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ミステリの祭典

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invert 城塚翡翠倒叙集
城塚翡翠シリーズ

作家 相沢沙呼
出版日2021年07月
平均点6.88点
書評数17人

No.17 6点 ボナンザ
(2024/09/11 13:19登録)
前作に比べて堅実にきたな、という感じ。まあ、翡翠のセリフ通りこうゆうのこそ書くのが大変なのに頭を使わない読者には・・・ということなのかもしれないが。

No.16 7点 E-BANKER
(2023/12/09 13:54登録)
大きな評判となった「medium霊媒探偵城塚翡翠」。前作終盤でも、続編のにおいがプンプンしてましたが、矢継ぎ早に発表された続編第一弾をようやく読了。
今回は「倒除もの」の短編ということで、誰もが振り向く美女ながら、世界一性格の悪い城塚翡翠の探偵譚。
単行本は2021年の発表。

①「雲上の晴れ間」=これは、また、なんて純正な「倒叙」ミステリーなんだ。完全犯罪をやってのけたシステムエンジニアVS翡翠。普通はガチンコのバトルになるのだろうが、如何せん翡翠は美しすぎた。翡翠の籠絡にかかってしまう男の哀れなこと・・・。最後には完膚なきまでに陥落させられることに・・・アーメン。
②「泡沫の審判」=②と③は書き下ろし作品。今回の相手は職業意識に燃える女性教師。女性と子供の敵である男を使命感を持って殺害。で、今回も翡翠の霊感と推理が冴え渡るわけだが、序盤の現場界隈の描写には要注意! そこかしこに伏線が潜んでいる。最後になって「アッ!」と声が出ること請け合い。まさかアレも伏線だったとは・・・
③「信用ならない目撃者」=最終話にしてある意味問題も孕んでいる一編。まあ、三編とも普通の倒叙というわけにはいかんよなあー。相手は元刑事にして翡翠の最強?の敵となる男。なのだが、終盤に大きな仕掛けが待ち構えている。なるほど・・・これがやりたかったのね。気付けなかったなあー。 でもこれだったら何でもあり、という気がしないでもない。

以上3編。
実に「しっかりとした」倒叙作品だと思った。特に①と②は典型的。
ただし、違うとすれば翡翠のキャラと特性。これが効いている。
翡翠の場合、第一印象でほぼ真犯人が分かってしまうので、後は如何にして証拠を掴み集めるかになる。そのために駆使するのが己の美貌とキャラクター。
③は?
私は「良い」と思いますよ。十分許容できます。
(個人的ベストは・・・やっぱ③だね)

No.15 7点 zuso
(2023/07/20 22:23登録)
「medium霊媒探偵城塚翡翠」の続編となる中短編集。
本作に収録された三編は、いずれも犯人の視点から犯行を描き、その後、翡翠が真相解明に乗り出すという倒叙ミステリ形式なのだが、これと霊媒探偵の相性が抜群に良い。読者は、犯人を見抜く霊媒の特殊能力と序盤から歩調を合わせて読み進められるのだ。
それ故に、各編で最終的に明かされる現実社会で通用する犯人特定のロジックに唸らされる。キャラクターとしての翡翠の造形にも磨きが掛かっておりパワーアップしている。

No.14 7点 みりん
(2023/06/26 22:37登録)
本作p297より
「推理小説は、推理を楽しむよりも、驚くことが目的となって読まれているんじゃないでしょうか。意外な犯人に意外な結末。推理小説といいながら、驚きの犯人や意外な結末さえ示せれば探偵の論理なんてどうでもいいのです。そんなのに夢中なのは作者と一部のマニアだけ。(中略)」
「ミステリとは、すなわち謎、そして推理小説とは、つまり推理をする小説……。だというのに、普通の人たちが求めているのは、びっくり小説、驚き小説、予測不可能小説なんですよ」

うーむなかなかグサグサ刺さるなあ 私もミステリはロジックよりトリックの方を重視してしまいますね。トリックを覚えている作品は幾つもあるけどロジックを覚えている作品はほとんどありません笑
そして「意外な結末」「驚き小説」と言えばmediumで一番評価された部分であり、作者はそこばかり評価されたのを少し不貞腐れてたり?そしてこの部分を読んで「ああ…今回のinvertではどんでん返しはないからその弁解を作中で挟んでるんだな」と邪推していたらなんとラストにちゃんとサプライズで反転してくれましたよ。素晴らしい!

