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ミステリの祭典

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チャイナ蜜柑の秘密
エラリイ・クイーン、国名シリーズ 別題『中国切手殺人事件』『チャイナ・オレンジの秘密』『チャイナオレンジの秘密』『チャイナ橙の謎』

作家 エラリイ・クイーン
出版日1950年01月
平均点5.53点
書評数19人

No.19 5点 文生
(2024/03/16 05:19登録)
あべこべ殺人は謎の魅力に対して真相があまりにも凡庸。もう一つのトリックも発想はユニークではあるのですが、文章で説明されても分かりづらいのが難点です。着想の面白さは随所にみられるものの、総合的な評価としては凡作どまりといったところではないでしょうか。

No.18 5点 ことは
(2021/11/08 00:37登録)
数十年ぶりの再読。いまひとつの記憶だったが、やはり記憶どおりだった。
これは、冒頭の奇妙な状況の面白さがすべてかな。
途中の展開は、解決を知ってから読むと不要な部分も多いし、最後の推理にも切れがない。
伝記や書簡集や各種解説などの情報から、高級雑誌に売り込もうとして、クイーンはこの頃に作風を変えようとしたようだが(特に途中の展開に恋愛要素やスリラー的要素を取り込もうとしている部分)、まだこなれていないとしか思えない。
さらにそのために変わってしまった残念な点は、「あらため」がなくなってしまったこと。犯行の時間が限定的なんだから、各自のアリバイなんて、ぜひ知りたいのに、全く説明がない。これは私的好みでは退行としか感じられない。
国名シリーズ、私的評価最低は決定です。4点と迷った5点。
「奇妙な状況」と「解決の仕方」から考えると、世界設定を変えたほうが面白かったのではと妄想します。クイーンには「生者と死者と」や「帝王死す」のように、異世界風の設定作もあるので、そういった世界のほうが馴染むお話だったなぁと。あとは、なんとなくカーぽいよなぁ、これ。

No.17 5点 ミステリ初心者
(2020/02/11 18:28登録)
ネタバレをしています。

 非常に変わった犯行現場になっており、興味を惹かれました。新訳(2015年のもの)を読んだせいなのか、著者の文力のたかさなのか、とても読みやすかったです。
 エラリーらしからぬ(?)アリバイトリックも面白かったです。犯行現場の密室ではなく、自分を密室にしてしまうとは(?)。すっかり騙されてしまいました。トリックを用いた”意外な犯人”は大好きです。

 以下難癖部分。
 被害者の特徴である神父を隠したくて、わりと大掛かりなことをやっている犯人ですが、私は神父の服装についての知識がなかったため、あまりピンときませんでした。なので、もちろんネクタイの謎についてもさっぱりわかりませんでした。ネクタイが持ち去られている…ではなく、被害者がネクタイをしていない人物かつ、犯人がネクタイを調達できなかった…という考えが及ぶまで、敷居が高すぎました(笑)。これは単に私の知識不足なだけかもしれません…。
 死体と槍をつかった閂を閉めるトリックはこれまでに見たことがないパターンでした。しかし、機械仕掛けのトリックは好みではありませんでした。
 タイトル名から待合室にあるオレンジについてあれこれ考えてしまいました(笑)。むかつきますね!

No.16 3点 レッドキング
(2019/01/13 11:34登録)
被害者の服と室内の調度が「逆さま」になっていた殺人。二つある扉の一つは内側からカンヌキが掛かっていた。
何故に服は「逆さ」に着せられていたのか? 元々「逆さ」だった服の一部から被害者の属性が判明するのを防ぐ目くらましのため・・(だが、これ我ら日本人の絶対多数にはピンと来ないよ。ゼッタイ。)
何故に調度は「逆さ」に動かされたのか? あるトリックの実行とその隠蔽のため。(また分かりづらくせせこましいトリック!)
何故に一つの扉のみ「密室」になっていたのか? 犯人にその扉からしか出られない事情があり、その隠蔽のため・・。 容疑者Aがそこからしか出られず、他の容疑者はもう一つの扉からしか出られなかったこの場合、「Aは犯人でありえる」というロジックは成立するが「他の容疑者は犯人でありえない」というロジックは成り立たない。そもそも、あのトリック自体、万一成立したとしても「多重解釈」の一例にすぎん。
※この「密室殺人」、全然「密室」してないじゃん。

