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ミステリの祭典

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謎解きはディナーのあとで
謎解きはディナーのあとでシリーズ

作家 東川篤哉
出版日2010年09月
平均点5.59点
書評数29人

No.29 5点 猫サーカス
(2022/09/01 18:22登録)
世界的大企業の令嬢・宝生麗子に付き従う執事兼運転手の影山が探偵役。収録された六編では、奇妙な死体、密室、ダイイング・メッセージなど、本格ミステリのお約束ともいえる謎が扱われている。ある意味、見慣れたトリックだが、それぞれのトリックに独自のアレンジを加え、ミステリに慣れた読者にも楽しめるように手堅く仕上げている。また、トリックの解明がすぐさま犯人の特定に結び付く話は少ない。むしろ、トリックが判明した後で、影山が別の手掛かりを指摘し、そこから犯人が割り出されていくという流れになることが多い。その際に用いられる手掛かりは、ギャグに見える部分にさりげなく仕込まれており、場合によっては風祭警部の迷惑発言によって引き出されることもある。重要な手掛かりをギャグでカモフラージュしながら、ぬけぬけと提示する手法は作者の真骨頂でしょう。

No.28 5点 バード
(2022/01/29 11:27登録)
ギャグパートが滑っている、ミステリ部分がチープすぎるといった悪印象は無いのだが、好きという程でもない。イチャモンみたいになってしまってファンの方には申し訳ないが、自分のセンスが本作とずれていたのだろう。
ただし、以下に示す話は良かった。マイベストは「綺麗な薔薇」か「死者からの伝言」で迷うが、僅差で「綺麗な薔薇」だな。

<好きな話について個別に書評>
・綺麗な薔薇には殺意がございます
犯人が死体を薔薇の上に置いた理由、犯人推定のロジックなど本格度が非常に高い話で好みである。謎の難易度は低めで、自分でも犯人を当てられた。

・花嫁は密室の中でございます
影山が犯人を罠にかけるシーンで叙述トリックをくらったかと錯覚した。あの辺の物語運びは上手かったね。また、ラストでこれまでギャグ一辺倒だった麗子と影山の関係にも少し変化があり良かった。

・死者からの伝言をどうぞ
読者の裏をかいていく話運びは本格度が高く読み応えがある。隠蔽工作の論理にいくらか苦しい部分はあるものの、フィクションなら許容範囲内である。
他作者の名前を出すのはあれだが、これでもかと事件を複雑化させるところに法月テイストを感じた。

No.27 5点 パメル
(2021/02/25 09:15登録)
新米女性警部の宝生麗子は、いくつもの企業を擁する世界的に有名な「宝生グループ」宝生家のお嬢様。そのお抱え運転手で執事の影山と一緒に、事件の謎を解決していくという6編からなる短編集。
執事という立場でありながら、警部としては駄目なお嬢様に向かって、容赦なく暴言を吐いたり、おだてたりして事件の核心に迫っていく。この過程の二人の掛け合いがユーモラスで楽しい。雰囲気は麻耶雄嵩氏の「貴族探偵」をラノベ風にした感じで好き嫌いは分かれるでしょう。
ベストは「殺人現場では靴をお脱ぎください」。「殺しのワインはいかがでしょう」と「綺麗な薔薇には殺意がございます」は早い段階で真相が透けて見えてしまったのが残念。全体としては、キャラクター小説としては楽しめるが、ロジックが弱くロジック自体にも面白味を感じた作品が少なかった。

No.26 6点 mediocrity
(2019/04/03 02:58登録)
東川氏の本は過去に4冊読んでいるが、この本が今までで一番癖がなかった。野球ネタもそれほどマニアックじゃないし、特定の人にしかわからないギャグも少ない。

