空さんの登録情報 | |
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平均点:6.12点 | 書評数:1515件 |
No.935 | 8点 | 忙しい蜜月旅行 ドロシー・L・セイヤーズ |
(2017/02/03 21:45登録) ポケミス版の深井淳訳での読了ですが、初版1958年という古さにもかかわらずこなれた訳は気持ちよく読めました。しばしば引用されるシェイクスピア等で使われる古語もかえってアクセントになっていると思えます。 実はセイヤーズ、恥ずかしながら初読です。それなのに最終作からというのも、単なる気まぐれでして。食わず嫌いだったわけではなく、セイヤーズが次々に創元から翻訳されていたのが、個人的にミステリから離れていた時期にちょうど重なっていたせいなのです。 「推理によって中断される恋愛小説」というサブタイトルを付けたり、作者前書きの中で「この恋物語は探偵小説にはまったくの余計な筋だという人もありました。わたしもその一人です」なんていうふざけた調子を楽しんでいたら、真相解明後の祝婚後曲ではぐっとシリアスになってくれます。Tetchyさんみたいにシリーズをずっと追っていなくても、充分楽しめました。 |
No.934 | 6点 | ドリンダが踊るとき ブレット・ハリデイ |
(2017/01/30 22:20登録) マイケル・シェーンのシリーズ第20作。まあそれまでの作品で邦訳があるのは6割程度ですが。 前半は、ヌード・ダンサーをしているドリンダをめぐり、調査というよりトラブル解決にシェーンが奔走する話で、ハードボイルドらしい感じで進んでいくのですが、その事件が解決しないまま、巻半ばでドリンダとは無関係な殺人事件が起こるという筋書きになっています。だからと言って単なるモジュラー型ではないのは、謎解き要素にもこだわる作者らしい企みです。 トリックそのものにはかなり早い段階で気づいてしまったのですが、これは古典的なパターンに則っているからであり、出来は悪くありません。ただし、シェーンによる最後の推理部分より前に、これでは誰でも真相の見当がすぐについてしまうのではないかと思えるようなことが書かれているのは気になりました。その部分は入れる必要はなかったでしょう。 |
No.933 | 6点 | 鷗外の婢 松本清張 |
(2017/01/26 17:58登録) 収められた2編どちらも160ページぐらいで、長編と呼ぶにはちょっと短い作品です。 『書道教授』は犯罪小説で、中心となるのは浮気をした挙句、相手の女を殺してしまうという、ごくありふれた話です。かなり早い段階から、彼が後に警察に語った内容を書いていて、その点ではひねりなどないことを作者は明示しています。ところがそこに書道教授を登場させることによって、謎解き的な要素も盛り込み、またずうずうしい死体処理のアイディアを入れているところがおもしろくできているのです。 一方表題作は、それとは全く異なるタイプの作品です。「婢(ひ)」の訓読みは「はしため」、作中で「いまでいうお手伝いさん」であると説明されています。鴎外か小倉に軍医部長として赴任していた時の女中のことを主人公が調べていくうちに、古代史がらみになり、事実と虚構の境がはっきりしないところがおもしろい作品でした。 |
No.932 | 6点 | 揺りかごが落ちる メアリ・H・クラーク |
(2017/01/22 22:38登録) メアリ・H・クラークの第3作。この作家は初読ですが、本書はいかにもサスペンス小説らしい作品でした。 タイム・リミット、ご都合主義が過ぎない程度の偶然、捜査側と殺人犯側、両方の視点を交差させて描きながら、とりあえず謎(犯人の過去の秘密)を終盤まで保持する構成、それに絡む当時のたぶん最先端技術についての問題提起などが盛り込まれています。安易に何でも適当に取り込んでというのではなく、程よくブレンドされていて、前半はむしろじっくり、その後タイム・リミットに向けてのサスペンス盛り上げと、とりあえず文句はありません。 ジャンルは違いますが、どことなくコーンウェルにも通じるような小説技巧が感じられます。miniさんが第2作『誰かが見ている』について、完璧すぎて欠点がないのがかえって弱点と書かれていますが、確かにそう言えるかもしれないような作風です。 |
