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ミステリの祭典

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toukoさんの登録情報
平均点:6.16点 書評数:241件

プロフィール| 書評

No.201 7点 銃とチョコレート
乙一
(2011/04/08 21:03登録)
児童向けミステリ企画で出された1冊。
漢字にルビがふってあったり、登場人物の名前がすべてチョコレートのブランド名だったり、どことも知れない外国を舞台に、明智小五郎と少年探偵団と怪人20面相を思わせる設定だったりと、いかにも低年齢向けを意識した内容。

ご近所世界から世界が広がっていくドキハラ感、気弱な主人公のいざという時の勇気、いじめっ子が意外と頼りになったりと、一般映画のランキングにも入ってくるような映画版のドラエもんの名作みたいな感じで、子供はもちろん、大人も楽しめるクオリティ。本格ミステリ要素も、うまく調和しています。

ただ、暴力的だったりダークな要素も強いので、子供にはちょっと刺激的すぎるかな。。
自分が子供の時に読んだら、その刺激的なところも面白いと思っただろうけど、大人の立場で考えると、児童文学としてとてもすぐれたところがあるにも関わらず、子供に積極的に読ませる気にはなれないという微妙さ。

人間の多面性だけじゃなく、移民や民族差別等、白黒決着つけるには難しい問題も出しているので、もうちょっと対象年齢上の作風で、もう少し踏み込んで書いた方が(高学年向けのハリポタくらいの感じで)、まだ違和感なかったんじゃないかな?


No.200 5点 迷宮百年の睡魔
森博嗣
(2011/04/08 20:52登録)
前作に比べると、ネタが割れている分、インパクトはなかったです。
世界観が好きなら楽しめるかと。


No.199 6点 女王の百年密室
森博嗣
(2011/04/08 20:50登録)
SF異世界ものならではのトリックに騙されました。
この設定であれば、ありだと思います。

いつにも増してポエミーでセンチメンタルなモノローグにちょっと辟易していたのですが、それもミスリードのうちだと思えば許容できました。


No.198 6点 ボーン・コレクター
ジェフリー・ディーヴァー
(2011/04/08 20:40登録)
事故で四肢麻痺状態になった元天才科学捜査官が主人公の安楽椅子探偵ものであり、時間制限のある中、挑戦的な連続殺人犯との知恵比べをするというサスペンスものでもあります。

取材をきっちりやるタイプの作者らしく、最新の科学的捜査のノウハウやアメリカの警察機構、マンハッタンの地理・歴史など情報量が多くて楽しめます。
安楽椅子探偵ものといっても、以上のような知識は読者は持っていないわけですから、犯人と主人公の知恵比べを受身で楽しむ作品です。

展開が早く、世界のショッキングな犯罪とかカーチェイスや犯人逮捕場面とかを矢継ぎ早に見せるバラエティ番組を見ているような気分に。
飽きずに楽しめるのはいいんですが、やりすぎのあまり安っぽくなっている気も。
特に恋愛部分は、ハーレクインロマンス並みの超展開で、ついていけませんでした。。

ハリウッド映画のようだとよく言われているし、映画化もされたそうですが、映画だと面白さを支えている膨大な情報は漏れてしまうだろうから面白くなさそう。


No.197 5点 今はもうない
森博嗣
(2011/04/08 20:36登録)
犀川&萌絵シリーズの番外編。

男性主人公の性格が、途中で変化したような気がしたし、最後の方では若い女の子(しかもシリーズでおなじみの)相手に一方的な思い込みで迫る中年の変質者と化していたようにすら思えたので、萌絵受難のサイコもの? それとも叙述トリックもの? とか思っていたら、そういうことかあ。

キャラ萌えしていればしているほど、そこは楽しめそうですが、個人的にはネタがわかっても、人物評価はひっくり返らなかったので、イマイチ。

W密室もやや不完全燃焼。。


No.196 8点 ブギウギ
坂東眞砂子
(2011/04/07 23:23登録)
土俗ホラーや歴史もので有名な作者が、新境地を切り開いたと評判になった作品。

太平洋戦争末期の箱根に疎開していたUボート艦長の変死から始まるミステリ、ナチスドイツ、進駐軍、ソ連入り乱れての謀略サスペンス部分も楽しめましたが、なんといっても、この作者ならではの、戦後の混乱期の中でもしたたかに生きる庶民、特に女の生き方の描写が痛快でした。

