こうさんの登録情報 | |
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平均点:6.29点 | 書評数:649件 |
No.629 | 6点 | 弥勒の掌 我孫子武丸 |
(2012/10/20 00:37登録) 我孫子武丸作じゃなくて新人作で前情報がなければ驚いたかもしれませんが我孫子氏作とわかっていると身構えてしまい流石に日常でもありうる〇〇なので肝の部分は予想通りでした。後味はいいとは言えませんがさっと読めますしまあまあ楽しめました。 |
No.628 | 6点 | 葬儀屋の未亡人 フィリップ・マーゴリン |
(2012/06/23 01:18登録) 「暗闇の囚人」や「黒い薔薇」のあとに書かれた第6作目ですが高潔な若き判事が主人公で夫を自宅で殺害され居合わせた女性上院議員が犯人を射殺した事件がメインです。 展開はマーゴリンらしいですが今回のプロットは単調でラストまで予想は付けやすいです。主人公が青臭く妻も含めてあまり魅力を感じないのと主人公が妻と離れて出張したエピソードがグリシャムの「法律事務所」を思わせる所が不満でした。(展開は決して同じではないのですが) 読みやすいですしマーゴリンが好きなので6点としましたが初めて読む作品ならともかく何作か既に読んでいると評価が下がりそうな作品です。 |
No.627 | 8点 | 虎の眼 ウィルバー・スミス |
(2012/06/23 01:05登録) 90年代前半に仁賀克雄が「熱砂の三人」を激賞していたのをきっかけに手に取った作家でした。 この作品は海洋冒険小説ですが魅力的なアウトロー主人公とヒロインによる宝探しで宝を狙う敵との闘いが描かれる単純で典型的な冒険小説ですが楽しめました。 ウィルバー・スミスの作品はどれも安心して読める起承転結のはっきりした冒険小説だと思いますがその点デズモンド・バグリィに通じる所があるかなと当時思いました。 この作品の読みどころであるラストは事前のストーリー自体がそれを予測させている所が気に入りません。「一度あることは二度ある」体裁でなければもっと良かったと思います。その点は不満ですが面白いことは面白いです。 |
No.626 | 5点 | 分身 東野圭吾 |
(2012/06/23 00:47登録) (ネタバレあります) 90年代後半に羊の〇〇〇〇のニュースを見て絵空事かと思ったことに現実感が出てきたことが思い出されます。読んだのがその直後だったので予想通りで驚きは少なかったですが流行の話題を先取りした作品として作者の先見の明には驚かされました。この作品も読みやすいですが現代では賞味期限切れで驚きの少ない題材になったかと思います。 |
No.625 | 7点 | アムトラック66列車強奪 クリストファー・ハイド |
(2012/06/23 00:30登録) この作品は明らかに日本語タイトルで損している作品だと当時思いました。タイトルからは単純な列車強盗ストーリーにしか見えませんが本編は主人公たちが強盗を試みた列車がテロリストたちにハイジャックされているという奇想天外なストーリーです。 強奪ものの常として主人公は魅力的に描かれており感情移入しやすくなっているのと武器の乏しい勇気ある一般乗客たちが主人公たちと協力してハイジャック犯と対決してゆくストーリーは単純ですが面白いです。バグリィの「高い砦」ほど乗客がアマチュアばかりじゃないのがちょっと残念ではありますがイギリス型冒険小説風なのが気に入った作品です。 |
No.624 | 7点 | 目は嘘をつく ジェイン・スタントン・ヒッチコック |
(2012/04/24 00:30登録) 発売当時仁賀克雄が激賞していて手に取った記憶がありますがサスペンスの佳作だと思います。 中年女性のだまし絵画家が主人公で大富豪の老女の依頼を受け屋敷を訪問するうちに15年前の迷宮入りした殺人事件を追ってゆく、というのが基本ストーリーですが主人公や依頼人の老女の人物造形が秀逸ですね。終盤のたたみかける展開も皮肉が効いていて見事です。ページ配分やスムーズな流れから最後の展開は予想できるかもしれませんが私は大して予想もせずに読み進めたのがよかったのか大いに楽しんだ記憶があります。 |