①『殺人現場では靴をお脱ぎください』
これが一番良かった。このトリックは盲点だった。
②『殺しのワインはいかがでしょう』
ワイン好きならすぐわかるトリック。逆に飲まない人は聞いてもわかりにくいかも。
③『綺麗な薔薇には殺意がございます』
猫が重要な役目なのはおもしろい。
④『花嫁は密室の中でございます』
これが次点。活字ならわかるかもしれないが、聞いただけで謎を解明した影山はすごい。
⑤『二股にはお気をつけください』
野球ネタが笑えたくらいでいまひとつ。
⑥『死者からの伝言をどうぞ』
これもそれほどではないか。

No.25 4点 ねここねこ男爵
(2018/02/27 17:49登録)
少年誌の探偵漫画をそのまま小説にしたかのようで、そもそも「普段ミステリを読まない女性読者を対象にして書かれた」とのこと。その目的の達成度なら満点ではないでしょうか。

一方本格ミステリとしてはかなり苦しい部分が多く、高得点にはなりえません。異常な売上にふさわしい内容とはお世辞にも言えず、良くも悪くも「ライトノベルは内容ではなく表紙の絵で決まる」を地でいっている感は否めないというところです(言いすぎかもしれませんが人気イラストレーターの起用は大きかったでしょう)。純粋な本格ミステリは売れない、と言っているようで読者の一人としては悲しい。

ミステリとしては天才的探偵による神視点推理で非論理的、「証拠をつなぎ合わせて辻褄の合う話をでっち上げるとこうなる」タイプです。お前はアホか、と暴言を吐く一方で苦しい部分は「●●を▼▼と見間違えても無理もないでしょう」と誤魔化すわけですから…。身長が重要な手がかりになっているのは自明なのに、「シークレットシューズを履いていたのだ(ドヤァ!」「すげぇぇぇぇ!!!」ってねぇ…。この手の本は誠実な描写はむしろ的外れで、とにかくイメージを大げさに誇張すべきなので指摘するのも野暮なのですが。

推理部分をあれこれ言っても仕方ないので別の例を挙げると、第2話の冒頭で「執事は目覚まし役としても有能」と書いておきながらこの日は遅刻しないよう寝室をノックすることをしていません。執事はすでに起床していた描写がありますし、この日に限って目覚ましノックしない理由がありません。まぁ「遅刻遅刻〜!!」というギャグをやりたいためでしょうが、ギャグを優先して矛盾が生じてしまっています。とにかく推理部分でもギャグ部分でもこういう矛盾や苦しい描写が多く、ミステリとしての骨格がしっかりしているとは言い難いでしょう。

自分のようなひねくれたマニアが読むか、本作の本来のターゲット層が読むかで大きく評価が分かれるかと思います。

No.24 7点 青い車
(2016/01/27 18:52登録)
爆発的にヒットし作者が一躍売れっ子になった短篇集ですが、コアなミステリー・ファンの中には薄味と批判する人もいたようです。しかし僕は擁護したい派です。軽いタッチでシリアスさがまるでないのが叩かれる理由のひとつだったようですが、僕は陰気なだけの作品をもてはやす風潮には反対なのでそこはむしろ長所と捉えます。難易度が低い、という批判も的外れと言いたいです。簡単に解けるからレベルが低いというのは短絡的で、小学生にでもわかる本格を描いた作者の仕事はむしろ評価すべきと思います。ゆるいギャグの中にちゃんとわかりやすい伏線を張る技術はむしろ並みの作家さんより優れており、特に『綺麗な薔薇には殺意がございます』は死体を移動させた理由とその手段を導き出す推理がシンプルかつロジカルな良作です。とにかく、これから読むという人には素直におススメしたいです。

No.23 7点 nukkam
(2014/01/12 20:57登録)
(ネタバレなしです) 大富豪の令嬢刑事と丁寧な口調の毒舌執事(こちらが名探偵です)の活躍する6作から成る(小学館文庫版ではショート・ショート1作を追加)2010年発表の短編集で、(おそらく)史上初の年間ベストセラーのトップに輝いたミステリーです。楽々と100万部を突破し、とにかく「売れた」の一言に尽きます。作者自身もなぜこれだけ売れたのかわからないというのは本心でしょう。本格派推理小説の短編集として水準は問題なくクリアしていますが他の東川作品と比べて傑出しているかと問われれば多分ノー、「案外普通の作品だった」という感想が多いかもしれません。でも大人も子供も楽しめるという普遍性は狙っても案外難しいもの。その中から将来「本書を読んでミステリー作家を目指しました」というミステリー作家が生まれてくれば、それこそ本書に対する最大限の賛辞となるでしょう。

