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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1505件

プロフィール| 書評

No.885 7点 分解された男
アルフレッド・ベスター
(2016/07/05 00:01登録)
現代ハードSFの父とも呼ばれるヒューゴー・ガーンズバックにちなんで名づけられたヒューゴー賞の、第1回(1953)受賞作です。かなり以前にそんな評判になったSFとして読んだことのある本作ですが、今回再読してみると、むしろミステリ要素の方が強い作品だと感じました。確かにSFだからこそ効果的な文章スタイルは当時としては斬新だったでしょうが、SFとしての内容はさほど革新的とも思えません。テーマ的にはむしろ古典中の古典と言えます。
ではミステリとしてはというと、本作はアシモフやホーガンのような謎解き系ではありません。テーマに関わる謎はありますが、すぐ見当がつくようなものです。それよりもテレパシーを持つエスパーたちが犯罪を防止・捜査する未来社会で、ライバル会社社長の殺人を企てた人物の視点を中心に描かれた犯罪心理サスペンスとして、その斬新な文章があればこその迫力を出しているのが魅力です。


No.884 6点 チェシャ猫は見ていた
マーシャ・マラー
(2016/07/01 22:24登録)
この私立探偵シャロン・マコーン・シリーズの第3作では、前作に出てきた鳥恐怖症とかチョコレート好きといった彼女の設定には、全然触れられていません。まあ、毎回鳥を登場させるわけにもいかないでしょうけど、本作ではクッキーをほおばる男に冷ややかに銃を突きつけたりして、今後これらの設定はどうなるんだろうと思わせられます。
原題は “The Cheshire Cat’s Eye”。本書で綴りを初めて知ったのですが、そうしてみると本当の発音はチェシャイアって感じなんですね。あのルイス・キャロルの猫の眼ということですが、チェシャ猫をデザインした傘つきのティファニーの灯油ランプのことで、事件の中で重要な役割を果たします。ただ、クライマックスでシャロンが犯人をおびきだすためにこのランプを使うのですが、実際にはわざわざ高価な工芸品を使う必要などないわけで、ここだけは安易な思いつきの効果狙いとしか思えませんでした。


No.883 4点 有馬記念殺人事件
狩野洋一
(2016/06/26 15:34登録)
狩野洋一は麻雀の方はプロで、すぐれた入門書を書いていたそうですが、小説となると、今ひとつという気がします。競馬ミステリと言えば当然ディック・フランシスが頭に浮かびますし、本作の根本プロットだけを見れば、フランシスにも同レベルの作品はかなりあるでしょう。しかし濃密な文章と緊迫感で読ませるフランシスに比べると、本作はなんとも気の抜けたビールのような感じがするのです。
本格派と言うには、偽アリバイの扱いがおざなりですし、真犯人の発見も推理によるものではありません。一方、競馬の牧場を裏で操る者の追及は、社会派と呼べるほどではありません。結局、緊迫感はとぼしいものの、ジャンルとしてはスリラー系としました。
作者自身のあとがきに、実在のものと同じ名や場所が登場するが、実在のものとは何も関係ないと書かれていますが、作中の有馬記念では武豊とかオグリキャップとか…ふーん。


No.882 5点
ミッキー・スピレイン
(2016/06/23 22:45登録)
マイク・ハマーが久々にカムバックしての第2作です。ヴェルダとの再会シーンから始まりますが、その冒頭部分からなかなかいい雰囲気を出しています。犯人の設定がスピレインらしくないとも思えますが、それだけにまあ意外性があるとも言えるでしょう。
しかし、ハマーが銃を突き付けられ危機一髪になるシーンが3回あるのですが、どれも偶然助かり、しかも『大いなる殺人』みたいな伏線もないのでは、ハマーって、やたら運がいいだけじゃないかと思えてしまい、偶然のパターンを変えてはいても、さすがに安易と言わざるを得ません。
最後部分も、犯人がいつの間にか現れて、しかも犯人はそこに以前に来たことがないとしか思えない展開になるのは、説得力に欠けます。犯人がその場所を知らなかったとは考えにくいですし、知らなかったとしても、ハマーとヴェルダを尾行するのはかなり困難な場所なのです。


