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ミステリの祭典

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折れた竜骨

作家 米澤穂信
出版日2010年11月
平均点7.58点
書評数26人

No.26 8点 ALFA
(2024/05/15 09:18登録)
ときは中世、ところはイングランド辺境の島。領主ローレント・エイルウィンが何者かに殺される。
多彩なサイドストーリーが楽しい冒険ファンタジー風だが、その本質はピュアなミステリー。マニア心をくすぐる特殊設定が仕掛けられている。
(ネタバレします)


殺しの仕組みは、暗殺を望む者A、暗殺の請負人B(暗殺騎士)、そしてBに魔術をかけられ無自覚なまま殺人者となるC(走狗)から成り立つ。
したがって読み手としては動機(A, who&why)と機会や手法(C, who&how)を切り分けて考える必要がある。その上、無自覚な者がいることで情景描写や叙述も疑ってかからねばならないから読み解きは複雑。
結果的にBとCの正体や謎解きは多いに満足だが、Aの解明はほとんどないのが残念。

話し手をはじめたくさんの登場人物が皆魅力的。
表題のネタ割りを伴った余韻豊かなエンディングもいい。


No.25 8点 okutetsu
(2023/10/08 01:32登録)
中世という時代設定だけじゃなく魔術という設定まで盛り込んで普通にファンタジー小説としても楽しめた。
ミステリーとしても非常にロジカルで解決編は美しい。
ファルクとニコラの物語がもっと見てみたかったなぁ。

No.24 7点 mozart
(2023/07/02 10:55登録)
ファンタジー部分に慣れるまでちょっと読み辛く感じましたが、後半になるとそれも気にならずどんどん読み進めました。ミステリーとしても一級品だと思います。

No.23 8点 じきる
(2020/08/23 20:25登録)
ファンタジーとミステリーを上手く融合させている。
謎の解決がロジカルで好印象。

No.22 7点 Kingscorss
(2020/08/17 00:40登録)
読みやすく、SFファンタジーとミステリーをかなり高いレベルで融合させた作品。

ファンタジー好きかどうかで評価が違うと思うのでアレですが、ファンタジーものが嫌いな人でも読む価値はあると思います!自分はファンタジーあまり好きじゃない人ですが楽しめました。

ミステリー部分は途中でトリックや結末がなんとなくわかってしまい、ほぼそのとおりのトリック&結末でしたが特に不満もなかったです。ファンタジーだから結局は何でもアリですし。

No.21 6点 haruka
(2020/06/29 18:28登録)
緻密な舞台設定と論理的な解決により、
ファンタジーとミステリを高い次元で融合させた傑作だと思います。

No.20 8点 ミステリ初心者
(2018/04/21 02:24登録)
ネタバレをしています。


 剣と魔法のファンタジー小説としても雰囲気がよく、推理小説としても本格度が高い2度おいしい作品でした。無駄な点が一切なく、ファンタジーとして楽しみつつ、ファンタジーの部分に論理的に犯人を除外するヒントも混ざっていました。
 最後に近づくにつれ、なにやら寂しいというか、この小説が終わってほしくない感じがありましたw 続編とか、書かないんですかね? (ニコラとアミーナは再会フラグが立っていますね)

 気に入らない点をあえて上げるとすれば、エンマが呪われたデール人である→彼女は犯人ではないという描写がわかりづらい。エンマ以外の傭兵の"犯人ではない根拠"には納得がいきましたが、この点についてはややヒントに乏しいと思いました。ただ、水中から上がってくるところで、普通の人間ならば死んでいるところを生還したので、私自身も"デーン人か?"と感じていまし、それほどアンフェアではないですが、もう少しヒントがあってもよいとは思いました。

No.19 10点 sophia
(2017/07/05 02:51登録)
これは凄い。SFミステリーとして山口雅也「生ける屍の死」に匹敵するかも。目次の各章タイトルを眺めただけで傑作の匂いがプンプンしましたもんね。現在のところ私が10点を付けた作品の中では唯一の21世紀の作品となります。