No.623 | 5点 | モルダウの黒い流れ ライオネル・デヴィッドスン |
(2012/04/24 00:09登録) 生活に困窮しきった親の会社を乗っ取られたイギリスのボンボン息子を主人公に据えこの素人がチェコを舞台にスパイに間違われ活躍してゆくオーソドックスな巻き込まれ型スリラー(冒険小説?)といった趣きでした。 ストーリーは甘く、のんびりと展開しますが私はこういうオーソドックスなイギリス型のスリラーは結構好きですね。 |
No.622 | 5点 | 奥信濃鬼女伝説殺人事件 梶龍雄 |
(2012/04/23 23:52登録) kanamoriさんの書評通りでシラケ姫シリーズ以上の言語センス、文体がとにかく凄まじいとしかいいようがありません。版元の要請なのか主人公が男だともっと売れないと判断したんでしょうかなんでこんな文体にしたのかわかりませんが当時でも読みづらかったんだろうなあと思います。 登場人物とストーリーの流れからは犯人は予想し易いです。作者のやろうとしたこともよくわかりますけど結構綱渡りなプロットであまり感心するものではありませんでした。 文章はある意味最大の破壊力があるかもしれません。 |
No.621 | 6点 | 大臣の殺人 梶龍雄 |
(2012/04/23 23:41登録) 明治時代を舞台に実在した黒田清隆の妻殺し疑惑を絡めた本格推理小説でした。 人物誤認のトリックは現代よりは明治時代の方がまだ説得力があるかもしれませんが個人的にはあまり好きではありません。 黒田清隆は総理大臣経験者、開拓使初代長官のイメージしかなかったんで書いてある内容は結構驚きでした。 下手な女子大生が出てくる作品程文章に不満はなくそこそこ楽しめました。 |
No.620 | 6点 | 幻狼殺人事件 梶龍雄 |
(2012/04/09 00:52登録) 全体的なプロットは良く考えられていると思いますが流石に回りくどい、他にやり方があるだろうと感じました。またちょっと前時代的なストーリーかなあと思います。過去の不審死の真相は扱っている時代を考えればさもありなん、と納得できますが現代では起こり得ないので推理するのは難しいでしょう。職業が伏線にはなっているんでしょうが。 読後感は悪くないのですが残された登場人物の後味は悪そうなストーリーではありました。 この作品は会話(口語)はあまり気にならずその点は読み易かったです。 |
No.619 | 7点 | 摩天楼の身代金 リチャード・ジェサップ |
(2012/04/09 00:40登録) 身代金強奪物の佳作だと思います。 身代金強奪のトリックは伏線もあからさまですが日本人作家のプロットよりもいい意味でおおざっぱというかアメリカ的な印象が強いです。 主人公が優秀で全てを計画通りに行ってゆくプロフェッショナルな所は読みごたえがありますが逆に計画通り淡々と殺人を行ってゆく所はちょっと共感しづらかったです。日本では身代金物は殺人が起こらない作品が多いのでその点はちょっと違和感がありましたが楽しめる作品なのは間違いないと思います。 |
No.618 | 6点 | 悪夢のバカンス シャーリー・コンラン |
(2012/04/09 00:27登録) 折原一のガイド本の推薦で手に取った作品です。 夫をバカンス先の島のクーデターで惨殺された中年の妻5人によるジャングルサバイバルの話でした。 上下巻で長いのが難点ですがジャングルでの生活に順応してたくましく生きてゆく5人の主人公たちのストーリーに共感できますしリーダビリティの高い作品だと思います。 人喰いの習慣のある原住民の描写やジャングルで生きてゆくためにネズミを始め様々な動物を殺す描写などはちょっとどぎつかったです。 最後も安易なハッピーエンドでない所がちょっと予想外で爽快とは言えませんが力作には違いないと思います。 |
No.617 | 6点 | まやかしの風景画 ピーター・ワトスン |