基本的に読ませる力も個性もある作家なので、ミステリやサスペンス部分は及第点レベルだとしても、小説としての完成度は高いと思うので、高めの点数にしてみました。


No.195 5点 作者不詳 ミステリ作家の読む本
三津田信三
(2011/04/07 23:17登録)
ようはミステリの短編集なんですが、古本屋で入手したいわくつきの同人誌に掲載されていた短編小説を読んで、次々と謎を解かないと、命に関わるかもしれない怪異が起こるというホラー設定のため、緊迫感があります。

短編もホラーテイストですが、どれもロジカルな解決がつきます。ただ短編の出来は、かなりばらつきが大きいです。

評判の悪かったメタな結末は文庫版では書き直されているようです。


No.194 6点 贖罪
湊かなえ
(2011/04/06 21:49登録)
告白と似た形式の作品。

告白に比べると、衝撃度は低いですが、相変わらずえげつなさすぎる人物造形がいっそすがすがしいくらいの、悪意に満ちた小説ですねえ。

ラストはちょっとぬるいですが、告白との差別化のためにも、ありだと思います。


No.193 7点 三面記事小説
角田光代
(2011/04/06 21:43登録)
現実にあった犯罪をベースに、作家が想像力で作り上げたフィクションの短編集。

各作品の扉頁に、元にした事件の新聞記事が貼り付けられているので、結末は読む前に大体、わかってしまうのですが、それでも犯罪者への道を転げ落ちていく犯人の心理が面白い。

週刊誌やワイドショーが好きそうなスキャンダラスな事件の裏側の悪意や人生の陥穽を書いていても、湊かなえとかに比べると、ずっと上品でほどよく文学的だし、桐野夏生のようにショッキングでもねちっこくもないので、題材のわりには、どなたでも読みやすいかと思います。

どの作品も、卑小で俗悪な犯罪描写の中にも仄かな温かみを感じさせる筆致が冴えているのですが、特にラストの中年の息子が痴呆の母を殺す作品は、状況としてはまったく救いがないのに、ギリギリの形而上的な救済を提示していて、見事です。


No.192 7点 毒入りチョコレート事件
アントニイ・バークリー
(2011/04/06 21:41登録)
1929年作の元祖推理合戦もの。

どれが正解でもよいのに、作者の匙加減でいくらでも操作できるという、本格ミステリへの批評精神で書かれたものとのことですが、作者が恣意的にこれしかないという結論に持っていくのは、何もミステリに限った話じゃないし、いかにそれをエンタメとして見せてくれるかが重要なんでしょうねえ……少なくとも一般読者にとっては。

この作品は、一堂に介したメンバーが、前の人の推理を覆すことだけを目的にとうとうと持論を述べるというシンプルな形式かつユーモラスな人物造形なだけに、つい森見登美彦の小説に出てくる詭弁部(詭弁のための詭弁を弄することが目的というサークル)を思い出してしまいました(笑)。


No.191 5点 忠臣蔵元禄十五年の反逆
井沢元彦
(2011/04/05 20:41登録)
忠臣蔵として親しまれている、赤穂浪士事件の真相を探る歴史ミステリ。
史実としての赤穂浪士事件の謎解きに新鮮味はなかったのですが(←この本がきっかけなのかもしれませんが、今はわりとメジャーな説なので)、仮名手本忠臣蔵に隠された意図の方は面白かったです。

でも、この作者のノンフィクションのシリーズ「逆説の日本史」であれば、2冊くらい読めそうなボリュームがあるのに、いくら小説でも、扱っているネタがこれだけって……短編かせいぜい中編のネタを、ずいぶんもったいぶって、同じことを何度も繰り返したり、くどくど念押ししたりして、水増ししているなあという印象。

歴史の謎を解くのと同時進行で、主人公は命を狙われているのですが、何度も襲われているくせに、気のせいかも? なんて思っているくらいなので、緊張感皆無。
枚数稼ぎをするなら、あっさりしすぎてつけたしみたいな主人公を巡るサスペンスの方をもっと書き込めばいいのに。。


