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ミステリの祭典

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扉は閉ざされたまま
碓氷優佳シリーズ

作家 石持浅海
出版日2005年05月
平均点6.43点
書評数37人

No.37 7点
(2022/10/24 19:10登録)
CC&密室&倒叙モノ

大学時代の軽音楽部の同窓会で7人が集まり、そのうちの一人、新山が殺される。犯人は他の一人である伏見。密室で殺される点も冒頭であきらかにされている。

動機当てなのだろうなあと予想はしたが、中途の犯人の心情描写から、いったい何を隠しているのか、それが動機とどうつながるのか、それとも動機なんて全く関係ないのか、わからなくなってしまう。とにかくサスペンスで引っ張ってくれる。

最後に明かされる動機自体は好みではなかった。でも中途の犯人の心情(心配ごと)には納得した。
読み終えてわかる多くの伏線や、素人探偵・優佳の謎解きには感嘆した。
どこに伏線が潜んでいたのか、あまりにも些細すぎてわからないような小説もあるが、本書はわかりやすい。きわめてユーザーフレンドリーで、読み直しするほどではなかった。
そしていちばん気に入ったのは、ラストの優佳の犯人への対峙の仕方。この締め方がこの小説にはピタリとはまっている。

ところで本書は碓氷優佳シリーズの第1作ですね。このあと、どういうふうに続いていくのでしょうか。興味がふくらみます。

No.36 4点 ぷちレコード
(2020/06/24 18:18登録)
タイトル通りの状況の倒叙ものとして、どこまでロジックを詰めていけるか奮闘している。だが、犯罪動機とその解明に不自然さを感じる。さらに肝心の論理の積み重ね部分の詰めが甘い。

No.35 6点 名探偵ジャパン
(2019/03/04 11:47登録)
純粋にミステリとしては結構楽しめました。
倒叙ものの緊張感は十分ですし、「ああ、それやっちゃったなぁ~」という、ミスに気がついたときの犯人との一体感(?)もうまく表現されていました。文章も読みやすく、すんなり頭に入ってきます。

~ここからネタバレがあります~


ただ、多くの評者の方が問題視しているように、私も犯人の動機には「?」となりました。
いざ、その段になったら病院に、「こいつ、危ない病気を持ってるかもしれませんよ」と被害者の行いを暴露するとともに、申告すればよかったのではないでしょうか。
もうひとつの不満点は、これも多くの評者の方の意見に同意なのですが、ラストの犯人の処遇ですね。「大義があってイケメンであれば殺人は肯定される」というメッセージなのかと思ってしまいます。
ラストに犯人が逃げ延びるというミステリは他にもありますが、その多くが、狡猾な犯人の頭脳に誰も追いつけなかったという、ある種犯人のアンチヒーロー的な魅力に支えられて成り立っているのに対し、本作はずさんな犯行を探偵に見破られたうえで、お目こぼしをもらっているのですから、そういった犯人側の魅力も一切ありません。ラノベの主人公みたいな探偵も含め、不快なバカップルという印象だけでした。

No.34 6点 ミステリ初心者
(2018/12/30 22:32登録)
ネタバレをしています。

 非常に論理的?ロジカル? 当てはまる言葉がわかりませんが、すごかったです。
 探偵は天才ですね! どんなに些細な情報でも記憶し、その中から推理に役立つ情報を洞察し、犯人にたどり着く。人間に思えませんでしたw ホームズばりですね(よく知りませんが)。
 倒叙形式の推理小説は、犯人が犯したミスを発見できるかが、読者が考える問題だと思います。しかし、私は全く分かりませんでした;; 被害者がド近眼ということを心にとどめておいたんですが…。唯一、動機だけ、なんとな~く察しました。

 難癖をつけるようで申し訳ないのですが、200pぐらいまでドアストッパーがどうのこうののシーンが多くて、やや盛り上がりが遅かった気がします。犯人の犯行は最初のページからあり、考える要素やヒントは出ているのですが、物語的盛り上がりシーンも遅い気がしました。
 探偵による犯人特定シーンは、非常に論理的で面白いのですが、帰納的な気がします。だからこそ、あの結末なんでしょうが。特に、安東を犯人から外すシーンは、動機が元になっているような?
 碓氷優佳のキャラクターは、推理小説によく出そうな見た目と性格(?)で、嫌いでしたw

 私は、最後、犯人が自殺すると予想したんですが、死ななかったですね。その意味での、探偵の「私を抱かなかったことを後悔する」発言だったと感じたんですが。犯人は、どうしても優佳とは付き合えないハズでは?

