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ミステリの祭典

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成吉思汗の秘密
神津恭介シリーズ

作家 高木彬光
出版日1958年01月
平均点6.92点
書評数25人

No.25 6点 文生
(2017/11/03 17:20登録)
中学生の時に読んだ際は、「すごい!完璧な推理じゃないか」と感銘を受けたものだが、歴史の知識を蓄積した後で読むとかなりこじつけが目立つ作品だった。しかし、義経もジンギスカンも有名であるので両者を巡る推理はフィクションとしてはそれなりに楽しく読めることも確かである。

No.24 4点 風桜青紫
(2016/07/13 19:03登録)
クリスティ再読さんが噛み砕いて説明しておられるが、作者が思いついた説をカミーに代弁させているようにしか見えなかった。こじつけ臭さ全開の推理がでるたびに、さすおに状態になって「すごいわ神津さん!」と騒ぎまくる登場人物一同には唖然。しかしまあ、中盤には「もしや」と思わせる展開もあったし、カミーのLOVEストーリーもなんか面白かったので4点。本作の最大の功績は、『占星術殺人事件』を生み出したことだろう。

No.23 7点 斎藤警部
(2016/02/22 14:43登録)
一般的な本格ミステリ同様、無理筋の想像を大いに含み、舞台を大過去の広領域に求めた面白妄想本。
この探偵役を療養中の神津氏に任せた微妙な滑稽さがミソ、かも。
(作者が大真面目に説いてるらしいのは、心配だよ。そのスリルもまた良しだ。)

同一人説を支持す・せずに関わらず、広い視野で歴史興味に訴える部分も大きく、決して馬鹿な本ではないのですよ。

No.22 1点 クリスティ再読
(2015/11/23 23:11登録)
「時の娘」と読み比べるなんて無粋なことをしたんだけど、「時の娘」の堅実さと比較すると、本作なんてまったく比較の対象にならないや...
まあそもそも義経、というあたりで無謀。源平争乱の頃なんて史書もあまり信用できないから、現在の史学だとそもそも義経の経歴レベルで判ることさえそんなにないのを正直に認めたりするわけだよ。本作だと義経の経歴を南北朝~室町成立の義経記みたいな史書ならぬ「物語」から得るわけだから、やってることは史実の究明というよりも、文芸評論の部類にしかならないんだよね。オーケイ、だからこれは「小説」だ。
またいろいろと「証拠」を持ち出してくるんだけど、それらがほぼ出所不明な噂話レベルで「こんなの何で信じろっていうの?」と思うレベルのものだけど、名探偵氏はまともな資料検討もせずにイキナリ鵜呑みにする...紙幅の都合もあるだろうけど「物事を信じやすい人」にしか見えないや。これは小説の問題として大きな傷である。気になったので14章に出る「五十畑忠蔵」(写本を入手した新興財閥の主らしい)をネットで検索してみたが、まったくヒットなし。そもそも読者に対する説得力を配慮して書いているとも思えないね。
それでも小説としてのオチは天城山心中(実話)で、リアルタイムの出来事をフィクションの証明に使う、という仕掛けは判らなくもないんだが、輪廻転生を小説の結末にするとなると、本作の「フィクションとしての結末」にしかならないわけで、「立論自体のフィクション性」を強めているようにしか見えない...で、天城山心中の最大の問題は、これがテイが嫌悪し指弾する「トニイパンディ(歴史の捏造)」に他ならない、ということだ。いったい作者は「時の娘」をまともに読んだのだろうか?? ロマンチックな解釈は時として「歴史」を捏造しかねないものだという、「物語の倫理」についてのテイの告発をどう捉えるのだろうか?(少なくともご遺族はただただご迷惑だと思うよ...追記:どうやら天城山心中自体、一方的なストーカー殺人説もそこそこ有力らしい。ロマンよりも現実の方がずっと複雑怪奇、だねぇ)
悪口ばかりになるので、そろそろ止めるけど、今更ながら高木彬光のキャラ造形の下手さが目立って、誰も彼も筆者の主張を代弁するお人形。ジョセフィン・テイのキャラ造形のキュートさを何で学べないんだろう...