No.22 6点 アイス・コーヒー
(2013/09/03 17:58登録)
あらすじは省略。本屋大賞一位獲得で、ドラマ化・映画化もされた人気作。ただ内容は東川氏の今までの作品と似て、素人の語り役が適当な推理をして読者を混乱させた後で、探偵がさらりと解決する構図。ただ、彼が重点を置いているであろうユーモアのある掛け合いのシーンは典型的であまり面白いとも思わなかった(読みやすいが)。
トリックについていうと、部分的に読者にも予想できる部分を作ることで、何も考えずに読む読者を駆除する工夫がある。つまり、積極的に読者を参加させる訳だが、安楽椅子探偵・影山の推理が飛躍しがちで論理的ではない、という欠点がある。言われてみれば納得するのだが、これは本シリーズの課題ではないか?一方読者をひきつける奇妙な殺人事件の数々については、作者のアイデア力に感服するばかりである。

No.21 7点 ナノ
(2013/06/01 19:10登録)
良いですね、ゆるゆるとした読みやすい作品は有難いです。
難い本を読む間にこういった本を挟むと非常に読書が捗ります。

内容ですが、ラノベ感は否めません。
しかし、浮き彫りにならないヒントを文中に組み込む構成力はその辺のラノベ作家と一線を画していると思います。

No.20 6点 E-BANKER
(2013/02/23 16:03登録)
もはや説明不要(?)となった本シリーズの第一弾。
今さら初読且つ書評を出すのもどうかと思いつつなのだが・・・。

①「殺人現場では靴をお脱ぎください」=『なぜ被害者がブーツを履いたまま死んでいたのか?』がメインプロット。このロジックは短編らしく切れ味と、スッキリ感を味わえる。フーダニットはかなり強引だとは思うけど・・・。
②「殺しのワインはいかがでしょう」=ある種のCC設定下で、残された物証や関係者の証言一つ一つから執事・影山が真相を導き出す、と書けば何だか立派な本格ミステリーのように見えるが、この条件のみで犯人を絞り込んでいいのかどうか・・・?。
③「綺麗な薔薇には殺意がございます」=これはタイトルどおり、「薔薇」をフーダニットの鍵としたなかなかの良作。ただし、設定やプロット自体は②とほぼ同様。
④「花嫁は密室の中でございます」=筋立て自体は何てことないように感じる作品。ただ、ロジックはきれいに嵌っているし、『普通に考えれば変なのだが、それが日常的になっているために気付いていない」ことがうまい具合に隠されているところがミソ。
⑤「二股にはお気を付けください」=うーん。このネタはちょっとレベルが低すぎる気がする・・・。「笑える度」から言えば、本作中NO.1かもしれないが・・・。
⑥「死者からの伝言をどうぞ」=タイトルからすればダイイング・メッセージものっぽいが、そこにはそれほど拘りはない。ロジックの鍵が「窓を割った謎」一点張りになっているのがかなり強引に思える。

以上6編。最後にボーナストラックあり。
作者らしく「お笑い」要素がかなり掛けられているが、本作は昔からある「正統派の安楽椅子型探偵」ものに相違ない。
(刑事から事件の詳細が語られるということでいえば、都筑道夫の「退職刑事」シリーズにかなり近い)
あまりに売れすぎたため、どうしても「色眼鏡」で見られてしまうが、押えるべき所を全て押さえた水準級の本格ミステリー短編ということでよいのではないか。
酷評するほど酷い出来とは思えないが、氏の他作品と比べてもそれ程の高評価にはならないかな。
(①~④はどれもマズマズ。⑤⑥はちょっと落ちる気がする)