No.190 7点 粘膜兄弟
飴村行
(2011/04/04 22:47登録)
相変わらずエログロ要素満載なのですが、これまでの粘膜シリーズと違い、やけに純愛要素も強く押し出しているのは、女性読者獲得のため?
個人的にはそこは悪くないと思います……おそらく作者の狙い通り、ほろりとさせられましたもん。粘膜シリーズなのに切なさを感じてしまい、なんだか悔しい(笑)。

オチのインパクトも前作よりないとはいえ、そうだったのか、と笑えました。


No.189 3点 暗闇の囁き
綾辻行人
(2011/04/04 22:41登録)
ありがちな手垢のついた設定を紙に書いてばらまいて、適当に拾い上げたものをつなげれば、こんな話になるんじゃないかっていうくらい、平凡で驚きのない作品。
何かしら作者ならではのオリジナル要素や、モダンなセンスを感じられればまだしも、とても80年代末に書かれた作品とは思えませんでした。。


No.188 7点 告白
湊かなえ
(2011/04/04 22:32登録)
昨年の現役中学生の心に残った作品ベスト1だそうです。

バトロワを思い出す、大人も子供も入り乱れてのやるかやられるかの世界観がウケたのかな。。
確かに、中学教師の経験がある作者だけに、その年頃の子供の残酷で幼稚で純粋でもある主観的世界の描写はうまいと感じました。

主人公をはじめとする大人気ない大人の心情や子供観の方も、いかにも今風。

誰もがミーイズムしかないという殺伐とした世界観を貫き通した勇気は、一本筋が通っていて、これはこれでいいんじゃないかと……。


No.187 6点 悪党
薬丸岳
(2011/04/04 22:26登録)
毎度ですが、今時の庶民の鬱憤の代弁者的内容。

今回は、加害者の人権ばかり重視され、被害者がおざなりな風潮に対する意義申し立てのような内容をうまくエンタメ化しています。
ミステリ要素は少ないけれど、読むと溜飲が下がる人も多いんじゃないかなあ。。


No.186 5点 QED 百人一首の呪
高田崇史
(2011/04/03 22:17登録)
百人一首の歴史的な謎解き(これ自体は面白かったです)と、現在進行形の殺人事件が分離しすぎ。
フーダニットに直結させるのは難しかったとしても、せめて殺人事件の関係者が、百人一首の謎解きも完成させていて、その思考回路を探偵役が追体験する形にすればまだマシだったと思うんですが、なぜこんな構成にしたんでしょう?
単純な殺人事件なのに、百人一首抜きでも、苦しい解決なので、(百人一首に手一杯で)その他のことは余裕がなかったのかな。。


No.185 7点 四神金赤館銀青館不可能殺人
倉阪鬼一郎
(2011/04/03 22:03登録)
この作者のホラーや幻想小説系の作品でお馴染みのくどいレトリックが、あんな風にいきるとは。。大仕掛けなメイントリックのバカバカしさもさることながら、赤色の階層表現だけでも大笑い。
様々な小ネタまで楽しいバカミスでした。


No.184 6点 エヴァ・ライカーの記憶
ドナルド・A・スタンウッド
(2011/04/03 22:00登録)
サスペンス、本格ミステリ、冒険小説等、エンタメのフルコースをお腹いっぱい楽しませてくれると評判の作品。

確かに、エンタメ要素てんこ盛りではあるんですが、すべてが大味で、ボリューム満点だけど、お手軽ファーストフード的、メガマックみたいな作品で、繊細なフルコース料理では決してありません。
暇つぶしに胸焼け覚悟でガツガツ読むべし!?


No.183 7点 八日目の蝉
角田光代
(2011/04/02 23:58登録)
誘拐ものとはいえ、本格的なミステリやサスペンスを期待して読むような作品ではないんですが、直木賞受賞作よりさらにうまくなっているし、リーダービリティも高い。

意外とシビアなところもあるこの作家にしては、甘くはないけどヒューマニズムを感じさせる結末の落としどころが絶妙で、これは売れるわけだと納得。


No.182 6点 扉は閉ざされたまま
石持浅海
(2011/04/02 23:35登録)
舞台劇のような作品。
犯人と探偵役のやり取りが、緊迫感があります。
両者のキャラも、かつて彼氏彼女になり損ねた関係というのも、面白かったです。

なぜ一定時間を過ぎるまでは、扉は閉ざされたままにしなければならないのかについては、誰しも思うところでしょうけれど、強引すぎですよね……。

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