No.13 7点 ぷちレコード
(2023/03/30 22:27登録)
タイトル通り、犯人の視点から語られる3つの中編が収められている。緻密な計画で完全犯罪を狙った殺人者たち。事故や自殺として片づけられるはずが、霊能力を持つという奇妙な美女・ 城塚翡翠の登場によって事態は変わる。彼女はなぜか自分を犯人と見抜いて追い詰めようとするのだ。            城塚翡翠という特異なキャラクターもさることながら、犯人と対決し追い詰める過程のひりひりする緊張が忘れがたい。探偵と犯人の頭脳戦も、なぜ犯人が疑われるに至ったかの謎解きも、緻密な論理の快楽を堪能できる。
犯人を追い詰めるロジックと仕掛けは、時には読者も欺いてみせる。読み終わった途端に、表紙に戻ってみたくなる一冊。

No.12 5点 いいちこ
(2023/03/07 16:32登録)
第1話は、地味な印象は拭えないものの、全体として堅牢な造りの佳作であると感じた。
第2話は、それより落ちるものの、やはり同様の印象。
第3話は、プロットそのものが荒唐無稽であり、かつそれが読物としての面白さにもつながっておらず、率直に言って論外。
これらを全体として5点の最下層と評価。
第3話がなければ、異なる評価を下していたのは間違いないが、倒叙形式であることの難しさを割り引くとしても、前作の水準には遠く及んでいない

No.11 7点 take5
(2022/10/10 18:25登録)
medium 霊媒探偵城塚翡翠を
大変興味深く読みましたので、
次作を楽しみにしていました。
中編三作
結論から言うと前の二編はいまいちですが、
それすらも仕込みと思える作り。
シャーロック・ホームズっぽさや、
ディーンフジオカのシャーロックっぽさや、
古畑任三郎っぽさが、
力抜けていて駄作間を和らげています。
最後もなあ、と思いながら読み進めると、
やはり一筋縄ではいかない反転あり。
倒叙とそこら中に書いてある理由がよく分かりました。
※反転と倒叙は違います。
表紙の城塚翡翠の意味も最終作で分かりました。
本全体のクオリティーでは前作の方が高いかな。
インヴァートIIも楽しみです。

No.10 7点 レッドキング
(2022/06/03 18:01登録)
ドジっ娘演出、霊媒演技をサブ武器に、犯人を追い詰める超ロジック探偵:城塚翡翠の中編三篇。
  *「雲上の晴れ間」 ITネクラ男の水も漏らさぬ完全犯罪アリバイトリックの瑕疵を抉じ破るロジック。6点
  *「泡沫の審判」 事故偽装・アリバイ vs 教室・軍手・スマホ・ハムスター・シャボン玉のロジック。6点
「ミステリは精緻なロジックを愉しむべきものよ。なのに「驚き」を求めるマニアばかり・・」って、おお、ヒスイちゃん
俺みたいな読者へのアンチ発言?・・て思わせといて、最終編、「驚きの驚き」で驚かしてくれた・・・m(__)m
  *「信用ならない目撃者」 証拠を残さない殺人者 vs 消せなかった証拠、目撃の反転ロジック・・・   
               というより何よりも、あのツィストエンドに驚いた・・ディーヴァーか。9点
※ところで、最終編に出てくる女マジシャン、ひょっとして酉乃初の十年後?

