空さんの登録情報 | |
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平均点:6.12点 | 書評数:1515件 |
No.815 | 6点 | カナリヤの爪 E・S・ガードナー |
(2015/08/29 23:22登録) ガードナーが考え出した事件解決までのタイム・リミットは、なんともとぼけたものでした。最終章でメイスンとデラが間一髪で間に合ったのには苦笑もの。次の事件の予告を入れるいつもとは全然違う大げさにロマンチックな終わり方でした。 事件の方はというと、タイトルのカナリヤの爪の問題は、ごく早い段階で簡単に解決してしまい、その後例によって殺人事件へと展開していきます。しかし今回は珍しく容疑者が3人もいて、一時は3人とも警察に逮捕されてしまいます。で、検察送りになるのは結局そのうち1人だけですが、その人物が被告人の裁判が始まる前に、もう一つの殺人事件の検死審問で事件は解決してしまいます。真相の背景は、ちょっと見当がつかないだろうというものでした。 それにしても、ドレイク探偵の「そうじゃないでしょう。まだだろう」という台詞に代表される阿部主計氏の統一のとれていない翻訳は、問題です。 |
No.814 | 6点 | 西洋骨牌探偵術 都筑道夫 |
(2015/08/23 12:27登録) 本書の西洋骨牌(かるた)とはタロットカードのことです。ただし、探偵役の鍬形修二は、タロットと呼ぶのは日本だけであり、英語ではタロウカードと読むので、自分もそう発音すると講釈しています。鍬形はそのタロウカードを使う占い師ですが、怠け者で、適当にそんな職業を名乗っているだけというのは、『七十五羽の烏』等の物部太郎にも通じるキャラクターです。 その占い師鍬形シリーズは、収録7編中最初の5編だけです。不可能興味もありますが、やはりWhy(犯行動機だけでなくなぜ小細工をしなければならなかったのかという謎)に重点を置いた論理派ミステリになっています。6編目の『二重底』を読み始めた時には、語りの手法を変えたのには何か企みがあるのかと勘ぐったのですが、何のことはない、シリーズ外というだけのことでした。最後の『空前絶後、意外な結末』も怠け者ユーモア・ミステリ。 |
No.813 | 6点 | Terminus ボアロー&ナルスジャック |
(2015/08/20 23:25登録) ― パリ・ニース間を往復する列車の食堂車シェフであるシャヴァンヌは、妻が自動車事故で昏睡状態にあるとの知らせを受ける。妻のコートのポケットにあった画廊の展覧会案内。その画廊に出かけた彼は、そこで見た絵に愕然とする。― 1980年発表の未訳作品です。このコンビ作家は、1979年の『銀のカード』まで順調に翻訳されていましたが、その後書かれた10冊以上のうち翻訳されたのはジュヴナイルを除けば皆無です。ここまである時点を境に完全紹介から完全無視になった作家も珍しいでしょう。そんなわけで、日本ではその存在すらほとんど知られていない作品です。 読んでみると、ずいぶん変わったなというのが第一印象でした。異様な謎や強烈なサスペンスはなくなり、主人公の心理(と行動)をじっくり描いた心理小説になっているのです。最後いかにもなどんでん返しはありますが、意外性よりも、だからこその結末の哀しさが印象的でした。 |
No.812 | 5点 | チャーム・シティ ローラ・リップマン |
(2015/08/16 18:23登録) 舞台となるボルチモアの描写が特に評価されたらしく、アメリカ探偵作家クラブのペーパーバック賞を受賞し、さらにアメリカ私立探偵作家クラブのペーパーバック賞も受賞、という作品ですが、悪くはないもののそれほどとは思えませんでした。 私立探偵小説あるいはハードボイルドと言うには、ゆるいのです。パレツキーやグラフトンみたいな、主人公が必要な捜査を速やかに遂行していく感じはありません。主人公テスが悪役一味につかまって、アジトから脱出する件にしても、少々間が抜けています。コメディーならそれで全く問題はありませんが、そんなタイプでもありません。クライマックスの雰囲気も、さほど強烈ではないサスペンス系といったところです。二つの無関係な事件を並行して描く構成ですが、特に効果的とも思えません。 なお、文章は少なくとも翻訳では完全にテスの視点からのみになっていますが、三人称形式です。 |
