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ミステリの祭典

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シャーロック・ホームズの回想
シャーロック・ホームズシリーズ

作家 アーサー・コナン・ドイル
出版日1959年01月
平均点6.50点
書評数20人

No.20 6点 レッドキング
(2021/12/17 19:45登録)
「シルバーブレイズ号」 失踪した名馬と惨殺された調教師、夕食マトンカレーと吠えなかった番犬・・連結いかに
「黄色い顔」 誰もが連想するレベルのホームズ推測を、半歩捻ったハッピーエンディングないい話
「株式仲買の店員」 「赤毛連盟」怪盗より、アイデアで1/3、演技力で1/4、覚悟で1/2レベルダウンした悪漢達
「グロリアスコット号」 文字通りホームズのメモリーにして最初の事件。ドイル十八番の後半歴史奇譚
「マズグレイヴ家の儀式」 これまたホームズのメモリーにして青年ホームズ第三の事件・・で、ドイル版「黄金虫」
「ライゲートの旦那衆」 本人の言が真ならば、死体から証拠を奪った者はその本人しかなく・・鮮やかなロジック
「曲がった男」 怪人の連れた珍獣を活かしたトリックでもあれば・・もっとミステリしてたかもしれない歴史奇譚
「居住患者」 密室トリックもどきでも施された現場だったら・・もっとミステリになっていたかもしれない復讐譚
「ギリシア語通訳」 ホームズって、フランス人クォーターなのね。弟以上に出来よく恰幅もいい兄貴・・
「海軍条約」 見取図あるんだから、もう少し絡めてほしく・・あんちゃん官僚なんだから、話に絡めてほしく
「最後の事件」 モリアーティ・・ホームズワトスンに並ぶシリーズ三大スーパースター・・登場!にして即退場

※この第二短編集には、少々オマケ加点。

No.19 6点 虫暮部
(2021/06/12 12:41登録)
 “そうか、ホームズ物語ってこういう感じか”と第1集を読んでそれなりに判ったので、然るべき向き合い方で挑む。つまり、捻りの無い実録風犯罪小説兼時代風俗小説として、期待し過ぎずあるがまま流れに任せるが吉。コツが摑めたので前巻よりは楽しめた。
 外国語の暗号も「グロリア・スコット号」ぐらい簡単なら面白い。「ギリシャ語通訳」で証人の安全を確保する前に広告を打っちゃうなんて対処が雑だよ兄貴。「最後の事件」の最後の手紙に涙。

No.18 6点 Kingscorss
(2020/09/25 15:04登録)
前作の冒険同様に娯楽小説として質は高いのだが、ミステリーとしては少し凡庸化していると感じました。

(ネタバレあり)
個人的に、マイクロフトのキャラ付けがあんまりよくないと思いました。なぜならホームズの上位互換だからです… いくらホームズほど行動力がないとはいっても、クラブでの推理合戦で普通にホームズを破るぐらいの頭脳を見せられると、なんか今まで神格化してきたホームズが小物に見えてきてしまうのが何とも微妙な感じがしました。 せめて特定の分野だけはホームズを凌ぐとかにすればよかったのに… 全分野で上位互換(今までわからない事件は兄に相談してたとかドン引き)とか… しかも、その兄は全然捜査に関係してきませんし、わざわざ兄なんか出さなくても良かったんじゃないかとさえ思います。

また、最後の事件でのモリアーティーが伏線もなくいきなり出てきて、”組織が…”とか大きい事言われてもなにか陳腐に感じるだけでした。しかも最後の対決は頭脳での推理合戦と見せかけて滝でステゴロ対決かい!と突っ込んでしまいました… その上両者揉み合って滝に落ちて死ぬ(いや、大人の事情で復活して出てくるのは知ってますが…)とか、悪い意味で言葉もありませんでした。

その他の短編もコナン・ドイルがお金のために嫌々書いてただけあって、あんまり突出して面白いのはなかったです。

…が、相変わらず読みやすく(ハヤカワ版で読了)、ホームズファンとしては十分楽しめる必読書なのでおすすめです!

