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ミステリの祭典

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シャーロック・ホームズの冒険
シャーロック・ホームズシリーズ

作家 アーサー・コナン・ドイル
出版日1953年04月
平均点8.22点
書評数40人

No.40 10点 タピオカ
(2023/09/14 19:45登録)
「ボヘミアの醜聞」、「赤毛組合」など今のミステリやサスペンスの基礎となったんだろうなぁ、と思われるトリックやストーリー展開だった。ミステリー好きは一読の価値あり。あと文章が比較的読みやすい(重要)

No.39 8点 レッドキング
(2021/12/13 19:09登録)
「ボヘミアの醜聞」 ・・シャーロック・ホームズにとっては、彼女こそが「女」だった・・
「赤毛連盟」 王族子孫でイートン校オックスフォード大卒の怪盗・・読み返せばなかなかにクールなヤツ・・
「正体の場合」 いや、ヤツはとんでもない物を盗んで行きました・・あなたの、心です。
「ボスコム谷の謎」 圧倒的に不利な状況証拠からの撲殺事件冤罪返し。ただ、足跡残りすぎ。
「五粒のオレンジの種」 窮状青年の救済も復讐も果たせない苦い失敗譚が故に心に残り・・・嗚呼、KKK!
「唇の捩れた男」 乞食三日やったら・・コカインやっても阿片はやらないミック・ジャガーの様なホームズ
「青いルビー」 頭骨の大きさと知性は比例するのか・・七面鳥でなく鵞鳥喰うのかクリスマス。
「まだらの紐」 おお、ヘレン、まだらの紐が・・・で、あいつ、金庫の中で呼吸できたのかな。
「技師の親指」 東西南北いづれでもなければ・・・鮮やかなる場所のトリック。
「高貴な独身者」 やせ我慢の美学とまでは行かず「気高き独身男」、つらいな。
「緑柱石の宝冠」 ホームズ物にようやくのキャラツイスト「不詳の息子」と「健気な姪御」
「黄褐色の橅木立」 笑い話名手のエビス笑い肥満漢にして凶悪漢・・ロイロット医師より怖い。

※歴史的、記念碑的、何より個人的思入れから、点数には相当のオマケ付き。

No.38 5点 虫暮部
(2020/11/05 11:41登録)
 収録作品のうち、有名作は、面白い、のだろうが、知名度と引き換えに其処彼処でネタバレしているわけで、私が、今、改めて読み返して、その面白さを享受出来るかと言うと難しい。
 有名でない作品は、それぞれに有名にならなかった理由があるのだなぁと言う感じ。概ね的確に淘汰されていると思った。それはつまり、隠れた逸品を見出すことは叶わなかった、と言うことだ。

No.37 10点 Kingscorss
(2020/09/21 13:46登録)
いくつかの有名エピソードは既に映画とかドラマで見たことがあってネタを知ってましたが、今更ながらハヤカワ版でこの名作を読了。

いや、2020年の今でも全く色褪せない素晴らしい短編の数々。発表当時ならより刺激的だったに違いありません。内容については皆さんたくさん書かれてますので割愛ですが、とにかく読みやすい。ここかなり大事なポイント(同じ古典短編集でもブラウン神父は読み辛いのがかなり残念)だと思うんですよ。そのためかどうかわかりませんが、よく原文が中学や高校英語の教科書に学習目的で載せられるのも納得です。

読みやすいだけでなく、内容もページをめくる手が止められないほどのめり込む内容の数々で、洞察力の披露、推理力、行動力、機転力など問題を解決するまでの過程や話の奇想天外な結末を十二分に堪能できました。

個人的に驚いたのは、安楽椅子探偵というイメージからあまり部屋から出ないと思ってただけに、思い立ったらすぐ調査や仕掛け、情報収集(乞食に変装までして)に出向く行動力にはびっくりでした!あと、連絡手段の一貫ですが、自らこまめに手紙を出しに行ってるのもちょっと受けました。

有名すぎて逆に手を出してなかった自分みたいなミステリーファンの皆さん、絶対の絶対に必読ですよ!

