悪党 |
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作家 | 薬丸岳 |
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出版日 | 2009年07月 |
平均点 | 6.50点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 6点 | シーマスター | |
(2013/02/13 23:14登録) 薬丸岳の第4作。 ミステリ性は前3作に比べると明らかに薄いが、今回もメインテーマに据えられた「被害者遺族の悲痛」の描写(『闇の底』は若干ずれていたかな?)という観点からは、それらの作品に勝るとも劣らない。 作者の作風の2大特徴、「圧倒的なリーダビリティ」と「物も言わせぬ偶然の多用」という点においても。 本作は探偵業をなりわいとする主人公の悲痛極まりない物語と、各章ごとの「陰惨な過去を清算したい依頼者たち」の連作短編集風の物語のカップリングとなっており、互いに暗鬱感、苦悩する様が共鳴され合う作りになっている点が特筆に値する。 (結末に関して) なぜ彼女は去って行ったのか? エピローグを作るためでしたね。本当に最後の最後で「解放感」を味わえました。 |
No.3 | 6点 | E-BANKER | |
(2013/01/19 18:11登録) 乱歩賞作家・薬丸岳の2009年発表長編作品。 ただ、長編とは言っても、各章に異なったサイドストーリーを配し、連作短編的な味わいもある作品になっている。 ~探偵事務所で働いている佐伯修一は、老夫婦から「息子を殺し少年院を出て社会復帰した男を追跡調査してほしい」という依頼を受ける。依頼に後ろ向きだった修一だが、所長の木暮の命令で調査を開始する。実は修一も姉を殺された犯罪被害者遺族だった。その後「犯罪加害者の追跡調査」をいくつも手掛けることに。加害者と被害者遺族に対面する中で、修一は姉を殺した犯人を追うことを決意したのだが・・・衝撃と感動の社会派ミステリー~ こういうテーマは実に作者らしい。 乱歩賞受賞作「天使のナイフ」でも、次作(「闇の底」)・次々作(「虚無」)でも、作者は世間に潜む重いテーマに正面から向き合い、問題点を明らかにするなかで、プロットの中に有機的に取り込んできた。 そして、本作のテーマは「犯罪被害者遺族」。 殺した犯人は短い刑期で社会復帰するのに、決して心が癒されることのない遺族たち・・・。 本作ではそういう遺族が何人も登場する。 そして、その遺族たちの依頼に応え、追跡調査する佐伯修一もまた心に深い深い闇を抱える犯罪被害者遺族なのだ。 これは成長物語であり、若くして非業の死を遂げた姉を思い、他人に愛情を持てなくなった修一の呪縛を解くための再生の物語なのだろう。 今回、「謎解き」という要素は薄いので、そういう手の作品を期待すると肩透かしを食うが、「読み応え」という点ではそれなりの満足は得られるのではないか。 まっ、ただ、個人的には初期3作や「刑事のまなざし」などよりは一段落ちるかなという評価。 オチも今ひとつで予定調和なのがやや残念。 |
No.2 | 8点 | あびびび | |
(2012/12/02 17:48登録) 連れが面白いと言うので、旅の移動時間の間に読んだ。東野圭吾の「さまよう刃」と同じ感覚の内容だったが、自分としてはこちらの方が読み応えがあった。 しかし、旅から帰ってテレビをつけるとこの作品を滝沢秀明の主演で放送しているのにはびっくりした。渡哲也など豪華出演者で、なかなかのデキだったのではないかと思う。 エピローグは予測できたが、これがないとこの物語は救えないような気がした。 |
No.1 | 6点 | touko | |
(2011/04/04 22:26登録) 毎度ですが、今時の庶民の鬱憤の代弁者的内容。 今回は、加害者の人権ばかり重視され、被害者がおざなりな風潮に対する意義申し立てのような内容をうまくエンタメ化しています。 ミステリ要素は少ないけれど、読むと溜飲が下がる人も多いんじゃないかなあ。。 |