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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1505件

プロフィール| 書評

No.925 6点 始まりはギフトショップ
シャーロット・アームストロング
(2016/12/18 00:11登録)
アームストロングを初めて読みました。この作家と言えば、マーガレット・ミラーやヘレン・マクロイ…
しかし本作の巻末解説にも、代表作と言われている『毒薬の小瓶』についてその二人のような「サスペンスは希薄」と書かれていますが、特に本作の印象は全く違います。ミラーやマクロイが、謎をはらんだストーリーで本気で不安感をあおってくれるのに対して、本作は陽気なスリラーであり、伏線はあっても、推理可能な謎として提示されるものは全くありません。何しろ悪役が出てくれば、そいつが悪役だよということはその都度ちゃんと説明してくれるのです。どの豚の貯金箱にメッセージが入っているのか、それがどんなメッセージかなんて謎は、手に入れてみなければわからないこと。最初に訪ねた家族が買った豚が目当てのものだったなんてことは小説構成上当然あり得ない、そんな楽しい作品です。


No.924 4点 幽霊温泉
赤川次郎
(2016/12/14 22:02登録)
宇野警部と夕子のシリーズ第…Wikipediaによれば16作。といっても、このシリーズというか、赤川次郎の短編は読んだことがなかったのですが。こういう感じのが多いのだったら、この作者は長編とまでいかなくても長めの作品の方がいいかなと思えました。
表題作など5編が収録されていますが、いずれも宇野警部と夕子のデートや状況設定だけで半分ぐらいはかかってしまい、事件の謎提示とその解決が短くなりすぎていると思えたのです。表題作にしても、事件と関係ない列車乗り過ごしのエピソードはこの長さ(50ページ弱)なら不要と切り捨てたいところです。まあそこがなくなっては、作者らしさが消えてしまうとも言えるのですが。この作品も、あるいは最後の『見えない鉄格子』等も、結末にそれなりの意外性はあるのですが、もう少し読者に考えさせる余裕を与えないと、意外性として機能していないと思うのです。


No.923 7点 失踪当時の服装は
ヒラリー・ウォー
(2016/12/08 22:55登録)
2014年に出た新訳版で読了。巻末解説の最初にデクスターの『キドリントンから消えた娘』の一節が引用されていたのには、にやりとしてしまいました。なぜかは、miniさんのレビューをご参照のこと。しかし、解説の川出氏、当然そのことは知っていたと思えるのに、なぜそれを引用したのかは書いていません。わかる人がわかればいいということなのか…
後年の『冷えきった週末』についての評ではデクスターにも近いと思えるほどの推理が展開されると書きましたが、本作ではそんなことはないまでも、やはり謎解き捜査小説という印象がかなりありました。クロフツも好きな自分としては、楽しめました。もちろん結末にクロフツほどの意外性はありませんが、捜査過程の部分は、クロフツを本当の警察による捜査らしいリアリズムで書いた感じです。2/3あたりで手がかりをつかむところが謎解き的にはおもしろい部分。


No.922 6点 恐怖への旅
エリック・アンブラー
(2016/12/04 21:33登録)
アンブラーの中でも、特に巻き込まれ型スパイ小説らしいというか、悪く言えば要するに型にはまった作品と言えるでしょう。発表されたのは1940年で、時代背景もまさに第二次世界大戦が始まった直後の同年1月。主人公のイギリス人技師グレアムはトルコで軍艦の装備を担当していて、その軍艦の早期装備を何とか食い止めたいドイツ軍によって、彼は命を狙われることになります。特殊な才能を持っているわけでもないただある程度優秀な技術者というだけで、殺されそうになるのが、リアルな感じです。
船客の中にまぎれていたある人間の正体は、早い段階で予想できたのですが、そんなところも型どおりというか。最初にグレアムが銃で撃たれながらかすり傷で助かるのは、さすがに殺し屋の腕が悪すぎるんじゃないか、ひょっとしたら故意に外したのではとも思ったのですが、そうではありませんでした。


