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ミステリの祭典

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弥勒の掌

作家 我孫子武丸
出版日2005年04月
平均点5.53点
書評数32人

No.32 6点 パメル
(2024/01/26 07:17登録)
高校で数学を教えている辻恭一は、教え子を妊娠させてしまうという不祥事を起こして以来、妻とは家庭内別居状態だった。ある日、妻がいなくなり嫌気がして出て行ったのだと思い、居場所を探すわけでもなく、捜索願を出すこともなかった。やがて警察から妻の失踪に辻が関与しているのではと疑われるように。一方刑事の蛯原は、汚職の疑いで人事に目をつけられていた。そんな中、妻がラブホテルで殺されたと一報が入る。蛯原は、妻を殺した人間を見つけ出そうとするが。
辻と蛯原の視点が交互の描かれ、それぞれ自分の妻の行方、自分の妻を殺した犯人の行方を捜していく。するとどちらの線からも、怪しい噂が山ほどあるといわれる宗教団体・救いの御手に行き着く。
宗教団体の内部や手口が丁寧に描かれており、辻が宗教団体の体験入信する箇所は読み応えがある。またリアリズムを感じさせる警察の描き方の丁寧さがあいまって物語を支えている。
奇跡を起こさせるという教祖・弥勒様の正体とは何なのか。二人の妻に関わる事件の真相は。小説的な技巧、ミステリ的な技巧を凝らし計算されたカタルシスへ向かう。最終章で明かされる全体の構図は、驚いたが少し無理があるように感じた。作者はこの大仕掛けを成立させるために、古典的な叙述トリックと現代的な機械トリックを大胆に組み合わせている。

No.31 7点 バード
(2020/06/22 21:34登録)
(ネタバレあり)

本作の仕掛け(以下参照)の一つ一つは、前例があったり、小粒だったりするのかもしれないが、個々の仕掛けが上手く噛み合い、全体としては中々に凝った作品な気がする。
我孫子さんのナンバー1が『殺戮にいたる病』なのは揺るがないにしても、『殺戮』は話が話なので、こちらの方が無難に勧めやすい気がする。といっても本作のストーリーも割とえげつない話だけどね。(特に茂木は気の毒よ。)

本作の仕掛け
・『〇〇〇〇〇殺し』の手法の二段構えによる犯人隠匿
・第二章(刑事)、三章(教師)の自然な時系列シャッフル
・一人物を二人に錯覚させるトリック(時系列シャッフルとのシナジーが気持ち良い)

このようにまとめると、主人公が一人でなく二人というのが重要なようだ。この構造は『十角館の殺人』の2軸構造に似てるのかも。(「島&本土」の2軸を「教師&刑事」に置き換えた構造。)

No.30 5点 ボナンザ
(2020/03/05 21:49登録)
残念ながら殺戮に至る病にあらゆる面で劣る。
これがデビュー当時に描いた作品ならともかく、久しぶりの本格ものとして出したのでは・・・。

No.29 5点 ミステリ初心者
(2020/01/21 01:57登録)
ネタバレをしています。

 我孫子さんの作品を久しぶりに読みました。”0の殺人”や”探偵映画”が大好きで、昔はハマっていました(笑)。本作品は先ほど書いた2作品よりもちょっと内容が暗いですが、非常に読みやすい文章でスラスラ読めました(宗教系の話が苦手で、底知れない恐怖を覚えます)。

 2人の主人公の主観が入れ替わる系なので、当然ある情報を隠して最後に明かすスタイルだろうと予想しました。しかし、結末が予想外であり、驚愕しました(笑)。
 唯一、頭の片隅に思いついたことは、途中出てきてそのままいなくなる”千秋”が蛯原の家族ではないかということでした。和子説もちらっと考えましたが、まさか辻が殺しているとは(笑)(笑いなのか?)
 蛯原がひとみを殺していたことは完全に予想外です。かといってヒントもたいしてなかった気がするし、なんだかやっつけな感じがあります。

 弥勒様(教団幹部)以外は事件の全容を理解していないタイプの叙述トリック(?)のたぐいだと思います…違ったらすいません(笑)。叙述トリックがメインの推理小説は評価が難しいです…。自分の中での、過去の同ジャンルのトリックと比べて評価がいまいちわかりません。ただ、本作品は叙述トリック特有の”読み返す面白さ”に欠ける気がします。話全体としてはなかなか面白かったのですが(冤罪されそうになる主人公って、自然と犯人から外してしまいますよね。いいミスリードですね)。ちょっとからいかもしれませんが、5としました。

No.28 5点 HORNET
(2019/06/29 14:25登録)
 高校教師・辻の妻がある日帰宅したらいなくなっていた。3年前に女生徒とした不倫以来、関係の冷めきっていた2人だったので「ついに出ていったか」と考え、放っておいたのだが、ある日そんな辻のもとに警察が訪れる。妻に対する捜索願いが出されているというのだ。辻自身はそんなものを出しておらず、いったい誰が?と探っていくうちに、妻が最近怪しげな新興宗教団体と接触していたことが分かってきた。
 一方、刑事の蛯原はある日突然、妻がホテルで殺害されていたという知らせを受ける。悲しみと怒りに燃える蛯原は、自身の手で犯人を突き止めようとする。するとこちらもその過程で、新興宗教団体の影が見えるように。
 あるきっかけでつながった2人は、協力して真相を解明しようとするが―

