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ミステリの祭典

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キャサリン・カーの終わりなき旅

作家 トマス・H・クック
出版日2013年02月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 8点 レッドキング
(2023/12/19 00:10登録)
詩と奇怪な小説を残し行方をくらました女、失語症の息子を殺人鬼に殺された男、終末を迎えつつある早老症の少女。あまりにも悍ましい残酷な運命と、気休め慰め全てを拒否する澄み切った水晶の様な冷厳さ。それでも、絶望の深さを止揚するが如きの結末。アガサ・クリスティーの素晴らしいがミステリとは言えない短編「海から来た男」や「翼の呼ぶ声」を、辛うじてミステリに繋ぎ留めた様なメルヘン。

No.1 7点
(2020/10/30 23:19登録)
トマス・H・クックの邦題に「記憶」がついた作品群は、日本で勝手にシリーズみたいにしただけで、原題はそれぞれ全く違ったものでしたが、2009年発表の本作から2013年の『サンドリーヌ裁判』までの5作は、原題もすべて人名が付いたものになっています。
そんな、「人名シリーズ」第1作は、3重の入れ子構造になった、その意味では技巧的な作品です。前作『沼地の記憶』では技巧派ぶりがわざとらしい感じがしたのでしたが、本作は読み終えてみると納得のいくものになっていました。語り手ジョージ・ゲイツの話の聞き役であるマヤワティ氏がなぜ登場したのかは、最後に暗示されることになります。まあ、「謎」の合理的解決という意味でのミステリと言えるのかと疑問に思えはするのですが、このような小説も決して嫌いではありません。
早老症の12歳の少女アリス・バロウズが、実に愛らしく描かれています。

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