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ミステリの祭典

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脅迫
名無しの探偵

作家 ビル・プロンジーニ
出版日1983年01月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 5点
(2017/02/28 21:34登録)
名無しのオプ第7作(共作含む)の原題は "hoodwink"、動詞で「だます」という意味です。少なくとも本作に関しては、邦題の方が内容に合っています。第3作『殺意』(未読)にも登場した作家ダンサーから、妙な脅迫のことを聞かされるところから話は始まるわけですから。この脅迫の意味が分かれば、事件全体の構造もある程度見えてくるという仕組みです。
第1回のシェイマス賞の受賞作ですが、パルプ・マガジンの大会が背景となっていて、パルプ・マガジンへのオマージュに満ちているところが特に好まれたのかもしれません。スペードやマーロウの名前が繰り返し出てきて、ほとんどハードボイルドのパロディと言ってもよさそうなぐらいです。まあ密室殺人ですから、カーへの言及もあるのですが。2つ目の密室トリックはアメリカ超有名作家の某作品と似た発想ですが、小屋内部の状態が読者にわかりにくいのが難点でしょうか。

No.2 5点 nukkam
(2015/01/26 14:50登録)
(ネタバレなしです) 1981年発表のシリーズ第7作で、主人公の人生に大きな影響を与える女性ケリーが初登場する作品です。密室殺人事件を扱っているのが特徴で謎解き伏線もしっかり用意されており、本格派推理小説として評価するなら「殺意」(1973年)を上回ると思います。とはいえminiさんのご講評の通り本書はやはりハードボイルド小説です。アクションシーンあり(といっても主人公はもう53歳なので正面からの肉弾戦とは違います)、ベッドシーンありです(正確にはベッドインまでで、そこから先の描写はありません)。殺人が起きるまでがサスペンスに乏しいのと、ドライにあっさりと書かれているためか肝心の「脅迫」がパンチ力に欠けるのがちょっと残念ですが本格派好きの読者でも受け容れ易いと思います。

No.1 5点 mini
(2009/08/13 10:35登録)
発売中の早川ミステリマガジン9月号の特集は、”密室がいっぱい!”
便乗企画として本格"以外"の密室ものを

名無しシリーズの中でも密室ものとして有名な作品
しかし密室という語句に魅かれて本格偏愛者が読んでもあまり面白くは無いかもしれない
基本的にネオ・ハードボイルドの人だし
しかもハードボイルドとしては「殺意」の方が魅力があったし、終盤のスリルは「死角」の方があったし
結局「脅迫」の場合はハードボイルドから見ても本格から見ても中途半端感は否めず

それにしてもプロンジーニって、マルツバーグとの共作作品だけで語られてしまう悪しき風潮なのが残念
「裁くのは誰か?」だってプロンジーニ作品として読まれているのではなくて、叙述サプライズ系ばかり探してる類の読者に読まれてるって感じだもんな
日本の読者ってよくよく叙述な仕掛けばかり求めるんだよな

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