No.9 7点 パメル
(2022/03/14 08:09登録)
このミス6位、本ミス9位、帯には「すべてが反転」(前作では「すべてが伏線」でしたね。)いやが上にも期待が高まります。倒叙型の中編が三編収録されている本作は、前作の結末に触れているので、前作を先に読むことをおすすめします。
自分を虐げてきた幼なじみを、事故に見せかけて殺害したプログラマー・狛木繁人。子供たちを護るため、夜の小学校で元校務員を殺害した女性教諭・末崎絵里。酔っ払いに目撃されながらも、自殺に偽装して部下を殺害した元刑事の探偵・雲野泰典。それぞれの作品の途中で探偵の推理が推理できるかと読者への挑戦状が入るという趣向。倒叙型でも読者は犯人は分かっていても、探偵役は分かっていないものが多いが、読者も探偵役も分かっていて犯罪の証拠を見つけるために探偵役の推理を推理するというところが面白い。
前作同様、霊媒能力を使って犯人を言い当てると周りに知らしめて、心霊的恐怖を与えているのも巧い。狛木繁人、末崎絵里、雲野泰典と一作ごとに犯人のレベルが上がっていくと同時に、翡翠の本当の怖さが分かってくる。自分が犯人目線になって、翡翠に追い詰められる快感が味わえる。

No.8 7点 名探偵ジャパン
(2021/12/27 19:44登録)
 前作はその性格からして、「世界一続編が出されるべきではないミステリ」だったわけですが、これだけの話題作の続編が刊行されないなどということがあるはずもなく、当たり前のように出ちゃいました(目次で「前作の結末に触れています」という注意書き付き)
 SNSなどの感想を見ると、みな判で押したように「反転が凄かった!」と書いていますが、タイトルの「invert」は、「inverted detective story(倒叙推理小説)」のことで、本作がことさら「反転」を売りにしているというわけではないですからね。
 それでも、前作で一皮むけた作者のこと、本作も高水準のミステリに仕上げ、「出されるべきでなかった続編」という悪名は払拭したかなと思います。

No.7 7点 虫暮部
(2021/11/23 12:45登録)
 個人的には、非待望の続編。
 あんな大ネタのキャラクターをシリーズ化するのはなんだかなぁ。“ノンシリーズのオンリーワンの強さ”とでも言うべきものが確かにあって、シリーズ化はせっかくのインパクトを水で薄めてしまうような行為だと私は思う。探偵役が必要ならまた作ればいいじゃないか。『 medium 』の孤高の存在感は失われてしまった。勿体無い。とは言ってもまぁ読むんだけど。

 しかし実は、私には倒叙ものの的確な評価が出来ない。
 犯人達は上手くやっているし、ミスもわざとらしくはない。とりあえず指摘すべきアラは見付からなかった。犯人側の心理描写は読ませるし、倒叙スタイルから更に捻った某作は見事。
 その上で、“良い倒叙もの”と“物凄く良い倒叙もの”との線の引き具合が判らない、と言うのが正直なところだ。この煮え切らない評価基準を超えて迫って来る傑作、とまでは行かなかった。

No.6 7点 sophia
(2021/11/02 22:41登録)
ネタバレあり

あらら?(あれれ?でしたっけ)というのが正直な感想です。今作は正真正銘の霊媒師として事件に立ち向かうと思っていましたので、まだそこをリドルにしたままで進めるのかとまず思いました。霊媒師として描かれない翡翠は魅力半減です。さらに各エピソード終わりに「and again」なんて書いてあるものですから、前作のように最後に別角度から伏線回収していくものだと思っていたのですが当てが外れました。恐らく今作の目玉であろう3話目の叙述トリックも奇を衒いすぎてちょっと受け入れがたい。この作品に求めているサプライズはこういうのじゃないんですよね。衝撃的だった前作に比べて何だか普通のミステリーになってしまって残念です。個人的にこれはシリーズ化しない方がよかったと思います。

追記 酷評してしまったようですが、軽く読み返してみたところ、「medium」の続編という枷を外せば及第点は付けていいのかなあと思いましたので1点プラスしておきます。

No.5 7点 まさむね
(2021/09/26 16:52登録)
 昨年度の話題作「medium」の続編で、引き続き「城塚翡翠」が登場。今回は倒叙形式の3つの中編で構成されています。
 うち2作品は、上質でオーソドックスな倒叙ミステリ。翡翠の古畑任三郎化?も微笑ましい。その流れでの最終話「信用ならない目撃者」が断トツにおススメ。主人公に語らせておいて、そう来たかという結末で、純粋に楽しめました。なかなか興味深いタイトルだったけれども、最も信用ならないのは作者だったりして。油断ならないなぁ。次作も楽しみに待つとしましょう。