No.18 8点 メルカトル
(2017/05/27 21:50登録)
どこからどこまでも至れり尽くせり、何から何まで良く出来たファンタジーです。ファンタジーなのは間違いないですが、それはあくまで方便としての設定であって、本質はやはり本格ミステリなのだと思います。ですから読者は前半は少々退屈でもじっくり読み込まなければなりません。そうしないと最後に儀式(セレモニー)という名の謎解きの場に臨んだ時、心底納得できないかもしれません。
登場人物には魅力的な個性を持った様々な肩書のキャラクターが多数現れ、名前を覚えるのに多少苦労しますが、中世ヨーロッパの異世界の雰囲気を味わえます。また、冒険小説としての一面もどうせなら楽しんでしまう余裕もほしいものです。
特殊な条件下での殺人事件と人間消失事件。どちらも特異設定が生きてきますが、決してそれが謎解きの邪魔をしていないところが、うまくミステリとファンタジーが融合していると言われる所以だと思います。
結論は、さすがに今を時めく人気作家の代表作であり、更には日本推理作家協会賞受賞も納得の傑作ということになるでしょうか。

No.17 8点 青い車
(2016/10/23 22:29登録)
 異世界本格、とでも言うべき世界観ですが、作者が初めて挑んだとは思えないほど雰囲気の作り方が手馴れていることに驚かされました。設定が謎解き部分を侵食せず、両者がきちんと溶け合っている点もプラスに評価。米澤穂信の代表作といって間違いないでしょう。

No.16 7点 風桜青紫
(2015/12/19 09:43登録)
ファンタジーものとして面白いという意見が多いけど、世界観といい、ストーリーといい、ものっそいベタだし、登場人物たちも月並みなキャラ設定なので序盤は読んでいて退屈だった(フィッツジョン殿とかコンラートみたいないかにもって感じのキャラは嫌いじゃなかったけど)。最後の犯人当ては倉知淳から持ってきた臭いがぷんぷんするが、まあ、カッチリした犯人当てになってるし、嫌いじゃない。犯人当ての道具をファンタジー世界の道具立てにするってのも、短絡的といえば短絡的だけど、違和感なく話に溶け込んでるから鼻につかないし。米澤の長編では今のところこれがベスト。

No.15 10点 まさむね
(2015/11/28 20:52登録)
 当時、各種ミステリランキングで相当に評価が高かったことは、知っていたのです。しかし、表面だけで判断しがちな私は、「はぁ、剣と魔法の世界って言われましてもねぇ。しかも舞台は中世ヨーロッパときましたか。はぁ。」といった心の声に従い、決して手にしなかった訳であります。
 嗚呼、なんと浅はかだったのでしょう!ファンタジーとミステリの見事な融合。解決シーンは圧巻で、まさに本格の王道路線。(消去法による解決手法はベタすぎるとの意見もありましょうが、この手法もまた王道の一つと言えましょう。)伏線の配置と回収もお見事。さらに、登場人物の一人ひとりが実に魅力的で、ストーリーとしても美しい。
 特殊設定系ミステリの新たな可能性を体感させていただいたことに感謝申し上げ、思い切ってこの点数に。

No.14 6点 E-BANKER
(2015/09/20 19:21登録)
2010年発表。
ミステリーとファンタジーとの大いなる融合を目指した作者の野心作。
第64回日本推理作家協会賞受賞の大作。

~ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルクと従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父ローレントに御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた。いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たちが顔を揃えるなか、殺人劇の幕が上がる。魔術と剣と謎解きの巨編!~

最初は『思ったほど面白くなかったな・・・』という感想だった。
まるでひと昔前のRPGのような世界観にあまり没頭できず、中盤の冗長さにやや飽きていたせいかもしれない・・・
ただ、他の方の書評を参考にしているうちに評価はやや変わった。

確かに(相当強烈な)特殊設定だし、ついついそっちに目が行ってしまうのだけど、プロットの根幹は正当なミステリー。
ひとつの殺人事件(しかもほぼ密室状態)の容疑者をロジックをもとにひとりひとり消しながら絞り込んでいく・・・
最後のひとりまで絞り込んだところで、恒例のドンデン返し!
伏線もかなり周到に且つ細かく設定されている。
(もうひとつの密室は相当異例! 何しろ○を○○できるのだから・・・)