No.931 | 5点 | 黒い金魚 E・S・ガードナー |
(2017/01/16 23:46登録) 原題は "The Case of the Golddigger's Purse"。 金鉱探しと何の関係があるのだろうと思っていたのですが、辞書を引いてみると、gold digger には金目当ての女の意味もあるんですね。なるほど、それならメイスンが弁護することになる被告人のことで、納得いきます。 その女を弁護することになるまでの展開がかなり複雑な事件です。邦題の黒い金魚に関する最初の依頼は殺されることになる男からのもので、さらに殺人事件の後もいろいろあって、メイスンとしては逮捕されたその女の弁護を、依頼を受けたからでなく自ら買って出ざるを得なくなるのです。そこまでは充分楽しめるのですが、予備審問が終わる前に結局解き明かされる事件の真相はさすがに複雑にし過ぎです。 また、決定的証拠と思える被告人の指紋の件も、またもう一つ被告人に不利な時刻の件も、このようないい加減なご都合主義はいただけません。 |
No.930 | 6点 | 柩の中の猫 小池真理子 |
(2017/01/12 20:49登録) 後には直木賞、吉川英治文学賞など数多くの文学賞を獲ることになる作家の1990年作です。 大部分は20歳の住み込み家庭教師雅代の一人称で描かれています。時代背景は1955年ですから、ずいぶん昔の設定。猫のララをママのように思う桃子のキャラがさざ波のような不安を広げていく心理サスペンスになっています。何かが起こりそうな予感はかなり早い段階からあるのですが、実際にミステリ的な事件が起こるのは6割を過ぎてから。 しかし、現代のプロローグについては、読み終えてみると必要があったのかなと疑問に思えました。最後にもう一度現代に戻って、さらに何かを起こしてくれるのかなとも思っていたのですが、そんなこともなく終わってしまい、現代に出てくるララそっくりの猫も、雅代の回想の聞き手も、存在意義が感じられませんでした。また、現代では雅代は著名な画家になっていますが、それも事件とは何の関係もないのです。 |
No.929 | 5点 | 銃弾の日 ミッキー・スピレイン |
(2017/01/08 22:56登録) タイガー・マン・シリーズの第1作で、作中で彼は「おかしな名前でしょう? でも、おやじが、そうつけたんです」と自己紹介しています。綴りはTiger Mann。『ヴェニスに死す』の作家と同じ姓なんですね。ファースト・ネームの方は、今では確かにそういう名前の有名人もいるしね、といったところです。 タイガーは諜報機関に所属していて、国連で機密情報が東側に漏れている事件が話の中心にあります。一応国際政治を背景にした作品だけに、共産主義嫌いの作者らしさはマイク・ハマーものよりもはるかに露骨に表れています。ただしどんな機密なのかの説明などは当然ながら全く無視していて、謀略スパイ小説としてのおもしろさはなく、国際政治は派手なアクション・スリラーのための方便に過ぎません。 その一方で特にラスト・シーンなど、スピレインの官能的な甘さが存分に発揮された作品でもあります。 |
No.928 | 7点 | マイアミ・ポリス チャールズ・ウィルフォード |
(2017/01/05 23:29登録) 『マイアミ・ブルース』に続くホウク・モウズリー部長刑事のシリーズ第2作です。ウィルフォードはこのシリーズを1984年に始める前に、1950年代から10冊以上の小説を発表していますが、その中で翻訳されているのは『炎に消えた名画』のみ。ちなみに本書巻末解説に付されている作品リストには、何の注釈もありませんが、実は詩集やノン・フィクションも含まれています。ミステリだけの作家ではないんですね。 このシリーズは前作もまた次作も、複数の人物の視点から書かれた作品らしいですが、本作は三人称形式ながらホウクの視点だけに絞って警察小説らしい仕上がりになっています。中心になるのは麻薬常用者の死亡事件ですが、その他に過去の迷宮入り事件の再調査を命じられることになり、結果当然モジュラー型になっています。刑事たちの私生活にもかなりのウェイトが置かれていて、そこがいい味を出しています。 |