No.17 5点 バード
(2020/07/23 12:32登録)
ホームズの初解決事件(『グロリア・スコット号』)、兄マイクロフトの登場話(『ギリシャ語通訳』)、一度はホームズシリーズの締めを飾った『最後の事件』などホームズファンなら必読な短編集。
このようにキャラものとして優れる一方、ミステリ的に尖ったギミックは少なく、ホームズに入れ込んでいない読者にとっては凡短編集という印象。


各話の書評

・白銀号事件(6点)
犬が吠えなかった事実から犯人を絞るのは、これぞミステリ世界の探偵が披露する推理という感じで嫌いじゃない。一方、羊の足の件はあまり上手い伏線と思えなかった。

・黄いろい顔(6点)
珍しくホームズの読みが外れる展開。ラストのホームズの台詞
「これからさきもし僕が、自分の力を過信したり~、ひとこと僕の耳に、『ノーバリ』とささやいてくれたまえ。」
は、幾分かっこつけな台詞だが、ホームズくらい失敗の少ないキャラが言うとばえますね。
比較的コンパクトにまとまっており、割と好きな話。

一つ気になったのは、冒頭でホームズの失敗記録例に『第二の汚点』が挙げられていること。『第二の汚点』って真相を見抜いたうえで、あえて見逃す話だったような・・・、記憶違いかしら?(現在手元に『シャーロックホームズの帰還』が無いので確かめられず。)

・株式仲買店員(5点)
第一印象は『赤髪組合』に似てるな、だった。(旨い話におびき出される依頼人から連想した。)上記のような焼き直し感が強いので、評価はまずまず。

・グロリア・スコット号(5点)
昔の悪事で脅される爺さんキャラは、ホームズ物に限らずちょいちょい登場するが、一話限りの爺さんの過去話なんて退屈な場合も多い。この話もJ・Aの過去話は退屈だった。
暗号が解かせる気のある良心的なものだったので、+1点で総合5点。

・マスグレーヴ家の儀式(5点)
この話の暗号は逆に簡単すぎで、わざわざホームズを出馬させなくても解けるレベル。(元々暗号じゃないしね。)
事件の顛末は予想通りで、微妙。

・背の曲った男(4点)
犯人不在の部屋から妙な動物の痕跡が発見されるという面白シチュエーション。しかし、忍び込んだ男がつれていただけで、動物自体にはなんの役割も無い。このような雑さが気になりイマイチ。

・入院患者(4点)
矛盾は無いが、小さくまとまっている感。何か工夫が欲しい。

・ギリシャ語通訳(5点)
ホームズの家族構成について言及する貴重な話なので、+1点してます。初登場の兄マイクロフトが大活躍するわけでもないのは、ある意味意表をついている?

・海軍条約文書事件(6点)
本短編集の中で一番好きな話。犯人に意外性は少ないものの、文書の隠し場所なんかはポーの『盗まれた手紙』のように、一工夫あり良い。犯人がベルを鳴らした理由(エレガントではないですが(笑))もスルーせずに説明しており、いい感じ。

・最後の事件(3点)
モリアティが雑にホームズを葬る話ということは聞かされていたが、想像よりも雑で、悪い意味でびっくりした。モリアティはぽっと出な上、作者が乗り移ったがごとく都合の良い先読みしてるだけ。「犯罪者中のナポレオン」と言われても・・・。
シリーズの中で重要な話なのは間違いないが、単体で見たら酷い出来だと思う。