No.921 6点 凍雨
大倉崇裕
(2016/11/30 23:50登録)
大倉崇裕の山岳ハードアクション・スリラー。この作者は初めてですが、本サイトでの他作品評を見ても、こういうタイプは他になかったので、驚かされました。とにかくシビアな迫力に徹してくれていて、謎解き的な要素はほとんどありませんし、お笑いなど皆無です。
話自体はいたってシンプルです。福島県北部にあるという設定の嶺雲岳で、主人公の深江が亡き友人の奥さんと娘を助けるために、悪党どもを一人ずつ倒していくというだけ。悪役たちにはそれぞれ個性がありますが、アクションに意外な工夫があるのは、最後の二人との対決部分だけかなあ。深江がやたら強い理由は、途中で悪役の一人によって説明されます。悪役たちの過去を深江との決闘に際してそれぞれの視点から語るのは、かえって緊迫感を削ぐようにも思えましたが。
あと、1ページ目のプロローグ的部分は途中のシーンとうまく繫がらず、ない方がよかったでしょう。


No.920 6点 鉄の薔薇
ブリジット・オベール
(2016/11/27 21:40登録)
オベール初読ですが、他の作品の紹介文を読んでみると、この作者は得意なジャンルがあるというタイプではなく、様々な傾向の作品を書いているようです。で、本作はというと完全に荒唐無稽なアクション・スリラー。サイコロジカルなところもあり、ラストになって真相が明かされることになりますが、これについてはやっぱりねという程度です。登場する精神科医の扱いは無茶ながらおもしろくできていますが。
主人公ジョルジュとその妻マルタの設定がなかなかユニークです。最初の部分でジョルジュがマルタを二度にわたって見かけるのは、さすがに偶然が過ぎるので、二度目にはマルタがその場にいる必然性があるのかとも思ったのですが、何の説明もありませんでした。でもまあ、細かいことを言わず、次から次へと目まぐるしく様々なタイプのアクションを盛り込んでくれる嘘っぱちな展開を楽しむ作品でしょう。


No.919 7点 貴婦人として死す
カーター・ディクスン
(2016/11/22 21:35登録)
久しぶりに、今回は創元版新訳での再読です。
最初に読んだ時には、断崖に残された足跡のトリックは、わからなかったものの解説されてもそんなに感心するほどじゃないなと思ったのでした。しかし今回読み直してみると、時間差を利用したところがさすがにうまいと思いました。トリック後半部分は他にも方法がありそうですが、シンプルに決まっていますし、HM卿の観察による足跡の特徴などの伏線がさすがです。
また、本作のメインとなるあのアイディアには、そうだったのかとうならされたのでした。こちらの方は、知って読んでいると、リタの次の行動としては、そうならなければならないはずだから、その人物への疑惑が起こるのが当然だなと思えるところもありました。また小粒な謎ながら不可解な拳銃が道端で発見された原因についての伏線も会話の中でさりげなく出てきます。
あと、車いすに乗った暴君ネロのギャグ・シーンには笑えました。


No.918 6点 犯罪に向かない男
大村友貴美
(2016/11/19 21:40登録)
最初『共謀』のタイトルで発表された後、文庫本になった時に改題された作品です。確かに誰と誰の「共謀」なのかは読み終わってもはっきりしません。一方新タイトルの方は、最後の方になって、その男は「向いてないね、犯罪に」というせりふが出てきます。次作『存在しなかった男』と同じ田楽心太(たたらしんた)警部が登場する作品なので、それに合わせての変更なのでしょうが、こちらも内容を的確に表しているとはあまり思えません。
プロローグの殺人から、誘拐、さらに殺人、5年前の交通事故など、様々な要素を盛り込んだ作品で、テーマの逸失利益に対する考え方には賛同できない点もあります(死亡による逸失利益は死亡者本人のことではなく遺族の金銭的不利益に対する配慮でしょう)が、読みごたえはあります。しかし轢き逃げ殺人だけは他の部分との絡みもなく、いくらなんでも余計じゃないかと思えました。


