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ミステリの祭典

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大いなる賭け
モウゼズ・ワイン

作家 ロジャー・L・サイモン
出版日1979年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2018/10/03 19:41登録)
モウゼズ・ワイン初登場の本作は一応CWAの新人賞を獲ってる。70年代初めのサブカルの雰囲気を味わうんだったら、本作かなりイイ線をいってる作品である。言ってみりゃミステリの「ホテル・カリフォルニア」。
....1969年のベトナム反戦/ヒッピー・ムーブメントの盛り上がりの後で、過激派だったワインも今じゃ二児の父でしがない私立探偵。1969年のお祭りの騒ぎの最中、フリーセックスをワインと楽しんだライラも、進歩派の民主党大統領候補のキャンペーン運動員だ。その候補の「ホメ殺し」を仕掛けた元過激派の政治ゴロの対策をワインに依頼する。しかし、ライラは車ごと崖から落ちて死んだ....青春の挫折に苦い感傷を感じながらも、ワインは陰謀に肉薄していく。黒魔術のセクト、ネバダ砂漠の売春宿、ワインはハーレーで砂漠をぶっとばす!
とホントにアメリカン・ニューシネマの世界を彷彿とさせる話である。もちろんサブカル・ネタも大量に仕込んであるので、そこらを楽しめるかどうか、というかなり高いハードルのある作品だ。評者はそこらへん一応の常識がある年寄りだから楽しんで読めるけど、若い読者が単語をググりながら読むんだったらツラいかもね。

ここはスピリットを1969年以降は置いていないんです

そういう幻滅の話。カラフルでマンガのようなノリの良さがあって、ミステリというよりも冒険小説みたいなテイストを感じる。ワインは道化だが、その道化の想いには苦いものがあるな。ワインの彼女になるチカーノのアローラは、次作の「ワイルドターキー」にも登場するんだが、ユダヤ系のワイン、チカーノのアローラと兄弟たち..とこのシリーズは人種もごっちゃ、政治背景もぐちゃぐちゃといった、猥雑な70年代の「リアル」をうまく掬い取っていると評者は思う。もちろん古くはなるから読者がついていくのは難しいけど、先に読んだマジメなプロンジーニよりも、チャランポランなサイモンの方が小説としてはずっと面白い。

No.1 4点
(2016/09/14 22:54登録)
ユダヤ人私立探偵モウゼズ・ワインのシリーズ第1作。
最後の方、事件全体の整理がよくできていないと思いました。事件を決着させるある人物の登場など唐突すぎますし、そこにいた経緯も不明瞭です。黒い影になっていたその人物の名前はすぐに書かれますが、彼の顔を、ワインは知らないはずですしね。その後の警察での収拾も、結局事件をどう取り扱うことになるのかあいまいなままです。砂漠の中の緑地にまで行ってくる部分も、そこを読んでいる間はハードボイルドらしい雰囲気でおもしろかったのですが、後から振り返ってみると、そんな遠くに設定する必要はなかったのではないかと思えます。だいたい、悪役もその動機なら重罪の犯罪などしなくても、効果的な手段はあったでしょう。
複雑な事件を手際よくまとめ上げる緻密さはなさそうな作家なので、むしろパーカーみたいに事件をシンプルにした方がいいのではないでしょうか。

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