No.881 6点 エヴィー
ヴェラ・キャスパリ
(2016/06/18 15:52登録)
1960年発表の作品ですが、時代設定は1928年。エヴィーことエヴリン・アシュトンと同じフラットで共同生活を送るルイーズの一人称形式で、当時広告代理店で働いていたルイーズの追憶として描かれた作品です。巻末解説には、若い頃コピーライターや通信教育ディレクターを務めていた作者の実体験が色濃く反映されていると書かれていますが、確かに納得できます。
ルイーズの感情がともかくじっくり描きこまれていて、全体の半分ぐらいでやっと殺人が起こるまで、ほとんどミステリという感じがしません。エヴィーの恋人が誰かという謎はあるのですが、簡単に想像できるだけでなく、かなり早い段階であっさり明かしてしまいます。巻末解説では真犯人についてもいろいろ書かれていますが、要するに肩すかしで、プロットだけ見ればたいした話ではありません。しかし女性の生き方を描いた小説としては、なかなか読みごたえがありました。


No.880 6点
水上勉
(2016/06/14 22:46登録)
『耳』『爪』と並んで、身体の部分1文字のタイトルを付けた作品。水上勉には、警察と民間人とが協力して事件解決に当たる作品も多いのですが、この3作はいずれも警察の丹念な捜査を描いた、その意味では警察小説的な作品です。で、本作はその3作の中では、最もおもしろくできていると思いました。
光文社文庫版巻末の解題では、詐欺事件から殺人事件へと発展していく展開を、松本清張の『眼の壁』と比較していますが、水上勉は既にミステリ第1作の『霧と影』を、詐欺事件から始めています。本作は、最後まで詐欺が殺人と密接に結びついているところが、『眼の壁』や『霧と影』とは異なる点でしょう。それだけにシンプルではありますが、きっちりと構成された作品です。タイトルの眼に関する記述はところどころに出てきますが、ラストは最初の家宅捜査開始時に想像したとおりの眼の扱いでした。


No.879 6点 怒った会葬者
E・S・ガードナー
(2016/06/10 21:38登録)
かなり以前に原書で買って読んだものを再読してみました。ガードナーの英文はやっぱり読みやすいと再認識。法律用語も文脈からすぐ見当がつきます。
今回の事件は、メイスンが休暇中に滞在中のホテルで依頼を受けるというものです。都会の有名な弁護士を相手にするというので、検察側もやたら気負っているのが微笑ましい感じもします。タイトルの会葬者については、その人を発見する過程が、かなりまぐれ当たり的かなという気はします。しかしその他の点については、足跡の問題、壊れた鏡の問題など、全体的にかなりうまくまとまった作品だと思いました。最後は、法廷でメイスンが真犯人を指摘するいつものパターンではなく、被告人は無罪の可能性が高いことを示す証言があったところで、判事が検事とメイスンを控室に呼んで話し合い、さらにその後デラとポール・ドレイクへの説明という形で真相は明かされます。


No.878 7点 愛されない女
フランセス・ファイフィールド
(2016/06/06 21:42登録)
実際に弁護士として活躍するファイフィールドの第1作。
訳者あとがきでは、イギリスの裁判制度について「ご承知のように、英国には日本のような検察制度がない」と書かれていますが、そのことを承知している日本人ってどれくらいいるのでしょうか。私自身、『ユダの窓』を読んでいたので、訴追側も法廷弁護士が日本の検事の役割をすることだけは知っていたという程度です。主人公のヘレン・ウェストは公訴官とされていますが、これは訴追側の事務弁護士で、裁判前の検事の役を担当する法律家のこと。
一応ヘレンを主人公とは書きましたが、小説は彼女を含め、様々の人物の視点を次々に入れ替えていく構成になっています。この手法は既読のシリーズ第4作『逃げられない女』と同じで、犯人の視点からの部分もかなりあります。それぞれの登場人物が歩んできた道が、じっくり描かれているところが読みどころの作品で、これは気に入りました。