No.917 6点 死体置場で会おう
ロス・マクドナルド
(2016/11/14 22:39登録)
『人の死に行く道』の後に書かれた、リュウ・アーチャーものでない作品です。一人称の主役ハワード・クロスは地方監察官、執行猶予になった者の監督官です。したがって本作は私立探偵小説ではありません。しかし犯罪に関係する公的機関に属してはいても、本来捜査官ではない彼が、警察やFBIをいわば出し抜いて、誘拐とそれに続く殺人事件の捜査をほとんど一人で進めていくという(なぜそこまで一人でやるかという気もしますが)話ですから、一応ハードボイルドとしていいでしょう。真相はいかにも作者らしいものになっています。
しかし、まさかロス・マクで文章が下手と批判しなければならない作品に出会うとは思いもよりませんでした。しゃれた比喩を使っているのに、文がぎくしゃくした感じで、時には主語と述語が対応していなかったりしているのです。同じ訳者でも前作はそんなことはなかったのですがねえ…


No.916 5点 サマータイム・ブルース
サラ・パレツキー
(2016/11/11 22:30登録)
ヴィクを空手の達人とするシリーズ作品についての文章を時たま見かけていたものの、そんな場面には今までお目にかかったこともないしなと不思議に思っていたのですが、この第1作を今回初めて読んで、なるほどと納得しました。ヴィクに手刀をくらった悪党が「カラテの達人だってことまでは聞いてなかったぜ」と言っているのです。つまりあくまで彼の主観なわけで、実際のところ、本作のアクション・シーンを読む限りでは、ヴィクには空手の心得もあるといった程度です。それなのに本作のカバーでの紹介文を始めとして、勝手に事実みたいに書かないでもらいたいですね。
ハヤカワ・ミステリ文庫の訳者あとがきでも、筋書きは複雑でないし、特に目新しい領域に踏み込んでもいないなんて書かれているように、真相は初めから見えていて、ひねりが全然ありません。しかしハードボイルド的には、ラスト・シーンもよかったですし、まあまあでしょうか。


No.915 6点 札幌・仙台48秒の逆転
深谷忠記
(2016/11/08 22:19登録)
壮と美緒のシリーズでも初期のものだからでしょうか、後年ほど旅情たっぷりなトラベル・ミステリという感じではありません。タイトルにもかかわらず、むしろ函館の方が多少紹介されているぐらいで、特に仙台はほとんど通過するだけです。
カッパ・ノヴェルズ版の巻末解説や、森村誠一による紹介文ではアリバイ・トリックを褒めていますが、個人的にはむしろプロローグと殺人事件の関連性に関するアイディアの方に感心しました。どこかで結び付くことだけは最初からにおわせているのですが、自動車の扱いと絡めて、うまくまとめられています。その部分解明以前の勝部長刑事たちの捜査過程もなかなかのものです。
アリバイはというとかなり複雑なことをしていて、細かい部分では作中で壮も言っているように他にいくつか方法がありそうなのですが、中心アイディアとなっているある道具の意外な使い方がすっきりできています。


No.914 6点 煙に消えた男
マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー
(2016/11/01 22:16登録)
北欧警察小説の創始者である夫婦の第2作は、第1章(7ページ程度)こそいかにも警察小説的な感じですが、その後ブダペストで消えた男について、休暇に入ったばかりのマルティン・ベックが呼び出されて、当時のいわゆる「鉄のカーテンの向こう」の国で調査することになるという本筋は、最初のうちエスピオナージュかと思わせられます。実際そのように読者に誤解させるところは作者の狙いでしょう。あらかじめ007映画をちらりと話題にしています。まあ、ベックが襲われるというアクション・シーンもあるのですが。
全体の半分ぐらいはハンガリーが舞台で、トラベル・ミステリといった趣もあります。ハンガリー警察のスルカ少佐がなかなかいい味を出しています。後半スウェーデンに戻ってからの真相解明部分は、一度に紹介される容疑者の数が多すぎて、誰が誰やら分からなくなるのが難点とは言えますが。