「特殊設定」というと、その設定の面白さそのものが鍵になると思うが、本作の場合は世界観のほか、「魔術」の扱いが問題。
「魔術」とするとどうしても『何でもあり』になってしまうのだが、それを謎解きプロットの中心点に持ってきたのが勝利要因なのだろう。
ただし、個人的にはデーン人との戦いなど、本筋とはやや関係のない脇筋の割合が多すぎるのが気になった。
(好きな人は好きなのだろうけど・・・)

ミステリーの可能性を感じさせる作品という意味では評価すべき作品なのかもしれない。
作者の場合、「インシテミル」も特殊設定ものだが、個人的にはこちら(「イン・・・」)の方が好み。
でもすごい才能だとは思う。

No.13 7点 あびびび
(2015/08/15 17:06登録)
本格と言うより、ファンタジーの要素多し。外国ものだから名前やら、国の事情やらを覚えるのに少し時間がかかるが、意外性もあり、終始楽しめた。

日本人作家が書いたものだから驚きも倍増したが、これが地元(イギリス)の作家だったら評価はどうなったのだろう?

No.12 5点 ボナンザ
(2014/11/05 14:26登録)
ファンタジーと本格推理をうまく合わせた良作。

No.11 8点 いいちこ
(2014/07/10 17:23登録)
「インシテミル」が自分にはあわず、敬遠してきた著者だが、本作はスマッシュヒット。
特殊設定を活かしつつも、魔法の効果を限定的にしてみせることで、ロジカルなフーダニットとして成功。
謎解きのプロセスはオーソドックスだが、各所に巧妙に配された伏線を余すところなく回収する手際のよさは圧巻。
探偵の誤導の後に示された真相はありがちだし、伏線が丁寧すぎることもあり正直想定の範囲内なのだが、誤導させたこと自体がプロットと連結しており、必然性がある点が見事。
未来に希望を持たせたラストも好印象。
語り口が平易でリーダビリティが高いため、各局面の状況が明瞭である反面、難易度が低く食い足りない向きもあろうが、それが広くヒットした要因であるのは間違いない。
コンパクトでも完成度は高く、キレイな右打ちでスリーベースといったところか。

No.10 8点 アイス・コーヒー
(2013/10/02 18:41登録)
欧州の北の海に浮かぶソロン諸島、その島を舞台に魔法や騎士が登場する十字軍の時代を描いた作品。日本推理作家協会賞受賞作。
魔法を使って奇抜なトリックを登場させ、もう一つの中世ヨーロッパを描いている。当時ありえなかった高度な鑑識捜査を魔法によって実現させたのは凄い。時代の雰囲気も面白かった。
最後の「儀式」と呼ばれる謎解きは見事に伏線を回収して、驚きの結末に持っていった。終わり方も良かったと思う。
個人的には、「呪われたデーン人」に関する解説がもう少し欲しかったと思う。そもそもデンマークとどう関係しているのか、最後に出てくる○○は一体何なのか、など。一部の謎は終章でさらりと語られていて納得。

No.9 6点 makomako
(2013/08/11 15:33登録)
古典部シリーズなんかは結構すきだったのですが、インシテミルで米澤氏の小説に嫌悪感を感じて以来ちょっと遠ざかっていました。
 この作品は作家としてデビューする以前に構想されたとのことなので初期の作品のようなみずみずしさが味わえるのではと思いよんでみました。
 外国の名前ばかりで実に読みにくいのですが、何とか最後まで読み通しました。
 わたしの評価は皆さんと比べて低いようです。本格物のもファンタジーもすきなのですが、本格とファンタジーを融合させるととても変な感じに思えてしまうのです。
 本格のための無理やり作り話(所詮本格物は作り話なのですが)といった感が強くこういった話はさほど楽しくないのです。

No.8 7点 mohicant
(2013/08/03 21:57登録)
 単純にファンタジーとしてもおもしろかった。

No.7 6点 こう
(2012/10/20 01:06登録)
 ファンタジーノベルの類は読んだことがないのですがストーリーも楽しく読めました。ちゃんと手がかりが巻かれた王道パズラーに仕上がってましたが読みながら推理することができずにただ読み進めるだけになってしまったのは個人的に残念でした。
 魔術世界でのパズラー小説というとランドルギャレットの「魔術師が多すぎる」が思い起こされますがあとがきでも言及されていましたね。ランドルギャレットの作品よりもこちらの作品の方が読み物として楽しめました。

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