってくるという展開も興味をそそられます。
終盤になって明らかになる、被害者がメグレも驚くほど徹底して「ひとりぼっち」になった理由、被害者と犯人との関係、その犯人が最後にメグレの部屋で電話をかける場面など、ミステリ的というより文学的なと言いたいような意外性もあり、全体的にはかなり感心させられました。
ただし犯人を突き止める直接的なきっかけが安易な点は不満でした。そんなきっかけがなくても、メグレが一度犯人と会った後に行う調査をしてみたらどうかと思いつけば、それで解決できたはずだからです。


No.631 6点 ゴーレムの檻
柄刀一
(2013/07/18 23:49登録)
異世界に彷徨いこんでしまう宇佐見博士を探偵役とした5編を収めた中短編集です。ただし作品によって、異世界とのかかわり方は異なっています。
最初の『エッシャー世界』はタイトルどおりまさに異世界ですが、構成に疑問を感じました。エッシャーの後継者と言われる画家の絵に隠された秘密と、博士が迷い込む異世界との共通点は、この有名な版画家と別の意味で関係があるということだけなのです。
『シュレディンガーDOOR』は現実の事件自体が非現実的な衣をまとっている感じ。『見えない人 宇佐見風』は異世界の使い方のひねりのみおもしろい作品。
続く表題作は、現実の事件はたいしたこともなく、不要とも思えました。一方のカーをも思わせる時代SF部分は実におもしろくできています。『太陽殿のイシス』は表題作と似た現象を別アイディアで実現させていますが、むしろもう一つのトリックの方がよくできていました。


No.630 6点 呪い!
アーロン・エルキンズ
(2013/07/15 22:24登録)
再読ですが、オリヴァー教授が襲われるシーンと銃創の問題が多少記憶に残っていた程度で、舞台がマヤの遺跡だということも、事件の真相も全く覚えていませんでした。全体の印象も薄かったわけですが、読んでいる間はなかなか楽しめました。まあ事件からくりは、ある程度想像がつくでしょうが、こういう渋めの構成は好きですね。
神秘主義信者の登場人物が語ることを聞けば、タイトルの「呪い」というよりむしろ予言と考えた方が筋が通るような気もします。吸血キンカジュー登場の冗談なんてどこが呪いなんだか。
最後に犯人を示す手がかり(証拠)については、不満がありました。勘違いを起こさせるにはきわめて都合の良い偶然が必要ですし、また、なぜ犯人はその二人だけで、他に該当者はいないという確信が持てたのかも納得できません。犯人がたまたま知ったのはその二人だったというだけなのですから。


No.629 6点 レディ・ハートブレイク
サラ・パレツキー
(2013/07/12 22:12登録)
内容とは関係ない邦題ですが、原題は"Bitter Medicine"で、まさにテーマそのものを示しています。さらに本編が始まる前、謝辞の中でも産婦人科のことが書かれているのですから、殺人が起こってすぐ、相当鈍い人でも方向性の見当はついてしまうでしょう。
途中、あまりに明らかな手がかりが出てきて、ヴィクも当然すぐに気づくので、かえってダミーではないかとさえ思ってしまいました。最後の尾行におけるある意外性もやっぱりという感じです。謎解きとしてはまあその程度なのですが、レギュラー・メンバーだけでなく最初に殺される人など、魅力的な人物の造形は(悪役も含め)なかなかいいですし、ヴィクの友人ロティの診療所での事件や、ヴィクの違法捜査など、ストーリー展開は最後まで楽しめました。
うっかり見過ごしていたのですが、『ダウンタウン・シスター』に出てくるあるキャラは本作で初登場だったんですね。


No.628 5点 白椿はなぜ散った
岸田るり子
(2013/07/07 20:28登録)
7章に分かれた作品ですが、全体の1/3ぐらいもある第1章は一人称形式による少々偏執的な片思い小説とも言えそうな感じで、全然ミステリではありません。まあこんな状態ではまともな結果になるはずがないとは想像できるのですが、第三者的な視点から見れば当然と思えることにも全く気づかない本人の偏った心理は、この作者らしくよく描けています。
ところが第2章からはその約10年後に飛び、小説の盗作問題から殺人へと話は発展していきます。奇数章は第1章と同一人物の一人称形式で、「私」はiPS細胞研究者になっているのですが、学生時代の妄執を抱えたままでマッド・サイエンティストぶりを見せてくれます。
殺人犯はよくあるパターンの手がかり(気づきませんでしたが)から論理的に指摘されます。ただ最終章におけるいい意味で後味の悪い結末と殺人事件との関連についてだけは、ちょっとがっかりしました。