No.877 5点 華やかな死体
佐賀潜
(2016/06/01 22:50登録)
久々の再読。狙いは非常におもしろいと思いました。講談社文庫版の巻末に引用されている、乱歩賞選考委員だった木々高太郎の言葉どおり、「…という一本が最初から通っていたので、読み終って、やはり『意外な解決』になった」作品です。(解説の木々の言葉を全文引用するとネタばらしになってしまいます。)
ただし読んでいて、主役の検事はバカじゃないかと思えてきたのも確かです。なにしろ、動機が不明瞭なままの上、当人へのアリバイの有無確認さえしないまま逮捕してしまうなど、指紋の証拠があるにしても無茶でしょう。その指紋にしたところで、ただついていればいいのでななく、どんな状況でその場所にその形でついたかを明確に説明できなければならないのは当然なんですが。
この結末の後、その原則は特定個人にのみ適用されるのではないかと考えると、法律的には再度のどんでん返しもできそうな気がするのですが…


No.876 4点 死体のC
スー・グラフトン
(2016/05/28 16:39登録)
1987年のアンソニー賞を受賞したキンジー・シリーズ第3作ですが、個人的にはグラフトンは受賞作以外(FとH)の方がおもしろく感じたという今までの状態をさらに補強する結果になってしまいました。
いや、7割ぐらいまでは、充分楽しめていたのですが、これから謎が次第にほぐれてくるという段階になってからがどうも間の抜けた感じになっているのです。本筋とは無関係なキンジーの家主の事件はというとそれまでサスペンスフルな場面もあったのに随分あっさりと片付いてしまい、何だか拍子抜けです。メインの依頼人の「自動車事故」の方も、最後の場面はキンジーが明らかに異常な状況であることに気づかないという、あり得ないようなご都合主義に加え、犯人が長時間のんびりしていた理由も全く定かでなく、さらに決着の仕方も妙にあっけないという、冴えない結果になっていました。


No.875 7点 フリーク
マイクル・コリンズ
(2016/05/22 09:30登録)
片腕私立探偵ダン・フォーチューン・シリーズ第11作。
3ページ目から登場する悪役J・Jのフォーチューンに対する態度には、最後の方になってなるほどと思わせられました。この悪役のキャラクタが本作の魅力の大きな部分を占めていて、彼はクラシック音楽、それも管弦楽曲が好きで聴きまくっています。それにしてもフォーチューンも、かかっている曲がシベリウスの第7番だとかマーラーの未完成第10番だとか、そうとうのクラシック・ファンでない限り、そんなかなりマイナーな曲、聞き分けられませんよ。
ロス・マクドナルドの某作と原理的には似たことをやっていますが、ロス・マクがフェアプレイに徹した書き方をしていたのに対して、本作はフェアでないとも言えます。まあ一人称形式なのですから、こだわらなくてもいいとは思うのですが。
気になったところが1ヶ所、警備部長ノリスのご都合主義的なある行動がなければ、事件はごく早期に片付いていたはずです。


No.874 6点 指宿・桜島殺人ライン
深谷忠記
(2016/05/18 23:51登録)
旅行気分を味わわせてくれる殺人ライン・シリーズですが、今回の旅先は鹿児島県です。指宿についても並みのトラベル・ミステリ程度の紹介はしてくれますが、むしろ霧島の方について、じっくり描かれています。何しろ今回壮と美緒が鹿児島県を訪れるのは、流行作家のための取材(ビデオ撮影)旅行なのですから、この設定だといくらでも名所および穴場案内ができます。
ただし、最初に起こる殺人は奥多摩で、被害者の経歴や事件前の行動から、動機は鹿児島にあるのではないかとの推測から、警察の捜査は霧島で起こった過去の殺人事件に目を付けることになります。過去と現在の殺人事件、さらに壮と美緒が東京で目撃した出来事が全体としてどうつながってくるのかというところが、ミステリとしては見どころということになります。アリバイの扱いもHowではなくWhyが中心で、意外性はあまりありませんが、それなりに楽しめました。


