home

ミステリの祭典

login
カーテン
エルキュール・ポアロ

作家 アガサ・クリスティー
出版日1975年01月
平均点6.89点
書評数19人

No.19 9点 蟷螂の斧
(2023/12/17 11:37登録)
著者の作品で最後に読もうと思っていた作品。その間に何回もネタバレされてしまった(笑)。著者の最盛期(1943年)の作品(発表は1975年)で傑作であると思う。副題で「ポアロ最後の事件」を入れた方が、もっと読まれ評判が上がったような気がしますね。スタイルズ荘で始まり、スタイルズ荘で終わる。なんともお洒落で粋な配慮。ワトスン役のヘイスティングが主役とも思えるような展開。それがなんとも大伏線になっている○・・・・・・の犯罪。老いて死を迎えるポアロの決断は・・・等々読みどころ満載

No.18 9点 YMY
(2021/05/28 22:41登録)
完全にネタバレ




読者を騙すためなら何でもやる作者は、ヘイスティングスという愛すべきワトスン役も騙しの道具として利用することさえもためらわなかった。
名探偵=犯人というパターンの作例として話題に上ることが多いけれど、実はワトスンがある人物を死に至らしめたことに自分では全く気付いていないという、普通だったらあり得ないようなとんでもない離れ業を成就させた作品として評価したい。

No.17 6点 ミステリ初心者
(2021/05/16 20:10登録)
ネタバレをしています。

 たまに読んでいるアガサ・クリスティーを買いました。ポワロ最後の事件だから買ったというわけではなく、単純に高評価だから買いました(笑)。だだ、ポワロ最後の事件だということは知っていました。
 舞台はスタイルズ荘。スタイルズ荘の怪事件をみたのはもう中学生のころなので、大分昔であり(涙)、あまり記憶に残っておりませんでした…。ポワロシリーズものの大半はその時期に読んでおり、もしこのカーテンにそのネタがちりばめられていても、自分にはわからないです…。これはちょっと残念です。

 さて、カーテンですが、個人的にはなかなか読みづらかったです。アガサ・クリスティーなので、文章や構成がうまく、登場人物もすぐに覚えられ、その辺りは苦労しませんでした。しかし、なかなか事件らしい事件が起こらず、ポアロは病が篤く、ヘイスディングズは娘の心配をして、いろいろなことを思ってしまい、ページが進みませんでした。ただ最後まで読むと、一見意味のなさそうな話にもちゃんと伏線が張ってあるところはさすがでした。

 推理小説的には、いろいろな仕掛けや、アガサ・クリスティーらしいドンデン返しも用意してありました。しかし、私にはどれも好みの類ではなかったです。
 ノートンによる殺人教唆? というのですかね? あれはイマイチぐっと来なかったです。もちろん、本全体にちりばめられていた伏線には感心しました。私は、ノートンがただの鈍くて気が利かないやつかと思ってました(笑)。
 次に、ワトソン役犯人についてです。これは大きな驚きであはありましたが、私にはただの事故に思えます(笑)。やはり推理小説は、犯人が殺意を持って殺人を犯してほしいですね。珍しいパターンなのでそこは評価してます。
 最後に探偵犯人ですが、これもそれほど好みではありません。ポワロ最後の事件ということで、メタ読みして、探偵犯人の可能性は頭にありました。しかし、全く論理的にポワロを犯人と指摘することができませんでした(笑)。ポワロ本人の行動もあって、とてもフェアだとは思います。

 最後のページでのポワロの文、"友よ、もうふたりで狩りに出ることはありません。初めての狩りがここでした―そして、最後の狩りもまた…"は非常に感慨深いですね。

No.16 8点 Kingscorss
(2020/09/05 16:55登録)
クリスティーが亡くなる前年の1975年に出版(執筆自体は1943年)されたポワロ最後の事件として以外はあまり知名度がない本作ですが、紛れもない傑作です!