No.811 | 5点 | 扉の影の女 横溝正史 |
(2015/08/13 11:56登録) かなり以前に読んだ時には凡庸な印象しか受けなくて、内容をほとんど忘れてしまっていたのですが、再読してみると、自分の嗜好が変わってきたこともあってか、そんなに悪くないと思いました。 「この物語は人生にまま起こる不思議な運命の十字路を語るのが目的だった」とは本作最終章の書き出し部分で、その「運命の十字路」の顛末は金田一耕助が筋道立てて説明しているのですから、その時点で本格派ミステリにはなっていると思うのです。その後についてはノックスやヴァン・ダインの原則に違反していますが、事件の最大の謎が名探偵によって解かれた後は、最終章表題どおり「蛇足」と言ってもいいでしょう。 文庫本240ページ程度と短めな本作は短編を膨らませたものだそうで、事件は地味で小味ですし、偶然過ぎると批判する人がいても当然かもしれませんが、それなりに楽しめました。 |
No.810 | 7点 | ファイル7 ウィリアム・P・マッギヴァーン |
(2015/08/09 18:10登録) マッギヴァーンを読むのはこれが初めてなのですが、初期の有名な『殺人のためのバッジ』が悪徳警官を扱った作品であることを考えると、犯罪者の人物像を描くのが得意な作家ではないかと思えます。ただし本作では悪徳どころかハードボイルド系にしばしば現れる不愉快な警察官も一人も登場しません。ハヤカワ・ミステリ版には「FBI誘拐事件簿」のサブタイトルがついていますが、まさにそのとおりの内容で、有能なFBI捜査官たちが活躍します。全編にわたって、幼児誘拐犯のグループ視点とFBI視点のカットバックによって緊迫感を生み出す手法が採られています。 誘拐犯グループの部分では、デュークとハンク(ハンクは事件に巻き込まれる善玉役)の兄弟、それにエディとその情婦ベルとの関係がかなりじっくり描かれていますし、もう一人別行動の犯人クリーシーのいびつな性格もなかなか印象的です。 |
No.809 | 6点 | トリプルX L・A・モース |
(2015/08/04 23:57登録) デビュー作『オールド・ディック』では過去のハードボイルド作家への目配せがやたらにあったL.A.モースですが、この3作目では完全にスピレイン系の過激なハードボイルドになり、巨匠への言及は消えています。ただしマイク・ハマーが意外にセックスに対しては潔癖なところがあったのに対し、本作のサム・ハンター(いかにもな名前です)は、何人もとやりまくっています。このタフガイ探偵の特徴はもうひとつあって、なかなかの食通なんですね。やたらに食事のシーンが出てきて、料理(とビール)が並べたてられています。 謎解き的要素もかなりあり、事件の全体的な構造はなかなかつかめません。ただ、真相が複雑すぎて、本当に整合性がとれているのかどうか理解できないようなところがあります。複雑と言っても、ロス・マクみたいな整然とした結末ではなく、無理に複雑化している感じがしました。 |
No.808 | 6点 | 犯罪者たちの夜 結城昌治 |
(2015/07/28 23:09登録) 紺野弁護士シリーズ第2作には、1969年から1929年までの間に書かれた9編が収められています。前作『死者たちの夜』は1973年に出版されていますから、前作はそれまで書いたものをすべてまとめたわけではなかったことになりますね。 タイプとしては、弁護士が主人公であっても、雰囲気は私立探偵真木ものの『暗い落日』等と共通していて、つまりはロス・マク風ハードボイルドです。妻の失踪、三角関係の悩み、猫の誘拐(紺野弁護士は法律的には窃盗になると言っています)等から始まって殺人にまで発展するもの、それに最初から殺人罪で逮捕された者の弁護など、様々です。が、読み通してみると短編にはしにくいスタイルなのではないかと思えました。真相はそれなりに意外ですが、解決シーンが唐突であっけない感じのするものが多く、もっと長くしてじっくり読ませてもらいたいという気にさせるのです。 |