No.873 6点 青い玉の秘密
ドロシイ・B・ヒューズ
(2016/05/15 18:13登録)
ジュヴナイル(本格派系)じゃないかとさえ思えるような邦題なので今まで敬遠していたのですが、乱歩が文学的スパイ小説とも相通ずるものがないでもないと書いた作品というので、グレアム・グリーンやアンブラーほどシリアスだとは最初から思っていませんでしたが、ちょっと期待して読んでみました。
結局、もちろんジュヴナイルではないにしても、20歳代の女性の視点から書かれた荒唐無稽スリラーといった感じでした。悪役の兄弟につきまとわれ、脅迫される恐怖が中心で、謎解き要素は全くないと言っていいでしょう。巻末解説では、本作のSo Blue Marble(とても青いビー玉)を『マルタの鷹』の彫像と比較していましたが、確かに歴史的な品で、それの争奪戦ということでは共通点があります。
悪役兄弟は上品ぶっても犯行は杜撰ですし、ヒロインがトビン警部を信用しないのも不自然ですが、まあリアリティを云々する話ではないなので…


No.872 6点 赤い風
レイモンド・チャンドラー
(2016/05/11 22:37登録)
デビュー作である『脅迫者は射たない』は複雑と言うより、とにかくいろんな出来事が次々に起こっていく作品で、関係者のほとんどが死んでしまうというかなり強引な展開でした。
『金魚』でも死者は多いですが、最後の撃ち合いになる原因は、ご都合主義だなと思えました。この作品の探偵役はこの翻訳ではポケット・ブック版に合わせてマーロウにしていますが、訳者あとがきによれば、最初に発表された時はカーマディという名前だったそうです。この名前の探偵は第3巻の『犬が好きだった男』にも登場していますが、マーロウに置き換えても違和感はありません。
一方表題作の初出時探偵名はダルマスだったそうで、こっちは多少マーロウっぽくないところがあるかなという気もします。
『山には犯罪なし』では特に真相を隠そうともしない展開ですが、ラストは、確かに理解できないというか、あっけにとられました。


No.871 5点 延原謙探偵小説選
延原謙
(2016/05/06 23:22登録)
新潮文庫版ホームズ・シリーズの翻訳者が書いたオリジナル短編20編にホームズ贋作1編の翻訳、それに評論・随筆を40編ほど加えた選集です。なお、ホームズ贋作の『求むる男』は巻末解説によれば、最初ドイルの未発表作として発表されたものの後に贋作と判明したもので、延原謙は真作と信じて訳したそうです。この作品、ミステリとしては悪くないのですが、ドイルらしさはそれほどでもないと思いました。
20編目の『秘められた暗号』は1948年に書かれたジュヴナイルですが、暗号のアイディアは小酒井不木の某短編そのまんまじゃないですか。他は1925~1937年に書かれていて、約半分が、ホームズ翻訳者らしいと思えるような、年代の割に古めかしい謎解きタイプです。中には本格派黄金期らしい『N崎の殺人』もありますが。それ以外のタイプでは、犯罪小説の『腐屍』が殺人者の思い込みにうまくオチを付けて気に入りました。


No.870 5点 メグレと死体刑事
ジョルジュ・シムノン
(2016/05/03 15:18登録)
通常3期に分割されるメグレ警視シリーズの中で、本作は第2期に属するものです。1933年『メグレ再出馬』発表後、シムノンは一度メグレ打ち切り宣言をし、『ロンドンから来た男』など主に犯罪を扱った純文学寄りの作品(河出書房の表現では「本格小説」)を発表していきます。そして再びメグレもの長編に手を染めたのが1939~41年で、長編6冊発表後、また1945年までメグレ長編は休止するのです。その6冊中、2016年5月現在、日本語訳が単行本で出版されたのは本作だけで、他の5冊は雑誌掲載のみ。
メグレ第2期作品は今まで読んだ3冊に関する限り、他の時期に比べてちょっとひねったところがあるように思えます。本作でも中心事件の他に「死体刑事」の役割、事件の終結のさせ方、さらに複雑な気分にさせられる後日談など、事件の裏は多少複雑なことがあっても基本的にはストレートな小説構造が多い第1期、第3期とは若干異なる味わいです。


