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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.1215 5点 幽鬼の塔
江戸川乱歩
(2020/10/03 14:28登録)
前に読んだ鯨統一郎の『マグレと都市伝説』がメグレ警視とは全く無関係だったので、今度は間違いなくシムノン関連の作品をということで、本作を選んでみました。原作の『サン・フォリアン寺院の首吊人』はメグレものの中でも特に好きな作品です。自作解説には、「翻案というほど原作に近い筋ではないので、シムノンに断ることはしなかった」と書かれていますが、確かに微妙なところで、著作権にうるさくなった現代ならともかく、1940年頃には原作者の許諾を得ずに発表されてもおかしくなかったでしょう。
原作と共通するのは冒頭と最後、つまり提出される謎とその解決だけで、そこにもかなり変更が加えられています。本作では最初の自殺から「首吊り」モチーフが現れますし(原作は拳銃自殺)、過去の事件の動機も全く違います。中間部分の乱歩らしい扇情的な展開は原作とはまるで別物で、ちょっとバランスが悪いように思えました。


No.1214 7点 ヌヌ 完璧なベビーシッター
レイラ・スリマニ
(2020/09/27 14:46登録)
ゴンクール賞はフランスで最も権威があるとされる文学賞で、マルローやボーヴォワール等の有名作家も受賞していますが、その賞を2016年に受賞したのが本作です。
と言うわけですから、サスペンスフルなフレンチ・ミステリを期待してはいけません。「ヌヌ」とはフランス語でベビーシッターを意味する子ども言葉であることは、巻頭の訳者注にも書かれています。nounou って、日本語だと「ババ」とかみないな感覚でしょう。
この主役ヌヌの名前はルイーズ。彼女が子守りしていた二人の子供を殺し、自殺しようとした事件の簡潔な説明で、小説は始まり、後はそこに至る過程です。ルイーズの動機は、今ひとつあいまいなところがかえっていい味わいです。ただ最初の方で、ヌヌと弁護士の仕事を始める雇い主の奥さんとは、ほぼ同額の給料をかせぐことになる、という部分があり、ルイーズはその給料をどう使っていたのか、それだけは疑問でした。


No.1213 6点 ハムレット殺人事件
芦原すなお
(2020/09/24 23:20登録)
この作家は『青春デンデケデケデケ』さえ読んだことがなかったのですが、気になって手に取ってみました。
『ハムレット』の最終リハーサルで主要俳優たちが全員、実質演出も担当した大女優の邸宅で、このシェイクスピアの戯曲と同じような状態で死んでいるのが発見されるという事件で、さらに各章見出しも『ハムレット』からの引用という、ハムレット尽くしの作品です。事件担当の遠藤警部への説明という形で、『ハムレット』をはっきり知らない人にも、粗筋がわかるように説明されています。実際のところ、芦原すなおのハムレット論とでも呼びたいような一面も持っているのです。
遠藤警部の性格設定やセリフなど、ユーモアミステリ的ですが、真相は元ネタと同じく悲劇的ではあります。その真相解明は推理ではなく戯曲形式による状況説明で、遠藤警部の言うように、「たしかにひとつの解釈ではある」点、やはり釈然とはしないのですが。


No.1212 7点 誤殺
リンダ・フェアスタイン
(2020/09/21 17:14登録)
自身がマンハッタンの検察官でもある作者による、性犯罪担当の女性検察官アレックス(アレクサンドラ)・クーパーのシリーズ第1作です。アレックスの一人称形式で語られるのは、コーンウェルのスカーペッタ検屍官シリーズの手法を意識して取り入れたのでしょう。しかし、作品構成はこの第1作から完全なモジュラー型で、殺人事件の他に、連続強姦事件の捜査や別の強姦事件の裁判など、検察庁が扱う様々な事件も並行して語られます。
それでも第1作ということで、メインになるのはアレックス個人に関わるもので、友人の有名女優が、アレックスの別荘近くで銃殺される事件です。しかも頭が吹き飛ばされていたため、最初は被害者はアレックスだと誤解され、新聞にもそう報道されてしまうのです。邦題の意味はそのことで、誤殺なのか、女優を狙ったものなのかが問題になります。結末は普通に意外な犯人が明らかになるものになっていました。


