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ミステリの祭典

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木製の王子
木更津悠也シリーズ

作家 麻耶雄嵩
出版日2000年08月
平均点6.57点
書評数30人

No.30 5点 虫暮部
(2022/03/29 13:50登録)
 素材を鑑みれば、もっともっと楽しめた筈なのに……アリバイ問題で消耗し過ぎたか。精緻な状況が存在する必要はあるけどその内容自体はどうでもいい、って困るよね。そこで読み疲れたら読者にとっても本末転倒だし。

 やっと気付いた。“舞奈桐璃” と言う名前は “MY納豆売り” って洒落なんだな。

No.29 6点 ミステリ初心者
(2021/07/30 18:59登録)
ネタバレをしています。

 この作者の作品は割と久しぶりに読んだ気がします。
 この作者にしては、わりと王道な本格推理小説の色が濃い作品でした。ところで、私はこの木更津悠也が出るシリーズは、初作の翼ある闇しか読んでないのですが、大丈夫だったんでしょうかね(笑)。
 ちょっと不思議な館で起こる連続殺人。館で暮らす一家は常識人にみえて、すこしずつ異常さがでてくる。登場人物(主観の一人)の過去には、この一家の子供かと思われる人もいて、かといって冷たくあしらわれたりして、興味がそそります。
 ただ、文章自体はやや読みづらさを感じました。主観の人物がコロコロ変わり、かつ人数も多いです。さらに、音楽、絵、宗教などについての文が個人的に興味がなくて読むのがきつかったです(笑)。主観人物や、宗教の話は、それぞれラストにもかかわってくるのですが、もうちょっと短くしてほしかったです。

 推理小説的要素について。大きく分けて、晃佳殺しのアリバイと、宗教的で意外な動機が良かったです。一家の秘密もダイナミック(?)で楽しめました。
 晃佳殺しについて。容疑者達の非常に細かいタイムテーブルと、それについての検証がなされています。図を文を交互に見て、やっとのことで理解していきました。ピブルの会で毒チョコ張りの推理合戦(?)していましたが、吉村の解答は単純ながら盲点で楽しめました。私は吉村の答えにはたどり着けませんが、タイムテーブルを見た瞬間、全員グル臭いな…と感じてしまいました(笑)。晃佳が整形を繰り返していたという情報が出てからは、白樫家偽家族を確信しました(笑)。
 作者視点では、犯人の犯行の動機と偽一家は、晃佳殺し(全員グルでタイムテーブル通りに動いてアリバイ形成)がやりたかった結果作られたのだと思いますが、動機面もなかなか狂っていて(?)楽しめました。私は全く予想できませんでした。ただ、あれだけ血を見た殺人事件の割に、ラストが極めてあっさりですね。安城と倉田の何かしらのリアクションを書いてほしかったですね。

 総じて、若干読みづらさもあったものの、本格推理小説として破綻していないレベルでの驚きがあり楽しめました。この作者は、すべてをぶち壊すラストを書きがちという印象が、個人的にはありました(笑)。

No.28 9点 じきる
(2021/03/30 12:48登録)
分刻みのアリバイ表や家系図のトリックなど、著者の作り込みが存分に機能した怪作にして快作。
動機はメチャクチャだけど、一周回って好き。

No.27 9点 レッドキング
(2018/06/08 18:28登録)
空前にして、おそらく絶後であろう、家系図と名前のトリックに・・あの一頁だけに・・この点数を献上。

No.26 6点 青い車
(2016/11/14 18:16登録)
 如月烏有が出てくる最後の作品と聞いていましたが、彼の出番はわりと少なく、精々近況報告ぐらいの役割です。動機の異様さで全体を支えるダイナミックさはいかにも麻耶さんらしいところです。細かすぎる分刻みのアリバイは追いかけるのを断念してしまうほど凝りすぎなうえに現実的には無理が目立ちますが、そこも異常な論理で補強しているのは評価すべきポイントだと思います。種を明かされればこれだけ詳細な図と説明が必要だったか、疑問にも感じますが。