No.927 | 6点 | 追跡 高木彬光 |
(2016/12/30 23:59登録) 1957年に実際に札幌で市警警部が銃殺された白鳥事件をモデルにした作品で、高木作品の中でも同じ百谷泉一郎弁護士シリーズの『人蟻』と並んで社会派要素の強い作品です。 カッパ・ノベルズ版の作者あとがきに、松本清張の『日本の黒い霧』でも同事件が扱われていますが、清張とは別解釈であることが述べられています。共産党地区委員等の刑が確定したものの、冤罪事件なのかそうでないのか、今でも議論のある事件だそうですが、本作は上告審が最高裁で行われていた1962年に発表されました。清張ほどの政治性はありませんが冤罪説という点では共通していて、10年後に新たな殺人事件を起こすことによって、本作はエンタテインメント性を出しています。 百谷弁護士シリーズの中でも、謎解き要素は『人蟻』よりさらに少ないと言えるでしょうが、硬派な主張は伝わってくる作品です。 |
No.926 | 7点 | ファイナル・カントリー ジェイムズ・クラムリー |
(2016/12/26 23:13登録) クラムリーのハードボイルド・ミステリ第6作、今回はミロの出番です。ただし作中では「元相棒」としか書かれていませんが、要するにシュグルーのことも所々で語られていて、最後にはちょっとだけですが実際に登場します。 酔いどれ探偵の代表的存在だったミロですが、しばらく禁酒していていたりして、酒に溺れることがなくなってしまっていたのには驚かされました。コカインは最初の殺人時に密かにかっぱらっているのですが、吸うのもほどほどといったところです。その意味ではクラムリーらしい酩酊感がなくなったかなという気もします。しかしバイオレンスの方はてんこ盛りで、作品中で還暦を迎えたミロ、こんな無茶よくやるよなあと嘆息です。 じっくり読み進めるのを強要するような独特の重厚さはさすがですが、訳者あとがきでロス・マク調とされる構成の結末の意外性は、ロス・マクほどの鮮やかさはありません。 |
No.925 | 6点 | 始まりはギフトショップ シャーロット・アームストロング |
(2016/12/18 00:11登録) アームストロングを初めて読みました。この作家と言えば、マーガレット・ミラーやヘレン・マクロイ… しかし本作の巻末解説にも、代表作と言われている『毒薬の小瓶』についてその二人のような「サスペンスは希薄」と書かれていますが、特に本作の印象は全く違います。ミラーやマクロイが、謎をはらんだストーリーで本気で不安感をあおってくれるのに対して、本作は陽気なスリラーであり、伏線はあっても、推理可能な謎として提示されるものは全くありません。何しろ悪役が出てくれば、そいつが悪役だよということはその都度ちゃんと説明してくれるのです。どの豚の貯金箱にメッセージが入っているのか、それがどんなメッセージかなんて謎は、手に入れてみなければわからないこと。最初に訪ねた家族が買った豚が目当てのものだったなんてことは小説構成上当然あり得ない、そんな楽しい作品です。 |
No.924 | 4点 | 幽霊温泉 赤川次郎 |
(2016/12/14 22:02登録) 宇野警部と夕子のシリーズ第…Wikipediaによれば16作。といっても、このシリーズというか、赤川次郎の短編は読んだことがなかったのですが。こういう感じのが多いのだったら、この作者は長編とまでいかなくても長めの作品の方がいいかなと思えました。 表題作など5編が収録されていますが、いずれも宇野警部と夕子のデートや状況設定だけで半分ぐらいはかかってしまい、事件の謎提示とその解決が短くなりすぎていると思えたのです。表題作にしても、事件と関係ない列車乗り過ごしのエピソードはこの長さ(50ページ弱)なら不要と切り捨てたいところです。まあそこがなくなっては、作者らしさが消えてしまうとも言えるのですが。この作品も、あるいは最後の『見えない鉄格子』等も、結末にそれなりの意外性はあるのですが、もう少し読者に考えさせる余裕を与えないと、意外性として機能していないと思うのです。 |
