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ミステリの祭典

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階段

作家 ヴィクター・カニング
出版日1974年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2020/06/11 20:26登録)
(ネタバレなし)
 誘拐団「トレーダー」が暗躍。一味は二回続けて英国政界の要人をひそかに誘拐し、そこそこの身代金を獲得しては人質を放免していた。世論の追求を恐れた首相はマスコミに箝口令を敷き、精鋭集団に捜査を任せるが、トレーダーは悪事の本命といえる第三の計画を企てていた。そんな頃、悪夢に悩む富豪の老婦人グレース・レインバードは、知己の仲介で自称・霊媒師の30代半ばの女性ブランチ・タイラー(「マダム・ブランチ」)と対面。マダム・ブランチは、グレースの亡き妹ハリエットの忘れ形見で、行方不明の遺児の存在を訴えるが。

 1972年の英国作品。
 ヒッチコックが晩年に本作を映画化した『ファミリー・プロット』は数十年前に一度観たきりで、細かいいくつかのシーン以外ほとんど印象に残っていない(どちらかといえば、あまり面白くなかったような記憶がある)。
 そういうわけで映画との比較はしないで単品の作品として読んだが、誘拐団「トレーダー」に振り回される捜査陣のハナシと、霊媒師マダム・ブランチおよびその恋人ジョージ・ラムレー、そしてそのブランチに相談を依頼したグレース老婦人たちのストーリー。その2つがほぼ平行的にカットバックで進行。
 ふむ、B・S・バリンジャーみたいだな、と思って読んでいくと、中盤で2つの話の相関は明かされて、あとはあるベクトルに向けて焦点が絞り込まれるサスペンス譚に転じていく。
 双方の話の関連具合は大方の読者に予想がつくだろうから、本当は最後までこの小説の構造そのものを謎として引っ張りたかった作者が、早々と途中で試合放棄したのかな? とも考えた。
 ただまあ、終盤の悪事の露見具合はヒラリイ・ウォー風というかロイ・ヴィカーズ風というか「ああ、そんなところから」という感じでちょっと面白い(いや、フツーでしょ、というヒトもいるかもしれんが~笑~)。
 でもって最後まで読んで……。あ~、まあ、こういう種類のミステリね、とちょっと軽く感銘。いい感じに(中略)になった。
 
 それなり、またはそれ以上に面白かったけれど、訳者・山本光伸のあとがきで「世界の推理作家のベスト・シックスに入るといわれる、ヴィクター・カニング」と書いてあり、いや、そんな高評、聞いたことねーよと思わず突っ込む。Wikipediaならその「~入るといわれる」の箇所に「誰から?」のマーキングを貼られるところだ。
 ちなみに本書が邦訳された74年はまだパズラー三巨頭(クイーンは片割れのみ)もロス・マクも健在だった。ビッグ4はその面々で確定として、あとの一人はシムノンあたりか?  

 舐めてかかると、いい感じで小技で返してくる。そういう意味では好きなタイプの長編。もう一度『ファミリー・プロット』を観返さなければ正確なことは言えないけれど、たぶん映画よりはずっと面白いでしょう。
 実質6.5点というところで。

No.1 6点 こう
(2012/04/01 01:18登録)
 ヒッチコックのファミリープロットの原作だそうです。
誘拐事件捜査のストーリーと女霊媒師とその恋人のストーリーが交互に描写されストーリーが交叉するところまでは予想通りでしたがそのあとの展開はばった、ばったと登場人物が死んでゆき結構予想外のストーリーでした。原題は秀逸ですが「階段」も暗示的で悪くないタイトルだと思います。 

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