No.16 8点 クリスティ再読
(2020/05/27 09:35登録)
皆さん点がカラいなあ(苦笑)。「冒険」がベーカー街221Bに腰を据えたホームズの元に持ち込まれる事件を、見事に推理して解決する、いわば「ホームゲーム」な話でほぼ統一しているのに対して、「回想」はそうじゃない「アウェイ」な話でまとめた印象を受けた。
巻頭の「シルヴァー・ブレイズ」だっていきなりダートムア旅行で始まるわけだね。普通にベーカー街で始まる次の「黄色い顔」はホームズ失敗譚だし、ホームズの回想を書き留める「グロリア・スコット号」「マスグレーヴの儀式」、ホームズが健康を害して休暇旅行した先の「ライゲートの大地主」、マイクロフトとディオゲネス・クラブで会う「ギリシャ語通訳」、で締めはホームズと同行してヨーロッパに舞台を移す「最後の事件」...と、「冒険」が作った話のパターンを「回想」は突き崩してやり直したような印象を受けるんだ。

ホームズがみごとな分析的推理の腕をふるって、その独特の調査方法の価値を示した事件でも、事件そのものがひどくつまらかったり、平凡だったりして、世間に発表するほどのものでもないと思えることもよくあったからである。また一方では、きわめて驚くべき、劇的な性格の事件の捜査に関係していても、その事件の解決にホームズが果たした役割が、彼の伝記作者として私が望むほど大きくはないということもしばしばあった。

とワトソン君が悩むのが、この「回想」の本音みたいなものなのか。まあだから、「回想」読んでいると、実のところファイロ・ヴァンスよりも、コンチネンタル・オプの方がホームズの直系の子孫のような気がしてくるのだよ。ホームズだって探偵商売を通じて、奇妙な人々の繰り広げるヘンな事件の狂言回しとして立ち会うこともあるわけで、悪党とカモの入り組んだ事件を裁き分ける「機械仕掛けの神」だとしても、十分エンタメとして成立するわけだ。
まあだから「回想」はあまりホームズが「推理」しないんだよね。皆さんが評価下げたがるのも分かるんだけど、評者は逆に「冒険」だけだったら「名探偵シャーロック・ホームズ」がここまで代名詞にならなかったんじゃないかと思うんだ。「回想」は「冒険」が作ったパターンを壊して、新たに「名探偵ヒーロー」の活躍の幅を広げる大きな役割を果たした、と思う。どうだろうか?

No.15 6点 nukkam
(2016/08/25 10:45登録)
(ネタバレなしです) 1892年から1893年にかけて出版された11の短編を収めたシャーロック・ホームズシリーズの第2短編集です。私の読んだハヤカワ文庫版巻末解説によればドイルは当初はホームズの短編をわずか6作しか書くつもりがなかったらしく、それが「シャーロック・ホームズの冒険」(1892年)で12作、さらに1894年出版の本書と続くわけですが世間での人気上昇とは裏腹にホームズシリーズを書き続けることが苦痛になってきたようで、そのせいか本書は「冒険」に比べると作品の質が落ちてきた感は否めません。とはいえホームズが探偵をするようになった背景が紹介されたりホームズの兄マイクロフトが登場しているのでファン読者には見落とせないでしょう。名作中の名作「シルヴァー・ブレイズ号事件」が読めるのも本書のセールスポイントの一つです。なおおっさんさんのご講評で紹介されているように「ボール箱」(1893年)という短編はドイルが当初単行本化を拒否したという経緯があり、国内版では本書に収めているのと「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」(1917年)(ドイルが単行本化を公認)に収めているのとがありますのでこれから購入する場合はダブリに気をつけて下さい。

No.14 9点 青い車
(2016/08/14 21:23登録)
 カドカワ版の新訳で読了しました。単純に内容として強く記憶に残ったのは『シルヴァー・ブレイズ』『黄色い顔』あたり。三谷幸喜脚本の人形劇に採用されていた『ギリシャ語通訳』『海軍条約文書』が読めたのも嬉しかったです。あとは古風な暗号解読が絡んでくる『グロリア・スコット号』も味わい深くて好み。もうひとつカドカワ版で特筆すべきなのは、異色作にして問題作の『ボール箱』が収録されていることです。
 一部の作品でアイディアの使い回しをしているなど、純粋に面白い作品は『冒険』より明らかに減っていますが、それでも楽しく読めたので得点はちょっと甘めです。