No.923 | 7点 | 失踪当時の服装は ヒラリー・ウォー |
(2016/12/08 22:55登録) 2014年に出た新訳版で読了。巻末解説の最初にデクスターの『キドリントンから消えた娘』の一節が引用されていたのには、にやりとしてしまいました。なぜかは、miniさんのレビューをご参照のこと。しかし、解説の川出氏、当然そのことは知っていたと思えるのに、なぜそれを引用したのかは書いていません。わかる人がわかればいいということなのか… 後年の『冷えきった週末』についての評ではデクスターにも近いと思えるほどの推理が展開されると書きましたが、本作ではそんなことはないまでも、やはり謎解き捜査小説という印象がかなりありました。クロフツも好きな自分としては、楽しめました。もちろん結末にクロフツほどの意外性はありませんが、捜査過程の部分は、クロフツを本当の警察による捜査らしいリアリズムで書いた感じです。2/3あたりで手がかりをつかむところが謎解き的にはおもしろい部分。 |
No.922 | 6点 | 恐怖への旅 エリック・アンブラー |
(2016/12/04 21:33登録) アンブラーの中でも、特に巻き込まれ型スパイ小説らしいというか、悪く言えば要するに型にはまった作品と言えるでしょう。発表されたのは1940年で、時代背景もまさに第二次世界大戦が始まった直後の同年1月。主人公のイギリス人技師グレアムはトルコで軍艦の装備を担当していて、その軍艦の早期装備を何とか食い止めたいドイツ軍によって、彼は命を狙われることになります。特殊な才能を持っているわけでもないただある程度優秀な技術者というだけで、殺されそうになるのが、リアルな感じです。 船客の中にまぎれていたある人間の正体は、早い段階で予想できたのですが、そんなところも型どおりというか。最初にグレアムが銃で撃たれながらかすり傷で助かるのは、さすがに殺し屋の腕が悪すぎるんじゃないか、ひょっとしたら故意に外したのではとも思ったのですが、そうではありませんでした。 |
No.921 | 6点 | 凍雨 大倉崇裕 |
(2016/11/30 23:50登録) 大倉崇裕の山岳ハードアクション・スリラー。この作者は初めてですが、本サイトでの他作品評を見ても、こういうタイプは他になかったので、驚かされました。とにかくシビアな迫力に徹してくれていて、謎解き的な要素はほとんどありませんし、お笑いなど皆無です。 話自体はいたってシンプルです。福島県北部にあるという設定の嶺雲岳で、主人公の深江が亡き友人の奥さんと娘を助けるために、悪党どもを一人ずつ倒していくというだけ。悪役たちにはそれぞれ個性がありますが、アクションに意外な工夫があるのは、最後の二人との対決部分だけかなあ。深江がやたら強い理由は、途中で悪役の一人によって説明されます。悪役たちの過去を深江との決闘に際してそれぞれの視点から語るのは、かえって緊迫感を削ぐようにも思えましたが。 あと、1ページ目のプロローグ的部分は途中のシーンとうまく繫がらず、ない方がよかったでしょう。 |
No.920 | 6点 | 鉄の薔薇 ブリジット・オベール |
(2016/11/27 21:40登録) オベール初読ですが、他の作品の紹介文を読んでみると、この作者は得意なジャンルがあるというタイプではなく、様々な傾向の作品を書いているようです。で、本作はというと完全に荒唐無稽なアクション・スリラー。サイコロジカルなところもあり、ラストになって真相が明かされることになりますが、これについてはやっぱりねという程度です。登場する精神科医の扱いは無茶ながらおもしろくできていますが。 主人公ジョルジュとその妻マルタの設定がなかなかユニークです。最初の部分でジョルジュがマルタを二度にわたって見かけるのは、さすがに偶然が過ぎるので、二度目にはマルタがその場にいる必然性があるのかとも思ったのですが、何の説明もありませんでした。でもまあ、細かいことを言わず、次から次へと目まぐるしく様々なタイプのアクションを盛り込んでくれる嘘っぱちな展開を楽しむ作品でしょう。 |