No.1211 6点 約束の地
ロバート・B・パーカー
(2020/09/18 22:41登録)
エドガー賞を受賞したホークが初登場する本作は、これまで読んできた初期パーカー4作の中でも最も説教くさい作品でした。スペンサーは元来おしゃべりなわけですが、依頼人やその妻(失踪していたのを、スペンサーが簡単に見つけ出します)に対して、あれこれアドバイスしていく。まあ適切な助言とは言えるのですが、それにしても小うるさい。
「あなたは手荒い人のように見えるけど、手荒いことはしない人だと思うわ」と言われて、「タフながら、いとも優しい」と返しているのは苦笑ものですが、明らかなパクリ(引用?)を平然と書いちゃうのがパーカーなんでしょう。そういった口調がさほど気にならなければ、ストーリーは最も面白くできていると思いました。
それでも、同世代の他のハードボイルド系作家に比べるとプロットはごくシンプルで、スペンサーの計略は、失敗するのではという危機感もなく、すんなり成功してしまいます。


No.1210 3点 危険な水系
斎藤栄
(2020/09/14 00:24登録)
斎藤栄の中でもかなり初期の作品で、同じ1971年には代表作の一つと言っていい『香港殺人旅行』も書かれています。しかし本作は、そのような厳格な謎解きものではありませんでした。事件の骨格だけ取り出してみれば、公害をまき散らす企業とそれに対する反対運動を中心に据えて、最後に意外な犯人を明かしてみせる作品です。ということで一応社会派に分類はしたのですが。
普通なら社会派テーマをどこまで掘り下げ、また犯人の意外性をいかに効果的に演出するかに工夫をこらすところでしょうが、本作はそこに自衛隊と企業との癒着も取り込むことによって、妙にリアリティを欠いたものになっているのです。無理やりな偶然によって構成されてしまった密室は、原理的にはすぐ指摘されるダミー解決も粗雑ですし、実際の方法はもっとあほらしいというか、現実的な構造が全く理解できません。また最後の停電も全く意味不明です。


No.1209 8点 ナイン・テイラーズ
ドロシー・L・セイヤーズ
(2020/09/09 23:13登録)
名作との誉れ高い本作を、やっと読みました。これほど名の知れた作品にもかかわらず、創元社から1998年に新訳が出るまでは、かなり長い期間手に入りにくい状態が続いていたことには、驚かされます。創元社もセイヤーズは1990年台になって律義に第1作『誰の死体?』から順番に翻訳していっているので、とりあえず有名作だけは読んでおきたいという人はそれだけ待たされたことになります。
で、その内容ですが、個人的には死体が発見される前の「巻の一」の部分が、何と言っても楽しめた作品でした。その間にも、過去のエメラルド盗難事件については語られているのですが。その後「巻の二」で死体が墓地で発見されてからは、多少退屈になってきます。「巻の四」の最終的解決まで、冒頭シーンからだと約1年かかるのもその理由でしょう。
ところで、殺したのは誰かという点については、クリスティーのほぼ同時期の作品と重なると思うんですけど。


No.1208 6点 ポジオリ教授の事件簿
T・S・ストリブリング
(2020/09/05 08:08登録)
巻末解説によると、エラリイ・クイーンの求めに応じて、1945年に再開されたポジオリ教授シリーズの第3期短編群は23編を数え、その内15編を選んだ "Best Dr. Poggioli Detective Stories" があり、本書はさらにそこから11編を選んだものだそうです。4編をカットする必要もなかったように思えますが。
山口雅也氏は「《向こう側》への希求」と題してこのシリーズを論じていますし、カバー作品紹介には「ミステリーのもう一つの可能性を追求した」と書かれていますが、本作を読んだ限りではそれほどのものかなと思いました。ホームズ由来のスタイルを採っているにもかかわらず異色な感じがすることは確かですが、いわゆる「奇妙な味」の短編やシュールレアリズム系小説にそれなりに親しんでいると、特に驚くほどでもありません。それでも独特な妙な味わいがあることは確かで、ポジオリ教授の説得力のない推理も楽しめます。


