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ミステリの祭典

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餌のついた釣針
ペリイ・メイスン

作家 E・S・ガードナー
出版日1959年01月
平均点4.67点
書評数3人

No.3 4点 nukkam
(2019/12/06 21:53登録)
(ネタバレなしです) 1940年発表のペリー・メイスンシリーズ第16作の本格派推理小説です。ハヤカワ文庫版の巻末解説で類型からの脱却を図った意欲作と評価していますが、私にとって異色に感じたのはこのシリーズはとにかく鮮やかな逆転劇が特色で、そのためにはメイスンはどちらかと言えば最初は受け身の立場、或いは様子見の立場になりやすいのですが本書のメイスンはむしろ攻撃的です。はったりや脅迫に近い手法の強引な捜査が目立ち、さすがに暴力的手段は使わないもののハードボイルド小説の私立探偵みたいです。仮面をかぶった謎の女性の登場という、発表当時でさえも古さを感じさせそうな演出があり、その一方で信託資金の不正運用疑惑という現代的かつ難解な謎もあったり、さらには法廷場面なしで解決に持っていくなど確かにこれは異色作です。でもあまりにも変化を織り込みすぎてシリーズ愛読者は困惑するかもしれませんね。

No.2 6点 弾十六
(2018/11/17 13:31登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第16話。1940年3月出版。ハヤカワ文庫で読了。
三月はじめの嵐の真夜中、メイスンの自宅の電話が鳴ります。依頼人が誰だかわからない、という珍しい謎。メイスン版「依頼人を探せ!」です。(冒頭のジョーク「キャッシュならキャリー」はCash and Carryのこと)
受付嬢ガーティの描写が前作と違います。ここでは愛想の良い大柄で豊満な肉体の金髪。big, good-natured blonde(第2章) an ample figure(第12章)
車は大型のクーペ、傘は大嫌い、といったメイスンのプロフィールがちらほら。どもり主教事件が初出のグレーヴィ話(Thousand-Island Gravy)も再び出てきます。(後年の作でも何回か登場。お気に入りのジョークを何度も繰り返すジジイですね…)
身元を上手に隠す女の正体を無理やり暴く手口が鮮やか。でも、今回の策略(p209)はちょっとやりすぎだと思います。(かなり人騒がせです)
込み入ってこんがらがった筋を、メイスンが不敵な口先攻撃で解明してゆくいつものストーリー。終盤、地方検事バーガーが登場し、メイスン逮捕状が発行されますが… 結末ではお馴染みホルコム部長刑事が結構いい奴です。
銃は32口径のリヴォルヴァと38口径のリヴォルヴァが登場。どちらもメーカー不明です。
なおp133でメイスンが引用する“法律の解説”(Restatement of the Law)はThe American Law Institute出版の実在本とのこと。

No.1 4点
(2016/09/22 09:41登録)
ペリー・メイスンにはさまざまな依頼人がありますが、本作の依頼人は仮面をつけていて一言もしゃべらず、正体が全く不明という状態(実際に話をするのはその仮面の女に付き添う男ですが、彼もまた最初は偽名でメイスンを真夜中に呼び出します)、さらに依頼内容さえ明かされないままの依頼なんていう、とんでもない話です。メイスンがそれを受諾したのも、怪しげなところに興味を持ったからでしょう。
で、当然のごとく殺人が起こるわけですが、今回はなかなか逮捕者が出ません。そのうち謎の依頼人が誰であるかも判明し、8割近くになって、やっと逮捕が行われます。その後が目まぐるしい展開になり、恒例の法廷場面はないまま決着を迎えるのですが、さすがに急ぎすぎ、詰め込みすぎで、全体のバランスを崩しているとしか思えません。メイスンが逮捕されそうになる証言は省いた方がすっきりしてよかったのではないでしょうか。

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