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ミステリの祭典

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オランダ靴の秘密
エラリイ・クイーン、国名シリーズ

作家 エラリイ・クイーン
出版日1951年01月
平均点7.64点
書評数39人

No.39 7点 愚か者
(2024/09/19 13:47登録)
多くの容疑者の中から、ただ一つの真実に迫る。第二の殺人の現場のある証拠からピンポイントで犯人を指摘して見せるクイーンの推理は、まさにこれぞフーダニットである。
ただ見事な論理一点ばりであり、真の動機は最後まで隠される。リアリズムを追求する立場からは辛いものがある。その点が「ギリシャ館」や「エジプト館」に一歩譲るというところと言える

10点満点で採点し直しました。3点→7点

No.38 7点 ALFA
(2023/02/17 08:41登録)
ロジックが美しく、テンポもよく、多くの登場人物もよく整理されている。パズルミステリの完成形といえる。
ただし、ミステリのもう一つの楽しみである人間ドラマとしては薄味。名探偵が妙に浮き上がっているのに、対になる犯人はショボイ。ここはやはり存在感のある名犯人が欲しいところ。

No.37 9点 じきる
(2023/02/12 21:24登録)
ロジックの美しさと完成度に唸らされる、犯人当て本格の理想形でしょう。初期クイーンを代表する傑作だと思います。

No.36 8点 ことは
(2021/01/23 17:07登録)
創元推理の新訳で再読。
あぁ、これが良い謎解きミステリの読み心地だなぁと思う。推理の「これしかない」感が、クイーン作品でも最上位だ。再読してあらためて感じたのは、終盤のよさだ。エラリーが手がかりを掴んでから後の展開は、演出もよく一気に読める。ここはいいなぁ。
それに法月の解説がよい。ひとつひとつ説得力がある。特に「なるほど」と思ったのが、兼業作家/専任作家に目をつけて、作風が変わる("推理中心の小説"はオランダまでの3作目まで)というところ。ローマ、フランスを再読したのも、これに触発されて、3作を間をあまり開けずに読んでみたかったからというのが実際のところだ。
これをふまえて全体の構成をみてみると、3作とも、事件発覚から捜査が始まり、初日の操作が完了するのは、半ば過ぎ。オランダでは200ページくらいで、ローマ、フランスと似たようなボリューム感だ。その後、捜査の手が広がり、この部分が150ページくらいで、残りが解決編になる。こうしてみると、ローマ、フランス、オランダまでの3作は、同様の枠組みの中に、違う趣向を盛り込んだのだと思える。そしてこれ以降の国名/レーン4部作は、確かに同様の枠組みのものはなく、ここまでが兼業作家クイーンだったのだなぁと思わされた。
気になった点もいくつかあげてみよう。
まずは、事件の捜査が単調かな。フランスでは少しずつ事件の全貌(当日になにがあったのか?)がわかっていくのだが、オランダでは事件の全貌はシンプルで、捜査の後半は事件の背景(家族関係、仕事関係の人間関係と、動機の可能性)になっている。私の好みでは、ここがやや単調だった。
また、推理についても質はよいが、ボリュームが少ない気がする。クイーンの最高傑作に押す人もいるが、私の好みでは、この点で国名シリーズの最高作にはならないなぁ。
それでも、「謎解きミステリ」の典型としてあげるなら、確かに「オランダ靴の謎」は最適の1冊であることは再確認できた。

No.35 7点 文生
(2020/09/15 22:36登録)
本作は事件発生のあとは関係者の証言を淡々と集めていくだけで物語としては起伏に乏しく地味です。そもそも、トリックが小粒でロジックメインの作品は個人的にあまり好きではありません。
しかし、この作品だけは別格で、ロジックの美しさには思わずため息が出てしまいます。推理パートの見事さと物語の退屈さの差し引きしでトータル7点といったところでしょうか。

