home

ミステリの祭典

login
エジプト十字架の秘密
エラリイ・クイーン、国名シリーズ

作家 エラリイ・クイーン
出版日1956年01月
平均点6.97点
書評数37人

No.37 8点 YMY
(2023/11/27 22:24登録)
ウエスト・バージニアのある交差点で首なし死体のはりつけ事件が起こる。小学校の校長、百万長者、スポーツマン、そして未知の男と、次々にはりつけにされてゆく死者を前に、エラリーは手をこまねいているばかりである。事件の背景に浮かび上がった異教徒のしるしであるT字形の十字架は何を語るのか。
陰惨な首なしのはりつけ死体と、大団円での自動車、急行列車、飛行機など現代のあらゆる交通機関を駆使して展開する大追跡があることで、クイーンの作品としては、かなり派手な印象を与えるものとなっている。解決で示される緻密な論理は、やはりクイーンならではのものであろう。

No.36 8点 文生
(2020/07/28 17:04登録)
無味乾燥で少々読みにくかった初期のクイーン作品に比べ、本作は連続首切り事件がサスペンスフルに描かれており、読んでいてぐいぐいと引き込まれていきました。
首のない死体ものとしてヒネリを加えたトリックにも驚かされます。
国名シリーズのなかでは一番好きな作品です。

No.35 8点 ◇・・
(2020/04/05 17:48登録)
「首の無い死体」が出てくれば、被害者と犯人が入れ替わっていると、疑ってみるのがミステリの鉄則だが、その「死体」が四つもあるとなると...。
最後の最後の第四の殺人にいたり、たった一つの証拠物件をもとに、エラリイが明晰な論理で解決する。この真相には唖然とするだろう。本格ミステリの真髄がここにある。

No.34 5点 いいちこ
(2019/07/05 20:31登録)
推理プロセスの一部における論理性の高さには、目を見張るべきところがあるのは事実。
一方、本格ミステリとしての骨格に比してプロットが冗長すぎ、かつ一部に破綻が感じられる点、ご都合主義の印象が強い点等があり、世評ほどの傑作とは感じられなかった

No.33 6点 レッドキング
(2018/12/25 21:11登録)
「ゲームの駒」から犯人と被害者の人間関係を、「装飾パイプ」から犯行現場を、「足跡」と「ラベルのない薬瓶」から犯人を論証するロジックが見事。それはおいといて、ここでは何と言っても首なし殺人。死体に首がないことを「隠す」にはどうすればよいか? 同じようにヘンテコな首のない死体をたくさん作ってしまえばいい・・・
ホームズ「恐怖の谷」や横溝「悪魔の手毬唄」「犬神家」等と同じく、さらには「占星術殺人事件」や「首無しの如き祟るもの」へと応用複雑化していく本格物の一大テーマ。

No.32 5点 虫暮部
(2018/05/16 09:26登録)
 地名と同じ苗字なんて珍しくもないのであって(単に縮尺の問題と言う気もするし)、5章で地図帳を手にエラリーが披露した推理は冗談を聞かされているような気分になった。その場にいた捜査陣が誰一人ツッコミを入れないので、“下手なミステリのワン・シーンを皆で演じている”みたいだ。
 ところで、裸体主義者の共同体が登場するのに、うっふ~んな描写があるわけでもない。それじゃ意味ないだろって。サーヴィスが足りないよ君ィ。

No.31 8点 ねここねこ男爵
(2017/10/20 22:40登録)
舞台をあちこちに移動させる意味がないような気がする。最後のチェイスを書きたかったのかな?それにしてはうまく行っている気がしないが…

犯人特定のロジックは恐ろしくなるほど素晴らしい。故にあちこちでパクられにパクられまくっている。読んで損なしだが、やはりクイーンはある程度クローズドな舞台でこそ本領を発揮するのだと思う。

