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ミステリの祭典

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非情の街
私立探偵シカゴのマック

作家 トマス・B・デューイ
出版日1957年01月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点
(2016/08/09 23:18登録)
デューイが最初の作品 "Hue and Cry" を発表したのは1944年だそうですから、まさにハードボイルドの巨匠ロス・マクドナルドと同年デビューです。そしてシカゴの私立探偵マックのシリーズが始まるのは巻末解説では1953年となっていますが、英語版Wikiによれば1947年。
この探偵の名前については、本作には、「あなたの名前はそれだけなの?…ただの『マック』なの?」「どうも、たいへん個人的なことを質問するんですね」というセリフが出てきます。そんなことまできっちり書くのは、正義感あふれる社会派要素が強い固ゆでな作風のデューイらしいところかもしれません。それだけにロスマク等に比べると、文学的香りはさほど感じられません。
原題は "The Mean Streets"(最後にsが付きます)ですから、非情というより卑しいといった感じでしょうか。Theのないスコセッシ監督の映画とは無関係ですが、描かれる世界は同じです。

No.1 7点 mini
(2015/04/07 09:57登録)
* 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”、第4弾はトマス・B・デューイだ、今年の生誕100周年作家はハードボイルドと警察小説に特色が有る

1970年代になって様相が一変するまでの戦後40~60年代までのハードボイルド派の状況は割と単純に説明出来る、要するに正統派と通俗タイプとの拮抗状態である
そして正統ハードボイルドと言えば戦前のハメットを引き継いだチャンドラーとロスマクの2大巨頭がまず名前が出るのは当然である
しかしだ、その後の3人目、4人目は?、って訊かれると意外と考えちゃうでしょ、ハードボイルド派をあまり読まない読者だと名前が出てこないと思うよ
トンプスン?いやあれは完全に犯罪小説ジャンルだし、マッギヴァーン?う~ん純粋なハードボイルドとは呼べないしなぁ、あくまでも純粋なハードボイルド作家の中でという意味でね
私だったら、まぁ一般的には3人目にジョン・エヴァンズだと思うが、ジョン・エヴァンズは案外と通俗っぽさを感じる読者も居ると思う
その次、4人目に絶対推したいのがトマス・B・デューイなのである、何故ならデューイこそばりばりの正統派、シリアスなハードボイルドだからだ、そして不当に過小評価されているとも言える
デューイの活動時期はロスマクと大体近く、ロスマクのライヴァルの1人だったと言っても過言ではない、まぁ人気度ではロスマクには当然ながら及ばぬが
2人とも今年が生誕100周年、奇遇だが正統ハードボイルド派を代表する2人が同じ年生まれだったわけだ

デューイの特色は例の森事典にも書かれているように、子供や貧困層など社会的弱者に対する温かい眼差しである、♪あ~ったかいんだから~♪
良い意味での社会派的な要素と他のハードボイルド作家にはない優しさ、これがデューイの長所であろう、通俗的要素など微塵も無く徹底してシリアス派である
一方で弱点だがこれも森事典で指摘されているが、人物描写は魅力的なのに風景・情景描写が弱い、いや弱いと言うよりそもそも風景描写の分量自体が少ない
こういう面は御大チャンドラーやロスマクだと魅力の大きな部分を占める要素だけに惜しい、デューイは人物に比べ街や湖の風景といったものに興味が薄い性格だったのかなぁ
森事典でも”シカゴの街並みをしごくあっさりと描いたこともあって、第一級の技量を持ちながら、人気の面では一流作家になれなかった”みたいに書かれている

ところでこの「非常の街」は本拠地シカゴから離れた小さな町で主役マックが活躍する作なので、本来のシカゴを舞台にした作を論創社さんとか目を付ける気はありませんか

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