No.34 5点 レッドキング
(2018/12/10 18:39登録)
何故に切れた靴紐は絆創膏によって修繕され 何故に靴の内側に詰め物があったのか? それはある属性に限定される犯人によって実際に使用された物だったから・・・。だがまってほしい。それが「あたかも~であるかのごとく」誤導させるための「ニセ手掛かり」ではないと どうやって否定できるのか。で必要なのはやっぱ証拠で今回は残された絆創膏の切り跡っていうチンケな・・。
第二の殺人での犯人限定のロジックは変に美しい。「彼の死に顔は穏やかだった・・ ここに窓がほしい・・」  
状況証拠の極みだな

No.33 9点 いいちこ
(2017/11/23 16:04登録)
犯行動機を一切考慮せず、犯行機会と犯行プロセスのみを辿って、犯人を特定する正統的・古典的なパズラー。
そのパズラーとしての志向・態様の徹底度、真相解明プロセスにおける論理の美しさ、明快さ、蓋然性の高さ等において、有栖川有栖の「スイス時計の謎」と並び、それを超える最高傑作の一つであろう。
多すぎる登場人物と、やや単調さも感じさせる抑制の利いたストイックな前半部分は、本作の数少ない、わずかな瑕疵であるが、真相解明時のカタルシスを増幅させるためのレッド・へリングと考えれば、やむを得まい。
一切の反論と余白を許さない完成度の高さは圧巻と言えよう

No.32 5点 虫暮部
(2017/11/21 11:48登録)
 手掛かりの靴がわざとらしい。推理する前に関係者の足のサイズを調べないでいいのか。
 捜査が余りプロっぽくなくて、第一の事件ではエラリーが好き勝手に仕切っている印象だし、その反面第二の事件ではたいして調べないうちにあっさり意気消沈している。
 エラリーとジューナのシーンがBLみたい。

No.31 8点 クリスティ再読
(2017/08/16 22:18登録)
国名シリーズでも初期タイプの完成形だろう。本作のプロット一番特徴的なのは、あまりマジメに尋問しなくて、適当にうまく端折れているあたり。登場人物一覧に大量の容疑者が列挙されるので、「全部尋問するの?」とオソレるのだが、そうではなくてポイントポイントの尋問しか叙述していない。だから読んでいて無味乾燥でツラい、というのはない。書き方が手慣れだしているね。とくにスワンソン出頭からジャーニー殺しの発覚に至る流れなんて、興味を逸らさずにうまく書けているように感じる。
まあ「パズルの極み」みたいな謎解きなんだけど、本作だと3つある推理ポイントを、これでもかと強調しているために、クイーンの意図を読者が当てるゼスチャー・ゲームみたいなニュアンスになってきているよ。その分フェアなんだけども、推理が具体的な行為が示す意味を解釈することに重点が置かれるようになって、「こういうことをクイーンは伝えたいのでは?」とか当時の服装などのジョーシキを推し量りながら推理していくことを要求されているかのようだ。そこらへん、もう80年以上前の作品ということもあって、素直に「推理」しやすいものではなくなりつつあるのかもしれないな。評者は「ローマ帽子」のときシルクハットは畳めるものなのか?でかなり悩んだりしたんだよ...
評者はパズラーと言いながら「なぞなぞ」的なネタ一発の作品って好きじゃないんだな。本作は複数の情報を相互に参照して絞り込む必要があるので、なぞなぞではない「パズル」だ。そこらへんクイーンですら意外にできてる作品は少ない。本作は推理という面で貴重な作品である。推理の結果によるいくつかの属性によるグルーピングに必要だから、あれだけ大量の容疑者が要るというわけで、そのグルーピングに必然性があるからこそ、別に意外な犯人でもないわけだ。「類的推理」とか「カテゴリーベース推論」とか呼びたくなるようなエラリーの推理である。
そういうわけで、本作かなり貴重な作品。キャラの没個性もこういう作品だったら、けして悪いことではない。