デビュー作の”スタイルズ荘の怪事件”と同じスタイルズ荘で締めくくるという憎すぎる演出。そしてプロットが何より素晴らしいです。考え抜かれた最終作としての演出と構成が見事というほかありません。

知名度のない理由は、やはりある意味”死と老い”がテーマなので全体的に暗くテンポがゆっくり目なこと、トリックもクリスティーの他の有名どころに比べれば派手さがなく地味(犯行上しかたない)、等だと思いますが、最後のポワロの手記で真相が全てがわかったときは構成の巧さに舌を巻かざるをえません。

さらに今作を満喫するには、先にある程度他のポワロシリーズを読み込む必要があると思います。”スタイルズ荘の怪事件”は特に場所以外はあまり関係してない(一応事件のことが少し話題にはなる)ですが、読んであるとより色々実感できますし、やはり他作を先に読み、ここに至るまでのポワロとヘイスティングズの関係をある程度熟読してあると最後がより感慨深いものになるでしょう。(ABC殺人事件の冒頭ら辺の”この全て左右対称なところ、実に気持ちがいい”とかセリフを知ってるとカーテンでの最後の”フェアプレイ”の意味が分かり、うはーーー!となったり、他にも驚愕の○○○○の件ももしかしてABCからの伏線?とか)

ポワロ最後の勇姿と思いやりを心に焼き付け、ポワロシリーズを含めた傑作群を後世に残してくれたアガサ・クリスティーに感謝しかありません!

No.15 6点 E-BANKER
(2020/08/24 19:53登録)
ようやく辿り着いた1,600冊目の書評。(最近読破のペースが落ちてるからなぁー)
選んだのは、ミステリーの巨匠(女性に対して「巨匠」はおかしいか?)A.クリスティが生み出した名探偵エルキュール・ポワロ最後の探偵譚。
ということで1975年の発表。(本当に最晩年だね)

~ヘイスティングズは親友ポワロの招待で懐かしきスタイルズ荘を再度訪れた。老いて病床にある名探偵ポワロは、過去に起きた何のつながりもなさそうな五件の殺人事件を示す。その陰に真犯人Xが存在するというのだ。しかもそのXはここスタイルズ荘にいるというのだ・・・。全盛期に執筆され長らく封印されてきた衝撃の問題作~

最後の作品でもやはりクリスティはクリスティだし、ポワロはポワロだった。
そんな感想がまずは浮かぶ作品。紹介文にあるとおり、1975年発表とはいえ、実際に執筆されたのは1940年代初頭ということで、作者が最も脂が乗っていた時期に当たる。
じゃぁ、クリスティらしいのも当たり前の話かもしれない。

プロットは作者らしく実に緻密で細部まで抜かりない。
「館」ものらしく陰のある多くの人物が登場。相変わらず旨いよね、人物の書き分けが。
登場人物たちの1つ1つの行動、1つ1つの会話や言葉が、後々伏線だったと気付かされる刹那。
これこそがクリスティのミステリーの醍醐味だろう。

本作は”愛すべき?”相棒であるヘイスティングズが大きな鍵を握る。読者からすると歯がゆいくらい愚鈍で真っ正直な人物の彼(個人的にどうしても石岡和巳と被るんだよね)、彼の特徴が憎いくらい作品に生かされている。
(娘=ジュディスに翻弄される姿も痛々しいし・・・)
そして何より舞台となるスタイルズ荘の存在。「締め」の舞台としてココを選ぶという作者のセンスに脱帽。
不穏で重々しい空気間を醸し出すことに成功している。
更には真犯人X。これはいわゆる「〇り殺人」ということになるのかな?(或いは「プ〇〇ビリ〇ィの犯罪」?)
うーん。これも実に作者らしいのかもしれない。百戦錬磨の作者がやると、こんな大胆かつ緻密なプロットになるんだね。
いろいろとツッコミたいこともあるけど(ポワロの変装気付かないかねぇ・・・とか)、それは「言わぬが花」かな。
でも、全体的なレベル感からいえば、作者の作品群では中位の評価に落ち着く。

No.14 8点 バード
(2020/03/27 11:23登録)
シリーズの締めに始まりの地、スタイルズ荘を選ぶとは・・・、ファンのツボを押さえた実に粋な計らいだね。
あの小憎たらしくも溌剌としていたポアロが老いと病で弱っている様子が象徴的だが、全体を通し暗めな雰囲気の本作。ヘイスティングズがポアロの手足となり捜査をするも、Xが巧みに暗躍し事態は好転しない。そして最後は・・・。
非常にやり切れない物語で読み終わってもスカッとしない、がこの構成がシリーズ物の最後特有の喪失感につながっている。作者の計算通りなのだろう。
ミステリ的に好みでない仕掛け(最後の犯人が〇〇〇)もあるが、それらを枝葉の問題に追いやる堂々の完結ではないか。点数は一ミステリとしての出来と、シリーズ最終作としての出来両方を考慮した。

No.13 9点 あびびび
(2020/02/23 00:52登録)
初めて2度目の投稿です。前回は2014年、まだクリスティーを読み切っていない時だった。今考えるとダムコップさんのように、ポアロの結末はこれしかないように思います。

事件は人間関係が起こす。それを根本的に語っていると思う。やはり、クリスティーは素晴らしい!

