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ミステリの祭典

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消えた女
アルバート・サムスン

作家 マイクル・Z・リューイン
出版日1986年09月
平均点5.50点
書評数4人

No.4 5点 クリスティ再読
(2019/03/20 23:29登録)
モウゼズ・ワインを読んだ直後に本作だと、いかにもあっさりして地味である...同じネオ・ハードボイルドで括られた作品とは思えないくらいである。まあサムスンはあまり強くないのがウリみたいなキャラなので、中途半端なロスマクみたいな印象の方が強いなあ。それでも「強くない」探偵というのは、ネオ・ハードボイルドの数少ない共通項みたいなものだから、まあサムスンくらいの方が狂言回しとして使い道が広い、というのは言えるだろう。
本当に時代の空気を背景にしたワインが、時代がたつと理解されづらくなって失速するのは仕方がないことなのだが、田舎町を背景にした本作などはそう古びないメリットはあるのかもしれない。意地の悪いことを言えば、最初から古めかしいかもね。
本作そう悪くはないのだが、評者はとくに惹かれない。けどもこういうシリーズの方が「王道」とか言われて続くんだよ。そういうものか。

No.3 6点 E-BANKER
(2013/09/08 13:58登録)
1981年発表。私立探偵アルバート・サムソンシリーズ五番目の長編作品。
チャンドラー風でもありロス・マク風でもある米ハードボイルド小説の系譜を次ぐシリーズ。

~二か月前に失踪した友人を探して欲しい・・・エリザベスと名乗る女の依頼で、わたしはその友人プリシラが住んでいた町へ赴いた。やがて彼女は青年実業家と駆け落ちしたらしいことが分かり、調査は打ち切られた。だが、数か月後、実業家の他殺死体が森で発見され、警察は一緒にいたはずのプリシラの死体を探し始める。わたしがエリザベスに連絡しようとすると、彼女もまた姿を消していた・・・。私立探偵サムソン・シリーズの代表作~

ストーリーとしては「典型的なハードボイルド小説」。
っていう感じかな。
舞台はアメリカ東部のインデイアナポリスとナッシュビル。
ハードボイルドというと、LAやサンフランシスコなど西海岸の乾いた風土が似合うという気がしていたので、東部の田舎町という舞台設定自体がちょっとそぐわないような気がする。
それはともかく、粗筋としてはこういう手の小説としては典型的とも言え、主人公の私立探偵サムソンはひとりの女性の行方を追うことにきりきり舞いさせられる。

中盤までは混沌としていた事件の背景が、終盤を迎えるあたりで急展開。終局に向けてがぜん加速していく・・・というのもほぼお約束だろう。
謎の女性の正体自体は特段捻りはないのだが、殺人事件の真犯人にはちょっとびっくり。
まさかこんな奴が犯人だなんて思わなかった・・・という人物だ。
登場人物たちの愛憎渦巻く関係が動機につながっており、この辺の落とし方・見せ方はさすがにうまさを感じる。

文庫版巻末で解説者の瀬戸川氏がチャンドラーやロス・マクとの比較を論じているが、両者のいいとこどりをしていて、「旨さ」こそ感じるものの、やはり両巨頭のスケール感や何とも言えない作品世界と比べるとイマイチという評価になるかな。
でも、決して駄作ではなく、水準以上の作品。
(作者を代表するもうひとつのシリーズ主人公・パウター警部も登場。いい味出してる。)

No.2 6点
(2013/08/15 00:24登録)
かなり気弱なアルバート・サムスンですが、今回は探偵事務所兼自宅の建物が取り壊し予定で立ち退きを余儀なくされていて、私立探偵を続けていくことに不安を感じているところから物語は始まります。巻末解説で瀬戸川猛資氏は、この悩みの自問を「生活感に根ざしたリアリズム」という点から褒めあげ、マーロウが絶対発しない問いだと書いています。しかし、どんな自問であれ直接表現するのを極力避けるのがハードボイルドの文章でしょう。探偵の悩みを書いていても、リューインの文章にはチャンドラーやロス・マクほどのうまさ、文学性は感じられません。その意味では、「小説としての奥行きが深い」とは思えませんが、エンタテインメントとしては充分です。
最後の方では1日のうちに2回も銃で撃たれる(幸いかすり傷ですみますが)というハードなところもあり、謎解き的にも多少決め手不足ですが、なかなかよくできています。

No.1 5点 あびびび
(2011/09/15 13:52登録)
探偵サムソンシリーズの代表作といわれているが、ロス・マクドナルドに影響を受けたらしい。すなわち暴力的ではなく、淡々と追跡をした果てには意外な犯人が…。

題名はあっさりしているが、なかなか込み入った話で、文章的な奥の深さもある。

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