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ミステリの祭典

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寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁
吉敷竹史シリーズ

作家 島田荘司
出版日1984年02月
平均点6.12点
書評数34人

No.34 6点 みりん
(2023/08/14 03:50登録)
吉敷竹史シリーズ第1弾
タイトルから明らかなトラベルミステリーだったので避けていた。

「死んだはずの女がなぜ寝台列車に?」「なぜ犯人は被害者の顔の皮膚を剥いだのか?」
相変わらず冒頭からとてつもなく魅力的な謎、いや、越えるべき"壁"を提示してくれる。さすが島荘です。その謎の強大さに対して、吉敷竹史はあまりにも丁寧な筋道を示し、合理的な解決を試みる。このあたりは奇想天外な真相を唐突に思いつく御手洗潔との対比でしょうか。
真相はトラベルミステリーの域を出ないかと思っていたら一捻り、二捻り、どんでん返しと見せかけて1.5捻りほどで留まりました。

綾辻先生の解説によると『占星術』『斜め屋敷』では先生のようなマニア間では既にカルト人気を得ていたが、売れ行きは芳しくなかったそうです。そこで流行のトラベル要素を取り入れ見事『はやぶさ』は大ヒットしたそうな。そんな苦心の末生み出された一冊、なかなか楽しかったです。

No.33 7点 虫暮部
(2020/11/03 11:34登録)
 母親はあれっぽっちの追加情報で事件の裏事情をどのように推察したのか。関係者を直接知っているが故の思い込みが、たまたま正解だった、って感じ。
 結末で吉敷が殺意の理由について語るが、“感情のもつれのケースAは納得出来ないがケースBなら判る”と言う言説は説得力に欠ける。

No.32 6点 mediocrity
(2019/08/22 01:06登録)
トラベルミステリと本格ミステリの融合と言いたいところですが、果たして成功したのでしょうか?


<以下若干ネタバレあり>


トラベルミステリ部分は正直かなり出来が悪いと感じた。あの程度のアリバイトリックはわざわざ電車に乗らなくてもわかるでしょと。替え玉トリックも犯人側がいくら注意しても乗客から声を掛けられる可能性があるわけで、かなり危なっかしい計画だ。途中下車にしてもあの駅で「はやぶさ」から降りる人などほぼいないだろうから目に付くでしょうし。
これじゃ3~4点くらいかなと思ってたが、トラベルミステリ部分を片付けた後の盛り返しがすごかった。見事に謎をまとめ上げた上に、おまけ要素まで付け足してそれなりの作品にしてしまった。さすがである。

No.31 7点 青い車
(2019/08/15 22:30登録)
 既読の御手洗シリーズと比べたら大人しい一作です。アリバイトリックや死体の顔を剥いだ理由などはミステリとしてはかなり手堅くまとまっています。しかし最後に明かされる犯人の意外性はなかなかのもので、島田作品ということに拘らなければなかなか楽しめます。刑事の吉敷竹史はこの段階ではまだキャラが立ってませんが、個人的に御手洗潔にもさほど愛着を持っていないので気になりませんでした。

No.30 5点 ボナンザ
(2018/12/22 10:54登録)
吉敷シリーズ一作目にふさわしいしっかりまとまった佳作。トラベルミステリのようなタイトルでありながら島田らしい大技を決めてくれるのは流石。

No.29 5点 MS1960
(2017/06/28 12:47登録)
【ネタバレあり】まあ楽しめました。被害者が元交際者を殺害しようとして逆襲を受けた時、元交際者が被害者が持っている切符から被害者の意図や動きを察知して被害者の妹にはやぶさに追いつくように指示をした、というくだりはさすがに無理のある設定かな。そこまで思いついたとしたら神業。密かに、被害=実は被害者の妹、で歯医者には自分の保険証を貸して通わせた(だから歯科治療のデータが一致した)、吉敷があった妹は実は被害者で整形手術をした、という落ちを考えたが、見事外れた。

No.28 4点 風桜青紫
(2016/03/01 01:01登録)
島田荘司は本格ミステリ作家として非常に高い技量を持っているが、それが常に上手く機能するとは限らない。冒頭から覗き魔を出したり、残虐な死体を出したりなんかをするのは掴みとしては悪くないんだろうが、なんというか殺伐としすぎていて、トラベル・ミステリの「ああ、風流ねえ」という空気には合っていないんだな……。本格ミステリの作法が根底にあるせいなのか、吉敷が動き回っていても、事件解決のパーツを揃えるためにキャラが動かされているだけのように感じてしまう。そんなわけで社会派としてはあまり面白くない。新人とベテランの違いはあれど、読んでいて飽きず、旅町情緒も味わえる西村京太郎との間に大きな差を感じた。まあ、島田荘司が西村京太郎に劣っているというわけではなく、ただ、作風が合っているか合ってないかの違いなんだろうけど。どんでん返しの技術にはさすがだと感じさせられたので4点。