No.25 6点 風桜青紫
(2015/12/29 06:21登録)
相変わらずハチャメチャな設定なんだが、そこからさらにハチャメチャな事件の様相が浮かび上がるときた。やはり麻耶雄嵩、破天荒なアイデアに関しては同時代の作家でもずば抜けている。烏有さんは『痾』で絶望のどん底に突き落とされたかと思いきや、なんか地味に幸せそうにも見える。よくよく考えればかわいい妻やさわやかな編集長がそばにいるんだから案ずることはないのかもしれない。探偵と猫が消え去ったところで確かに烏有さんには大して関係のないことだ。まあ、彼には幸せになってほしい。

No.24 9点 龍樹
(2015/12/08 17:32登録)
基本点:5点
驚愕の「家系図」と「名前」のトリックに:+4点
無意味なまでに精緻なアリバイ時間表がとても楽しめるレベルでなく高度なので:-1点
家族幻想と孤独のブンガクに:+1点
合計:9点

「夏と冬の奏鳴曲」「痾」から続く「如月烏有物語」の最終話としての意味もある作品。初読ではまず見破れない図式が、再読ではあまりに明晰に描かれているのが分かる。これで、もう少しアリバイトリックが喰い付けるレベルだったらなあ。

No.23 8点 ロマン
(2015/10/21 15:05登録)
一時間の分刻みのアリバイトリックがメインだが、そのほかにも間間に挿入る人物の独白や三年前木更津が解決出来なかった事件、安城の肉親捜しなどが物語を複雑に拡散させていく。目も眩むような緻密なアリバイはそれだけでミステリとして十分魅力的だが、それに加えて動機までも計算しつくされて配置されており、すべてが解き明かされたときに得られる納得感は物語の展開に関わらずやはり爽快。広がっていくだけに思われた風呂敷をあっという間に綺麗に畳んでゆく技量は筆舌に尽くし難い。

No.22 5点 ボナンザ
(2015/05/06 19:30登録)
一応シリーズ最終作ということになる本作だが、麻耶ならしれっと続編出してきそうな気もする。
編集長人事権まで持ってるのかよ・・・。

No.21 4点 いいちこ
(2015/04/06 18:32登録)
アリバイトリック自体は脱力モノで、なぜこのアリバイトリックを仕掛けることができたのかというホワイダニットが本作の核であり、読みどころ。
そのためにプロットが練りに練られているのだが、本作のプロットだとどのような不可解な謎でも説明がついてしまうため、カタルシスを感じるには至らなかった。
ディテールには作者らしい稚気あふれる仕掛けが随所に見られるものの、全体としては満足とは言えないデキ。

No.20 7点 E-BANKER
(2013/06/27 22:15登録)
2000年に発表された、作者の第六長編。
「翼ある闇」-「夏と冬の奏鳴曲」-「痾」と紡がれてきたシリーズの続編となる作品。
メルカトル鮎は登場せず(ある意味当然だが)、木更津悠也が探偵役を務める。

~比叡山の麓に隠棲する白樫家で殺人事件が発生した。被害者は一族の若嫁・晃佳(あきか)。犯人は生首をピアノの鍵盤の上に飾り、一族の証である指輪を持ち去っていた。京都の出版社に勤める如月烏有の同僚・安城則定が所持する同じデザインの指輪との関係はあるのか? 容疑者全員に分単位の緻密なアリバイが存在する傑作ミステリー~

何なんだ! この動機は?
って普通思うよなぁ。
まぁでも、「翼ある闇」から続く一連のシリーズらしいといえばあまりにも「らしい」んだけど・・・
冒頭に示されるある家系図が、真犯人のあらゆる悪意や欺瞞を表しているところがスゴイ。
読者は、序盤~中盤~終盤と読み進めていくうちに、この「家系図」に秘められた凄まじい「悪意」に徐々に気付き始めることだろう。
最終的な解答に、読者は決して納得できないに違いないのだが、とにかく力ずくでねじ伏せられたという気分。

そして、本作でもうひとつのヤマとなるのが、紹介文にもある「分刻みのアリバイ」。
なんと、11名の容疑者(一家)の全員について、問題となる一時間のアリバイが全て明らかにされるのだ。
この「アリバイ表」は圧巻の一言!
まるで数学の公式のように、最終的にはひとりの人物が浮かび上がることになるのだが、ここまで精密なアリバイトリックに対しては素直に敬意を評すしかない。
(これを読者が解き明かすことはかなり難しいだろうなぁ・・・)

これで一応、このシリーズは終結することになるのだが、読者を自分の世界観へ引き込む力というのはやはりスゴいのだろうと思う。
こんな作品を一作書くだけでもスゴイことだが、曲がりなりにも四部作(?)として発表したこと自体、作者の非凡さの印。
まぁ、正直なところ、完全に納得はしてないのだが、ここは作品世界に浸って楽しむべきでしょう。
(各章冒頭の逸話はアレを表しているんだよね?)