No.36 10点 クリスティ再読
(2020/05/04 17:34登録)
10点三連発になるのはご愛敬。まあそんなこともあるさ(苦笑)。10点付けんで何点つける?という作品でもあるからね。
先行する長編2つでキャラの固まったホームズ&ワトソンなので、あとはアイデアの赴くまま、楽しみながらストーリーテラーの腕を振るってる、と感じる。まあ何度読んだか知らないけど、今回はストーリーテラーとしてのうまさ、に感動する。ホームズの性格付けになる観察やら人生観やら、うまく事件に挟み込んで印象付けているし、記録者としてのワトソンが同時期の未執筆事件に触れながら...というあたりのギミックも最初から堂に入ったものだ。

今回とくに印象的だったのは「唇のねじれた男」。これ、紳士の堕落話なんだよね...だから前振りの紳士がアヘン中毒になって人生棒に振って~アヘン窟探訪というあたりが、実は謎には直接かかわらないのだけど、話として「効いて」いる。で、子供の時はよく分からなくても、大人になるとこの話の風刺性というか、アイロニカルなあたりが実感できて大変面白い。
そうしてみると「赤毛連盟」あたりも、実のところホラ話のようなユーモア譚にリアルなオチがついている話みたいに見た方がいいのかもしれない。明治時代に翻訳されたときには、赤毛じゃなくて禿頭組合だったらしい(苦笑)。「赤毛のアン」も「にんじん」そうだけど、赤毛、って欧米じゃ妙な色眼鏡で見られる色らしいからね。赤毛の人々が群れをなして応募会場に詰め掛けているようすを想像するだに笑えない?(禿頭組合だったらさらに...w)
で「青い紅玉」。これ定型的なクリスマス・ストーリーで、悔悛してハッピーエンド、というあたりをきっちり押さえて読むと、ユーモラスでファンタジックな味を感じれると思うんだ。犯人抜けてるけどさ、それが素敵。「六つのナポレオン」が本作のバージョンアップだろうねけど、あっちはシリアスになるからねえ。
「まだらの紐」は意外に密室を強調していないというか、死因不明だから不可能性を重視していないんだよね。それよりも深夜の室内での待ち伏せの描写がいい。スリラー的な興味の方をずっと重視して書いているように思う。
「ボヘミアの醜聞」はね、依頼人はハプスブルク家関係者、ということになるから、どうやらルドルフ皇太子が有力らしい。「うたかたの恋」のルドルフだから、有名なマイヤーリンク心中事件をした人だ。心中が1889年だから、発表の2年前。まあ、いろいろ浮名を流した人でもあるから、アイリーン・アドラーとの関係も「ありそうな」話なんだろう。そういうロマンチックな「艶っぽさ」をイメージするのがいいと思うんだ。
「ぶな屋敷」はゴシック小説の定形にホームズを絡めたもの。犬の射殺とか考えると、バスカヴィル家の原型になっているのかもね。
....まあ話し出すと止まらないね。そういう作品集だもん。それだけ個々の話のエッジが立っている、ということでもある。

No.35 10点 ことは
(2019/09/07 01:30登録)
点数は、もうこの点しかない。
古典の評価をするとき、どう評価するかは難しいですね。
読んで面白かったかどうかだけで点をつけるのもありですが、私はその作品の影響下にある作品も一緒に考えます。
(読んで面白かったかどうかだけで点をつけるのを否定するわけではなく、そういう多様な切り口の評価があつまるから、このサイトは素敵なのだと考えています。以下は私の視点の説明というだけ)
A作品を読んで「面白かった」と思った、B作品を読んで「Aと一緒じゃん」と思ったとして、A作品よりB作品のほうが先行していて、面白かったポイントが同じなら、「面白かった」と思った評価は先行のB作品に与えるべきでしょう。「歴史的価値」ともニュアンスは微妙に違って、要は「”真似したほう”(後続作)への評価は、”真似されたほう”(先行作)へ振替しよう」と思っているだけなのです。
そう考えると、ホームズは後続のミステリ/名探偵設定に絶大な影響があるわけで、ホームズがなければ、今のミステリはないと思うのです。
作品で言えば、やはり「冒険」。
「緋色」「四人」だけでは、影響はなかったろうし、「思い出」以降はプラスアルファです。
最強のインフルエンサーの本書には、この点しかありえません。
個々の作品について少し。
集中好きなのは「青いガーネット」。ガチョウの足取りを追跡するテンポの良さが楽しい。次は「まだらの紐」。ラストのホームズのセリフが好き。
ついでに、自己紹介に「ホームズ生まれ」と書きましたが、そのホームズは、ポプラ社の山中版ホームスでした。好きな話は「鍵と地下鉄」「踊る人形」だったなぁ。
最後に、「冒険」の「おっさん」さんの書評、とてもいいです。私もこんな書評がかけたらなぁ。