No.12 6点 ことは
(2020/02/22 17:57登録)
ん十年ぶりの再読。
これも「攻略作戦」にそそられての再読。「攻略作戦」で指摘されているノワールの味わいは「なるほど」とは思うけど、評価したいとは感じられませんでした。
思いついたのは、クイーンの「悪の起源」との類似。真似した/しないではなくて、たまたま同じテーマに対して物語をつくって、出来上がりがこうなるかという興味。とくに物語の収束のさせ方に、両巨匠の違いがあらわれていて面白いです。

No.11 6点 ボナンザ
(2019/12/09 20:33登録)
ポアロは最後までポアロであり、ヘイスティングスは最後までヘイスティングス。そしてクリスティも最後までクリスティだったと思わされる。

No.10 5点 レッドキング
(2019/12/02 15:06登録)
自ら手を汚すことなく連続殺人を行う「操りの悪魔:X」、対するは老いさらばえた往年の名探偵ポワロ。手に汗握る虚々実々の攻防・・とはならず、「ポアロ最後の事件」はこじんまりしたサークル内で暗く苦く進行して行き、最後はポアロも彼の「モリアーティ」を相打ちにしてライヘンバッハの滝に沈んでゆく(ホームズは甦っちゃったけど)

「じつは犯人は君なのだよ」・・・いそいで頁を戻したら、「いそいで私は〇〇を回して・・」と見事にさりげなく伏線が敷いてあった。

No.9 8点 makomako
(2016/12/23 12:13登録)
 ポアロ最後のお話です。自分が犯人たりえない方法で殺人を繰り返す殺人者。まさに究極の殺人者といえるかもしれません。それに対するポアロはもう命がつきかけてでも頭はさえています。
 作者も歳をとり、若い頃のような感性がつきかけているようで、登場人物がちょっとこらえ性がない。でもまあそこそこには収まっているところはさすがクリスティー。
 最終場面ではついにポアロが死んでしまう。
 私はポアロがそれほど好きではないように思っていましたが、こうしてお別れとなると実に心残りです。
 あとあとまで心に残るお話でした。

No.8 5点 nukkam
(2016/08/12 11:05登録)
(ネタバレなしです) 本書はもともと自分の死後発表用にと1940年前後に書いて保管していた作品らしいのですが、もはや新作を書く力を失ったクリスティーが読者を待たせてはいけないと考えたのか亡くなる前年の1975年に出版したポアロシリーズ第33作にしてシリーズ最終作となった作品です。大胆過ぎるぐらいの真相と物議をかもしそうな結末のつけ方は読者の好き嫌いも分かれるでしょうが、半世紀以上に渡って世界の読者を楽しませたポアロ物語もこれでラストかと思うとそれだけで感慨深いものがあります。

No.7 9点 クリスティ再読
(2016/01/05 21:53登録)
「隅の老人」の昔から「名探偵最後の事件」なんてものは...で、言うまでもなく名探偵=犯人をやりたいわけだ。もうこれはそういうモノなので、本作を「本格」とか呼ぶのは本当はおかしくて、「企画モノ」とか「仕掛けモノ」とか呼んだほうがいいだろう。

(盛大にバレます)

「名探偵=犯人」を期待するそのウラで、それさえもミスディレクションとして、いろいろやっているあたりが評者は凄く面白かった。誰もあまり指摘しないようだが、本作はクリスティ初の「ワトソン=犯人」もやっているわけだよ。本作は「手記です」という言明は一箇所もなく、一人称小説だと読めるわけで、最終的に関係者手記に逃げた「アクロイド」とは違うし、晩年の例の傑作だとあれはそれこそベケットを思わせる自己分裂の「語り」の作品なので、全然違うことになる...だから「初」でしょう?
で本作の凄みってのは、こういうことである。果たしてポアロとXの勝負はどちらが勝ったんだろう?と問えばいい。ポアロはこれ以上のXの犯行を食い止めたのだが、それはポアロがXの罠にかかってXの犠牲者である殺人者となることによってだ...ね、ポアロは負けているわけである。ヘイスティングスも同じように負けた。「カインの印誌」は関係者のほとんどに刻印されているわけである....