No.869 7点 死の接吻
アイラ・レヴィン
(2016/04/28 00:05登録)
久々の再読で、第1・2部は多少覚えていたのですが、第3部は全く記憶に残っていませんでした。
殺人者の側から描かれた犯罪小説である第1部は使われた工夫を考えると、読者に意味を悟られにくいよう、ここだけ一人称形式にしてもよかったかもしれません。それにしても、第1部の緻密な殺人者の心理描写は、作者が23歳の新人だとは信じられないくらいうまい。
第2部で、被害者の人物像を覆すような展開になっているのには驚かされました。エレンのユーモア・ミステリにでもなりそうな間抜け探偵ぶりは、気恥ずかしくなるほどですが、それでサスペンスが生まれていることも確かです。
で、最後が記憶から脱落していた第3部ですが、ここでの捜査も随分乱暴粗雑です。しかし齋藤警部さんも書かれているように、クライマックスは実に映画的で、迫力がありました。さらにその後の幕切れの微妙な味わいがいいのです。


No.868 5点 悪魔の嘲笑
高木彬光
(2016/04/24 21:56登録)
神津恭介シリーズの中でも知名度の低い作品のひとつでしょう。それであまり期待していなかったせいかもしれませんが、意外に楽しめました。巻末解説には犯人は途中で予想できるだろうなどと書いてありますが、う~ん、これはどうなんでしょうね。犯人の名前だけこいつじゃないかと直感したところで、動機やら最高裁判決を待つ被告人の態度やらの謎の見当がつかないままでは、何も推理できていないのと同じです。実際、嘲笑が響き渡るという印象に残る皮肉なラスト・シーンを生み出す真相は、かなり意外性があります。
ただ、毒を飲まされた被害者が犯人の名前を言う直前に、新聞記者真鍋の目の前で死んでしまうというのは、冒頭の1回だけなら問題ありませんが、2回連続となるとさすがにご都合主義が過ぎますし、クライマックス部分はもう少し効果的に見せられなかったかなという気もします。


No.867 5点 ロック・ビート・マンチェスター
ヴァル・マクダーミド
(2016/04/21 22:46登録)
ジャンル分類に困った作品でした。それも、いろんな要素が詰まっているとか境界線狙いとかいうのではありません。大きく2部に分かれ、第1部は失踪人探しのハードボイルド、第2部は館における殺人事件のフーダニットと、完全に真っ二つに分かれているのです。探偵役のケイト・ブラナガンは、作者自身がパレツキー等を意識したということで、第1部では役にはまっていますが、第2部では今ひとつといったところ。彼女がクリスティーの『牧師館の殺人』を読んでいたり、そのミス・マープルの他、サム・スペード、ジェシカおばさん等の名前も言及される、軽いノリの作品です。ページ数割合は4:6ぐらいなので、一応本格派としました。
ところで、殺人が起こった後早い段階で、状況的に犯人以外こんな質問しないんじゃないかと思ったところがあったのですが、結局その人が犯人だったにもかかわらず、推理にはその伏線は出てきませんでした。


No.866 6点 稲妻に乗れ
ジョン・ラッツ
(2016/04/15 22:45登録)
アロー・ナジャー・シリーズの第4作ですが、読み始めてすぐ、はてなと思いました。三人称形式で書かれているのですが、第1作ではコンチネンタル・オプ由来の一人称形式だったはず…それに依頼される事件のタイプも全然違うし…
で、訳者あとがきを見てみると、そこにもナジャーの人物像が変わったことは書いてありました。だいぶハードボイルドの主役らしくなってきたともされていますが、個人的にはむしろ初期のハードボイルド史上最も臆病な探偵という設定の方が、個性的でいいとも思えるのですが。
しかし、ストーリー展開はかなり意外なところがありました。同じハードボイルド系ならラティマーの『処刑6日前』と似た設定、つまり刑が確定した死刑囚を救おうとする話で、タイトルも電気椅子にかけられることを意味しているのですが、最後は相当ひねっています。まあ人間性からはちょっと無理な気もしますが。

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