No.807 | 4点 | 引き潮の魔女 ジョン・ディクスン・カー |
(2015/07/24 23:53登録) 歴史ミステリと言っても、これくらい新しい時代(1907年)になると、それらしい雰囲気はほとんど感じられません。カー自身が生まれた直後の時代設定ですからね。タイトルからも窺える足跡トリックがメインです。その前に地下室からの人間消失の謎もありますが、こっちはがっかりな真相でした。その地下室の方に対する、不可能に見せかける理由の欠如という問題点は、足跡トリックの方にもある程度当てはまります。 不満点は他にもあります。登場人物たちが好き勝手なことを言い合って話がうまく噛み合わず、それでわけがわからなくなっているようなところがあるのです。3人のうち誰が名探偵役なのかはっきりさせない構成も成功していると思えません。また最後の推理は、その人物に殺人動機があったことの論理的な指摘にとどまっていて、犯人であることを示す明確な手がかりが不足しています。犯人の設定自体はいいと思うのですが。 |
No.806 | 5点 | ガーディアン・エンジェル サラ・パレツキー |
(2015/07/21 21:45登録) ヴィクのシリーズ第7作にして、邦題が初めて原題そのままの作品です。このシリーズ、回を重ねるごとに長くなって、本作は文庫本で580ページの大作です。しかし、それだけの長さを必要とする事件だったかというと、疑問があります。2つの事件、その一方は違法かどうか微妙だという程度のもので、もう一方もある会社が殺人を複数回起こしながらも、動機はそんな重罪を犯す必要があったとはあまり思えません。2つの事件の絡み具合がまた微妙で、意外な結び付きがあったというほどでもありませんし、無関係なものを並行して描いたとも言い切れないのです。ヴィクのアクションはおもしろかったのですが、以上のような不満もあり、この点数。 なお、過去の作品にも登場していた人物たちの中でも、ヴィクと仲の悪い隣人や、元夫の弁護士も、事件に関わりがあるという、その意味では今までの総決算的な作品とも言えそうです。 |
No.805 | 6点 | 山下利三郎探偵小説選Ⅰ 山下利三郎 |
(2015/07/15 22:09登録) 収録22遍のうち『朱色の祭壇』だけは約80ページもある中編です。発表当時(1929年)としては、かなり本格的なフーダニット構成と言えるでしょう。ただし発端部分の意味が説明不足ですし、老若2人の刑事の捜査方法の対比も明確ではありません。もっと書き込んで長くすべきだと思えました。 横溝正史は山下利三郎について、乱歩に「あんな漱石ばりの文章では困る。」と言ったそうです。実際、文章は乱歩などに比べて古めかしいのですが、さすがに格調はあります。漱石との関連では、『君子の眼』は、巻末解題に『吾輩は猫である』を意識したものだろうと書かれていますが、1行目の「住み難いからつて他へ移ればなお住み難くなる。」という文からして『草枕』冒頭部分のパクリでしょう。コメディ、人情話、謎解き要素の強いもの等さまざまなタイプが並んでいますが、さすがにいわゆる通俗的な感じはしません。 |
No.804 | 5点 | 殺人者はへまをする F・W・クロフツ |
(2015/07/12 13:29登録) 「犯罪」と「フレンチの解決」の2つの部分からなる、いわゆる倒叙形式の《二重の物語》12編と、フレンチ警視の一人称のみの《単独の物語》11編が収められています。総体的には倒叙による前半分の方が、殺人の動機や計画などが一応は描かれてそれなりに小説らしくなっているためでしょうか、楽しめました。 ミステリは小説なのですから、そのパズル性は、小説としてのリアリティを踏まえていなければならないでしょう。その意味で、本書の特に《単独の物語》のかなりの作品に不自然さを感じました。犯人の証言の中にそれが嘘であることを証明する言説があることを、フレンチが見破るというパターンが半分以上を占めるのですが、犯人がなぜそんなばれるような嘘をつくのか、釈然としない作品が多いのです。このタイプで意外性と説得力を兼ね備えていたのは、最後の『待っていた自動車』だけと言っていいでしょう。 |