No.4 7点 じきる
(2021/08/29 21:49登録)
オーソドックスな倒叙ものながら、証拠を丁寧に検証していく手法には好感が持てます。
最終盤のひっくり返しも綺麗に決まっており、前作と比較してもそれほど遜色はない良才でしょう。神経を逆撫でするような言動の翡翠ちゃんも、まぁ嫌いではないです(苦笑)

No.3 7点 文生
(2021/08/14 11:25登録)
全3話の中編集。
最初の2話は犯人の仕掛けたトリックを読者に隠したまま進行するという特徴はあるものの、それ以外はオーソドックスな倒叙もので出来もまずまずといったところです。ところが、最終話でその流れを逆手にとったどんでん返しが用意されており、大いに驚かせてくれました。
ただ、間近で長時間接していたのに腕利きの探偵がなぜ、×け××クに気付かなかったのか?その点だけが不自然に感じてしまいました。

No.2 8点 HORNET
(2021/07/22 17:24登録)
 2019年のミステリ界を揺るがせた名作「medium」の美少女霊媒探偵・城塚翡翠再びの登場。今度のは犯行場面が先に描かれる倒叙式の中編3編。翡翠が犯人を追い詰めていく過程で、何を手がかりにしてどんな推理をしたのか、読者は推理させられる。
 2作目にしていきなり「警部補 古畑任三郎」のオマージュになっていて笑えた。「よろしいですか、よろしいですか」といった語り口調もおそらく意識していて、読んでいるうちに頭の中で田村正和の声が重なって聞こえてきた(笑)
 犯人が遺した微細な手がかりや、綻びをとりあげ、ラストで論理的に追い詰めていく展開は見もの。とはいえ今回はオーソドックスな倒叙モノか、と思わせておいて…読者をあっと言わせる仕掛けは健在だった。

No.1 7点
(2021/07/21 19:45登録)
 綿密な犯罪計画により実行された殺人事件。アリバイは鉄壁、計画は完璧、事件は事故として処理される――はずだった。だが犯人たちのもとに、死者の声を聴く美女、城塚翡翠が現れる。大丈夫。霊能力なんかで自分が捕まるはずなんてない。ところが・・・・・・。
 ITエンジニア、小学校教師、そして人を殺すことを厭わない犯罪界のナポレオン。すべてを見通す翡翠の目から、彼らは逃れることができるのか? ミステリランキング五冠を獲得した『medium 霊媒探偵城塚翡翠』待望の続編は、犯人たちの視点で描かれる、傑作倒叙ミステリ中編集!
 「小説現代」二〇二一年一月号掲載の中篇「泡沫の審判」に書き下ろし二篇を加えて刊行された、ファン感涙の翡翠ちゃん作品集。収録作は発表順に 泡沫の審判/雲上の晴れ間/信用ならない目撃者 。『medium~』ほど粘着質の論理ではないものの、今回も相変わらず根性悪。メガネっ娘バージョンまで駆使して迫るあざとさに、思わず犯人に「後ろだよ、後ろ」と忠告してあげたくなります。
 最初の二篇は巧みなアリバイを崩すコロンボ風の正統派倒叙なんですが(ただし証拠の緻密な精査は前作仕込み)、最後の「信用ならない~」がすっげえタチ悪い。掴んだ弱みを匂わせつつの脅しで政官財に食い込む、元腕利き刑事が犯した告発者の殺害。決して証拠を残さぬ強敵に、さしもの翡翠も次第に焦燥を募らせるが――
 と見せかけての鮮やかなうっちゃり。まあ今回ちょっと焦り過ぎなんちゃう? を含めた描写とか、読んでて多少の違和感はあったのですが。というか何だよ〈びっくり小説〉とか〈本当に大事なのは創造性溢れる論理の構築〉とか熱く語っといて。もうこの作者の言葉は一切信用出来ません(褒め言葉)。
 という訳で捻りまくりなのは最後の「信用ならない~」ですが、ベストはIT技術の盲点を利用したアリバイ作り「雲上の晴れ間」。確実性では劣りますが、タイトルとリンクした決定打の「泡沫の審判」もレベルは高い。よって採点は7点から7.5点といったところ。ただし中篇集故か、恒例のふともも連呼や変態制服フェチ推理はありません。

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