No.13 8点 tider-tiger
(2015/10/09 02:51登録)
シャーロック・ホームズの回想を読み直して、子供の頃はミステリとして楽しみ、大人になるにつれてその他の部分を楽しむ、ホームズはそのような存在だったんだなと感じました。
私は本作をドイルのアイデアノートのように感じてしまいました。これから書こうと思っている長編小説のネタや場面を練習として吐き出しているような風。
ミステリとしては冒険はもちろん、帰還よりも落ちると思います。作者がミステリではないものに気もそぞろであったゆえに、矛盾した言い方ですが、散漫であり、また深みがある。
歴史小説を書きたかったのなら、『時の娘』や『ジンギスカンの秘密』のようなものを書いてみれば良かったのに。きっと傑作になったと思われます。残念です。

以下 ネタバレあります


収録作品寸評 (旺文社の田中純蔵訳です)
★シルヴァー・ブレイズ号事件 
小学生の頃に最初に読んだホームズもの。その時の訳では銀星号事件とかいう邦題でした。子供の頃の感動そのまま屈指のミステリ短編。
★黄色い顔
大好きな作品です。ただ、子供の顔を隠すのはわかるが、なぜわざわざそんな不気味なお面を? 子供だって嫌がるのでは? なぜ不気味なお面を被せたのか。その必然性が描かれていれば完璧でした。
★株屋の店員 
面白かった。ですが、自分の傑作をパクってどうするのだという疑問も湧く。
★グローリア・スコット号 
前半はよくまとまっていたのに後半の復讐譚の序章のような冒険活劇に力が入りすぎてなんの話かよくわからなくなりました。こういうのを書きたかったのですね。
★マスグレイブ家の儀式書
個人的には非常に好み。もう少し長めの物語にしてじっくり書いて欲しかった一編。ご先祖様の誰もがこの儀式の意味について考察しなかったのはちょっとボンヤリし過ぎ。
★ライゲットの大地主
二名によって一単語ずつ交互に書かれた手紙。そこからホームズがさまざまなことを読み取る場面が印象的。
★まがった男
曲げるのは唇だけにした方がよいようで。マングースになんの意味があったのでしょう?
★入院患者
犯人というか被害者は前半部分では賢かったのに、肝腎なところで大馬鹿でした。自分の命を守るためなのだからもうちょっと工夫しろと言いたい。
★ギリシア語通訳
これはちょっと……。兄の登場でテンション上がるも、結局、兄はなんのために登場したのかわかりません。
道行く男、子供が一人か二人かで兄と意見が分かれる。ホームズが絵本(か、ガラガラ)を見逃すなんてありえないのでは。兄の凄さを強調できていないように思えました。
★海軍条約事件
よくまとまっているも、あまり面白くない。
★最後の事件
子供のころはワクワクしましたが、教授の作り上げた犯罪組織や教授の人物像、起こした事件やホームズがどのように彼を追い込んでいったのか、大人の私が読みたい部分がまるで書かれていません。ホームズがすごいすごいと連呼する教授の凄さが読者にはまるで伝わらず、ダメな人物描写の典型。長編化希望します。
どなたかが書いてらっしゃいました「あの決着のつけ方はないだろう」という書評には笑いました。

No.12 8点 斎藤警部
(2015/06/02 16:53登録)
「回想」は「冒険」に較べると少なからず落ちるかな。。 面白いんだけど、スペシャルなキラキラしたオーラが薄くなったと思う。 まだ高水準ですが。

No.11 5点 ボナンザ
(2014/04/08 21:26登録)
冒険に比べるとやや劣る。

No.10 6点
(2013/01/17 11:31登録)
新潮文庫の「思い出」を読みました。
ミステリー的に評価が劣るのは理解できますが、おどろおどろしさもあれば、子ども心をくすぐるものもあり、物語の雰囲気は「冒険」と変わらないか、案外上なのかもしれません。ホームズ物らしい作品集といえます。