No.30 7点 クリスティ再読
(2017/10/09 19:30登録)
まあ今更に今更な名作、ということにはなるんだけど、今回読み直してこの前作があの閉鎖的な室内劇だった「ギリシャ棺」なのが信じられないくらいだ。クイーンもよっぽど書いててストレス溜まったのかしらん。
そういうわけで本作はロマネスクな大活劇である。ロジック派の皆さんには申し訳ないが、本作のロジックって小ぶりでわかりやすいのが多く、言うほど面白いものはないように感じる。クイーン=ロジック、って予断で読み過ぎている印象を受けるなぁ。
ただし、本作はそれまでのクイーン国名シリーズが欠いていた、キャッチーでロマネスクな長所がある。バルカンの血の抗争を背景にしながら、それを移民国家アメリカの問題としてモダンに扱っているセンスがいい。何やかんや言って、国名シリーズあたりというのは、「(いわゆる)本格ミステリ」の概念確立期なのであって、書いている時点ではまだまだ流動的なものだったようにも評者は思うのだ。古めかしい因縁話ではなくて、「本格ミステリ」である以上に、アメリカを股にかけた開放的でモダンなエンタメとして、本作は「古典的なほどに」よくできてると思うよ。だから国名シリーズの流れから見ると、本作あたりを最大の異色作と見るべきなのであって、決して「国名シリーズの代表作」ではないのでは?なんて思うのだ。

No.29 9点 青い車
(2016/01/30 23:43登録)
 本格ミステリではおなじみのベタなトリックを80年以上前の作品とは思えないほど秀逸に応用しており、ロジックが身上のクイーンらしく首無し殺人を必然性のあるものにしています。ヨードチンキの瓶、海泡石のパイプ、チェッカー駒と印象的な手掛かりがいくつも配置されているのもツボです。さらに、アメリカじゅうを股にかけたエラリーの活躍は他の作品にはない魅力で、クライマックスのスピード感において他とは段違いのエンタメ要素を備えた傑作。

No.28 8点 ロマン
(2015/10/20 15:08登録)
愉しく読み終えて振り返ったときに、総じて緻密な構成力に唸らされる傑作。国名シリーズ既作と比して外連味のある事件立てだが、そのこと自体がトリックの重要な要素として機能する無駄の無さ。首なし死体から想起される詐術も二段構えで手強い。にも関わらず、解決編での単純にして明快な指摘が意外な犯人を明らかにするスマートさ、複雑な全貌を一瞬にして解きほぐす爽快感が素晴らしい。

No.27 5点 nukkam
(2015/08/28 23:21登録)
(ネタバレなしです)  1932年発表の国名シリーズ第5作の本格派推理小説です。派手な趣向の連続殺人にスリリングな犯人追跡、そして鮮やかな推理(もちろん「読者への挑戦状」が付いています)とくれば本書が国名シリーズ中屈指の人気作だというのも理解できるのですが、個人的にはいまひとつでした。というのはかなり分厚い作品なのですがその割には重要な謎解き手掛かりが少なくて、無駄に物語が長過ぎるという印象が拭えませんでした。ただ最後の一行では思わぬ作者のユーモアの冴えに接することができて後味は非常によろしかったです(笑)。

No.26 9点 斎藤警部
(2015/05/21 11:25登録)
純粋に謎解きで興奮させられた小説ではこれが一番。
意外性よりサスペンスより文章力より、推理による真相解明にやられた。あのロジック畳み掛けには参ったな。。
結末に至るまでの筋運びも、微妙に怖いゾゾッとするムードが漂っており魅力的。

子供向け翻訳で読んだ「Y」を除けば本作がエラリーQ初体験だったはず。いい本読ませてもらいました。

No.25 7点 makomako
(2015/04/21 22:12登録)
 連続首なしはりつけという猟奇的殺人事件が発生し、犯人の候補と思われる登場人物が意外と少なくなっていくので、私でも犯人が当てられそうな気がしてきたところに作者からの挑戦状がある。大体こんな挑戦で犯人が当てられたことのない私でもこれは何となくわかりそうに思えるのだが・・・。
 こんな結論、全然予想していなかった。完全に作者のからくりにやられました。  すごいねえ。参りました。
 もっと高得点を差し上げたいのだが、この小説は東南ヨーロッパは残忍で、野蛮であるという差別的発想から成り立っているのがひっかかりました。アメリカだって田舎の警官が中央から来た警視に対してひどい口の利き方をしたうえに、わいろをもらって喜んでいるなんて、日本人の私から見たら相当に民族度が低いと思うけど。
 こんなことでよいのですかねえ。
 読みにくくはないのですが、ちょっと無駄に長い感じもしました。
 これがあるのでこの程度の点数と評価しました。
 