No.1207 6点 アリバイ特急+-の交叉
深谷忠記
(2020/09/02 20:01登録)
タイトルの「+-」は「じゅういち」ではなく「プラス・マイナス」です。荘と美緒シリーズの中でも初期、このタイプのタイトル最初の作品。
講談社NOVELSカバーには「書下ろし大トリック・アリバイ崩し」なんて謳ってありますが、容疑者がすぐに特定されて、後はアリバイをいかに崩していくかに集中した作品ではありません。むしろ動機がはっきりせず、前半は宮崎県日向市と札幌で起こった二つの殺人事件の関連性を探っていく展開です。読者には、プロローグで関連性を明かしているのですが、それでもさらに一ひねり加えています。
第3の殺人が東京で起こり、全体の2/3を過ぎたあたりで主張されるのが、この第3の殺人のアリバイ。実は以前に読んだ梓林太郎の某作に同じアイディアを利用したものがあるのですが、発表は本作の方が数年早く、しかもアリバイにはそれ以外の工夫も取り込み、はるかに複雑にできています。


No.1206 6点 汚れなき女
フランセス・ファイフィールド
(2020/08/27 23:25登録)
公訴官弁護士ヘレン・ウェスト・シリーズの第5作。 原題は "A Clear Conscience" 、最後のページに「心にやましさがない者」という言葉が出てきます。邦題もそれっぽいイメージの言葉に、シリーズ邦題のみ共通の「女」をつけたのでしょうが、内容にはそぐわないように思います。
この作家は実際に読んでみると感心させられるのですが、他の作品も読んでみたいという気にはなかなかなれません。不快感を伴う重さ、暗さ(ユーモアもないわけではないのですが)がその原因なのかなとは思うのですが、要するに好みの問題でしょう。
前作『逃げられない女』でもそうでしたが、家庭内暴力という、人に不快感を与えやすいテーマを扱った今回も、ヘレンは探偵役ではありません。まあ最後の最後に殺人事件の真相に気づくことにはなるのですが、それは捜査や推理によるものではありません。それに読者にはその直前、犯人の視点から真相を明かしています。また終わり方がなんとも微妙なのです。


No.1205 7点 黒いスズメバチ
ジェイムズ・サリス
(2020/08/24 23:24登録)
1996年発表の本作の時代設定は1960年台後半で、語り手の黒人探偵ルー・グリフィンが、30年近く前の出来事を回想して書いているという設定です。会話途中などに、事件とは無関係な追憶を挿入したところもあるのですが、さほどうるさい感じはしません。これはこの作家の文章表現のうまさでしょうね。ハードボイルドらしい気取った感じはするのですが、スタイルとして確立されていて、不自然さがないのです。
謎解き、捜査小説としてのおもしろさはほとんどありません。「小説に出てくる私立探偵はみんなまちがっている。出かけていってだれかを捜しだす必要などないのだ。家で待っていれば、むこうからやってきて、こっちを見つけてくれる」(p.147)といった具合です。まあ最後には連続狙撃犯の意外な身元が明かされますが。
訳者あとがきにはチェスター・ハイムズが「ちらりと登場する」と書かれていますが、本人の講演会シーンのことでした。


No.1204 6点 エンジェル家の殺人
ロジャー・スカーレット
(2020/08/21 22:11登録)
乱歩『三角館の恐怖』(春陽堂1953出版 日本探偵小説全集)のタイトル・ページにある「ロージャー・スカーレット「エンジェル家殺人事件」に據る」という注釈によって存在を知った作品です。今回は創元推理文庫の完訳版で、乱歩版も参照しながら読んでみました。原題は "Murder among the Angells"。Lが2つなんですね。
メインになるアイディアを中心としたプロットはやはりよくできていると思います。第2の殺人のエレベーター密室トリックは、乱歩版ほどではありませんが、やはりかなりあっさり解明されてしまいます。見破られても犯人特定に結びつかない方法ですし、即死させる必要もない設定(この点は乱歩版の方が明確に指摘しています)なので、トリック的には問題ありません。
しかし、簡潔でありながら扇情的な乱歩の文章表現に比べると、特に最後の犯人を罠にかける部分のサスペンス等、文学的にはもの足りません。