 新興宗教団体という得体のしれない輩を相手に、さまざまな手がかりをつないで迫っていくストーリーは読み易く面白かった。ラストに教祖にまでたどり着き、真相が明らかになるのだが、名前に関する仕掛けはあったものの、その他はその場で開陳される内容であり、ミステリとしてはそこまでではなかった。
 ラストは非常にブラック。読後感は良くないね。

No.27 4点 レッドキング
(2018/05/28 07:31登録)
「殺戮にいたる病」に魅せられて読んだが イマイチだった

No.26 7点 ミステリーオタク
(2017/06/14 15:53登録)
いや~、よかったと思いますよ。
何よりリーダビリティが高い。そしてあの意外性・・個人的には「殺戮」に次ぐ傑作だと思う。

No.25 6点 パンやん
(2016/04/15 16:09登録)
刑事、教師、共に感情移入し易く、どんどん乗せられて作品世界に魅せられるのであるが、急転直下の結末にビックリ。そのどんでん返しにカタルシスは無い。だって、新興宗教団体をを肯定しているようで、後味すこぶる悪し。

No.24 6点 風桜青紫
(2015/12/19 21:01登録)
パーツひとつひとつを見ていけば実にベタな作品。しかしまあ、二人の視点人物の背景がつながる瞬間の苦々しい痛快さや、ラストシーンのやっつけっぷりは嫌いじゃない。盛大なブラックジョーク小説とでも形容するのがいいかも。実に我孫子らしくてよろしい。

No.23 3点
(2013/12/25 10:27登録)
これはイヤミスかも。といっても書かれた当時はこんな言葉はなかったか。
たんに後味が悪いだけというよりも、このラストに触れるとなぜか笑えてしまう。荒唐無稽といおうか、まるでマンガのようだ。ぱっとしない2連発のどんでん返しの後にやってきただけに、相乗効果で大笑い。ある意味、楽しめたのかもしれません。
オウム事件みたいなのもあったぐらいだから、もっと真面目に読むべきだろうが、社会に訴える要素はほとんどないし、タイムリーに読んでいないということもあって、ずしりとくるものが全くない。

教師と刑事の話が交互に進む展開はけっこう面白い。ただ両者が結びつくのが早すぎる。その後も両者の視点で交互に描かれているが、そのことに何かミステリー的な意味があるのだろうかと、ちょっと勘ぐったりもした。

読みやすいし、中途はワクワクしながら読めたのだが、やはり人に薦められるようなミステリーではない。

No.22 6点 こう
(2012/10/20 00:37登録)
 我孫子武丸作じゃなくて新人作で前情報がなければ驚いたかもしれませんが我孫子氏作とわかっていると身構えてしまい流石に日常でもありうる〇〇なので肝の部分は予想通りでした。後味はいいとは言えませんがさっと読めますしまあまあ楽しめました。

No.21 2点 スパイラルライフ
(2012/02/05 21:42登録)
ミステリとしての内容だけでなく、物語としてもつまらない。買って損したと思った数少ない中の一冊

No.20 6点 蟷螂の斧
(2011/12/30 23:39登録)
ベテランの刑事(強者)と高校教師(弱者)の対比は面白い。関係ないと思われる二人がやがて一つに結びついてゆく。ラストは悪徳刑事らしさがでていて好みです。

No.19 5点 まさむね
(2011/07/16 22:04登録)
 氏の作品だけに,ひねくれて読んでしまったせいもあると思うのですが,結末にはそれほどの驚きを感じませんでした。
 いや,私のようなひねくれ者を惑わす怪しげな展開も良かったし,概ね騙されたし,決して悪い作品ではないのですよ。
 ただ,思ったよりも(?)正攻法でしたね。もっと騙されているかと思ってました。「これで終わっちゃっていいの?」というか・・・後味もかなり悪いしなぁ・・・この点数くらいにしておきましょう。

No.18 6点 T・ランタ
(2011/05/15 08:08登録)
新興宗教を中心とした展開にうっかり騙されてしまいました。
しかし話のスケールの割に、この叙述トリックはどうなのかと思わざるを得ませんが、騙されてしまったものは仕方ありません。
それと二人の主人公が行った行為が重なる辺り、偶然に頼っている部分があるかも知れません。
最後に言わせてもらえれば、宗教団体の真相については置いておくとしてもラストの後味の悪さは好みではありませんでした。
もっともあの主人公には相応しいのかも知れませんが。

No.17 7点 3880403
(2011/04/06 20:09登録)
「殺戮〜」ほどの衝撃はなかったものの騙された。
物足りなさはあるがページ数が少ないのでしかたないかもしれない。

No.16 4点 ちゅんぴ
(2011/03/05 11:55登録)
宗教とミステリーが絡むありがちな設定で、でも・・・と期待したのがいけなかったのかもしれない。
あんまり。

No.15 2点 ムラ
(2010/12/18 09:24登録)
トリックがさすがに分かりやすくて残念。
あの状況だと犯人があいつらしかいないから、もう一回ドンデン返しをしてくれないと驚きが無かったです。
主人公側の腑抜けっぷりの所為で何も感情が沸きませんでした。

No.14 6点 makomako
(2010/12/08 21:03登録)
この作者とはあまり相性がよいとはいえない。「殺戮」などは評判と裏腹に嫌な感じばかり。そのなかでこの作品はまず楽しめたし、トリックもちょっとびっくりするものでした。

No.13 6点 メルカトル
(2010/05/29 22:06登録)
なぜかパチンコ店での、主人公の刑事とオカマの情報屋とのやり取りのシーンが強く印象に残っている。
逆に言うと他の場面が薄いイメージ。
ラストのオチも強引過ぎるというか、偶然に頼りすぎな気がする。
残念ながらあまり驚けなかった。

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