No.30 6点 nukkam
(2016/09/05 04:26登録)
(ネタバレなしです) 1931年に発表された国名シリーズ第3作でもちろん「読者への挑戦状」が付いています。相変わらず登場人物が多いし人物描写は上手くない、おまけに病院での殺人ということで「ほとんどが医者ばっかり」ですから誰が誰だかますますわからず人物整理が大変です。臣さんのご講評の通り単調な筋運びなのも読みにくさを助長しています。謎解きも不満点があり、確かに動機は決定的証拠にはなり得ず、機会と手段の手掛かりだけで犯人を特定できるというのが作者の主張かもしれませんけど、だからといって隠された動機が後出し説明というのはどこか釈然としません。とはいえエラリーの推理は国名シリーズの中でも屈指の冴えを見せており、特に靴の手掛かりに基づく推理はシャーロック・ホームズ現代版といった趣きさえ感じさせます(もちろん本書ももう古典的作品ですけど)。

No.29 7点
(2016/08/19 13:44登録)
国名シリーズ第3作。
解決編はほんとうに素晴らしい。
一つ一つの事象、事実から論理的に解答を出し、事件を解決へと導いてゆく。個々のロジックは単純で地味ですが、それらがまとまれば派手に見えてきます。
個人的には、つながりのある、ある2つの伏線がかなり気に入っています。読者に気づかれても当たり前のような単純なものですが、美しさを感じます。

ただ、『フランス白粉』もそうでしたが、読者への挑戦状までのストーリーが一本調子です。
謎解きロジックを完璧にしようとするあまり、人を惹きつけるような話の流れを構築することに気が回らなかったのでしょうか。
本作後の国名シリーズは読んでいませんが、すくなくとも『X』や『Y』などのドルリイ・レーンシリーズは、もっと起伏に富んでいて、小説として絶賛できるような内容でした。

ということで、謎解きはすごいけど、物語としての面白味にやや欠ける、というのが最終評価です。
蟷螂の斧さんが紹介されているように、本作が本サイトでは高得点(現在、7.9)ながらも、東西ミステリーベスト100では(圏外)であることに納得です。
小説として万人向きではない、商業的にも成功し得ない、だから本書のような作品は今後、残念ながら出てこないのではと思います。

No.28 9点 青い車
(2016/01/29 23:05登録)
 タイトル通り一足の靴から複数の推理を紡ぎ出し、多彩な物証で推理を構築していった『フランス白粉』と好対照をなしています。特に人間の心理に着目した推論が見事で、冒頭で病院の管理の厳重さをさり気なく描いているところなどさすがです。メイン・トリックが盲点を突いており面白いだけでなく、第二の殺人では堂々と大きなヒントを提示しており、読者に対してフェアでもあります。さらには動機は何か、なぜ二回とも同じ手口で殺したのかなど、極力すべてに合理的説明を付与している傑作。

No.27 10点 ロマン
(2015/10/20 12:39登録)
国名シリーズ第三作目。数々の著名な本格ミステリ作家陣からフーダニットの最高峰と呼ばれる本作、果たしてどのような道筋で犯人を導きだすのかと期待に胸を膨らませたが事実と論理を組み合わせた予想を遥かに上回るフーダニットだった。概ね犯人の特徴に感づくことはできたがエラリーの様に確信を持って1人に絞り込むことが出来なかった。驚くべきは物的証拠を一切用いずに容疑者一人一人の信頼性と俯瞰した状況を突き合わせて確実性を増した証言のみを検討してたった1つの真実へと辿り着いていること。ミステリ好きならばたまらない作品だろう。

No.26 4点 斎藤警部
(2015/05/29 15:44登録)
結構大人になってから読んだシリーズ第三作。う~~ん、申し訳無いがやっぱり萌える所まで行きません。 再読してみるべきか。。

No.25 7点 makomako
(2015/03/23 17:57登録)
 エラリークイーンの国名シリーズの中でも評価が高いのもうなずける出来栄えと思います。登場人物が多く、一人に対して色々な呼び方はしているのですが、今回の角川版ではかなり読みやすく何とか最後まで読み通せました。
 私は犯人当ての挑戦状の段階では、全然見当もつかない状態でした。解説によると最初はもう少し前の段階で挑戦状が提示され、正解だった方複数いたとのことです。すごいねえ。
 エラリーの推理は精緻を極めしかもわかりやすく十分に納得できるものでした。
 推理ゲームを楽しみたい方のとっては最高の作品と思います。