No.1203 4点 マグレと都市伝説
鯨統一郎
(2020/08/18 23:28登録)
タイトルからしても、メグレ警視のパロディ的なところがあるのかと思っていたのですが、全く無関係でした。部下の谷田貝美琴刑事の名前をたとえば流香にするとかいった発想もなく、結局ミステリ史上最も有名な警察官の一人の名前とタイトル・パターンを「気まぐれ」に取り入れてみたということだけなのでしょうか。
ミステリとしての事件構造だけ見れば、そんなに悪くないものが多いと思います。第5話、第7話など、そんなあほなと思える物理的トリックも副次的に使われていますが、まあいいでしょう。何と言っても、ほとんど伏線もなしにマグレと谷田貝美琴が歌う昭和歌謡曲メドレーで暗示的に真相を指摘してしまい、また最後に各作品別の公園で最終解決を示すリアリティ皆無の無理やり自覚的ワン・パターンを許容できるかどうかが問題でしょうか。しかし、原則事件とは無関係な「口裂け女」等の都市伝説は、どうでもいいですねえ。


No.1202 6点 奇妙な相続人
マーシャ・マラー
(2020/08/12 23:17登録)
徳間文庫から出ていたシャロン・マコーンのシリーズは、本作で途切れることになってしまいました。本作の後9年近くたってから、かなり新しい『沈黙の叫び』が講談社から出版されただけ。
ミッシング・リンク系の連続殺人を背景に、殺された会計士の遺言で指定された遺産相続人を探す依頼をシャロンは受けることになります。邦題はその相続人たちのことですが、原題 “Trophies and Dead Things” は、相続人の一人に指定された弁護士の作った気持ちの悪いオブジェ、弁護士自身は「わたしの宝物(フェティッシュ)」と呼んでいますが、それを見た時にシャロンが思いついた言葉で、「戦利品と死骸(むくろ)」と翻訳されています。これが比喩的な意味を持つことになるわけです。
前半はちょっと地味すぎる展開ですが、最後の方になると殺人犯とシャロンの銃の撃ち合いなど、アクション度もかなり高くなり、楽しめます。


No.1201 5点 スパイ・ストーリー
レン・デイトン
(2020/08/09 18:40登録)
レン・デイトン初読ですが、このような作品が多いのなら、あまり好きにはなれない作家だと思いました。基本リアリティのある作風にもかかわらず、miniさんが『ベルリンの葬送』評で「100%全て説明されないと気が済まないタイプの読者には最も嫌われる類」と書かれているとおりのものだったからです。
いや、アンブラーの『インターコムの陰謀』みたいにわざと不明瞭にして不気味さを出しているなら、全く問題ないのです。しかし本作では、KGBが主役パットの家に押し入ってきた理由、パットがあえて恋人マージョリーを伴ったまま家宅侵入を敢行した理由、クライマックスで敵方があえて素手で攻撃を加えてきた理由など、説明のつかないことだらけなのです。途中、クリスティーの本が数ページストーブの焚き付けにされるシーンがありますが、これはそのような論理的整合性を重視する小説に対する揶揄にも思えました。


No.1200 7点 駅路
松本清張
(2020/08/05 23:33登録)
表題作等10編の内、『ある小官僚の抹殺』はカッパ・ノベルズ版『黒地の絵』で読んだことがあります。この作品はドキュメンタリー・タッチで描かれた、タイトルからも推察できるようにいかにも社会派な作品です。あと倒叙もの『捜査圏外の条件』も、疑われないための段取りや、その企みが崩れるきっかけは覚えているのですが、どこで読んだのだったか。
他の方も指摘されているとおり、謎解き要素の特に強いのが『巻頭句の女』と『薄化粧の男』。後者はクリスティーの得意とするあの手ですね。表題作は、『巻頭句の女』や『白い闇』と共通するところがありますが、3つの中では最も印象が薄く、これを表題作にするのかなと思えました。
まあ『万葉翡翠』と『陸行水行』という歴史の謎を探るという意味での歴史ミステリを2作揃えたところが、本書の目玉でしょうか。後者の中では、ジョゼフィン・テイの『時の娘』も言及されています。


