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ミステリの祭典

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贖罪

作家 湊かなえ
出版日2009年06月
平均点6.27点
書評数11人

No.11 5点 みりん
(2024/06/22 23:07登録)
摩擦力皆無でスルスルッと喉を通過するそうめんのようになめらかな独白体が持ち味ですねぇ(まだ3作しか読んでないが笑) 300ページ2h50min読了。
物語の舞台「日本一綺麗な街」はその実、湿り切っている。ここで育った少女達に悲劇が連鎖するのにも納得するほどに何か陰湿な雰囲気があった。『告白』と違ってスカッとしない。こちらこそが真のイヤミスか…

No.10 6点 パメル
(2021/05/02 09:08登録)
悲惨な事件を通して人間の黒い心理をえぐり出す連作形式のノワール小説に仕上がっている。
舞台は「日本一空気のきれいな場所」といわれる田舎町。小学校のグラウンドで四人の友達と遊んでいた小学四年の少女が作業員とおぼしき男に連れ去られて殺される事件が起きる。被害者の母親は犯人を目撃しながらも、あやふやな記憶しか残っていないという四人の少女を糾弾、それがトラウマになった彼女たちは大人になってもそれを引きずることになる。
かくて各章では、その後の少女たちの軌跡と現在が、作者の有名作「告白」と同様の告白体で描かれていく。語り口や語り手が章ごとに変わる構成も「告白」の延長上にあるが、事件の被害者と加害者の対立劇ではなく、一種の逆恨み的な復讐状況を作り出すうまさ、そして各章ごとにヒロインを新たな事件に直面させる入れ子づくりのうまさは、手練れものといっていい。
一見殺伐とした作者の作風がもてはやされるのも、そうした人間の闇、病理の摘出が心の浄化に結び付くからなのでしょう。

No.9 4点 斎藤警部
(2018/11/25 09:47登録)
渾身の一筆書き、いい感じだ! でもミステリとしちゃしっかり落ちてない! イヤミスではないイヤノベル!! 湊君のイヤの勘所はミステリと巧みに溶け合ってないとセンス・オヴ・ワンダーのセの字も無えだ!!「実はそんなに●●●じゃありませんでした」的ひっくり返しがなんとも、詰まらん。 弱い! もっと胸を突く大真相を!! いや違う、目を疑う蜃気楼の舞台裏を!!!

No.8 10点 kowai
(2014/05/05 18:41登録)
ついドラマまで見てしまうほど(キャスト以外はちょっと。。)、暗ーい展開でとても良かったです。告白より、完成度が高いと思います。

No.7 7点 E-BANKER
(2013/03/19 23:59登録)
「告白」、「少女」に続く3作目が本作。
主な事件関係者である5人がそれぞれの視点で語る、という連作形式の作品。
~15年前、静かな田舎町で一人の女児が殺害された。直前まで一緒に遊んでいた四人の女の子は、犯人と思われる男と言葉を交わしていたものの、なぜか顔が思い出せず、事件は迷宮入りとなる。娘を喪った母親は彼女たちに言った・・・『あなたたちを絶対に許さない必ず犯人を見つけなさい・・・』 十字架を背負わされたまま成長した四人に降りかかる悲劇の連鎖とは?~

①「フランス人形」=「紗英」の章。四人の中で一番おとなしい少女だった紗英は、事件を機に大人の体になれなくなってしまう・・・。そして、結婚した男性の正体は実は・・・。そして起こる悲劇! 
②「PTA臨時総会」=「真紀」の章。四人の中のリーダー格でしっかり者だった真紀は、事件への贖罪から教師の道へ。そんな真紀の前に突然現れた殺人者が生徒に襲いかかる!
③「くまの兄弟」=「晶子」の章。四人の中で一番足の早かった晶子は事件の影響で引き籠もり状態へ。一番慕っていた兄の子供と関わるうちにとんでもない悲劇が襲う・・・。これは・・・なんていう「悪意」だ!
④「とつきとおか」=「由佳」の章。四人の中でも目立たなかった少女、由佳。病弱な姉しか眼中に無い父母との関係のなかで、なぜか警察官の男性に惹かれるようになる・・・。そして、悲劇の連鎖は由佳へも及んでしまう。
⑤「償い」=殺された女児・エミリの母親「麻子」の章。東京生まれのお嬢様・麻子はやはり性格も歪んでいた。秘密を抱えた子供であったエミリ殺害の謎が明らかになるとき・・・