No.919 | 7点 | 貴婦人として死す カーター・ディクスン |
(2016/11/22 21:35登録) 久しぶりに、今回は創元版新訳での再読です。 最初に読んだ時には、断崖に残された足跡のトリックは、わからなかったものの解説されてもそんなに感心するほどじゃないなと思ったのでした。しかし今回読み直してみると、時間差を利用したところがさすがにうまいと思いました。トリック後半部分は他にも方法がありそうですが、シンプルに決まっていますし、HM卿の観察による足跡の特徴などの伏線がさすがです。 また、本作のメインとなるあのアイディアには、そうだったのかとうならされたのでした。こちらの方は、知って読んでいると、リタの次の行動としては、そうならなければならないはずだから、その人物への疑惑が起こるのが当然だなと思えるところもありました。また小粒な謎ながら不可解な拳銃が道端で発見された原因についての伏線も会話の中でさりげなく出てきます。 あと、車いすに乗った暴君ネロのギャグ・シーンには笑えました。 |
No.918 | 6点 | 犯罪に向かない男 大村友貴美 |
(2016/11/19 21:40登録) 最初『共謀』のタイトルで発表された後、文庫本になった時に改題された作品です。確かに誰と誰の「共謀」なのかは読み終わってもはっきりしません。一方新タイトルの方は、最後の方になって、その男は「向いてないね、犯罪に」というせりふが出てきます。次作『存在しなかった男』と同じ田楽心太(たたらしんた)警部が登場する作品なので、それに合わせての変更なのでしょうが、こちらも内容を的確に表しているとはあまり思えません。 プロローグの殺人から、誘拐、さらに殺人、5年前の交通事故など、様々な要素を盛り込んだ作品で、テーマの逸失利益に対する考え方には賛同できない点もあります(死亡による逸失利益は死亡者本人のことではなく遺族の金銭的不利益に対する配慮でしょう)が、読みごたえはあります。しかし轢き逃げ殺人だけは他の部分との絡みもなく、いくらなんでも余計じゃないかと思えました。 |
No.917 | 6点 | 死体置場で会おう ロス・マクドナルド |
(2016/11/14 22:39登録) 『人の死に行く道』の後に書かれた、リュウ・アーチャーものでない作品です。一人称の主役ハワード・クロスは地方監察官、執行猶予になった者の監督官です。したがって本作は私立探偵小説ではありません。しかし犯罪に関係する公的機関に属してはいても、本来捜査官ではない彼が、警察やFBIをいわば出し抜いて、誘拐とそれに続く殺人事件の捜査をほとんど一人で進めていくという(なぜそこまで一人でやるかという気もしますが)話ですから、一応ハードボイルドとしていいでしょう。真相はいかにも作者らしいものになっています。 しかし、まさかロス・マクで文章が下手と批判しなければならない作品に出会うとは思いもよりませんでした。しゃれた比喩を使っているのに、文がぎくしゃくした感じで、時には主語と述語が対応していなかったりしているのです。同じ訳者でも前作はそんなことはなかったのですがねえ… |
No.916 | 5点 | サマータイム・ブルース サラ・パレツキー |
(2016/11/11 22:30登録) ヴィクを空手の達人とするシリーズ作品についての文章を時たま見かけていたものの、そんな場面には今までお目にかかったこともないしなと不思議に思っていたのですが、この第1作を今回初めて読んで、なるほどと納得しました。ヴィクに手刀をくらった悪党が「カラテの達人だってことまでは聞いてなかったぜ」と言っているのです。つまりあくまで彼の主観なわけで、実際のところ、本作のアクション・シーンを読む限りでは、ヴィクには空手の心得もあるといった程度です。それなのに本作のカバーでの紹介文を始めとして、勝手に事実みたいに書かないでもらいたいですね。 ハヤカワ・ミステリ文庫の訳者あとがきでも、筋書きは複雑でないし、特に目新しい領域に踏み込んでもいないなんて書かれているように、真相は初めから見えていて、ひねりが全然ありません。しかしハードボイルド的には、ラスト・シーンもよかったですし、まあまあでしょうか。 |