No.34 8点 mediocrity
(2019/06/16 04:47登録)
短編12作品。以下日本語タイトルはWikipediaを参照した。『まだらの紐』だけ英語の授業で読んだことがあるので再読。
スマホでちょくちょく読んでいたけど結構なボリュームですね。『緋色の研究』の倍くらいあったような気がする。

歴史的価値ゆえに高得点が付いているのかと思いましたが、読んでみると面白いものが多かったです。マイベストは『青い紅玉』。鳥を追いかけている所がなんともコミカルで。『緑柱石の宝冠』が次点でしょうか。息子が無言を貫いた理由がなんともいい。次いで『ボヘミアの醜聞』『赤毛同盟』『唇のねじれた男』あたりが好き。有名な『まだらの紐』は話は面白いですけど、一番無理があるような。
12作もあれば当然、全作品面白いというわけにはいかず『ボスコム渓谷の惨劇』『オレンジの種五つ』『ぶな屋敷』あたりはあんまり。

あえて歴史的価値を考慮せずにこの点数で。

No.33 4点 バード
(2019/02/28 19:49登録)
(再読シリーズ 2)
ついにこの本を採点するときがきてしまったという気分ですね。(ちなみに他にはアクロイド殺しなどが保留中)
このサイトでも非常に好評価で、ホームズが世界中で読まれる名作なのも分かっているが・・・、これが私の点数です。


・点は低いが言いたいことはたくさんある
高校の頃新本格からミステリを読み始め、早い段階でこの本に到達した。当時は途中であきてしまい、最後まで読めず、また再開というのを何度か繰り返し、何とかして読んだ記憶がある。それ以来ホームズシリーズを無意識に避けてしまっていた。しかし、一ミステリファンとしてやはりホームズを抑えたいと思い、今回再び読んだ。
その結果高校生の頃よりは楽しめた気がする。読みにくさは感じなかったし、一個一個のエピソードは楽しめたと思う。ただし、やはり昔と根本の感性は変わっていないのか途中で中だるみした。
以前は自分に合わない原因として、単にホームズの超人推理だけで話が進み読者が推理できないからあっていないと思ったが、今回読み直してもう一つ原因があることに気がついた。あの手この手で色々な話を作っているが結局ホームズのキャラクター頼みで、本格物で大事な謎が魅力的でない場合が多いのだ。
ということで、一個一個の話は楽しめても、ホームズのキャラだけでは400P.も読むと飽きちゃうというわけ。逆にいうと短編形式の小さい謎があっていないだけで、長編作ならこれより楽しめるかもしれない。次は四つの署名を読むつもりなので、私の中でのホームズものの地位が向上することを祈っている。


・各短編の感想
「ボヘミアの醜聞」:本短編集の中で二番目に好きです。ホームズが少し敗北感を味わう点が他と大きく違う。これだけ少しホームズこてこての型から外れている気がする。

「赤髪組合」:意外性は少ないから読者が参加しやすいかな?これも好きな方。

「花婿失踪事件」:これはイマイチっすね。そもそも変装(?)で父が娘の恋人を演じてばれないなんてありえるのかね?ホームズシリーズでは人物の誤認が他にもあるが、どうも無理矢理感があるんだよなぁ。

「ボスコム谷の惨劇」:平均くらい。犯人候補が一人なので、犯人はすぐわかる。でも殺し方はトリックとかもなく、ただの事件ね。

「オレンジの種五つ」:トリックもなにも無い暗殺みたいなことをしてくる奴らが相手だが、落ちが好き。

「唇の捩れた男」:謎は面白い(これはポイント高い)のに変装おちなのが残念。気付よ。

「青いガーネット」:特徴的なエピソードで悪くない。ただしこの辺からあき始める。

「まだらの紐」:これはいいね。本短編集の中でNo.1。殺し方がユニークで面白い。こういうトリッキーな謎をホームズがばしっと解決する話が見たいのだ。

「花嫁失踪事件」:可も無く不可も無く。

「ぶな屋敷」:微妙。監禁の動機が金目当ての結婚阻止で、これは「花婿失踪事件」の動機と完全に同じ。一短編集の中でこういう被りがでるのはどうかな?