No.913 7点 容疑者
ロバート・クレイス
(2016/10/28 21:32登録)
私立探偵エルヴィス・コールのハードボイルド・シリーズが知られている作家ですが、まず手に取ってみたのはパトロール中に銃撃事件で相棒を失った警官スコットが主役の本作。それにもう一人…じゃなかった一匹、牝ジャーマン・シェパードのマギーがその相棒として活躍します。プロローグで語られるのはマギーが軍用犬だった時、ハンドラー(指導手)を失った事件です。
となるとまあ、似た境遇のその一人と一匹の新たな絆、トラウマの克服といったところがテーマになるのは当然のことです。中心となる銃撃事件の真相もよくあるパターンで、つまり作者は新奇なアイディアで読者を惹き付けることは最初から考えていません。細部の描きこみで読ませるタイプであり、そういうものとしてよくできています。登場人物の中では警察犬隊主任指導官のリーランドが特に魅力的です。またマギーの視点から書かれた部分もところどころ出てきます。


No.912 6点 追憶の殺意
中町信
(2016/10/24 22:38登録)
当時は『新人賞殺人事件』のタイトルだった『模倣の殺意』を鮎川哲也が絶賛していたので気になっていた作家の新作が出版されたというので、期待して読んだのでした。
章題にも使われている「密室」については、実は通常の意味での密室ではありません。脱出可能な出口はありましたし、しかもそれは犯人の策略であったにもかかわらず、章題で読者にだけはヒントを与えているところが、マニアックさを示しています。しかも解き明かされてみると、かなり危ういうえバカバカしいような発想なのですが、そこがチェスタトン的とも思えて、トリックに対するセンスのよさを感じたのでした。
後半のアリバイの方はいったん解けたと思わせた後、さらに複雑なのを用意しているという二段構えの凝ったものになっています。動機の意外性もありますし、全体構成もていねいにできていますが、事件解明きっかけ部分の盛り上げは今一つ。


No.911 6点 殺しあい
ドナルド・E・ウェストレイク
(2016/10/20 20:57登録)
久しぶりの再読です。ウェストレイク名義というと、1960年台後半以降はユーモラスな作品が多いようですが、実はそれらは読んだことがありません。本作は作者の第2作で、いかにもなハードボイルド、それも『赤い収穫』以来の大量殺人と宣伝されていたものです。それで期待して読み始めたら、主役の私立探偵が命を狙われる普通のハードボイルドじゃないか…と思っていたら、最後になって一気にやってくれたという作品でした。実際のところ、覚えていたのもこの最後のまさに殺しあい部分の派手さだけ。
なるほど、そこは確かに凄絶なものがありますし、クライマックスのお膳立て発想には『赤い収穫』と似たところもあります。しかし一方の陣営が実は悪玉じゃないというのは気になるところです。また、ハメットと比較するには文章表現に深みが欠けますし、謎解き要素もそれなりに論理的ではあるもののハメットほどではありません。


No.910 5点 迷路
ビル・プロンジーニ
(2016/10/16 07:45登録)
要するに3つの中編をつなぎあわせてテーマ的に統一し、長編に仕立てた作品です。原題 "Scattershot" の本作、訳者あとがきには、「あえて『迷路』と名づけた。シリーズ第五作の『死角』の原題名 "Labyrinth" と混同なさらぬように」と書かれていますが、直訳の「散弾」でもよかったのではないかと思えました。
その3つの話の内容ですが、かなり本格派寄りだけれども、とりあえずハードボイルドかなあ、という感じです。密室好きには喜ばれるかもしれません。監視された自動車の中からの被害者消失、ラティマーの『処刑6日前』と同じく他人を犯人に仕立て上げるための密室殺人および密室からの宝石盗難と、不可能犯罪ばかりなのです。トリックはまあそんなところかなといった程度です。ただ自動車の事件はもう一ひねりあるんじゃないかとも思ったのですが、それだと名無しの探偵さんざんな一週間というテーマが逆転してしまうかな。