No.27 7点 斎藤警部
(2016/01/06 01:18登録)
いやぁ、寝台特急ってそんなに壁薄いんだぁ、参ったなぁ音が漏れちゃうよ、色々と。
などとあらぬ誤解をしていた中学生の頃が懐かしいです。嘘です。だいたい「秒」は幅というか長さの単位じゃないだろ、っていう。

人によっては’邪道’と受け取るかも知れない、ガッツ溢れる豪速変化球のTM(トラベル・ミステリー)ですね。
色々盛り込んで、ひとまず成功と言えましょうよ。 社会派要素は期待(ないし警戒)しなくていいよ。

No.26 5点 nukkam
(2015/08/22 08:34登録)
(ネタバレなしです) 御手洗潔シリーズの「占星術殺人事件」(1981年)と「斜め屋敷の犯罪」(1982年)で作家デビューしたものの、本格派推理小説がまだ人気低迷期だったこともあって島田は社会派推理小説の要素を取り入れた作品を書くようになります(御手洗潔シリーズの次作は「異邦の騎士」(1988年)まで待たねばなりません)。その代表作とされるのが吉敷竹史シリーズで、1984年発表の本書はその第1作です。地味なキャラクターの刑事の地道な捜査描写、試行錯誤を繰り返す推理などはいかにも社会派風ですが、一方で「旅行する死者」という魅力的な謎を提供しているあたりは本格派作家の意地でしょう。解決はやや好都合な展開に感じられますが、最終章で突然1人称の物語にしているのがちょっとした工夫です。

No.25 5点 take5
(2015/01/25 08:57登録)
走っている列車にもう一度追いつく→→→初級
追いつけるけれども追いつかないで別の真相で追いついたように見せる→→→中級
追いついたように見せる事の裏でもっと大きな事が起きている→→→上級
中級以上、上級未満、後の社会派の香りははっきりいってちらっとしか感じず、しかもトリックの理由付けのために入れたような感想です。
タイトルも作者のしばりでしょうか?必然性が私には全く感じられませんでした。

No.24 8点 谷山
(2014/09/21 07:17登録)
トラベル・ミステリというよりは、横溝正史ばりの顔のない死体ものとして読みました。まああのトリックで誰かと入れ替わるのはあの時代だからできるのであって、この作品でも早々に科学捜査で死体は千鶴子のものに間違いないと断言されてしまってます。しかし、なんと目次の最終章のタイトルが「千鶴子は生きている」ではないですか。これはネタバレでなんらかのトリックを使えば入れ替わることが可能なのか?それとも… という所まで多分計算してたんだろうな島田さん。

トラベル・ミステリとしてのトリックは確かによくある平凡なものでしたが、この作品のメインはそこじゃないと思ってたのであまり気になりませんでした。たまたま時刻表トリックもトリックの一つとして使われただけの、魅力的な本格推理作品だったという読後感でした。

No.23 7点 蟷螂の斧
(2014/03/22 18:49登録)
時刻表を見ないで済むトラベル・ミステリー(非常にありがたい・・・笑)。「なぜ被害者は顔の皮を剝がされたのか?」、「なぜ被害者は推定死亡時刻に寝台特急”はやぶさ”で目撃されたのか?」この2つの魅力的な謎で引っ張ってゆきます。双子?別人?・・・そして解決篇での逆転の発想はお見事!!。解説で綾辻行人氏がトラベル・ミステリーとして”格”が違うと評していますが納得です。

No.22 7点 バード
(2014/03/07 22:04登録)
初吉敷シリーズ、御手洗シリーズを読むのは一端休みでしばらくはこのシリーズを読みたくなった。
ガチガチのアリバイものではなく時刻表とにらめっこしなくてよいので時刻表アレルギーの人でも読めると思われる良作、トリックはシンプルながらも上手いと思う。

ただ一つある部分で納得いかないというかアンフェアと感じる部分があったので一点減点して7点。あと最後、結局警察の罠だったわけだが九条千鶴子が実は生きていて更に凄いトリックを使っていたという場合も読んでみたい気もした。