・まとめ
こうして振り返るとやっぱり謎が大事と再認識。色々苦言を書いてるがホームズのキャラクターは好きだし、エピソードも好きなのでご容赦を。
ついでに過去最長の書評と思われる。

No.32 9点
(2018/11/01 23:45登録)
ビクトリア時代の風情を感じられるシリーズにおいて一番高い評価を受ける本作、そしてあの世界でもっとも有名な探偵。
盛りだくさんな短編集。満足していた。

ついでに、「赤い紅玉」ではホームズ唯一に正当な理由のない犯罪者を大目に見てやった。情にもろいホームズなのだ。

No.31 10点 群衆の人
(2017/03/21 20:22登録)
※ややネタバレ

ALFAさんの素敵な感想に触発されてレビュー。グラナダ・テレビ版のホームズは本当に素晴らしかった。「赤毛連盟」のオープニングがあの人だったり(!)、「ギリシャ語通訳」がほとんど007映画だったり、世評ほど原作に忠実な映像化でもなかったと思うのだけれど、本質的な部分をつかんでいると言うか、愛読者のツボがわかっていると言うか、原作未読の人に「あのドラマ見るだけでOK!」と言ってしまうほどのホームズ・スピリットに溢れてた。もちろん、最大の立役者は故ジェレミー・ブレット。彼こそ史上最高のホームズ俳優です。
一応小説版『冒険』の話もしておくと(一応て)、「赤毛」と「まだらのひも」はやはりツートップ。後者は密室物としてよりもダイイングメッセージ物として現代作品を凌ぐ出来である。夜中あんなのに寝込みを襲われ、しかも毒で譫妄状態──そりゃイミフなメッセージも残しますわ。この説得力ある状況設定は見逃すべきでないと思う。タイトルのキレということでは「花婿の正体」も秀逸。一見奇妙な原題は「正体の事件」でなく「○○の一例」という意味なのだ。凄い…。ほか、どれもこれもさすがの名編で非の打ち所無し。ロジックっぽいことはツカミや小ネタにとどめ、大ネタは伏線美で支えている点にも注目。数学のように公理が定められない「小説」では、厳密な論証など不可能である。中途半端になること必定なロジック・ショーより、盲点を衝く意外な推理の面白さこそ謎解き小説の本領、と心得ていたドイルの慧眼にあらためて敬意を表したい。(さればこそ本シリーズの主人公は医師でもエリート役人でも数学者でもなく奇人の私立探偵なのだよ、ワトソン君)

No.30 9点 ALFA
(2017/03/19 13:00登録)
いわずと知れた聖典。小学生のころから楽しんで、今もなお楽しめるというのもすごい。
19世紀ロンドン、ワトソン、ホームズという不動のパッケージに多彩な着想の「お話」が盛られているのが楽しい。そしてこの多彩な着想が後世のミステリ、スリラー、冒険小説へと進化していくということだろう。
フェイバリットは元祖ミステリ「赤毛連盟」と元祖スリラー「まだらの紐」
グラナダTVの名作ドラマシリーズではこの二作に加えて、「ボヘミアの醜聞」「青いガーネット(紅玉)」がおすすめ。
このころはまだ美青年の面影が残るジェレミー・ブレットがさっそうと演じている。ドラマは四作とも評価10。

No.29 8点 メルカトル
(2016/10/07 21:53登録)
子供の頃読んだ時は、ホームズ凄いなあとその慧眼や行動力に憧れたし、これがミステリなんだと感心したものだ。しかし今読んでみると、やはりやや落胆の思いが隠せないのだ。だが、幾人かの方が書かれているように、これが100年以上前の作品であることや、その歴史的価値を鑑みて、8点とした。もし現代の作家によるものであったなら、6点程度と個人的には考える。
ケチをつければいくらでもつけられるホームズの推理だが、その超人ぶりはあの御手洗潔すら凌駕するものである。島荘がいかにこの世界的名探偵の影響を受けたかがうかがい知れるというもの。
各短編は、サスペンスあり、日常の謎的なものあり、意外な凶器あり、教訓を得られるものありとバラエティに富んでおり、タイトル通りまさに『冒険』と呼ぶにふさわしい作品集となっている。
角川文庫版はコスパも優れており、訳も現代的で非常にこなれて読みやすいと思うので、読むならこれではないかと。