No.21 7点 ボナンザ
(2014/04/08 00:44登録)
変化球。かなり無理はあるが、納得させられるような強い力がある。

No.20 4点 いいちこ
(2014/03/20 18:44登録)
純粋に読み物として楽しむべき作品だが、内容にかなり無理を感じてこの点数

No.19 7点 メルカトル
(2014/02/06 22:23登録)
蒲柳の質と言われながら、意外とタフな東大医学部助教授の天才神津恭介が珍しく急性盲腸炎で入院している時の、ベッド・ディテクティブ。
私は歴史には全く疎い方だが、それでも面白く読めたのは、義経=成吉思汗という昔からある仮説を単なる検証としてだけではなく、あくまでミステリとして読者を引き付けることに成功しているからに他ならないと思う。
膨大な資料や書物から、義経が衣川の戦いで落ち延びて、大陸に渡ってジンギスカンとして復活したという大胆な論説を抽出し、独自の仮説として完成させた、神津の鋭い推理には思わず引き付けられるものがあるし、歴史のロマンを感じ取ることができる。
本作はおそらく日本を代表する歴史ミステリの一つとして数え上げられるべき作品ではないだろうか。
ラストの「なすよしもがな」のくだりは後付けらしいが、ややこじつけめいた感じも受けるのだけれど、個人的にはそれこそ後頭部を殴られたような衝撃を受けた懐かしい記憶がある。

No.18 7点 E-BANKER
(2014/01/26 20:23登録)
1958年発表。J・テイの名作「時の娘」にインスパイアされ書かれた歴史ミステリー。
病に倒れ入院中の名探偵・神津恭介が『成吉思汗=源義経』という歴史ロマンに挑む大作で、「邪馬台国の秘密」「古代天皇の秘密」と続く、作者の歴史ミステリー三部作の一作目。

~兄・源頼朝に追われ、あっけなく非業の死を遂げた源義経。一方、成人し出世するまでの生い立ちは謎に満ちた大陸の英雄・成吉思汗。病床の神津恭介が義経=成吉思汗という大胆な仮説を証明するべく、一人二役の大トリックに挑む歴史推理小説の傑作~

『義経=成吉思汗』というのはやっぱり日本人のロマンなんだろうなぁと思わされた。
作者の取材力や熱意には敬意を表するけど、正直なところ、歴史的真偽という観点からはちょっと無理筋なんだろうと感じる。
江戸時代から義経北行説はあって、作中にも徳川光圀編纂の「大日本史」が紹介されているが、日本人の義経に対する大衆の判官びいきぶりが伺える。

ただ、確かに“火のないところに煙はたたぬ”的に考えるのなら、十分研究の対象にはなるのだろう。
井沢元彦氏の「逆説の日本史」などを読んでると、歴史学者の「書物偏狭ぶり」がよくやり玉にあがっていて、「歴史書に書かれていないと全く評価しない」という風潮はあるようで、そういう意味からでは、本説を単純に絵空事と断じることはできないのかもしれない。
まぁ、平泉から東北、北海道に義経伝説がこれだけ点在しているという事実だけからも、「義経=成吉思汗」説の面白さ&奥深さを表している。

国産ミステリー史上でも稀代の名探偵・神津恭介を歴史ミステリーの探偵役に据え、歴史学者(本作では井村助教授)と論争させるという設定自体、斬新で面白い。
個人的には、中国史(元~明~清)に関わる部分が特に興味深かった。(特に清朝と義経の関係ね)
歴史好きの方ならやはり一読の価値はありの一作。
(光文社文庫新装版の解説は島田荘司氏。作者に対する島田氏の思いが窺えるコメント・・・)

No.17 8点 itokin
(2014/01/11 19:07登録)
何十年ぶりかの再読です。その時もこれは有りうるなとショックを受けたが、今読んでも古さを感じない、よく歴史を調べて書かれており当時よりも私自身も歴史の知識も深くなってるはずだが勿論作者は数段上をいっていて違和感を感じずさらに新鮮な気持ちで読ませていただいた。最後のインパクトもこのまとめ方が精いっぱいかなと感じている。

No.16 7点 TON2
(2012/11/04 02:05登録)
(ネタバレ)
良質な歴史ミステリーのベッドディテクティブ。成吉思汗=義経という説を様々な文献などを元に証明しようとしている。疑りながらも本当化もしれないと思ってしまう。しかしラストは輪廻説に偏り、少々強引すぎるこじつけと思われる。ラストがもっとすっきりしていれば、+1なのだが。