No.21 2点 TON2
(2012/11/05 22:30登録)
吉敷刑事もの。時刻表のトリックだったと思いますが、10年ぐらい前に読んだので忘れてしまいました。

No.20 6点
(2012/01/05 11:13登録)
古来から継承される正統派アリバイ崩し・社会派風本格ミステリーです。
が、もちろんけっして陳腐ではなく、顔面が剥がされた死体の謎、難解なアリバイ崩しなど、魅力的な本格謎解き要素が含まれています。最後には捻りもあり、謎解き要素と抜群なストーリーテリングとがあいまって、満足感十分な作品に仕上がっています。

気になる点は…
(以下ややネタバレ)

かつて、悪名高き『世界の名探偵50人』(ちなみに私は7点と高得点)で「ノックスの十戒」を初めて知ったときから、十戒の一つである「犯人は物語の初めのほうで登場させておくこと」が、トラウマのごとく頭から離れません。実は、「初めのうちに登場し、かつ登場時間は多くなければならず、しかもキャラが立っていなければならない」と、勝手な拡大解釈もしていました。
その後の読書においても常にそのことを意識していたので、ラストにどんなにすごいサプライズがあっても、上記ルールが守られていなければ、ひっかかってしまい、興醒めすることさえあります。
本書は、興醒めするほどではなかったのですが、そのことが気になりました。最後に明かされるあの人は、比較的早めに登場しますが、登場するページ数も少なく、キャラが立っているとはいえず印象が薄い。短編ならどうってことないですが、長編、とくに本格フーダニット物と謳っているものでは、いまだにそういうことが気になります。
とはいっても、面白すぎて、そんなこと気にもならないってこともあるのですが…

No.19 7点 Q-1
(2011/02/06 22:48登録)
最初の吉敷の推理までは自分でたどり着けましたが、
最後まで読むと自分の単純さに呆れました。
真犯人が吉敷の推理を単純な推理と揶揄する文章がありましたが、図星でした。
面白かったです。

No.18 6点 まさむね
(2010/12/11 15:05登録)
終盤の捻り具合など,島荘らしさを感じる点もありますが,
「良質ではあるが典型的なトラベル・ミステリー」あたりが率直な印象。
グイグイ引き込まれる面白さの一方で「やっぱり実際に刑事が列車に乗っちゃうんだ…」みたいな突っ込みどころも…。
総合的にこの点数かな。

No.17 5点 江守森江
(2010/11/17 16:15登録)
出版当初に読んでいたが内容を忘れていた。
先日、初放送時に見逃していたドラマ化の再放送を録画し、図書館から原作を借りたので、毎度のごとく視聴後におさらいした。
島荘らしくキッチリ本格していても原作自体はトラベルミステリー風かつ二時間ドラマ的な印象でドラマ共々楽しめた。
しかし逆説的に言えばその程度(ソコソコ良くデキた量産作家の作品)でしかない。
今更、島荘の作品を読んで量産作家としても凄い西村京太郎の偉大さを再認識するとは思いもしなかった。
島荘も、この作品の発表当時は一般認知度が低く流行に迎合しながらの量産体制で頑張るしか道は拓けなかったのだろう。
その頑張りが開花した事は、当時カッパノベルスでの作品が古本屋の特売棚に溢れていた事が物語っている。

No.16 8点 seiryuu
(2010/08/01 14:40登録)
最初から最後まで面白かったです。
オーソドックスなトラベルミステリーと思ってましたが
それ以上の読後感がありました。
ひっかけも数あって楽しめました。
中村・牛越刑事のやさしさもよかったです。

No.15 8点 E-BANKER
(2010/07/07 21:04登録)
記念すべき、吉敷刑事(当時)シリーズの第1作。
本作品は一見すると、当時大流行のトラベルミステリー的な内容ですが、「不可能状況」という要素を前面に出した本格推理小説です。
御手洗シリーズと比べて「地味」という形容詞で語られることの多いシリーズですが、決してそんなことはありません。
死んでいたはずの時間に寝台特急「はやぶさ」で何人もの人間に見られた被害者・・・この謎を追及する吉敷刑事に天啓が!
「騙し絵のように事件をひっくり返される快感」はやはり島田氏の良作ならではと言えるでしょう。
また、本作品では中村刑事(江戸に詳しい)や牛越刑事といったお馴染みのキャラも登場し、そういう意味でもファン心を満たしてくれる作品です。

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