No.28 10点 nukkam
(2016/08/27 07:44登録)
(ネタバレなしです) 私ごときが改めて主張する必要もないのですが仮にもミステリー好きならシャーロック・ホームズシリーズは出来不出来に関係なく全作品読んでおくべきだとは思います。とはいえその中の最高作を推薦するならやはり1892年に出版された第1短編集の本書でしょう。独創的な着想の「赤髪連名」やホラー小説にひけをとらないスリルの「まだらの紐」などの何物にも代え難い古典中の古典ももちろん素晴らしいですし、事件は単純ながらもメロドラマ的面白さがある「独身の貴族」も個人的には好きな作品です。ホームズは皮肉交じりに同情してますがサイモン卿の態度は大変立派だと思います。よく考えるとトリックが相手に通じたのが信じ難い「花婿の正体」も結構お気に入りです。

No.27 7点 いいちこ
(2016/07/04 16:15登録)
本作が佳作揃いであり、探偵小説の歴史に巨大な影響を与えたことは、敢えてここで指摘するまでもない。
一方、探偵の推理があまりにも独善的で、読者が推理に参加する余地がほとんどないなど、1個のミステリとして食い足りなさを感じるのも確か。
本作は、従来型のミステリとは異なり、19世紀英国の社会風俗の見事な描写、超人シャーロック・ホームズはじめ登場人物の個性と気の利いたジョークや皮肉を楽しむべき作品であろう

No.26 10点 青い車
(2016/01/27 15:47登録)
角川から出た新訳で読了。以前、新潮の延原訳でも読んでいましたが、すっきりと現代的で読みやすい文章となっていて、より楽しい読書でした。ただ、ネット上で他の人も指摘していましたがワトスンの一人称は「ぼく」より「わたし」の方があっているような気も。
収録作の中で特に気に入ったのはユーモラスな謎が面白い『赤毛連盟』。ついでホームズの人情味が微笑ましい『青いガーネット』やまさに冒険小説として秀逸な『ぶな屋敷』が好きです。アイリーン・アドラー登場の『ボヘミア王のスキャンダル』や有名なトリックを用いた『まだらの紐』といったシャーロキアンから人気の作品もあり、充実した短篇集です。

No.25 9点 tider-tiger
(2015/11/01 14:15登録)
あくまで現代の視点からミステリとしての面白さを評価するか、蟷螂の斧さんの仰るように「歴史的意義や現代ミステリーへの影響度などを評価すべき」なのか。もちろん、双方間違ってはいないのですが、私は蟷螂の斧さんと同じく。よって、この点数しかありません。
(この先の読書人生に夢と希望を持ちたいので十点はつけない方針です)
ミステリのみならず、キャラクター小説の基本もここには詰まっています。さらに異常な(わけのわからない)状況を作りだす才。雰囲気作りのうまさ。
こういう↓思わせぶりな言い回し。
「これまでぼくが手がけてきた五百ばかりの重大事件のうちでも、これほど底の深いのは、またとあったと思えないくらいです」バスカヴィル家の犬より
(神津恭介氏などがこういう言い回しを受け継いでおります)
それから、個人的に重要だと感じたのは殺人事件がそれほど多くはないこと。「一頁目から死体を転がして読者を惹きつけろ」という格言もドイルには無用。殺人に頼らないので、探偵小説につきまとう課題、警察の介在を排除しやすい利点があります。殺人に頼らないミステリがもっともっと発展してもいいと思っております。

