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ミステリの祭典

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ヌヌ 完璧なベビーシッター

作家 レイラ・スリマニ
出版日2018年03月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 tider-tiger
(2022/07/30 19:39登録)
~ルイーズの辞書に『手抜き』などという言葉はなかった。家事も子守も完璧にこなしてくれるルイーズにマッセ夫妻は全幅の信頼を置いていた。そんなルイーズが夫妻の二人の子供を殺害した。~

2016年フランス。昨年の読書で印象的だった作品の一つ。導入で子供たちの死が告げられ、このあとはルイーズがマッセ夫妻に雇われ、どのような日々を送り、いかに信頼されていくようになったのかが語られていく。格別なにも起こらず、ルイーズと子供たちの日常が語られていくなかで、結末を知っている読者の緊張は高まる、緊張というか、不気味さを感じる。
本作の核心は動機なのだろうが、はっきりとそれを示唆するわけではない。ただ、漠然となにかを感じ取り、腑には落ちる。
簡潔で読みやすいが、行間を読むことが求められる作品だと思う。
『わたしたちは同じ人間なんだ、人はみな平等なんだ』けして現実には即していないこういう言葉に屈辱を覚える人もいる。自分は本作を読んでこんな風に思った。あまりにひねくれた見方かもしれない。

冒頭にキプリングとドストエフスキーが引用されているが、これは最後に読んだ方がいいかもしれない。

我が家には『クマのヌーヌーシリーズ』という絵本があったのだが、ヌーヌーという言葉にそんな意味があったのかとこの年になって初めて知った次第。

No.1 7点
(2020/09/27 14:46登録)
ゴンクール賞はフランスで最も権威があるとされる文学賞で、マルローやボーヴォワール等の有名作家も受賞していますが、その賞を2016年に受賞したのが本作です。
と言うわけですから、サスペンスフルなフレンチ・ミステリを期待してはいけません。「ヌヌ」とはフランス語でベビーシッターを意味する子ども言葉であることは、巻頭の訳者注にも書かれています。nounou って、日本語だと「ババ」とかみないな感覚でしょう。
この主役ヌヌの名前はルイーズ。彼女が子守りしていた二人の子供を殺し、自殺しようとした事件の簡潔な説明で、小説は始まり、後はそこに至る過程です。ルイーズの動機は、今ひとつあいまいなところがかえっていい味わいです。ただ最初の方で、ヌヌと弁護士の仕事を始める雇い主の奥さんとは、ほぼ同額の給料をかせぐことになる、という部分があり、ルイーズはその給料をどう使っていたのか、それだけは疑問でした。

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