No.627 6点 デイン家の呪い
ダシール・ハメット
(2013/07/03 22:11登録)
ハメットの長編中一般的に最も低評価な作品で、昔最初に読んだ時も、へんな小説だという印象を持ったのでした。しかし今回新訳版で再読してみると、意外に楽しめました。ハメットの長編ということで期待するものと実際の作品とのギャップがあり過ぎるのが、不満の原因かとも思われます。
まず、本作はむしろ3編の連作中編集と捉えた方がよい構成になっています。そして最後には3編全体をまとめる結末を用意しています。また、事件そのものもタイトルどおり一族の呪いがモチーフになっていて、ギャングの世界等とは無縁です。コンチネンタル・オプも、無名なわけですから別人ではないかという疑念さえ持ったのですが、これはポイズンヴィルでの事件(『赤い収穫』)のことが語られるので、思い過ごしでした。
ひねりのある3部構造に加え、カー並みの怪奇趣味や不可能犯罪まで出てくる本作は、むしろ最近の国内本格ファンに受けそうにも思えます。


No.626 5点 配当
ディック・フランシス
(2013/06/30 18:49登録)
フランシスの異色作で、前半と後半の2部に分かれ、兄と弟それぞれの一人称形式で書かれています。その2部の間に14年の歳月が流れているのですが、現在から見るとそのような間をあけるのが不向きなアイディアでした。的中確率1/3という競馬予想システムのプログラムを記録したカセット・テープを巡る話で、1981年作というと、確かにその頃はコンピュータ・ソフトをテープに記録していましたねえ、と懐かしく思い出すのですが、その後すぐに今でもまれに使われるフロッピー・ディスクに取って代わられますから。
まあコンピュータに関する知識と将来予測についてはさておき、他の面でも2部構成にしたことに不満はあります。本作の悪役はこの作者の中でも特に知性に欠けるのですが、14年後にも何の進歩も見られず、後半の話が単純すぎるのです。ラストは意外性があるとは言えるかもしれませんが。


No.625 6点 首切り坂
相原大輔
(2013/06/25 22:12登録)
トリックがバカミス系だとか、若竹七海によればお茶目だとか言われていますが、首無し地蔵の呪いの正体にはかなりまともに感心しました。まあ現実にはそんな極端なのは存在し得ませんが。それよりも、その後に加えられたひねりの方に、犯人が事前に知っておかなければならないはずのことについてちょっと無理があるように思われます。少なくとも作中ではその点については、憶測すら書かれていません。
明治44年の事件のはずが、第1章が江戸時代の怪談話なので、少々驚かされました。この冒頭部分もうまく本筋にからめてくれています。明治末の雰囲気もなかなかよく出ていて、新橋あたりの情景など事件とは関係ない部分で楽しめました。現場の道が街中でもないのに珍しく「アスハルト」舗装されているとか、言葉にも気を使っています。
読み終えた後で見なおすと、このカバーイラスト、なかなかいいですね。


No.624 5点 シカゴの事件記者
ジョナサン・ラティマー
(2013/06/21 22:43登録)
訳者によるノートには、ラティマーはハードボイルドに分類するのをためらわせるということが書かれていますが、それどころか本作はドタバタコメディ・ミステリと言った方がいい内容です。主人公がちょっと間抜けすぎたり、登場人物の整理が悪いところはありますが、なかなか楽しめました。特にエレベーター・ボーイが新聞社に来て証言しようとする部分の嘘っぽさなど、作者は映画脚本にも携わっていたためか、コメディ映画を見ているような感覚でした。
しかし、ラストにはがっかりさせられました。ラティマーは謎解き面がすぐれている作家という認識を持っていたのですが、明らかな論理的欠陥があるのです。問題は決め手となる証拠で、その証拠が存在し得るためにはある日常的な行為が必要なのですが、その行為を誰がなぜやったのか、また犯人がなぜそれに気づかなかったのか、全く説明されていないのです。