個別には、ホームズが意外な役回りを演じる「黄色い顔」(これがベスト)や、わくわくドキドキの「マスグレーブ家の儀式」、ミステリー的にまずまずな出来の「海軍条約文書事件」が好みです。二番煎じだけど「株式仲買店員」も悪くはありません。「最後の事件」はいかにもジュブナイル的だけど、味わい深くて、心に残ります。
最後まで読めば、著名で評判のいい「白銀号事件」は普通の謎解きミステリーっぽく見えてしまい、個人的にはむしろ蚊帳の外といった感じになりました。

二編に登場する、卓越した推理力の兄・マイクロフト。活字では初めてだから、「マイクロソフト」と読み違えてしまうんですよね(笑)。

No.9 6点 TON2
(2012/11/12 13:06登録)
創元推理文庫
 「シルヴァー・ブレーズ号の執行」「黄色い顔」「グロリア・スコット号の悲劇」「マスクレーヴ家の儀式書」「ライトゲートの大地主」「背の曲がった男」「寄留患者」「ギリシャ語通訳」「海軍条約事件」「最後の事件」の11編。
 圧倒的な推理力による事件解決というよりも、推理の失敗や謎が完全に溶けない問題もあります。
 「ギリシャ…」ではホームズにマイクロフトという兄がいることが分かります。「グロリア…」は、ホームズの大学時代の事件で、探偵業のきっかけとなったものです。「最後の…」は、突然ホームズと同等の知能を持つとして現れた宿敵モリアーティ教授ととの戦いです。

No.8 6点 ミステリーオタク
(2012/10/29 01:13登録)
それぞれホームズらしい味わいがある短編集
だけど、いくら十九世紀とはいえ最後の事件で天才といわれる二人の大人があんな原始的な決着のつけかたをするものだろうか

No.7 7点 mini
(2012/07/24 09:55登録)
明日7月25日発売の早川ミステリマガジン9月号の特集は、”シャーロック再生”
今年6月に原書房からエドワード・D・ホック著のホームズパロディ集が、光文社版と同じ日暮雅通の訳で刊行されており、その関連という意味合いもあるのだろうか、ホックの短篇も掲載されるようだ

さて『回想』と言えば泣く子も黙るホームズ短篇集シリーズとしては2番目の短篇集である
つまり『冒険』と『生還』の間に挟まれているわけだ
まぁそれだけが理由ではないのだろうが、世間一般の評価はどうも地味な印象である、やはりどうしても『冒険』との比較論が無意識に入ってしまうからなんだろうと推測する
しかし私はこの『回想』が結構好きなんである

いやたしかに『冒険』と比較してしまうのは分かる、例えば「株式仲買店員」などは殆ど「赤毛連盟」の二番煎じだし、「ギリシア語通訳」は兄マイクロフト登場の特殊性を除外すれば「技師の親指」の焼き直しっぽい、しかも両作ともプロット終盤が腰砕けで「赤毛」「技師」の劣化バージョンだ
「まがった男」に至っては、腰砕けどころかそもそも謎の動物の足跡が意味を成して居らず必要性が感じられない
『冒険』の方が全体に展開がシンプルで切れ味が有るが、『回想』では一応工夫は感じさせるのだが悪い意味で複雑になってしまっている
例えば「入院患者」なども狙いは分かるんだけどプロットとしては上手く纏めきれずに中途半端である

このように欠点も多い『回想』だが、それでも何か不思議な魅力が有るんだよなぁ
回想ってくらいだからノスタルジックな回顧調とでも言うか、こういう味わいは『冒険』や『生還』ではあまり感じられなかったところで、独自色は有ると思う