No.909 7点 煙の殺意
泡坂妻夫
(2016/10/12 23:15登録)
全8編中基本的には謎解きミステリが多いですけれども、ノン・シリーズだけに様々な趣向を凝らしています。
最初の『赤の追想』は長編『湖底のまつり』をも思わせるような雰囲気があります。次の『椛山訪雪図』は紋章上絵師であり美術に造詣の深い作者ならではの作品で、殺人事件の真相自体よりも手がかりとなる絵の秘密の方に驚かされます。本作の冒頭で言及されるダリも個人的に好きな画家だけに、集中で最も気に入っている作品です。『閏の花嫁』は島の位置が「北緯三十七度、東経十七度」なんて細かい大ぼらが作者らしいところでしょうか。『歯と胴』は犯罪小説ですが、殺人計画の途中で一ひねりあります。『狐の面』に出てくる稲荷魔術については、阿部徳蔵の『奇術随筆』(1936)に詳しく解説されています。『開橋式次第』は『DL2号機事件』的なロジックですが、その勘違いをする人は他にもいそうなところが決め手としては弱いですね。


No.908 6点 サリーは謎解き名人
ジャネット・イヴァノヴィッチ
(2016/10/08 09:06登録)
保釈契約強制執行人、通称バウンティ・ハンターであるステファニー・プラム・シリーズの第4作です。邦題のサリーという名前は女性みたいですが、サルヴァトーレという女装の男性ミュージシャンで、謎解きというより暗号パズル解読の名人です。
同棲していた男から自動車を盗んだということで訴えられた女が出頭日に出てこなかったため〈お尋ね者〉になった事件で、その男の家に投げ込まれた手紙が暗号だったため、ステファニーは人伝にパズルが得意だと聞いたサリーに解読してもらうことにするのです。ただしどんな暗号かは作中では全く示されません。
前作よりハードボイルドっぽい仕上がりになった本作、事件の裏はよくできていますし、本筋とは別のステファニーのアパートが放火される事件との絡み具合もなかなかのものです。ただし、サリー登場の契機となる手紙はわざわざ暗号にする必要がないという点だけは不満でした。


No.907 5点 遺留品
パトリシア・コーンウェル
(2016/10/04 00:01登録)
コーンウェルを読むのはこれが2冊目です。主人公は検屍官ですが、個人的にはやはり警察小説に分類すべきだろうなと思えました。あるいは検事やFBIであっても、公的捜査機関の活躍を描いたものは、結局同じタイプと言えるでしょう。逆に犯人が警察官だろうが検事だろうが、結末の意外性のパターンは変わらないのと同じようなものです。
前作『証拠死体』が謎解き的にも様々な要素を手際よくまとめ上げてくれていておもしろかったので、本作でもそこを期待したのですが、伏線の妙は今回ほとんど感じられませんでした。容疑者はかなり後の方になって浮かんできて、同一犯の最初の殺人と思われる事件に結び付きそうになるまではよかったのですが、その後が、どうも冴えません。最後に派手な展開にして、後味の悪い結末をつけてくれてはいるのですが、読者を納得させ損なっているという気がしました。


No.906 5点 炎の終り
結城昌治
(2016/09/30 22:46登録)
私立探偵真木シリーズの長編第3作です。この探偵役の名前からして、ロス・「マク」が元になっているのではとも思われます。またただ姓だけしか明かされないのもトマス・B・デューイの探偵マックと似た感覚で、もちろん遡ればハメットを想起させます。
今回の真木はずいぶん酒(主にウィスキー)を飲んでいますが、これは依頼人の影響でしょうか。その依頼人である元女優は、立派な(?)アル中です。彼女がアルコールに溺れるようになった理由が本作のテーマとなるのですが、結末のつけ方がシリーズの前2作に比べると安易な感じがしますし、少々説明的になってしまっているようにも思えます。ラスト・シーンの雰囲気はなかなかいいですけど。
また、彼の警察組織に対する反感がかなり露骨に表現されている作品でもあり、黒島部長刑事が「警察という権力組織が別の人間に変える」ことになった人物の典型例として描かれています。

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