No.24 8点 初老人
(2015/01/05 23:43登録)
今まで読んだ作品の中で犯人を1人に特定するための論理構成が最も美しく、かつ明快だったもののひとつ。
それにも拘らず犯人を外してしまった当時の自分の愚鈍さが悔やまれる。もっとも今の自分が当時と比べて少しは進歩したかと言えば全く実感が無いというのが正直な所である。

No.23 8点 ボナンザ
(2014/04/08 17:23登録)
ロジックの完璧さにおいて他の追随を許さぬ名作。
もっともクイーンらしい作品だと思う。

No.22 5点 mini
(2013/07/19 09:56登録)
明日20日に創元文庫から「オランダ靴の謎」の新訳版が刊行予定
創元では中村有希の訳で国名シリーズの新訳版切り替えが着々と進行中でありその一環だ、もっとも私は旧井上勇訳のヴィヴィッドな感じが嫌いじゃないんだけどね(笑)

何かと言うとロジックロジックとそれだけが強調されがちな国名シリーズだが、そもそも私はミステリー小説に於いてロジックなんて最重要だなどと思った事が無い
特に書評するにあたって、ロジックの巧拙だけが評価点数での要素の全てみたいな書評は自分では絶対にしたくない、様々な要素から総合的に判断したいのである
それよりもシリーズ初期では当時のニューヨークの社会風俗への活気の有る描写の方が見逃せない
クローズドサークルとは対照的な、人の多く集まる場所をわざと舞台に選んだと思われるようなね、劇場、百貨店、病院、競技場etc、
「エジプト十字架」は大都会が舞台じゃないがオープンスペースな舞台だし、国名シリーズじゃないが「X」だって公共交通機関揃い踏みだったし
そう考えると「シャム双子」や「Y」みたいな館ものというのはむしろ異色作なんじゃないかと、例えば「ギリシア棺」などは公共的舞台じゃないけどあれは館ものとはちょっと違うしな

「オランダ靴」は病院が舞台、ミステリー小説での病院の扱われ方ってさ、暗く怪しい雰囲気というのが古典時代の作には多かった
しかし黄金時時代に書かれた「オランダ靴」での病院は実に近代的で明るい、おどろおどろしい雰囲気は感じられない
しかしそれでいて病院という一種独特な異次元世界な雰囲気は良く表現されている、この辺のクイーンの目の付け所は流石
犯人の設定などには「ローマ帽子」などと共通の、まぁクイーン得意の”属性”に依存したもので、動機の平凡さなどを見ても犯人の設定ありきみたいな作で物語に深みは無い
しかし結局のところ選んだ病院という舞台が非常に効果を発揮する結果となったのだろう

No.21 9点 ミステリ初心者
(2013/05/27 12:22登録)
ネタバレをしています


 前作、前々作と同じく、犯人当てが楽しめる作品でした。安心して犯人当てを楽しめる=犯人が1人に断定できる作品です。
 前作や前々作よりも、さらに読みやすくなっています。この作品の犯人の犯行方法は、ちょっと大胆で面白く、だれません。さらに、おそらく訳者の腕があがった??読みやすい日本語になっていました。
 読みやすかった為か、難易度が低いのか、自分でもそこそこ謎が解けました。第2の殺人はヒントが大きくてキワキワですね。殆ど当たらない自分がそこそこ分かったので、難易度のたかいものを求めている人には向かないかも。
 嫌いな部分をあげるとすれば、犯人に共犯者がいること。ただ、犯人当ての邪魔にはなっていません。

 完成度の高い、本物の本格推理小説でした。
 ※ちょっと印象が変わり再評価

No.20 6点 蟷螂の斧
(2013/03/22 15:03登録)
東西ミステリーベスト100での「国名シリーズ」の評価(○位)と本サイト<○点>との比較。「ギリシア棺」(23位)<7.67点>「エジプト」(42位)<7.05点>「オランダ」(圏外)<8.15点>。本作はベスト100では圏外ですが、本サイトでは、かなりの高評価がついていますね。自分としては、非常に珍しいこと(笑)なのですが、3つのヒントで犯人がわかってしまいました。今のところ、「ギリシア」>「オランダ」、次は「エジプト」に挑戦です。

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