収録作中で客観的ベストはやはり「名馬シルヴァーブレイズ」、私好みの地道な調査追跡場面も有るし、閉鎖空間じゃなくて屋外ものだし
一方で個人的な好みは回想テーマの1作でもある「マスグレーヴ家の儀式書」、やはり痕跡を追う調査追跡場面有りだし悲劇的な真相が雰囲気と調和している
あとは他の方も挙げられている「黄色い顔」、たしかにホームズの推理は空振っているんだけど、ちょっと『冒険』には無い味が有る、ある意味ドイルらしいんじゃないかな

No.6 7点 大泉耕作
(2011/12/24 15:52登録)
『冒険』に比べてアイデア不足かな・・・。
でも、数ある謎が最後にスッキリと結び付く様は見事。さすが、世界で最も有名な名探偵の事件簿なだけはあります。
最後の二編は印象的でした。

No.5 9点 おっさん
(2011/09/27 11:44登録)
ホームズ譚のターニング・ポイント(第一期 完)となった『回想』(1893)を、光文社文庫<新訳シャーロック・ホームズ全集>で読み返しました。

前作『冒険』の収録作に続いて、『ストランド』誌に発表された十二篇が収められています。え、十一篇じゃないの? とおっしゃるアナタは鋭い。
連載再開後の二作目「ボール箱」は、不道徳な内容になったと反省したドイルの意向により『回想』から省かれ(米版の同書初版にのみ収録)、1917年になって、ようやく第四短編集『最後の挨拶』に再録されたという、いわくがあり、それを本来の発表順に戻して『回想』で読めるようにしたのが、光文社文庫版なのです。
そして、筆者はこのカタチを支持します。
作品数が、『冒険』と対になって美しい、というのが、まずあります。そして何より、作品を順に並べることで、○を許せなかった男の悲劇である「ボール箱」(眼目は、シリアスな「犯人の物語」ですが、ミステリとしては、××の取り違えの趣向が面白い)のあとに、○を許す感動的なエンディングの「黄色い顔」(ホームズの思い込みが外れる、プレ・アントニイ・バークリーのような側面も興味深い)が来る、対照の妙が素晴らしい、というのが最大の理由です。
『回想』をあるべき姿に復元した、訳者の日暮氏に感謝するゆえんです。

さて。
筆者はホームズ譚の本質を、「名探偵」というヒーローの活躍を描く冒険譚と考えます。小説形式はほぼ一定でも、演出上の力点をどこに置くかで、それが謎解き型になったり、サスペンス型になったり、クライム・ストーリー型(「犯人の物語」に主眼がある場合ですね)に変化すると思うわけです。
そんなホームズものの、では短編ベストは何か? と聞かれたら・・・悩ましい問いではありますが、筆者は謎解き型、つまり「本格」大好き人間なので、答はこうなります。
『回想』の巻頭作だよ。
そう、「名馬シルヴァー・ブレイズ」です(個人的には、「白銀号事件」ないし「銀星号事件」という訳題に愛着がありますが・・・競走馬の名前ですからね、カタカナ表記は妥当でしょう)。
「犯人」の計画の破綻からスタートする事件の組み立て、混在するふたつのベクトルを、それぞれ「足」と「頭」で整理するホームズ像、そして解明のためのデータ提出のうまさ(○をめぐる有名なセリフのやりとり、その前提となるのは別々なふたつのデータなのですが、その最初のデータの出しかたには舌を巻きます)――トリック重視の「黄金時代」を飛び越え、かの都筑道夫が提唱したモダーン・ディテクティヴ・ストーリイの萌芽すらもった、傑作です。

中盤、「グロリア・スコット号」「マスグレイヴ家の儀式書」と、ある意図をもって若き日のホームズの肖像を描出した作者は、「ギリシャ語通訳」でホームズの兄を登場させるという布石を打って、ラストに「最後の事件」を持ってきます。
シリーズの商業的な成功にもかかわらず、文学的な観点からもっと野心的な作品を書きたいと考えたドイルは、過度の思い入れもなく、淡々とホームズ譚を閉幕させました。その素っ気ないくらいの筆致が、逆に、言葉に尽くせないワトスンの無限の悲しみを感じさせる――とまで言うのは、まあ、いくらなんでも贔屓の引き倒しですねw