No.803 | 6点 | 笑ってくたばる奴もいる A・A・フェア |
(2015/07/06 22:04登録) シリーズの第17作で、第1作でB・クール探偵事務所に雇われることになったドナルド・ラムもすでに共同経営者になってからずいぶん経っています。最初から、バーサ・クールが自分のことを「タフでハードボイルド」だと言ったり、テキサスから来た依頼人が金持ちのくせにやたらケチだったりと、いかにも軽ハードボイルドなノリです。事件そのものは失踪人捜索というお決まりパターン。 作者がガードナーですから、謎解き要素は十分ありますが、本作は分量も短く、トリックはあっさりしています。過去に似た事件が起こったことが判明したところで、真相には、誰でも気づくでしょう。さらに問題の土地契約のことについての解決も、当然といった感じです。 それでもバーサ・クールが大ムクレになるラストまで、わかりやすい伏線がきれいにまとまっていく、軽快なストーリーは楽しめました。 |
No.802 | 5点 | 横浜・長崎殺人ライン 深谷忠記 |
(2015/07/03 22:32登録) 作者の言葉にもありますが、この壮&美緒シリーズ第8作は、趣向を変えて二人が脇役に回った作品です。主役は神奈川県警の薬師寺警部補。しかしほとんど観光案内的な旅情は相変わらずで、港の見える丘公園はともかく、長崎の町はかなりていねいに描かれています。 真相の大筋は簡単に見当がつくとは言え、論理的整合性に優れていて、好感が持てます。被害者の身元を一時的に隠した理由に説得力がありますし、プロローグの意味も最後の方になってわかります。 しかし、全体の6割過ぎあたりで思い込みを打ち破る発想を壮が示唆するのはいいのですが、その後アリバイ・トリック解明のヒントまで壮にもらうというのでは、薬師寺刑事たち頭が悪すぎだと思えます。また犯人逮捕については、現代日本で(30年近く前の作品ですが、法的原則は現在と同じです)こんなことをしてはダメでしょう。それでマイナス1点。 |
No.801 | 6点 | 夜を深く葬れ ウィリアム・マッキルヴァニー |
(2015/06/30 21:54登録) 1977年度シルバーダガー賞受賞作。凝った文章が特徴で、高尚な比喩が頻出します。原題はシンプルに主役警部の名前である “Laidlaw”。ずいぶん意味ありげな邦題をつけたものです。 レイドロウ警部が主役とは言っても、彼の活躍だけを追っていく通常の警察小説パターンではありません。警察の他に、中心となる殺人事件の犯人を探し出そうとする2つのアウトロー勢力を描いた部分もかなりあり、カットバックがなかなか緊迫感を出しています。 殺人事件担当になると、妻子持ちであるにもかかわらず1人でホテルに泊まり込んで事件捜査にのめりこむというレイドロウ警部の極端なキャラクターは、個人的にはさすがに理解の範囲を少々超えています。訳者あとがきによると、ロスマクはこの警部に魅了されたと言っているそうですが。一方彼とは犬猿の仲のミリガン警部の型にはめ込むプロフェッショナリズムもちょっと誇張が過ぎるかなと思えました。 |
No.800 | 8点 | 八百万の死にざま ローレンス・ブロック |
(2015/06/24 23:20登録) 実はジェフ・ブリッジスが主役を演じた映画版を公開時に見ていたのですが、たいしたことはなかったという印象のみで、話は全く記憶に残っていませんでした。それで今回原作を読んだ後WEBで粗筋チェックしてみたところ、内容はここまで変えるかとあきれるほど違っていました。 最後近くまで読んできて、なんとなく思い浮かべたのが『長いお別れ』。あの名作がマーロウとテリー・レノックスの友情物語でもあったように、本作ではマットとチャンスの友情物語でもあると思ったわけです。この娼婦のヒモの黒人というチャンスが実に魅力的に描かれています。二人の友情は、中心となる事件と直接の関係はありませんが、事件が解決した後の部分が抜群にいいんですね。 タイトルの意味は他の方々が書かれている通りですが、ロスマクの ”The Way Some People Die”(『人の死に行く道』)をも踏まえているのではないでしょうか。 |
