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ミステリの祭典

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伽羅の橋

作家 叶紙器
出版日2010年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2017/03/04 18:09登録)
第2回ばらのまち福山ミステリ文学新人賞受賞作です。
選者の島田荘司は「この作者は、いうなれば下手糞なボクサーであった。…(中略)…しかし、目の覚めるような右ストレートだけを持っていた。」と評して、その破壊力を褒めています。しかしこの必殺パンチをトリックや意外性と勘違いしてはいけません。第11章の、ヘリコプターで空撮される大阪のある情景、その迫力ある描写とそれに続く場面こそが本作のハイライトです。これは確かに島田荘司が好みそうなシーンだと思えます。
登場人物たちに語らせる昭和20年終戦直前の出来事も生々しく伝わってくるのですが、受賞後にたぶんかなり手を加えられたと思われるのに、完成度の点ではまだかなり不満は残ります。謎解きシーンの挿入の仕方もそうですし、また主人公四条典座(のりこ)のキャラ、「あ、あの」の連発はコメディならいいのですが、この深刻なテーマには合いません。

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