No.15 7点 りゅう
(2012/01/02 11:13登録)
 病気で入院した神津恭介が、「時の娘」の主人公のように歴史上の謎解きに挑戦する話。挑戦する謎は、源義経と成吉思汗が同一人物であったという仮説。以前に「時の娘」を読んだことがあるのですが、西洋史に疎く、リチャード3世がどういった人物であるのか知らなかったこともあって、その面白さがほとんど理解できませんでした。源義経と成吉思汗に関しては多少は知っていたのですが、歴史の本、地図帳及び辞書と首っ引きで読みました。神津恭介が調査の過程で、鉱物学的調査(金)の必要性や清朝の歴史を調べてくれと言い出したことは想定外で、天才の発想の違いを感じました。清という国名が源氏に由来しているという指摘も面白く感られました。神津恭介の推察の進め方自体は根拠が薄弱に感じられたり、こじつけに感じられる部分があって、井村助教授が途中で指摘しているように、同一人物であった可能性の証明にすぎず、同一人物であった証明にはなっていないと感じました。井村助教授も最後には輪廻の思想から仮説を認めているのですが、納得できませんでした。最後に、仁科東子という女性が神津恭介を訪問して、3つの疑問を投げ掛け、自説を披露しています。これは実際に作者あてに女性から送られた手紙に基づいて加筆されたものらしいのですが、成吉思汗の名前の秘密に関する説明は興味深いものでした。

No.14 6点 misty2
(2011/05/05 22:04登録)
楽しく拝読。
史実の知識も付き、良かった。
特に前半は楽しく拝読した。

No.13 7点 seiryuu
(2011/01/12 23:08登録)
歴史には詳しくないけどとても楽しく読めました。
真偽は置いておいて、壮大な浪漫を感じる作品でした。
井村助教授の存在と魂胆がいいですねw

No.12 8点 VOLKS
(2010/09/11 21:17登録)
久しぶりに再読。
安楽椅子探偵小説なので派手さには欠けるが(笑)とにかく面白いことには間違いない。

No.11 8点 kanamori
(2010/07/31 20:46登録)
国産の歴史ミステリの先駆的作品。
こういった小説は、どうせなら突飛なもののほうがロマンがあって面白いので、大正時代に発表された”義経=成吉思汗説”を発展させた本書のアイデアは面白かった。
歴史研究者でないミステリ作家としての、多少強引でこじつけに近い論理でも、読者を納得させる筆力はすばらしい。ただ最後の、「昔を今に、成す吉もがな」は、さすがに無理筋。

No.10 7点
(2010/05/25 22:59登録)
本作執筆にあたって作者が参考にしたのは、まず近代の義経=成吉思汗説の書物だったそうです。ちょっと気になるのはその参考資料が明示されていない点で、著作権法的には微妙なところがあるかもしれません。
これが偶然といえるだろうか、という台詞が何度も繰り返されますが、成吉思汗の側から義経を連想させる固有名詞などを列挙していくことにより、説の蓋然性を高めていくという手法です。一方井村助教授を配しての反論もなかなか手厳しいものがあります。結局、初版最終章(15章)では現実の自殺事件を持ち出して輪廻転生論・宿命論的にまとめたわけで、合理性重視の考え方からは、不満もあります。
サブストーリーについては、初っ端から伏線がやたらに目立ちます。こっち系については高木彬光はどうも(神津恭介ではありませんが)不器用な気がします。

No.9 9点 STAR
(2010/01/25 23:02登録)
歴史ミステリー好きなので、何年か前に読みました。「チンギスハン=源義経なんてありえない」・・・と一般的には思うはずが、この本を読むと「そうかも!」と思えてしまうから不思議です。
この本を読んで面白かったので、高木彬光の本をもっと読んでみようと思うようになりました。

No.8 8点 江守森江
(2009/10/08 17:07登録)
歴史バラエティー番組の原点と云え、壮大なテーマを気軽に楽しめる三部作の一作目。
結論が出ないテーマを名探偵・神津恭介が犯罪捜査の手法と推論で追求した歴史推理小説で、高木彬光が新境地を切り開いた記念すべき作品。
中盤以降の白熱した討論は論理的で読み応えがある。
読者の発見から加筆された最終章の解釈で「強大な征服欲の源泉が愛した女性への遙かなる想いだった」に・・・石部金吉の神津自身で到達しなかったのも神の思し召しだろう。
国技・大相撲がモンゴル勢に席巻されている起源も、この辺りにあるのかもしれない。

No.7 8点 E
(2009/09/23 15:33登録)
成吉思汗歴史推理は面白かった。
駆けずり回る松下君に大変好感を持ってしまった・・・(笑)
女性助手(?)エピソードは正直いらないなぁ・・と思いました。
最後に出てきた女性は気になりました・・レギュラー化してくれないだろうか(ドキドキ)

No.6 9点
(2009/07/06 23:32登録)
30年以上前に読みました。私が歴史ミステリーを好きになるきっかけとなった本です。

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