No.1199 5点 鮮血の日の出
ミッキー・スピレイン
(2020/08/01 13:23登録)
タイガー・マンのシリーズ第2作。前作で出会ったエディスと結婚して諜報機関を退職しようとしていたまさにその日に舞い込んできた新たな指令は、アメリカに亡命してきた共産圏の情報部局長をめぐる事件に関するものでした。
プロット自体は、なかなかおもしろくできていて、アクションもふんだんに盛り込まれています。冒頭の、タイガーが以前に助けたことのある男の話も、当然どこかでつながってくるんだろうなと予測はできますが、クライマックスにうまく結びつけています。タイガーが機関の研究者から渡される秘密兵器も、期待どおり最後には有効活用されることになります(それにしても破壊力がありすぎ)。
しかし一方で、作者の安っぽい反共産主義的思想の大盤振る舞いはどうでもいいやという感じですし、エディスをロンディーンと呼んだりする恋愛側面の甘ったるさには辟易させられるところもありました。


No.1198 7点 アウトローのO
スー・グラフトン
(2020/07/28 23:21登録)
キンジーの最初の夫ミッキー・マグルーダーが撃たれて瀕死の重傷を負う事件の顛末が描かれた作品です。ミッキーについては、以前の作品では全くと言っていいほど語られなかったそうですが、その彼が最後どうなるのかというとろころも、見どころの一つとなっていて、ラストの味わいがなかなかいいのです。彼女がミッキーと別れる原因となった過去の事件の究明ということで、作者も気合が入っている感じです。未読の作品の書誌データを調べてみたところ、分量的にもこれまでで最も長いものになっています。
謎解き的には特にどうと言うこともありませんが、それなりの意外性はあると言っていいでしょう。
ところで、PIと呼ばれるものを今まで "Private Eye" だと思っていたのですが、本作では "Private Investigator" の頭文字としていました。なるほど、それなら厳密に実際の頭文字です。


No.1197 5点 寝台特急18時間56分の死角
津村秀介
(2020/07/22 23:27登録)
予想どおりに話が展開していく作品でした。作者もそれは当然わかった上で筆を進めているものでしょう。ただ一つ意外だったのが、冒頭、長崎県大村市で起こる殺人事件で、ハンドバッグの中身がなくなっていた件でした。犯人が誰であるかは、読者には容易に想像できるように書かれています。作中の警察やルポライター浦上がその人物が怪しいと気づくのは半分近くなってからですが。また神奈川県藤沢市で起こる殺人事件がつながりを持ってくることも、当然と言えるでしょう。二人の被害者のつながりは、見当はつけやすいものの、悪くないと思いました。
そして後半はアリバイ崩しになってくるわけですが、これはどうということもありません。藤沢・名古屋間の経路は、時刻表を普通に確認すればわかるはずのものである上、その時刻表を作中に掲載していないのでは、アンフェアです。それでも全体の印象はまあまあといったところでしょうか。


No.1196 6点 ハード・トレード
アーサー・ライアンズ
(2020/07/19 23:14登録)
ジェイコブ・アッシュ・シリーズの第6作ですが、この作家を読むのは初めて。というか、本作が河出書房のアメリカン・ハードボイルドのシリーズに入っていたので名前だけはかろうじて知っていたという程度だったのです。アッシュは(ライアンズ自身も)ユダヤ人だそうですが、本作ではそのことには触れられていません。
婚約者の素行を調べてほしいという女からの依頼で始まるのですが、その調査はかなり簡単に成果を上げて終わった後、その依頼人からの、とんでもないことに巻き込まれたので相談に乗ってほしいという電話があります。待ち合わせの場所に赴いたアッシュの目の前で、女は殺されてしまい、そこから政治的な大事件へと発展していくという、社会派的なプロットが展開していきます。
事件の全貌も推測に過ぎないまま終わらせる決着の付け方に、政治の世界へのやりきれないような思いを込めた作品になっています。

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