No.19 4点 mozart
(2013/01/16 18:46登録)
本作は、自分がこれまでに読んできた麻耶氏の作品群と比べると、読了するまでに結構時間がかかりました。あとからネタバレサイトで確認/納得させられる箇所(各章の導入部の話とか、「名前」とか)もあったのですが、如何せん、所謂「リーダビリティ」が本作には著しく不足しているんじゃないかしら、というのが率直な感想でした。
あと、この「事件」も探偵役がメルカトルだったら・・・、と思い巡らすのは私だけでしょうか(「アリバイトリック」など一瞬で解決しているだろうし)。

No.18 7点 isurrender
(2011/05/10 02:04登録)
やっと最後になってわかった各章冒頭の意味
非常にすっきりしました

ネタバレ
アリバイトリックに関しては、あの表を見て読者に解け、というのではなく、なぜこの表が出来たのか、という意味のトリックという点が素晴らしい
ミステリファンが、あの表に不信感を抱かないことを逆に利用した奇抜なトリック

No.17 8点 T・ランタ
(2010/01/14 17:04登録)
本作の最大の見所はアリバイトリック。
読者の誰もが放り出しそうな程緻密なもので、そもそも細かいちまちましたアリバイ検証部分は読み飛ばしてしまいそうな危惧がなくもありません。
しかしそれに対する答えは明快な物です。

それ以上に印象的なのは答えが出たあとで、今までのが些細なことだったと言わんばかりに豪快にぶち壊してくれるような展開。

さらに言えば実は則定が・・・だったりするんだろうなあ、などと思ったりしたわけですが。

流石と言うしかありません。

No.16 4点 yoshi
(2009/12/29 22:55登録)
アリバイのところ、読んで楽しめる人は果たしているのだろうか。読者に対するリーダビリティーの意識の欠如が、本格の衰退につながったのではないのか。この作者だけに責任をかべするつもりはもちろんないのだけれど。

No.15 7点 測量ボ-イ
(2009/09/06 14:07登録)
導入部と展開部は「おお、これは」と思わせるものがありま
したが、解決編がややもの足りない。説明不足のところもあ
りましたし。
賛否両論あるも、この緻密なアリバイ論理は脱帽ものです。
でも殺人の動機はちょっとこじつけというか、僕の頭脳では
とても真相にたどり着けそうにない(笑)。まあ犯人はたま
たま的中しましたが。

解決編の納得度、感動度がもっとあれば8~9点レベルの作
品だったのですが、その辺一歩及ばずといったところです。
氏の作品を初めて読みましたが、本来猟奇性の強い殺人をそ
んなに陰惨になることなく書いており、本格ミステリの遊び
心(いい意味で)をわきまえた書き手という印象です。次回
作に期待。

No.14 8点 teddhiri
(2008/10/25 22:45登録)
作品としてのベストは「翼ある闇」だと思っています。しかしこの作者の独特の発想とミステリーとしてのきれいな終わり方は一番好みです。まぁ、「翼ある闇」と「夏と冬の奏鳴曲」が独特すぎるせいだろうけど。

No.13 7点 konn
(2008/09/22 20:29登録)
流石。途中のアリバイトリックはもう、まーや、巫山戯てるとしか思えない!w解こうとしちゃだめなところと云うか、なんというか、やっぱりこういうのも引っ括めてまーやだなぁ。

あまり詳しいことを書くとネタバレなので書けないんですが、こういう話、得意なんだなぁ。麻耶雄嵩は。

No.12 7点 いけお
(2008/05/07 02:14登録)
アリバイものはあんまり好みではない。内容もまさになんでもありな感じだが、大胆かつあまりの緻密さに脱帽。

No.11 6点 ぷねうま
(2007/12/17 01:43登録)
結局動機は何でもありで作者のさじ加減になってしまうから、宗教物はあまり好きではない。
ネットでネタバレも読んだけど、うまいこと考えたなー、という印象しか持てなかった。でもやはり麻耶のただでは終わらない心意気は素晴らしい。

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