遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? |
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作家 | 詠坂雄二 |
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出版日 | 2008年07月 |
平均点 | 7.28点 |
書評数 | 18人 |
No.18 | 7点 | みりん | |
(2024/05/09 19:45登録) ああああああやられた〜!これは秀逸なミスリードですね。 Whyを当ててみろ!と言わんばかりの挑発的な副題もいいです。タイトルだけのコケオドシではなくそこにはしっかりした理由が存在します(少しボカされますが)。首切り連続殺人という猟奇事件の裏では、人間の本質について問う社会派要素も。 ※みんな教えての「切断の理由」にて、信頼度の高いお二方が勧めていたので気になって読みました。良い読者体験ができました。ありがとうございます。 |
No.17 | 6点 | ʖˋ ၊၂ ਡ | |
(2021/10/18 15:17登録) とある事件の犯人と関係者の日常を、心理描写も交えて淡々と描くこの小説は最後の謎が解き明かされる直前まで、まるで犯罪実話のような展開。 ところが「なぜ大量殺人鬼である犯人がこの事件に限って被害者の首を切っただけなのか」という謎の解明になったとたん、本格ミステリ的カタルシスが訪れる。 確かに意表を突く真相だが、これを効果的にいかすだけならば、もっと別の書き方にしてもらいたかった。 |
No.16 | 6点 | パメル | |
(2019/07/25 01:12登録) 副題のとおり、ホワイダニットに徹底的にこだわった作品で、ルポルタージュのように描かれている。 稀にみる殺人鬼という強烈なキャラクターに、スリリングなストーリー展開、周到な伏線に緻密なプロット、壮大なミスディレクションに最後の一行での衝撃的なサプライズとミステリとしての醍醐味を味わえる作品といえる。 個人的には行き過ぎたグロテスクな描写は苦手なのですが、生々しいところとサラリと流しているところが、バランスよく感じたため、それほど気にはならなかった。 不満に感じる点としては、多くの人間を殺したのかについては、一応の説明はあるが、詳しく語られてはいないため、佐藤誠の人物像と一致せず、すっきりしないところ。 |
No.15 | 6点 | レッドキング | |
(2018/09/05 21:11登録) 首切りのホワイダニットね。このネタ、中山七里の法廷物でも使えそう。でも、あんなにも客観的で冷静でまっとうな判断力を持った人間が、あれ程の殺戮を繰り返した合理的理由なんて、そんなに転がっているかなあ。 ( 2022/2/16 再記 ) 佐藤誠は、なぜ首を切断した?「✕-○」を「●-●」に見せかけるため・・なぜ、そう見せる必要があった?必要はなかったが、そう見せたかった・・それはまたなぜ?・・・ 佐藤誠のなぜと「✕-○」のなぜが、読者の情感に仄めかされながらボカされて終わる。 |
No.14 | 8点 | ミステリーオタク | |
(2017/07/08 14:10登録) いいね、いいね。 この破天荒さと読み止まらないリーダビリティの高さと意外性。 |
No.13 | 8点 | あびびび | |
(2016/08/14 01:59登録) 何気ない会話と、何気ない殺人。しかし、70人は多すぎる。実際そんなモンスターがいたとしても、この話は15人ぐらいの方がリアルで驚けたのではないか? なぜ首を切断したのか?それはモンスターならではの見解。とてもわれわれに理解できる話ではない。モンスターの佐藤誠よりも、語り手の詠坂勇二の淡々とした喋りに違和感を覚えた。 70人を殺したモンスターと、気軽に喋ってダメ出しをする? |
No.12 | 7点 | パンやん | |
(2016/04/08 08:53登録) 佐藤誠という殺人鬼のノンフィクション2冊目という体の、異色のコラム入りルポミステリー。が故に、様々な妄想を掻き立てる快作となった。遠海事件を主にしている為、彼が捕まる経緯が丸々カットされてたり、収束してまとまりながら哲学的になったりと、興味が尽きない。 |
No.11 | 7点 | いいちこ | |
(2015/08/11 16:28登録) あらかじめ犯人がシリアルキラーであることを示し、その人物像を追う犯罪小説の形式を採用していること自体が、強烈なミスディレクションとして機能しており、プロットは非常に秀逸。 一方、犯人像が理性的・合理的すぎるため、人物像の反転は所期の効果を挙げたとは言い難い。 ホワイダニット1点勝負の作品でありミステリとしての核は小さく、ご都合主義的なアリバイ工作等、細部に綻びも感じる |
No.10 | 8点 | 文生 | |
(2015/03/05 11:08登録) 佐藤誠というキャラクター自体が遠海事件の真相を隠すミスディレクションになっている構成は見事という他ない。 ストーリーそのものは序盤に起こった殺人事件について捜査をしていくだけという地味なものであるが、佐藤誠という不可解な存在に引っ張られてぐいぐいと引き込まれていく。 ただ、『佐藤誠の物語』としての落とし所は少し物足りなさを感じてしまった。80人以上も殺した殺人犯なのだから最期まで不気味な一面を残しておいても良かったのではないだろうか。 |
No.9 | 9点 | ayulifeman | |
(2014/12/04 20:31登録) 二回読みました。 最後までじっくり楽しめました。 衝撃の後の余韻がたまらない。ぜひ。 |
No.8 | 7点 | 名探偵ジャパン | |