No.19 6点 makomako
(2012/11/24 17:51登録)
 東川氏の作品の中では特に優れているともいえないが、なぜかとてもよく売れて作者の名前が急にメジャーとなっためでたい作品。 個人的好みからいうと氏の作品はもっと優れたものがあると思うのですが。
 売り方と表装がうけたのでしょうかね。
 ドラマ化されたけどこちらはユニークな設定がばかばかしく見えてしまってぜんぜんよくなかった。ミステリーのドラマ化はよくされるのだが、まず原作より面白いものにお目にかかれない。
 原作のほうがよいのでドラマをみてつまらなかった人もぜひ読んでみてください。
 これを期に作者の作品を読む人が増えればよいですね。ユーモアと本格を組み合わせた東川氏作品のファンの一人として願っています。

No.18 4点 itokin
(2012/09/22 10:51登録)
本屋大賞受賞作品なので興味があったが拍子抜け。キャラの立て方、物語の構成も、短編ミステリーの良いとこ取りをしているみたいで安っぽく感じた。

No.17 6点 ミステリ初心者
(2012/06/20 10:22登録)
 この作者の作品はギャグタッチで面白いものが多く、はずれが少ないですが、この作品もそうでした。

 この作品で大ブレイクした作者が、すこし遠い存在になってしまったような気がして複雑w

No.16 6点 ayulifeman
(2012/06/12 23:49登録)
正直どうなのだと思って読み始めたがサクサクと読みやすい。
そして面白かった。
ただドラマが見たくなったかといえばそうでもない。

No.15 6点 ようじろう
(2012/04/02 21:22登録)
エンターテイメントとしてはともかくミステリとしては、と偉そうに講釈を垂れることなかれ。

おどけてはいるが、本格派。それが東川篤也の魅力である。よくよく観察すればあちこちに伏線は転がっているし、収集もしっかりしていて、何よりキャラが良い。
問題は、ブンガクという凝り固まった眼で見られると東川作品は途端に陳腐になることと、ドラマがひどすぎる出来だったことと、あまりに売れすぎたこと。
確かに続編は愚にもつかぬ有様でしたが。

一番偉そうだったのは私でした。
どうもすみません。

No.14 5点 こう
(2012/01/28 00:43登録)
 あれだけ売れたのはやはりミステリファン以外の支持なんでしょうか。各作品は本格の体裁をしっかりとっていますし悪くはないんですが個人的にはさほど楽しめなかったです。このシリーズが軌道に乗ると烏賊川市シリーズの長編が後回しにされそうなのが少々不安です。

No.13 7点 いいちこ
(2012/01/09 10:46登録)
本作への酷評はこのレベルの作品には飽き足らないミステリマニアと、ドラマ(脚本・キャスティング・演出とも酷すぎた)から入った層によるものと思われる。
確かに満腹感は味わえないものの、シンプルでもプロットは完全に「本格」で水準以上のデキにある。
主要キャラクターの設定もありきたりだがユーモアあふれる筆致で楽しませてくれる。
コストパフォーマンスだけは大いに疑問だがミステリ入門書としては良質な作品

No.12 6点 isurrender
(2012/01/07 16:38登録)
読みやすい作品ではあったが、ミステリとしては中の上の出来
法月の短編集の質を少し悪くしたといった印象

No.11 5点 HORNET
(2011/12/03 21:44登録)
1作目「殺人現場では靴をお脱ぎください」が、推理の筋書きとしても、この作品の売りの宝生と執事の関係を知る驚きからも一番。2作目以降は、設定が分かった以上、パターンは分かるので、あとはトリック、謎解きの面白さにかかるわけだが・・・。まぁ1作目以上のものはなかった。でもそこそこは面白かった。

No.10 7点 黒い夢
(2011/09/20 08:01登録)
トリックに関しては大掛かりなものはなく、地味な印象をうけましたが、推理していくうえでの手がかりの出し方が面白かったです。また作風についても個人的には作者のコメディセンスは好きなのでこの点数にしました。

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