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ミステリの祭典

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殺意
名無しの探偵

作家 ビル・プロンジーニ
出版日1980年02月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点
(2020/11/10 23:49登録)
この名無しの探偵シリーズ第3作は、邦題が原題の意味とは異なるものになる最初の作品です。本作の原題は “Undercurrent”。第9章の終りに「目に映る一連の事件の下に、黒々とした底流が深く、速く流れている。」という文があり、その後も「底流」という言葉は何度か繰り返されます。
巻末解説によれば、プロンジーニ自身気に入っている作品らしいですが、最初のうちは夫の浮気調査という平凡な感じです。しかし尾行していた男がモーテルで殺されてからは、おもしろくなってきます。以前に読んだ後の『脅迫』でも登場することになる自称三文文士のラッセル・ダンサーが20年近く前に書いた犯罪小説が、事件の手がかりになるところは、パルプ・マガジンのコレクターである名無しの探偵ならではの着眼点でしょう。
真相解明に直接結びつく手がかりは、よくあるパターンですが、決着の付け方も含め、悪くありません。

No.2 5点 nukkam
(2014/08/28 16:56登録)
(ネタバレなしです) アメリカのビル・プロンジーニ(1943年生まれ)は名無しの探偵シリーズで有名なハードボイルド作家ではありますが謎解きにも配慮した作品もいくつかあるそうで、1973年発表のシリーズ第3作の本書は作者自身も出来栄えに満足した初期代表作とされています。私は本格派推理小説を偏愛していてサスペンス、ハードボイルドを敬遠している読者なので、本書を読んだのも謎解きに配慮した作品だからという、いささか不純な理由です。もっとも本書に本格派推理小説を期待するのはやはり誤りで、古い(架空の)探偵小説の手掛かりがなかなか魅力的に映りましたが、結局推理に頼らずに解決されてしまいました。犯人当ての謎解き伏線は用意されているとはいえ、やはり本書はハードボイルドだと思います。暴力シーンがほとんど描かれないので、ハードボイルドをアクションスリラーと(勝手に)思い込んでいる自分にはそれなりに新鮮でした。

No.1 7点 mini
(2008/10/28 10:39登録)
今読まれているのは「嘲笑う闇夜」「裁くのは誰か?」といったマルツバーグとの合作作品だけのようだ
新潮文庫がほとんど絶版で、普通に新刊で買えるのが創元の「裁くのは誰か?」だけの状況なので仕方ないのかもしれないが、理由はそれだけじゃないだろう
ハードボイルドが好まれず、サプライズものやバカミス怪作ばかりを追い求める今の読者側の風潮も問題だ
何が言いたいのかと言うと、「裁くのは誰か?」はプロンジーニ作品として読まれていると言うよりも、バカミス系単発作品として読まれているという印象だからだ
これははっきり言って良くない風潮である
プロンジーニは決してバカミス専門作家ではなく、ネオ・ハードボイルド作家であり、名無しのオプシリーズを読まなければプロンジーニを読んだ事にならないだろうに
中でも「殺意」はハードボイルドらしからぬ新鮮な感覚のするハードボイルドだ

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