No.15 7点 蟷螂の斧
(2018/11/19 13:13登録)
フレデリック・ダネイ氏の自薦ベスト3の一冊、かつニューヨーク・タイムズが著者の最大傑作と激賞しているとのことで拝読。激賞のポイントは「あべこべ」のトリックではなく、「密室」にあると思いましたね。なるほどと唸りました(笑)。二つのドアのうち一つが開いているので密室でない、あるいは準密室との意見もあるようですが、見方を変えれば完全なる「密室」ですね。なお、登場人物表(角川文庫2015版)が意味不明であること、また題名に騙されたような気がしたことで減点しました。

No.14 6点 クリスティ再読
(2017/09/03 21:51登録)
評者クイーン長編もそろそろ終わりに近づいてるね。後期を先にやって最近になって国名シリーズに集中した理由は、単純に国名シリーズはほぼ昔読んでる(それと入手性がいい)だったわけ。で、だけど、やっぱ真相憶えてるんだよ....40年も昔に読んだキリでもね。本作も読んでると「ああこれあれがあれで...」なってしまってた。
まあだから、本作の読みどころは、あべこべ衣装をめぐるチェスタトン的論理と、大仕掛けな物理トリックが作り出すファンタジックなイメージ、ということに尽きると思う。物理トリックを「リアリティがない!」とかお怒りになるのは筋違いで、具体的な絵として想像してみると...シュールで華やか、綺想って感じで面白いじゃん。珍しく映画原作に売れた理由もそれじゃないかな。しかし中盤の展開が真相解明にまったく寄与していない、という長編構成上の問題があるから、もっと奇抜で似合った背景に変えて、100ページくらいの中編にまとめたら、切れ味のいい大傑作になったかもしれない。ヴァン・ダイン的な捜査プロセス小説の枠組みと、クイーンのしたいことが矛盾しだしてるのが本作の本当の難。
けど、エラリイのウンチクはどの作品でもトンチンカンなものばっかりだから、最近少々ウンザリしだしてる...

No.13 7点 青い車
(2016/02/02 22:11登録)
 世評は必ずしもそうではありませんが、案外上質な一作だと思います。犯人の大がかりな細工は過剰気味ですが、あべこべだらけの部屋という謎は実に魅力的ですし、クイーンっぽくない、どちらかと言えばカー的なトリックもユニークで面白いです。それでいて、なぜこんなトリックを用いたのかに関する論理展開は紛れもなくクイーン流であり、トリックをただ思いついたから使ってみた、というような印象は受けません。『ギリシャ棺』『エジプト十字架』で推理の頂点を極めた作者が新境地を開拓した異色の快作と支持したいです。

No.12 7点 斎藤警部
(2015/10/22 11:52登録)
賑々しく華があって楽しい本。ストーリーが愉快に弾け飛ぶよな最後のひっくり返しがまた痛快。これは面白かったな。
(これよりネタバレ)
物語の構造で見ると、例の「安部公房」いや「あべこべ」趣向が単に現場偽装の手段なわけでもなく、ちょっと興味深い多重構造の仕掛けになっていますよね。

No.11 5点 虫暮部
(2015/06/30 09:14登録)
 エラリーは見当違いな推理で必要以上に捜査を引っ掻き回していないか。殺人の謎そのものよりも、それをきっかけに発生するコメディ、を楽しむべきなのだろうか?
 この事件最大の不思議は、“家具をドタバタ動かしているのに、隣室にいた人間は気付かなかったのか?”だと思うのだ。解決してみれば、その謎は確かに解けている……。

No.10 6点 makomako
(2015/03/13 21:32登録)
 私はどうもクイーンは苦手でした。人物が多く登場し、一人の人物を描写するのにしばしば異なった言葉を用いるため、途中で誰が誰だかわからなくなって投げ出すといったことがしばしばでした。
 この作品は比較的登場人物が少なくそろそろ覚えが悪くなった私でも何とか読めました。
 なかなか面白かった。でもあのトリックは一度読んでも全然意味が分からなかった。新訳本となり、かなり読みやすくなっているのですが、トリックはさっぱりわからない。この本にはなんと後ろの解説で図解入り説明が載せてあったのだが、それでもあんまりわからない。何度か絵を見ているうちに何となくわかったような気もしますが、まあトリックは成立したということで良しとしましょう。