高僧が弟子に「お前が人を殺せば救われる」と謎をかけたが、弟子は「自分にはそんなことはできません..」と悩んだ末に断ったが、高僧は「そうだろう。人を殺そうと思ってもそういう因縁がなければ殺そうと思っても殺せるものではない。逆に因縁があれば殺したくなくても殺してしまうものなんだ」と説いた話があるが、本作の「殺人者になるのも紙一重」な状況は、そういう宗教的観念も連想させるような(これは無意識の悪意を描いた「鏡は横にひび割れて」に通じる)グラン・フィナーレにふさわしい名作だと思う。

付記:管理人さまによるシステム改善「ISBN複数登録対応」を記念して、「カーテン」の初訳画像表示を追加しました。リアルタイムで初訳を知ってるから、こっちじゃないとどうもノらなくてねえ。
「名探偵ポアロ死す!」のアオりがいいでしょ?

No.6 7点 了然和尚
(2015/06/21 16:57登録)
ポワロものを順番に読んできましたが、晩年のスタイルは本格とは言えないものなので、本作も期待はなかったのですが、実際に書かれたのが本格全盛期とあって、予想以上の面白さでした。XXX最後の事件の犯人はXXXとか、偶然の審判とか既読感は強いのですが、それらのネタをよくまとめたと思います。読んでいる途中で、殺人を仄めかす犯人(Xですね)はW卿か双眼鏡の人かどっちかなと思って、最初に戻って読み直そうとしたところ、表紙になにやら不自然な双眼鏡のイラストが! このシリースの別の作品でもありましたが、これはダメでしょう。 それはともかくとして、銃撃事件の時にW卿が過去の事件をほのめかしていましたので、こっちが本星かと思ったら、ポワロの解説では、それも双眼鏡の人が吹き込んでおいたとのこと。こういう別解のつぶしが本格ミステリーらしくて好きですね。

No.5 7点 あびびび
(2014/01/29 13:11登録)
歴代ボアロ俳優の中では群を抜いていると思うのがデビット・スーシェ。何よりステッキを持って颯爽と歩く姿が素晴らしかった。それが最後の事件は車いすだから物語の流れが重い…。

ホアロとヘイスティングが初めて事件に遭遇したスタイルズ荘で最後の事件となるのはいかにもクリスティーらしい。しかも本当にポアロが心臓病で死んでしまうのだ。それも事件解決を報告することもなく…。残されたヘイスティングは老体に鞭を打って奔走するが、やはりポアロは解決を文書で知らせてくれた。

その中身はとんでもないことが記されていた。ポアロと、ヘイスティングが実はひとりずつ人間を殺していたのだった!

No.4 6点
(2010/12/21 20:50登録)
死後出版の予定を変更して、死の直前に発表した作者の思いはどんなものだったのでしょうか。
本作に対するユニークな論評としては、西村京太郎の『名探偵に乾杯』がありますが、西村氏も言っているように、この犯罪者はポアロ最後の対戦相手としてはそれほどと思えません。まあ、なかなか始末に困る人物ではありますが。それよりクリスティーらしい意外性ということでは、意外な人物のある何気ない行為が関与する毒殺事件の真相が最も記憶に残ります。
ラストについては、う~む、やっぱりそうなってしまうんですね。まあ、やはりこれは老いたポアロの倫理観によるけじめだろうと思います。謎解きミステリとしてのアイディアでは、西村氏も挙げている他の巨匠のあの作品の方がすぐれているでしょうけれど、『スリーピング・マーダー』みたいないつものクリスティーとは違うこところを見せてくれたこれはこれでいいと思います。

No.3 5点 kanamori
(2010/06/20 18:28登録)
本書が早川書房から単行本で出るときに、新聞各紙が大々的にある人物の訃報記事を載せていました。帯の惹句にも堂々と掲げていましたから問題ないとはいえ、ミステリ史上唯一の発売前に世界中にネタバレされた作品です(笑)。
ミステリとしてはその趣向以外とくに読みどころのない作品でした。

No.2 7点 okutetsu
(2009/07/01 05:20登録)
なんとも言えない悲しい作品です。
ポワロ最後の事件というだけでも寂しいのに…
賛否両論あるだろうと思いますがこういうラストもアリかなと思います。

No.1 5点 測量ボ-イ
(2009/05/31 16:45登録)
クリスティ最後の作品、つまりポワロ最後の作品です。
生前クリスティは予め書いておいたこの作品を自身の死後
刊行する予定だったようですね(実際は亡くなる前年に刊
行)。
内容はまあ平凡ですが、そういう意味で氏の記念碑的作品
です。

19レコード表示中です 書評