(2012/04/02 01:58登録) ガイド本の折原一推薦で読んだ一冊です。一枚の絵に隠された財宝の手がかりを持ち主の女性と持ち込まれた画廊主が捜索するストーリーですがヒーロー、ヒロイン、敵がいる伝統的な冒険小説スタイルでした。 問題の絵画は巻頭に入ってますが読者に隠された謎を推理する余地は全くありません。ただ絵画に対する知識がなくても主人公たちの捜索劇は楽しめますし視覚に訴えるストーリーだと思います。 |
No.616 | 7点 | 旅行者 ジョン・カッツェンバック |
(2012/04/02 01:44登録) ガイド本の折原一の推薦があって読んだ作品です。 殺人鬼が女学生を誘拐し自分の犯罪を記録させるという変わったサイコサスペンスでした。 彼らと殺人鬼の弟である精神科医と姪を殺された女刑事の4人のストーリーが交錯してゆく構成になっています。 上下巻で長いですが中盤ちょっとだれるものの一気に読まされました。読後感がいい作品ではありませんが変わった構成のサスペンスの佳品だと思います。 |
No.615 | 5点 | 幻の蝶殺人事件 梶龍雄 |
(2012/04/02 01:34登録) シリーズ第1弾は梶作品独特の口語センスが炸裂していますね。大学構内の殺人なのに学園祭が中止にならないのも変ですが動機にはひとひねりありますしまあまあでした。ただちょっと冗長だったです。 |
No.614 | 6点 | 階段 ヴィクター・カニング |
(2012/04/01 01:18登録) ヒッチコックのファミリープロットの原作だそうです。 誘拐事件捜査のストーリーと女霊媒師とその恋人のストーリーが交互に描写されストーリーが交叉するところまでは予想通りでしたがそのあとの展開はばった、ばったと登場人物が死んでゆき結構予想外のストーリーでした。原題は秀逸ですが「階段」も暗示的で悪くないタイトルだと思います。 |
No.613 | 6点 | 切り裂く男 ウィリアム・J・コグリン |
(2012/04/01 01:05登録) 数年前無罪になった殺人鬼と無罪を勝ち取った弁護士、逮捕した刑事がメインキャストのサイコサスペンスの佳作でした。 心神耗弱が扱われ一味違うストーリーでした。サイコパスもの特有のある程度どきつい描写はありますがさほど気になりません。エンディングは少し甘い感じもしますが。 |
No.612 | 6点 | 殺人者は長く眠る 梶龍雄 |
(2012/04/01 00:49登録) 廣済堂文庫の草軽電鉄殺人事件で読了しました。 このプロットは海外作品の転用ですが楽しめました。ただ〇〇〇〇がある日本で実現可能なのか30年代なら可能だったのかちょっと疑問に感じるのと、連城作品の様な抒情性が欲しいストーリーですがそれを感じられないのが残念です。また犯人が小物の印象で、騙される被害者もばかだなあという印象が残りました。 |
No.611 | 5点 | 銀座連続殺人手帖 梶龍雄 |
(2012/03/28 00:26登録) シリーズ第3弾は手帳に名前を書かれた一見なんのつながりのない5人が書かれた順番通り殺されてゆく、といった本格好きが好みそうなテーマでした。 相変わらず死語のオンパレードの会話や地の文に多少萎えそうになるのは置いておくとしてちょっと人が死にすぎな点と80年代で吹雪の山荘物でもないのに警察がほぼ関与しないまま素人探偵の捜査のみでストーリーが完結するのは違和感ありまくりでした。せっかくのミッシングリンク物なのに警察だったらもっと早く真相を突き止めるんじゃ、と思わせるストーリーでちょっともったいない作品と感じました。 |
No.610 | 7点 | カーラリー殺人事件 石沢英太郎 |
(2012/03/28 00:13登録) 日本縦断カーラリーが舞台の作品ですが愛人を死に追いやった(追いやられた)男の復讐劇、銀行強盗犯と消えたお金の捜索などがカーラリー参加者を描写しながら進んでゆくストーリーでした。 カーラリーのスタートからゴールまでの描写、参加者の中に犯人、探偵(役)、警官がいてカーラリー中に事件も解決、といった構成はラヴゼイの「死の競歩」を思い起こさせますがこの作品の方が場所の移動があり、味のある(事件に無関係な)参加者の描写などもあり楽しめました。 肝のトリックは確実性には欠け、失敗した時のリスクが大きすぎて使えないと思いますがカーラリーと登場人物たちのサイドストーリー、構成が楽しめたので個人的には満足です。 |