No.33 9点
(2018/10/28 22:00登録)
不思議な性格を持つ女探偵・碓氷優佳初の登場。実に気に入った。
緊迫感により一気に読み終わった。

No.32 4点 パメル
(2018/07/17 01:18登録)
倒叙形式の作品で冒頭数ページで、すでに犯人と殺害方法は明らかにされている。今後、どのような展開で楽しませてくれるのかと期待したのだが・・・。
このような作品の場合、フーダニット、ハウダニットに関しては犠牲にしているのだから、例えばじりじりと犯人を追い詰める様子とか、精緻なロジックで偽装工作を暴いていくとかが、面白さを左右するのだと思うが(まあ、設定上難しいと思いながらも)、手に汗握る緊迫感は伝わらないし、探偵役の推理のロジックも「普通の人ならば・・・だろう」という類ばかりで行動心理に甘さを感じる。トリックもなあ・・・。

No.31 8点 amamori
(2017/02/26 18:43登録)
倒叙ものは、犯人がどこでミスをしたかという点だけが読みどころだと、つまらないですが、この作品は、動機の謎と、犯人に近い関係を持った探偵役がいる、という点が大変魅力です。
しかし、ラストに不満のある読者が多いのでは、と思いましたが、やはりそのようですね。犯人の動機、優佳との関係、もう少し納得できるものに改変したいところです。
そう思っていたらWOWWOWが製作したドラマ版があり、どうなってるかなと観てみたら、やはり改変されており、そうきたか、と面白く観れました。
ここが惜しいな,というような残念な作品に出会ったら、自分ならどう書き直すかな、というような読み方もできる、と教えてくれた作品。
基本的に魅力的な作品でした。

No.30 5点 ボナンザ
(2016/04/02 23:18登録)
一部に作り物臭さや突っ込み所はあるが、妙なリアリティのある佳作ではあると思う。

No.29 6点 かわにゃん
(2014/12/01 11:55登録)
文章力・構成がすばらしく、引き込まれるようにスイスイ読むことが出来ました。
私は文庫版を読みましたが、巻末にプロローグ?(犯人が殺人を決意する発端になったエピソード)が書き加えられているので、未読の方にもそちらをおすすめします。
また、犯人・探偵役の二人をはじめ、登場人物が大変魅力的で、よく作り込まれているな~と。
逆に、それだけにオチの部分での探偵役・優佳の言動に???となってしまったのが非常に残念。





以下、大いにネタバレ含みます。ご了承ください。
また、以下の疑問に御回答頂ける方、ぜひよろしくお願いします。





・この本を語る上で外せない「動機」について。
絶対に納得できない!というほどではないですが、「殺人の動機とは常人には理解しがたいもの」という分を差し引いても、やはり弱いかなと。
せめて何度も説得したけど被害者は聞き入れなかった、とかの描写があれば。


・犯行にまつわる疑問点
果たしてストッパーをする必要があったのでしょうか?
犯人最大の目的は死体発見の遅延。そして作中で犯行前に「合鍵はない」ということを犯人は知り得ています。
合鍵がない以上、ストッパーを掛けずしても「犯人が望んだ状況」は成立するわけで。いや、むしろそちらの方が「鍵を掛けたまま寝てしまった」というには圧倒的に自然な状況かと思うのですが。
あと、最初に被害者の部屋の灯りつけちゃってますが、被害者がもし「一度も照明のスイッチ触れていなかった」としたら、警察になんていうつもりだったんでしょうね。

・「対話」について
最大の?はこの部分。
いくら学生時代好きだった(今も?)人でも、犯罪者を隠匿してしまうのはいかがなものかと。
読んでいて、思わず「優佳ちゃん本気で言ってんの!?」とつっこんでしまいました。
この作品自体が殺人を容認してる(ばれなきゃOKと言っている)ように感じられて、非常に残念。続編ではお付き合いを始めていて、のうのうと暮らしているような描写ですし・・・。
冒頭にも書いたようにとても魅力的な二人だったのに、最後の最後で裏切られた気分でした。

No.28 8点 ayulifeman
(2012/05/26 15:36登録)
単純にこの状況設定がとても楽しめた。
ぐいぐいっと一気読みです。
次は何を突っ込まれるのか?探偵役の発言で味わえるドキドキ感はたまらない。