No.623 6点 メグレと老婦人の謎
ジョルジュ・シムノン
(2013/06/17 22:40登録)
何らかの事件でメグレに会いたいと司法警察にやってくる人は時々いますが、本作ではそれが表題にもなっている老婦人(原題を直訳すれば「狂女」でしょうが、フランス語の”folle”は熱烈なファンといった意味にもとれます)です。最初にたまたま老婦人の話を聞くことになったラポワントが、その後も主としてメグレに付き従うことになります。
その老婦人が殺されますが、犯人は老婦人の家で何を探し回っていたのか、というのがメインの謎です。しかしこういう解答はシムノンにしては珍しいですね。それが老婦人の棲んでいた、19世紀さえも思わせるような古いアパートの内装と対照的です。後で考えてみると、確かにそれで登場人物たちの行動理由が無理なく説明できるという真相になっています。
メグレが奥さんと一緒に散歩したり、公園のベンチに座ったり、といったシーンが多いのも、本作の特徴の一つでしょうか。


No.622 6点 虚妄の残影
大谷羊太郎
(2013/06/13 22:30登録)
森村誠一『高層の死角』と同年の乱歩賞応募作で、作者が翌年同賞を受賞した後に出版された作品です。出版に際して改稿されたとしても部分的でしょうし、『高層の死角』がなかったら乱歩賞を獲っていたかもしれないと思わせられました。
初期の大谷羊太郎は密室にこだわっていたようですが、本作では一応密室ではあるもののあまり不可能性は強調されていません。それよりも現在の毒殺事件と、その後に浮上してくる過去の2つの迷宮入り事件とがどうつながってくるかというところが見どころになっています。この全体構造が、偶然の使い方にも意外性があり、なかなかよくできているのです。本筋からはずれる部分で、筆跡発見に関する偶然は確率が低すぎるという意見もあるかとは思いますが、犯人または探偵にとって都合の良い偶然が続くというわけではないので、これはこれでいいでしょう。


No.621 7点 ラスコの死角
リチャード・ノース・パタースン
(2013/06/09 18:25登録)
訳者あとがきでは、チャンドラーやロス・マクの伝統を受け継ぐという評価が載せられていますが、共通点は主人公の一人称形式ということぐらいのもので、内容的には全然違うでしょう。タイプとしてはいかにもベスト・セラー系のポリティカル・スリラーです。
主人公のクリス・パジェットの性格設定もクールなマーロウやアーチャーとは正反対にあまりに直情的で、勤めている経済犯罪対策委員会の中で人に噛みついてばかりいます。事件が大変なことになってきて慎重さを要求されるに至って、さすがに自制してきていますが、前半は少々うんざりするぐらいです。だからと言って作品そのものを批判しているわけではありません。この主人公の性格も、読み終えてみるとストーリーにうまく利用されていたことがわかります。最終章で一気に事件全体に鮮やかな決着をつけてくれて、爽快感もなかなかのものでした。


No.620 6点 学校の殺人
ジェームズ・ヒルトン
(2013/06/06 22:36登録)
ジェイムズ・ヒルトンが『失われた地平線』(1933)でブレイクする前年に、グレン・トレヴァー名義で発表したミステリです。子供向け翻訳も複数出ていたりして、非専門作家が例外的に書いた古典作品としては、少なくとも日本ではミルンの『赤い館の秘密』に次ぐ人気作と言えるでしょう。
これも久しぶりの再読で、学生の2つの「事故死」状況についてだけは何となく記憶に残っている程度だなと思いながら読み進んでいったのです。ところが犯人が不用意に漏らす一言(英語では1語のみ)については、その部分で記憶がよみがえりました。犯人を示す根拠がそれだけというのはちょっと弱いかなとも思えますが、その時犯人の語る内容全体も重要なことなので、まあいいでしょう。おおよその真相は非常にわかりやすいですが、犯人の性格設定はさすがですし、最終章の意外なおまけもあり、全体的にはかなり楽しめました。


