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ミステリの祭典

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密室の訪問者

作家 中町信
出版日1994年10月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2020/08/04 22:46登録)
(ネタバレなしです) 1994年発表の本格派推理小説です。車同士の交通事故(3人が死亡)があり、犯人が雨の中に消えたとしか考えられないような不思議な殺人事件が続きます。容疑者たちの謎めいた関係と行動、吠える犬、ダイイングメッセージなど謎解きの伏線(ミスリードの罠かも)がたっぷりで、主人公の推理は読者に対して包み隠さず語られ、なるほどと思わせながらもどこか違和感があって読者を悩ませます。最後は全ての伏線をきっちり当てはめた真相説明があってよくできた謎解きを楽しめました。問題は空さんのご講評でも触れられているようにとてつもない偶然の要素があることでしょう。その偶然が成立したことを示す伏線もちゃんとあるのですが、この偶然をどこまで許容できるかによって読者の作品評価は分かれるかもしれません。

No.1 5点
(2017/03/29 23:28登録)
惜しい作品だなあ、というのが読み終わっての第一印象でした。
タイトルの密室―というより密閉された庭でしょうか―での殺人のアイディアは、プロローグの明らかな叙述トリックをうまく生かして(この叙述トリックは誰でも気づきそうですが、さらにひねりを加えています)、切れ味があります。現実には時間的に問題がありそうですが、犬が鳴いた、また鳴かなかった理由もうまく説明されていて、発想には感心させられます。またその前に起こる「事故」の真相も意外で、関係者が事実を隠していた理由も納得できます。さらにダイイング・メッセージについては引き出しに関する推理が鮮やか。
と、アイディアについては褒めるところも多いのです。しかし「事故」のあまりの偶然、メッセージの不自然さ、密室殺人後に起こる連続殺人の安易さ、小説としての薄っぺらさなど、不満もまた満載なのです。

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