No.27 7点 いいちこ
(2012/01/13 20:47登録)
作品全体のプロットの秀逸さと解決に至る精緻なロジックは評価。
しかし、キャラクター造形と展開されるストーリーに強いギャップを感じてしまい、終始リアリティに欠ける印象。
そして決定的に問題なのは動機とラスト。
犯人に共感できず、従って結末に納得ができずカタルシスは得られなかった。
技術的には水準以上なだけに惜しい作品

No.26 4点 蟷螂の斧
(2011/11/04 17:43登録)
刑事コロンボのようです。扉が閉ざされたままの理由を、最後までひっぱて行くのですが、その理由が明らかになった時、期待したほどのインパクトはなかった。偽装工作の段階で重大ななミスを犯してしまっているので、これではすぐバレてしまうのでは?

No.25 6点 yoneppi
(2011/10/18 22:17登録)
頭脳戦といえるかは微妙だが、表情や言葉尻を深読みする犯人と探偵の戦いは結構楽しめた。動機云々よりもそれだけ頭がいいのに犯行現場でミスしすぎなのが不思議。

No.24 5点 haruka
(2011/09/21 21:57登録)
典型的な倒叙モノとして、犯人と探偵の攻防は丁寧に描かれていると思う。だがやはり倒叙モノはいかに犯人に肩入れできるかで緊迫感が変わるので、その点でこの犯人に感情移入できる読者は少ないと思う。

No.23 5点 3880403
(2011/04/11 19:02登録)
キャラがウザすぎる(探偵役も犯人も)
読み易いが、感情移入出来なかったためドキドキしなかった。

No.22 6点 大泉耕作
(2011/04/10 00:44登録)
ここまで粗末な動機を隠して一連の物語を進行させる、すごいアラワザ。
最初から動機を書いておけばいいものを。
思いのほか探偵役にもあんまり魅力がなかったように思う。
ただし、論理性にかけては文句なし。面白い小説なンですが・・・。

No.21 6点 touko
(2011/04/02 23:35登録)
舞台劇のような作品。
犯人と探偵役のやり取りが、緊迫感があります。
両者のキャラも、かつて彼氏彼女になり損ねた関係というのも、面白かったです。

なぜ一定時間を過ぎるまでは、扉は閉ざされたままにしなければならないのかについては、誰しも思うところでしょうけれど、強引すぎですよね……。

No.20 7点 まさむね
(2010/07/10 13:59登録)
 なぜ犯人は密室を維持するのか。しかも逃亡や証拠隠滅のためではなく「時間稼ぎ」のために。リスクを犯してまでなぜ?
 状況設定が秀逸ですし,この謎は確かに興味をそそられましたね。
 ただ,その「回答」に至る過程において,やっぱり「動機」の非現実感に引っかかってしまいました。秀逸な状況設定のための止むを得ない措置なのだ(何とかできたような気もするが)と自分を説得させつつ,読了。
 なお,倒叙形式の見所たる「いかに暴かれていくか」の点については,文句なしに良かった。
 結末も私的には想定外で良かった。(もちろん,こちらも「非現実感」は否定できませんが…)動機等の違和感の割には妙な読後感の良さ。
 総合的にこの点数で。

No.19 6点 文生
(2010/01/23 14:09登録)
多くの指摘があるように、動機に違和感がありすぎる。
動機は気にしなくていいという人もいますが、なぜ頑なに死体を発見させたくないのかという謎はこの物語の大きな牽引力となっているので気にするなという方が無理でしょう
というわけで、特異な設定下でのロジカルな本格ミステリとして非常に面白い作品なんだけど、先の動機の件と扉を開けない理由に無理があるので点数は6点がせいいっぱいだなあ。

No.18 7点 E-BANKER
(2009/09/19 17:18登録)
賛否両論いろいろある作品みたいですが、素直に作品世界に浸れば、かなり面白い作品じゃないかというのが感想。
よく言われている「動機の弱さ」は気になりませんね。本作の試みに「動機」は特別重きは置かなくてよいでしょう。
倒叙形式の場合、犯人の心理描写に関してで如何に読者を引き付けるか、という点が大事だと思いますが、そういう意味で伏見氏の心理描写(徐々に追い詰められていく)も十分楽しめました。

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