No.9 5点 名探偵ジャパン
(2015/03/09 18:49登録)
子供の頃に読んだミステリは、ほとんど内容を忘れてしまっているが、本作は、トリックが理解できす「?」となったことを強烈に記憶していた。
角川から、「謎」ではなく「秘密」のシリーズとして新訳されているものを読んだ。
この新訳の素晴らしいのは、巻末にトリックの図解が載せてあることだ。まあ、私は「針と糸」系の物理トリックは好きではないので、(あまり好きな人はいないだろう)疑問が解けても「ふーん」程度だったが。
本作の骨子はそれではなく、また、「あべこべ」でもなく、犯人が施錠されたドア側にいた、だから、犯人はこちら側のドアをトリックを使って施錠して、容疑の圏外に逃れようとした。ということをあぶり出すエラリーの推理だと思う。密室トリック、あべこべの理由などのほうを本作の「売り」としてしてしまうと、時代遅れの「バカミス」扱いされてしまうのは仕方がない。

No.8 6点 nukkam
(2014/08/28 11:35登録)
(ネタバレなしです) 発表当時はかなり激賞され、作者も出来栄えに自信を持っていたらしい1934年発表の国名シリーズ第8作の本格派推理小説です。シリーズ前作の「シャム双生児の秘密」(1933年)では使わなかった「読者への挑戦状」が本書では復活しています。「あべこべ」の謎がクイーンの作品としてはかなり派手で、それと大胆なトリックが評価が高い理由でしょうね。(名無しの)被害者の素性をメインの謎の一つとして最後まで引っ張っているのも異色です(後年のパット・マガーの「被害者を探せ!」(1946年)とは趣向が異なる謎です)。一方でミステリーに読みなれている読者からは厳しく評価されることも珍しくありません。「あべこべ」にした理由は一般的な日本の読者には推理しづらい理由だし、もっと他にやり方はないのかと突っ込みを入れたいところもあるでしょう。成否の評価は別としてクイーンとしては新しい試みに取り組んだとは言えると思います。映画化もされたそうですがこれはちょっと見てみたかったですね。

No.7 5点 ボナンザ
(2014/04/08 17:26登録)
珍しい密室もの。
トリックはやや馬鹿ミスだし、全体的にブラックユーモアがある。
異色作として押さえておくべき。

No.6 6点 メルカトル
(2013/11/13 22:00登録)
国名シリーズの中でも異色作だと思う。クイーンと言えば、殺人事件のそれ程不可思議ではない謎をロジックで徹底して詰めていって、段階的に真相を解き明かしていく過程に、特徴があるのだと思うが、本作はまずトリックありきで、そのホワイダニットを解けば自然と犯人にたどり着くという珍しい構造を持っている。
半分密室の中であべこべに服を着せられて殺されている男、しかも部屋の中のすべての家具などもあべこべに向きを変えられている。
犯人は何故そんな面倒なことをしなければならなかったのか。とにかくその謎が不可解であり、その理由が解き明かされた時にはなるほどと思ったものだが、よく考えてみればそこまでする必要性が果たしてあったのかどうか、やや疑問視される。
作中の切手に関する薀蓄は興味のない人間にとっては退屈だろうし、中国があべこべの国だという解釈には、首を捻らざるを得ないと私は考える。
単純な事件のわりには尺が長すぎるきらいがあるのも、やや気になる点である。
多分当時としてはかなり画期的な謎の提示だったのだと思うが、改めて今読んだらどうだろう、それ程までには魅力を感じないのかもしれない。

No.5 5点 HORNET
(2012/12/01 18:11登録)
 被害者の衣服の向きから部屋の家具の向きまで、すべてが反対にされた謎の「あべこべ殺人」。謎の魅力としては十分だったのだが・・・。その後の展開は、その謎から少なくとも私が期待した展開ではなかった。何がそう感じさせるのだろう・・・と考えた末行き着いた、本作品での一番のネックはおそらく「文化や感覚の相違」だと思う。
 まず、「全てがあべこべ」という状況が「中国を示唆している」というとらえ?論理?が全く分からない。これは私が同じアジア人だからか?とも思ったが、私たちが欧米を見たときに「全てがあべこべ」という感覚はない。まぁ、当時はノックスの十戒からも分かるように、東洋に対する理解がかなり偏っていたというか、歪んでいた感じもあるから、少なくとも向こうの読者はすんなり共感できたのかもしれないが・・・。
 もう一つは、「あべこべにした」動機にかかわる文化。これについてはそんなこと知らないから(私が浅学なだけなのだが)、「読者への挑戦」を受けていくらうなっても、真相を見たときに「そりゃ分からんわ」と思わざるを得ない。というか、真相を聞いても結局あまりイメージできない。あべこべにした理由ついての論理はわりと納得したが。
 トリックについては、文章の説明で理解するのが非常に難しかったというか、わずらわしかった。一応丁寧に読んだが、本当に理解しているか自分でも自信がない。しかも、分かったところで感嘆する気は起こらない。
 変な話、一番面白かったのは、「読者への挑戦」を挿入し忘れたという話だった。