以下寸評(角川文庫 鈴木幸夫訳) ネタバレあります。

★ボヘミア王家の色沙汰
痛快。
★赤毛連盟 
着想良し、まとまり良し、ユーモアまであって文句なし。
★ふきかえ事件
娘を結婚させないための奇策、娘の人物造型が巧みなことも相俟ってかなり上質な作品に仕上がっていると思います。
★ボスコム谷の秘密
悪くはないけど、どちらかといえば長編向きの話で、短編にはあまり馴染まないように思えました。
★五つぶのオレンジのたね
どうにもすっきりしない話。序盤がかなり魅力的だっただけにどうにも欲求不満。情報の少ない時代なので、当時の読者は「こんな組織があるんです。御存知でしたか。怖いですよねえチャンチャン」みたいな終わり方でも興奮、満足できたのでしょうか。
★唇の曲がっている男
英国紳士が物乞いで生計を立てていた。乞食は三日やったらやめられないなんて言いますが、それを真剣に小説化。素晴らしい着想です。それから、阿片窟の描写が非常に良かった。
★青い紅玉
なんてことはない話ですが、ホームズがガチョウを追いかける過程が面白い。
↓ちょっと粗探ししてみました。
ホームズ「あなたのガチョウと目方も新鮮さもまったく同じガチョウを用意しましたよ」
~三秒後~
ホームズ「あんな見事なガチョウは見たことない。どこで買ったか教えて下さい」
こんなこと言われたら相手は不審に思うのでは。
それから、帽子がでかい→脳もでかい→頭がいい この三段論法はちょっと。 
★まだらのひも
小学生の頃は感激したが、今読むとどうもあのトリックは……。
「バスカヴィルの魔犬」と重なります。
雰囲気良し、サスペンスあり、殺害の手段は成り行き任せ。
★技師のおや指
話は面白かったが、なぜあの女性は技師を助けようとしたのか?
★独身の貴族
消えた花嫁がどうにも身勝手に思えてあまり好きになれない話。
★緑柱王の宝冠
これはかなり好きです。
ジェイムズ・ティプトリーJrの「男たちの知らない女」というSF短編を思い出します。
★「ぶなの木」館
冒頭の苛立つホームズ、なめ切った(ように見える)依頼人からの手紙、うって変わって不気味な展開へ。子供の扱いというか役割が不鮮明なのが惜しい。あと箪笥から髪の毛の束が出てくるのがようわからん。他にもいろいろありますが、それでも好きな作品です。

No.24 10点 ロマン
(2015/10/20 16:54登録)
どの話も完成度が高く、面白い。ホームズの観察眼の鋭さに、ついつい自分まで眉間にしわを寄せて読んでいた。ホームズの推理ももちろん魅力的だが、相方ワトスンの存在もやっぱり欠かせない。あまり関係ないが、ホームズの部屋はいったいどんな匂いがするのだろう。煙草の煙や化学実験でとんでもない事になっていそうだ。

No.23 10点 斎藤警部
(2015/06/01 16:55登録)
言っちゃ何だが、完璧な作品集ですよね。 本当に、初期のホームズは初期ビートルズの様に完璧だ。

小学生の頃にジュニア翻訳版をよく読んでいましたが、高校生でふと創元推理文庫であらためて読んでみたら、これがもう昔読んだ時を遥かに凌ぐ興奮と感動の嵐が吹き荒れてしまいあまりの凄さにあらためてじんわりと感じ入り、また当時好きだったカーなんかをブッ飛ばしてしまった様な感覚に驚いたものです。 当時、何らかの本をあんな速いスピードで一気に読破した事は無かったなあ。

今思えば、私がミステリに求める要素としてやはり「意外な謎」と「意外な解決」そしてサスペンスに代表される「いい雰囲気」の三位一体が大好きなんだと思います。続いて心理トリック、物理トリック。 ロジックは三の次。 ホームズ、特に初期の短編群がどストライクだったのもむべなる哉です。

No.22 7点 ボナンザ
(2014/04/08 21:19登録)
最初の短編集にして最高の短編集。
今更語るまでもない粒ぞろいだ。
お気に入りは赤毛連盟。

No.21 8点 蟷螂の斧
(2013/10/19 10:56登録)
東西ミステリーベストの第3位、米ベストの第1位、英ベストの第21位。古典の評価は難しいですね。その時代の読者になって読もうとする一方、現在の自分がいるわけですから頭の切り替えがなかなかできません(苦笑)。現在の視点で読めば、有名作品の「赤毛組合」や「まだらの紐」などの結末は、かなり前段階でわかってしまいますし・・・。よって、歴史的意義や現代ミステリーへの影響度などを評価すべきだと思います。「・・・事件簿」の評価でも触れましたが、その中の「S事件」がクリスティ氏や横溝正史氏の代表作へ多大なる影響を与えているというように・・・。短編は大の苦手でなかなか食指が動かなかったのですが、500冊目の書評ということで、世界的に愛されている本書を選んでみました。

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