以上5編+α
とにかく「悪意」に満ちている。
読み進めていくほどに、作者の企みというか、この「悪意」の渦に呑み込まれてしまうような感覚。
このプロットはやはりスゴいね。
読者を自分の世界観にグイグイ引き込むパワーを感じる。

確かに「告白」とはプロットが似通っているし、インパクトやミステリーとしての体裁としては「告白」の方が上かもしれない。
けど、これもなかなかのものだと思う。
登場人物の造形や山間の田舎町という舞台設定も実に練られている。
さすがに、売れる作家というのは違うね。

No.6 6点 シーマスター
(2012/06/27 23:19登録)
作者の三作目。
ここまで刊行順に読んできた印象としては、右肩下がりの感が否めない。

本作は作者得意のモノローグ形式の連続で進められる。
それぞれの章話は回り道が多すぎて倦怠感を催すこともあるが、読了してみれば(雰囲気づくりも含めて)決して無駄話が多かったわけではないと思う。
全体の構成も前二作同様、細かい伏線が鏤められたものになっているが、その緻密さがあまりにも多くの「偶然」という部品に支えられているためミステリーとしてはちょっとキビシイかな~という感触は拭えない。
ただ、これは作者の確信犯というか本作を書くにあたって始めから「偶然に頼らない」ことを放棄していた、というより偶然に頼ることを前提として創作したという気もするけどね。

まぁ何だかんだ言っても、この作者には読ませる力があると思う。特に人の悪意をテーマにしたドロドロネタを好む読者にとっては。
恐らく自分はこの人の以後の作品も文庫化され次第、手に取ってしまうのだろう。
ミステリとして、どうのこうのというより週刊誌のスキャンダル記事でも読む感覚で。

No.5 5点 測量ボ-イ
(2011/08/16 13:20登録)
妻が借りてきた本の回し読み。
話題作である「告白」の2番煎じだと世間でよく言われて
いるようですが、確かにイメ-ジは似ていますよね。
謎とき要素が薄いので、このサイトの採点では残念ながら
これ以上の点数にはしにくいです。

No.4 6点 touko
(2011/04/06 21:49登録)
告白と似た形式の作品。

告白に比べると、衝撃度は低いですが、相変わらずえげつなさすぎる人物造形がいっそすがすがしいくらいの、悪意に満ちた小説ですねえ。

ラストはちょっとぬるいですが、告白との差別化のためにも、ありだと思います。

No.3 6点 まさむね
(2010/10/31 21:03登録)
本当は出版順に読みたかったのだが,図書館予約の関係で,「少女」よりも先読せざるを得なかった。(「告白」は読了)
で,この作品。各章ごとに違う視点での独白というスタイルは「告白」と同じ。グイグイ読まされた感も同じ。
特に第1章(紗英パート)と第2章(真紀パート)は良い。その後はちょっとだれ気味な面もあったが,全体的に湊ブラックを感じることはできた。どうせならば,ラストまで完全ブラックでも良かったような気もするが…。

No.2 8点 白い風
(2009/10/29 20:47登録)
先に「告白」を読みたかったが、図書館の予約関係で先にこっちを読みました。
犯罪加害者の弟を描いた東野圭吾さんの「手紙」や罪を背負った少年少女時代を送った天童荒太さんの「永遠の仔」を連想しました。
だから、私は高評価ですね。
「告白」「少女」も読むのがたのしみです。

No.1 6点 あるびれお
(2009/09/09 07:09登録)
「告白」「少女」に続いて、この作品も楽しめました。
ただ、同じような味わいの作品ばかり三つ続いたので、それがちょっと不満です。出版社が東京創元だったので、これまでとは一味違ったものが出てくるのでは、と期待していたせいもありますが。

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