No.4 6点 ミステリー三昧
(2011/05/11 23:58登録)
<創元推理文庫>国名シリーズの8作目(長編)です。
舞台の設定が、面白いですね。ドアが二つあって、片方は閉まっていて密室かと思いきや、もう片方は開いているから密室殺人に成り得ず、また殺害現場から立ち去る方法が二つあって、一方はどうしても人に目撃されてしまうのですが、もう一方から立ち去れば誰にもみつかることもないから準密室にも成り得ない。いわゆる「あべこべ」設定ですね。片方はクローズなのに、もう片方はオープン。死体も、部屋の様相もすべて「あべこべ」というメインの謎があって、捜査上でも、さまざまな「あべこべ」要素が小出しされ、事件に展開をもたらすだけあって「どうしてあべこべにしたのか」に対する真相は気になるところで「あべこべ」設定を強調していることもあり、どうしても密室という概念が目立たなくなっている仕様なんですが、それは作者が仕掛けたミスディレクションなのかと思わずにはいられないほど、ガチな密室トリックが用意されていて、フーダニットに一役を買っている点は驚きました。図があったらイメージしやすかったのでょうが、トリック単品でみると、全く理解できなかった点で評価はイマイチですが、フーダニットとの合わせ技でビシッと決めてくれたので、モヤッとすることもなかったです。まぁ、とにかく「あべこべ」要素が強調される訳ですが、本作はその点だけで評価するとモヤッとくるかもしれませんので、ご注意を。「あべこべ」に注目するよりも「密室」ミステリとして読んだ方が面白いと思います。ディクスン・カーの作品を読む感じで。「あべこべ」書き過ぎた。

No.3 6点 E-BANKER
(2010/05/05 13:41登録)
国名シリーズの第8作目。
シリーズ中でもかなり「異色」の作品という評判です。
本作品のテーマは有名な「あべこべ殺人」。
殺人が行われた部屋の中で、なぜか被害者は服をあべこべに着せられ、家具などもあべこべの向きにされています。
問題は、当然「なぜ真犯人はあべこべにする必要があったのか?」というところになるのですが、これは私の頭や価値観では理解不能でした。
そもそも、この時代の「中国」という国に対する見方や、欧米の生活習慣?が分かってないと、これを見破るのは無理でしょう。
密室についても説明はあるんですが、正直理解できませんし、エラリーがあれだけ拘った「タンジールオレンジ」についても、「それはないでしょう!」という解決法でした。
本作を当時NYタイムズ紙が激賞したそうですから、欧米社会にとってはたいへん分かりやすい作品なのかもしれません。

No.2 4点 Tetchy
(2009/03/06 22:18登録)
これははっきり云ってバカミスだろう。こんな真相、日本人が解るわけがないし、かなり無理がある。
なんせたった1時間で一室の家具―本棚やタンスなどに加え、壁時計などの調度類をも逆さまにするということが現実味に乏しい。
この真相はかなり乱暴だと云えよう。
クイーンの信望者である作家法月綸太郎のデビュー作『密閉教室』に、担任の教師が本作を非難するシーンがある。確か、有名な作品ということで読んでみたが、一体あれは何なんだ、バカバカしいといった感じの非難だった。読書中、幾度となくそのシーンが想い出されたが、それがそのまま私の言葉になってしまった。

No.1 6点
(2008/12/06 10:54登録)
そこまでやるか! と思いながらも、あべこべ殺人を説明する強引な論理には圧倒されました。この何とも奇妙な謎とその解答が本作の最大の(また唯一の?)見所でしょう。ただ、あべこべにしなければならない事態が生じなければ、犯人のある細工は非常に目立っていたはずだというところ、犯人の当初の殺人計画自体に無理があるのが気になります。
国名シリーズの中では、分量的に最も短いわりに、ストーリー的に最も間延びした印象があるのも減点の対象ですね。

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