No.619 5点 肺魚楼の夜
谺健二
(2013/06/01 11:27登録)
谺健二を読むのは初めてですが、阪神淡路大震災が人々に残した心理的傷跡をテーマにしながらも、いかにも「本格」的な怪奇な謎を提示して見せる作家だそうで。本作も、完全にホラーな出来事が起こったという殺人未遂事件で幕を開けます。犯人逮捕直前シーンのホラーぶりはなかなかのものでした。それ以前の、探偵役の有希が肺魚の怪物に襲われる悪夢めいたシーンも含め、偶然だらけのご都合主義ですが、こんな現象を起こして見せるには、偶然に頼らないと無理です。
犯人の計画や行動の面から見れば、不満も多いでしょう。たとえば犯人による写真トリックは、有希が解説する方法では実際には不可能です(実現可能にする別法あり)。
事件解決後にあるサプライズは、読者にとっては事件最大の謎に対する解答にもなっていると思いますが、やはり心理的偶然の積み重ねが理由の説得力を減じている気がして、すっきり感動とまではいきませんでした。


No.618 6点 薄灰色に汚れた罪
ジョン・D・マクドナルド
(2013/05/27 23:14登録)
ジョン・Dのトラヴィス・マッギー・シリーズはハードボイルドに分類されることも多いようですが、本作を読んだ限りでは、いわゆる正統派だけでなくスピレイン等にもあったそれらしい香りはどうも感じられません。
殺された親友を経済的に追い詰めた連中をペテンにかけて痛い目に合わせるという筋立てですが、ひとつは完全に詐欺罪が成立する策略なので、だまされた悪役が泣き寝入りしたままとは限らないと思われるところが気になります。訳者あとがきなどで褒められているパスの最終的扱いも、スカッとする結末とは相容れない感じを与えていて、そういったミクスチャーな感覚がこの作家の特質なのかもしれませんが、気持ちよくきれいにまとめていないのも、日本では今一つ人気が出ない理由になっているのかもしれません。
それでも、個人的には同じマクドナルドでもフィリップよりは未訳作出版や絶版の再刊を望む作家です。


No.617 7点 フランチャイズ事件
ジョセフィン・テイ
(2013/05/24 23:53登録)
ずいぶん前に1度読んだことのある作品ですが、内容はすっかり忘れていました。覚えていたのは、なんとなくよかったなという印象のみ。
事件そのものは誘拐暴行事件、それもその嫌疑をかけられた人間の無罪を証明しようと事務弁護士が奮闘するというだけの話ですから、地味にならざるを得ませんし、意外性のある真相が明かされるというわけでもありません。途中に、誘拐されたという娘の証言の一部に矛盾点があることが指摘されるところだけは謎解き的な興味がありますが、それもフェアプレイが守られているわけではありません。この作家のレギュラー、グラント警部も今回は敵役で、出番もごくわずか。それにもかかわらず、読んでいてやはり、「なんとなく」おもしろいのです。
古風な訳文表現はそれほどひどいとまでは思いませんでしたが、「調らべる」「難ずかしい」等の妙な送り仮名だけは、ちょっとねえ…


No.616 7点 凍った太陽
高城高
(2013/05/19 09:05登録)
11の短編の後にエッセイを3編加えた構成になっています。このエッセイの1つ『われらの時代に』を読むと、高城高の考えるハードボイルドとは、ハメット以来のミステリと限らず、まずヘミングウェイであることがわかります。ロスマクに対する評価も、チャンドラーよりもヘミングウェイとの関係で語られています。
そんな作者ですから、ヘミングウェイが重要な意味を持つ作品もありますし、またミステリではない『火焔』、『廃坑』も収録されています。『ラ・クカラチャ』(スペイン語でゴキブリの意味だそうで)や『賭ける』も、最後にミステリ的なオチを用意してはいるものの、むしろそれ以外の要素が読みどころと言えるでしょう。『淋しい草原に』は作者の代表作の1つとされているそうですが、謎解き的な意味では本短編集の作品中でもむしろ平凡です。表題作は恐喝犯の設定に若干不自然さも感じますが、ラストの急展開にはなかなか驚かされました。

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