「赤毛組合」や「まだらの紐」といった、問答無用の代表作を配した『冒険』にくらべれば、やや華に欠けるとは言えますが、極彩色ばかりが全てじゃない。
モノトーンで統一された本書も、殿堂入りたるにふさわしい、永遠の書です。

No.4 5点 江守森江
(2010/12/26 17:25登録)
先月AXNミステリーではホームズ特集月間でグラナダ版ドラマの全短編をキャッチ・アップ放送した。
殆ど観ていたのでドラマすらおさらい視聴になったが、原作も図書館の棚の前で眺め直した(古い本しかなく読み難くかった)
やっぱりジェレミーをドラマ版で観る方が楽しい(特に露口の吹替版)
有馬記念当日だし、これには昔の英国競馬が舞台な作品も登場するのでアップした。
今でもチャンピオン・ステークスは伝統ある重要レースだが、賞金自体は日本のヘボ重賞レベルで、到底借金一掃なんか出来ない。
その点、有馬記念は堂々と世界に誇れるレースだ!
白鳳が当日ゲストで白帽・NHK(相撲放送1ch)な1枠1番が勝った(しかも調教師が角居勝彦)のはホームズなら当然のごとく推理するだろう。
※上記のヨタ話が書きたくて本作書評の場を借りましたm(_ _)m

No.3 6点 E-BANKER
(2010/10/24 00:03登録)
「シャーロック・ホームズの冒険」に続く第2作品集。
新潮文庫版題名は「シャーロック・ホームズの思い出」となっています。
①「白銀号事件」=有名作。人は死んでいるが、いわゆる殺人事件ではないというパターン。ホームズ物らしい作品。
②「黄いろい顔」=結局、ホームズが解決する前に一件落着してしまいます。
③「株式仲買人」=プロット的には「赤毛連盟」に通じるもの。作者はこのパターン好きみたいですね。
④「グロリア・スコット号事件」=探偵ホームズが手掛けた最初の事件という位置づけ。(もちろん「緋色の研究」よりも前です)
⑤「マスグレーブ家の儀式」=これもホームズが私立探偵事務所開業後すぐの事件。ストーリーそのものはパッとせず。
⑥「背の曲がった男」=密室っぽい部屋で殺人が起こり、窓の下に妙な動物の足跡が残る・・・という魅力的な設定ですが、真相はそれほどでもない。
⑦「海軍条約文書事件」=機密書類紛失の謎を扱った内容。割合まとまっていて面白い。
⑧「最後の事件」=好敵手モリアテイ教授が登場。最後は活劇風にスイス山中の谷底へ・・・急すぎる!
他2編の全10編。
前作(「冒険」)の質の高さに比べれば明らかに落ちるし、短編らしい切れ味を感じない作品が多いことは確かです。
ただ、時代性を考慮すれば、作者やホームズの偉大さを否定するほどではないかと・・・

No.2 6点
(2009/07/05 15:03登録)
ホームズが若かりし頃の事件を語る『グロリア・スコット号』、『マスグレーヴ家の儀式』、それにホームズを偲ぶ『最後の事件』(もちろん後に生還するわけですが)と見てくると、なるほど「回想」か、と思えます。
犬の手がかりに関する有名な台詞が出てくる『銀星号事件』や、事件現場の見取図が挿入されている長めの『海軍条約事件』といった有名作もさすがですが、『グロリア・スコット号』の秘められた過去の手記は迫力がありましたし、ホームズの推理がほとんどからぶりするちょっと感動の『黄色い顔』も個人的には好きな作品です。

No.1 5点 Tetchy
(2008/06/13 22:04登録)
「白銀号事件」ぐらいしか『~冒険』クラスの短編は無かったように思う。
残りは特に可もなく不可もない。

本格物ではない「最後の事件」でホームズを葬り去ろうとした、そんな作者の苦悩が窺われて興味深い。

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