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ミステリの祭典

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忠臣蔵元禄十五年の反逆

作家 井沢元彦
出版日1988年12月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2020/09/09 22:30登録)
あまりにも巧妙なドラマ構造をもつ日本人の劇『忠臣蔵』。史実と虚構の狭間で熟成された情念の物語には見落とされていた事実がありすぎた。若き劇作家が『忠臣蔵』の〈そもそもの形〉を探り始めた時、見えてきた不吉な文脈とは?物語の謎の核心に迫るにつれ、彼の身にも危険が…。討ち入りのプロットに巧みに仕組まれた〈将軍誅伐〉の符牒を明かす、最も明晰な忠臣蔵ミステリー。
『BOOK』データベースより。

勉強にはなるが物語としては面白くはないといった歴史ミステリ。中盤までは仮名手本忠臣蔵の考察に終始し、肝心の赤穂浪士の話がほとんど出てきません。テーマはひたすら浅野内匠頭が何故松の廊下で刃傷に及んだのかで、ここでいったん結論が出ます。巧妙に仕掛けられたトリックにより、不可能犯罪を成し遂げたがごとく作者は過大評価をしていますが、一応納得は行くものの世間をざわつかせるほどの新説とは思えません。

後半はやっと実際の史実に基づいて様々な文献を用い、推理を始めますが、結局は浅野が乱心だったのか正気だったのかの一点に集約されています。大石内蔵助がどのような経緯で仇討ちを決行したかについては、おまけ程度に留まっています。ですから、この小説に赤穂浪士の物語を語ったものを期待すると必ず裏切られます。登場するのは大石、江戸急進派の三人と片岡源五右衛門、大野九郎兵衛くらいで、後は刃傷事件に関わる人々や浅野の弟の大学長広、そして当時の将軍綱吉。
どう考えても本作は『忠臣蔵』を名乗るべきではないと思いますね。敢えて名付けるなら『浅野内匠頭、刃傷の謎』でしょうか。一方、主人公の道家和弘が何者かに付け狙われる事件に関しては、あまりにも偶然の要素が強く、ご都合主義と言われても仕方ないのではないでしょうか。

No.1 5点 touko
(2011/04/05 20:41登録)
忠臣蔵として親しまれている、赤穂浪士事件の真相を探る歴史ミステリ。
史実としての赤穂浪士事件の謎解きに新鮮味はなかったのですが(←この本がきっかけなのかもしれませんが、今はわりとメジャーな説なので)、仮名手本忠臣蔵に隠された意図の方は面白かったです。

でも、この作者のノンフィクションのシリーズ「逆説の日本史」であれば、2冊くらい読めそうなボリュームがあるのに、いくら小説でも、扱っているネタがこれだけって……短編かせいぜい中編のネタを、ずいぶんもったいぶって、同じことを何度も繰り返したり、くどくど念押ししたりして、水増ししているなあという印象。

歴史の謎を解くのと同時進行で、主人公は命を狙われているのですが、何度も襲われているくせに、気のせいかも? なんて思っているくらいなので、緊張感皆無。
枚数稼ぎをするなら、あっさりしすぎてつけたしみたいな主人公を巡るサスペンスの方をもっと書き込めばいいのに。。

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