No.799 | 4点 | 津和野の殺人者 中町信 |
(2015/06/21 11:54登録) これもプロローグに叙述トリックが仕掛けられているのかと疑惑の目で読んだのですが、それほどのことはありませんでした。それでも、もちろんちょっとしただましの意味はあります。 謎の提出の仕方はさすがで、最初のうち様々な疑問点が山積みになっていくところはおもしろいのですが、その後がどうも冴えません。3番目以降の殺人では、誰もが意味もなくある秘密を隠したままでいて、その秘密保持のために次々に殺されていくという、ご都合主義な展開に馬鹿馬鹿しさを感じたのです。 真相が明らかになってみると、最初の事件ではあまりにも偶然を使いすぎていますし、第2の殺人のダイイング・メッセージも、不自然なものでした。メッセージの数字の意味は推理できるタイプではなく、誰にも理解できないものなのですから。まあ読者にとっては、数字の意味に意外性があるとは言えますけど。 |
No.798 | 6点 | 雨の殺人者 レイモンド・チャンドラー |
(2015/06/16 22:26登録) 最初の『雨の殺人者』の一人称探偵役には、当然ハメットからの影響でしょうが、名前がありません。マーロウでも問題ないと思いますが。いかにもな雰囲気ですが、ちょっとごちゃごちゃした感じがします。 『カーテン』は内容的には『大いなる眠り』を思わせますが、冒頭の1文「はじめて私がラリー・パッツェルを見かけたのは、『サーデイ』の店の前で…」は言わずと知れたあの作品そっくり。 『ヌーン街で拾ったもの』の探偵役は麻薬課の潜行刑事で、これはさすがにそのままマーロウものにするわけにはいきません。本集中でもかなり気に入っている作品です。 『青銅の扉』は異次元への(?)扉を手に入れた男の話で、完全にファンタジー。第3集収録『ビンゴ教授の嗅ぎ薬』以上の異色作です。 そして最後の『女で試せ』ですが、昔の恋人を探す大男という設定は『さらば愛しき女よ』の元ネタながら、結末には大きく異なる点があります。どっちの結末がいいか、うーん… |
No.797 | 6点 | おばちゃまはシルクロード ドロシー・ギルマン |
(2015/06/13 10:14登録) ミセス・ポリファックス・シリーズ第6作の舞台は中国。 今回は誰が相棒なのかという、意外な謎があるのが、前半の見どころです。ミセス・ポリファックスがある任務を果たした後で、その相棒の方から接触してくるのを待つという設定で、わざとらしい感じもしますが、楽しめます。その後は相棒の計画にトラブルが発生し、悪役の登場ということになるのですが、作中で弁解しているとは言え、この悪役の行動はやはり間抜けでした。 ミセス・ポリファックスにこんなことまでさせるのかと違和感も覚える一応のクライマックスの後、登場する中国の警察官が頭脳明晰な人格者です。これは現代中国に対する作者の敬意の表れかかもしれませんが、かえって不自然になっていると思いました。検死で凶器の特定はできないはずですし。 このエピローグ、シリーズはまだまだ続くわけですが、以後の設定はどうなっているのでしょうか。 |
No.796 | 7点 | フリージア 東直己 |
(2015/06/09 23:29登録) 東直己の作品は初めて。本作の主人公である殺し屋の榊原健三が登場する作品は後に2作書かれ、第2作が日本推理作家協会賞を受賞した『残光』ですが、こういう作品はシリーズ化してもらいたくないような気もします。 この作家らしく札幌を舞台にしていますが、暴力団同士の抗争を背景にしたハード・アクション小説で、迫力があります。この主人公、ダーク・スーパー・ヒーローって感じで、次から次へと人を殺していきます。しかし冷酷な悪役ではなく、過去に関係のあった多恵子を守るため。ただし多恵子とどんな関係があって、どんな事件が過去に起こったのかは、ほとんど描かれていません。 ハード・ボイルドなキャラクターということでは、謙三よりも丹沢刑事の方がそれっぽい印象を受けました。何を考えているのかわからないと他の登場人物たちから不思議がられる人物ですが、クライマックス直前、それが明かされてみるとなるほどと納得させられました。 |