(2014/07/23 09:43登録) まるごと作中作という構成、首切りのホワイダニット、最後の一行まで驚かせる構成と、ミステリとしては楽しめた。しかし、何だか釈然としない、しこりのようなものが残るのはなぜだろう。それは、主役の佐藤誠がシリアルキラーであるにも関わらず、充足した人生を送って死んでいったことへの嫌悪感なのか。 作中のルポで、世間が佐藤誠を英雄視することへの疑問を呈していたが、それを言う本人が佐藤の信奉者で獄中結婚までしてるのだから、説得力ゼロである。あの世界のネットでは、「佐藤誠まで結婚できているというのにお前らときたら」などと書き込まれているのだろうか。 現実でも大量殺人者が英雄視されることへの皮肉や批判が込められているのだろうし、作者もミステリの仕掛けとしてこういった構成を取ったにすぎない。 それでも、佐藤に殺された他の八十人近くの被害者の遺族はどんなことを思っているのか、ということを考えてしまう。 よくできたミステリで、読中は楽しんでいたし、「フィクションにそんなに目くじら立てることもないだろ」と言われるかもしれないが、やはり私はこういう作品は好きじゃないと痛感した。 |
No.7 | 8点 | 虫暮部 | |
(2014/05/23 10:49登録) 面白かった。こういう変則的な奇書って好きだなあ。 ところで思わせぶりなカヴァー絵は何なのだろうか。 |
No.6 | 7点 | まさむね | |
(2014/04/01 21:36登録) 正直,既読の「電氣人閒の虞」に良い印象はなかったのですが,皆様の評価の高さに刺激を受けて,恐るおそる(?)手にした次第です。 結論としては,恐れる必要など全くなく,相当に楽しめました。「佐藤誠はなぜ首を切断したのか」とうサブタイトルどおり,ホワイダニットがメインですが,それを取り巻く物語全体の構成も非常に趣深いですね。 |
No.5 | 7点 | E-BANKER | |
(2014/03/15 20:32登録) 2008年発表。デビュー作「リロ・グロ・シスタ」に続く第二長編。 サブタイトル「佐藤誠はなぜ首を切断したのか」のとおり、“首切り”のホワイにプロットの力点を置いた作品。 ~佐藤誠。有能な書店員であったとともに、八十六件の殺人を自供した殺人鬼。その犯罪はいつも完璧に計画的で、死体を含めた証拠隠滅も徹底していた。ただ一つの例外を除いては・・・。なぜ彼は遺体の首を切断するに至ったのか? 遠海市で起きた異常な事件の真相、そして伝説に彩られた佐藤誠の実像に緻密に迫る!~ 実に不思議な感覚に陥る作品・・・だった。 冒頭に触れたとおり、本作のプロットの中心は「首切り」の謎。 作中でもミステリーマニアの登場人物の口を借りて、「首切り」というガジェットの面白さが語られていて、犯人が首を切る理由の分類を試みている。 同じようなものに「バラバラ死体」があるが、主にポータビリティが理由となる「バラバラ」よりも、「首切り」の方はどうしてもこういった解法になるんだなぁというのが感想で、本作もそれほどのサプライズ感はなかった。 ただし、本作のスゴさはそこだけではなくて、作中全体に「罠」が仕掛けられているところにある。 ドキュメンタリー形式という表現が取られているのだが、終盤にはこれが重層的な構造だったことが分かる仕掛け。 「おわりに」の章も、ラスト一行で読者は「えっ!」と思わされるのは間違いないだろう。 手頃な分量の作品だけど、作者のテクニックがふんだんに盛り込まれた佳作。 本作が「詠坂」の初読みだったのだが、以前から注目していた作家のひとりだったし、他作品も続けて読むことにしよう。 (『佐藤マコト』って、日本で何人くらいいるんだろうね?) |
No.4 | 8点 | メルカトル | |
(2014/02/15 23:19登録) 待ちに待った文庫化、もうね、読めただけで幸せ。内容なんかどうでもいいのよ。 という訳にもいかないので、少しだけ感想を。 取り敢えず、佐藤誠というキャラが茫洋としていてつかみどころがない、これが逆にこの作品を異色で特別な物足らしめている気がする。彼を追い詰めた探偵がほんのわずかしか出てこないのが残念だが、全編を通してドキュメンタリータッチで緊迫感がある。文体は相変わらずクセがあって読みやすいとは言えないが、それもまたこの作品の味わいなのだろう。 主題はとにかくサブタイトルにあるように「佐藤誠はなぜ首を切断したのか?」に尽きる。一応の真相には賛否が分かれるかもしれないが、これぞ究極のホワイダニットと言っても過言ではないと思う。 さあ、みんな書店へ急ごう。そして本書をゲットするのだ。 |
No.3 | 8点 | 蟷螂の斧 | |
(2012/11/23 09:59登録) 「電気人間の虞」が全く肌に合わなかったので、本作はどうかな?という気持ちで読みましたが、これは収穫でした。佐藤誠はなぜ首を切断したのか?というホワイダニットです。真相には、「うーん、成程そういうことか・・・」と納得してしまいました。ホワイダニット1本で一冊書き上げたことについて、評価したいと思います。最終章の「署名」も余韻のある終わり方で結構でした。 |
No.2 | 8点 | 黒い夢 | |
(2011/10/06 08:36登録) 素直に「やられたなぁ~」と思いました。 作者が仕掛けた罠にまんまとはまった感じです。 また本のつくりも非常に凝っていて、最後の最後まで楽しく読むことができました。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2010/08/24 20:34登録) 「佐藤誠はなぜ首を切断したのか?」という副題が付いているように、首切断理由の分析も入ったホワイダニットには違いないのですが、周到な騙りに満ちたミステリでした。 小説家・詠坂雄二が書いた犯罪実録小説の体裁をとりながら、タイトル、副題、そして大量殺人犯という佐藤の人物造形までをもミスディレクションに繋げ、小説が終ったあとのページにも仕掛けを施すという凝りようです。 一読地味な印象ですが、読めば読むほど味が出る感じがする逸品です。 |