死への旅 |
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作家 | アガサ・クリスティー |
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出版日 | 1955年11月 |
平均点 | 4.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 4点 | レッドキング | |
(2021/05/01 12:09登録) 今は昔、まだ共産主義が、楽園幻想と恐怖対象の相半ばの存在だった50年代。失踪する科学者達の謎解明の駒として、西側スパイに仕立てられた自殺志願女。流れ着いた先は砂漠の巨大医療施設・・怪しげな組織とキャラ達・・起と承のミステリアス感は良い。が、転と結が・・・。美味しいがオードブルとスープで終りのフルコースてとこかな。 |
No.2 | 3点 | クリスティ再読 | |
(2016/03/06 09:54登録) 本作くらいがクリスティ全ミステリ長編での注目度・人気度が最低なんだと思う....評者これ書くので新本を買ったけど、ハヤカワのクリスティ文庫の初版(2004年)で「クリスティ文庫通信第10号」が挟まってたよ。似たような立場の「バグダッドの秘密」でも2刷だったから、たぶん本作の最低人気は確定だろう。本作を下回る駄作の「ビッグ4」とか「フランクフルト」とかだと怖いもの見たさで読む読者が多かろうからね。 で内容は不人気のモトであるリアリティの薄いファンタジー・スパイスリラーで、ヒロインが自殺の代わりに生還率のメチャ低いオペレーションにスカウトされて、という話。まあクリスティ、自殺を考えるヒロインとかそもそもガラじゃない。全般にキャラの生彩を欠くことが甚だしいから、ミステリマニア系でないクリスティ読みな感覚でも、本作つまらない。 思想や性向が全部違う科学者たちを集めて隔離するとか、評者が一番連想するのはちょっと意外かもしれないが「魔の山」だったりするが、もちろんクリスティだと思想小説もそもそも手に余る。これがチェスタートンだったらファンタジー思想スパイ小説でも「木曜日の男」でやったように絶対面白いと思うけどね。まあクリスティだと思想とか単なるその人の外面的なレッテルにすぎないから、話が深まらない。 一応最後に意外な真相はあるにはあるが、レトコン(Retroactive continuity)とかそういうもので、楽しくも面白くもなんともない残念な感じ。駄作。 |
No.1 | 6点 | 空 | |
(2013/09/30 23:45登録) 『葬儀を終えて』『ポケットにライ麦を』等ほとんどがポアロ、ミス・マープルものだった時期にしては珍しい、ノン・シリーズのエスピオナージュです。 ヒロインは人生に絶望して自殺をしようとしていたところを、スパイになることを勧められるという、どう考えても無茶な設定で始まり、どうなることかと危ぶまれたのですが、その後はなかなかおもしろくできていました。もちろんアンブラーやル・カレみたいなシリアス派ではなく、嘘っぽさが楽しい娯楽スパイです。ほとんど最後までは、いかにもなパターンの「意外性」連続で、黒幕だのある登場人物の正体だの、やっぱりねという感じで、にやにやしながら気楽に読んでいったのですが… 最後の最後に、クリスティーらしいとんでもない意外な結末を付け加えてくれていました。しかも、パズラー系のフェアさとまでは言えなくても一応伏線は張ってあるのです。 |