No.24 8点 sophia
(2014/04/13 17:18登録)
ギリシア棺と並んで国名シリーズの代表作。大技を使いつつもプロットがシンプルで、ギリシア棺よりも遥かに読み易い。それ故か事件に全く関係ない人々で読者の混乱を図ったと思われる部分がちょっとマイナスではありますが。

No.23 8点 ボナンザ
(2014/04/08 17:29登録)
今にしてみれば使い古された手だが、書き方がうまい。
最後のアクションは必要あったのか・・・?

No.22 6点 ミステリ初心者
(2014/02/16 23:11登録)
ネタバレがあります

 犯人が論理で当てられる、犯人当ての楽しい小説でした。 それに加えて殺し方が変わっていたり、沢山殺されたり、衝撃の展開だったり、話がダレません。

 残念なのは、ロジックの緻密さというか厚みが無い気がします。ちょっと無駄な部分が多いというか、犯人を断定させる部分が少ない気がしました。ロジックだけで見たら、短編でもいい気がしました。

 評価と関係ありませんが、訳が古く、めちゃくちゃ読みづらかったです。サンマーハウスの意味について、ちょっと悩みました

No.21 7点 アイス・コーヒー
(2014/02/03 13:08登録)
首を切断され、磔にされた死体を巡ってエラリーが奔走する国名シリーズ第五作。シリーズ最高傑作として人気も高い。
本作の売りは、何といってもアメリカを縦横無尽に飛び回るエラリーと犯人の頭脳戦。ただし、連続殺人がテーマとなるため捜査パートが長くアクションが必ずしもメインではない。一方、肝心の論理は小粒ながら見事で、満足感があった。登場人物もそこそこ多いが、それぞれの書き分けが上手くて面白い。エジプト古代宗教の狂信者や怪しげなイギリス人夫婦、医者に富豪に教授など。ストーリーに勢いがある。
「エジプト十字架の秘密」とは何か?この疑問も(今となっては有名すぎるパターンとなってしまったが)論理的な結論が出されている。それだけに、あの一行の印象は強い。
残念だったのはダミーの証拠が散乱していて、あらゆる伏線が回収される快感が味わえなかったこと。確かに、一応あれやこれも必要な要素ではあったのだが…。

No.20 5点 蟷螂の斧
(2013/04/06 21:51登録)
関係のない登場人物の物語が多く、散漫な感じを受けてしまった。もっとコンパクトにした方が犯人の意外性(ここは評価)が際立ったような気がします。首なしの磔や、追跡劇と派手なエンターテイメント系の割には、犯人推理の決め手(根拠や小道具の扱い方)の構築がイマイチと感じられた。

No.19 8点 メルカトル
(2013/03/04 22:22登録)
国名シリーズの中で出来はともかく、最も好きな作品。
派手な展開で最後まで読者を引きずり回して、結局最後には手掛かり一点で解決にもっていってしまうところが、いかにもクイーンらしい。
首なし死体という、オーソドックスかつ日本人好み?のテーマを、序盤のエジプト十字架に関する薀蓄などでうまく攪乱しながら、犯人の的を絞らせない工夫も心憎い演出となっている。
シリーズ中、ひときわ異彩を放っている異色作だと思う。

No.18 7点 TON2
(2013/01/07 01:24登録)
ハヤカワ・ミステリ文庫
 エジプト十字架はエラリイの博学な知識から出てきた思い付きです。本当にエジプト十字架に関連した事件だったら、それはそれで面白かったと思いますが……。
 犯人当てで医師が怪しいと思いましたが、始めのほうを読み返したら身元が明らかそうでしたので、それなら〇〇かと思ったら、その通りでした。
 ヨーロッパからの宝石泥棒、エジプト学者と彼を中心とする宗教集団など、ミスリードのガジェット満載で楽しめました。

37中の書評を表示しています 1 - 20