home

ミステリの祭典

login
ジェリーフィッシュは凍らない
マリア・ソールズベリー&九条漣

作家 市川憂人
出版日2016年10月
平均点6.55点
書評数20人

No.20 5点 mozart
(2023/07/23 17:29登録)
ちょっと前に読んだのですが、確かにものの見事にダマされた(作者の術中にはまった)ことは記憶しています。ただ最後に「やられた~」となるのではなく「ふーん」となった(ちょっと残念だった)のも覚えています。サクサク読めるわりには自分に取ってはあまり「ワクワク感」がなかったのかも。読み方が悪いせいでしょうが。

No.19 7点 みりん
(2023/04/10 19:26登録)
ネタバレがあります

自分自身化学の研究に携わっている身としては共感を得られる記述が多くてより楽しめました。

No.18 5点 雪の日
(2022/05/03 17:10登録)
少し前に読み終えました。
思ってたのと少し違っていたけど、楽しめました。

No.17 8点 ボナンザ
(2021/05/23 12:09登録)
クローズドサークルもの特有の不気味さと刑事パートのコミカルさ、中二心をくすぐる犯行動機と期待大な設定を見事に活かした傑作。

No.16 6点 じきる
(2021/03/01 04:08登録)
世界観・プロットなど緻密に構成された作品だとは思うが、仕掛けに意外性はそれ程感じられず、犯行の過程についても違和感が残った。

No.15 7点 E-BANKER
(2019/09/07 12:05登録)
第26回鮎川哲也賞受賞作であり作者の処女長編。
『そして誰もいなくなった』への挑戦であると同時に『十角館の殺人』への挑戦・・・という綾辻行人による帯の惹句が鮮烈。
2016年発表。文庫化に当たって読了。

~特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行機<ジェリーフィッシュ>。その発明者の教授を中心とした技術開発メンバー六人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航空性能の最終試験に臨んでいた。ところが航行試験中、閉塞状況の艇内でメンバーのひとりが死体となって発見される。さらに自動航行システムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もないまま次々と犠牲者が・・・~

さすがに鮎川哲也賞はレベルが高い。
その中でもかなり上位の作品に入るのは間違いないのではないか(あくまで個人的な見解ですけど・・・)。
計算され尽くしたプロットや、余計な脇筋が殆どなく頁をめくる手が止まらないリーダビリティなどはデビュー作とは思えないほどの出来栄えだと感じた。

冒頭にも触れたように、典型的なCC設定なのが本作の大きな特徴。
手垢のついた設定にどのように新しい味付け、アレンジを加えていくのかが本作の一番の肝である。
いろいろな仕掛けはあるにせよ、<ジェリーフィッシュ>そのものに係る欺瞞+真犯人そのものに係る欺瞞。この二つこそが命綱(なのだろう)。
前者については二階堂黎人氏のあの大作が、後者についてはもちろん綾辻行人氏のあの作品が、どうしても頭に浮かんだ。
もちろん細かな部分には変化が付けられてるし、オリジナルなところもあるんだけど・・・
どうしても先行例の呪縛から完全には抜けられてはいない。
(全体的なプロットでいうなら、西村京太郎「殺しの双曲線」が最も似たテイストだろう)

他の方も、評価はするけどどこか腑に落ちない・・・という趣旨の書評が多いような気がする。
それって、全体的な齟齬やロジックの漏れを防ごうとして、細部に拘りすぎたのが原因なのかな・・・。アメリカの大空なんていう雄大な舞台設定なのに作品自体はやや奥行に欠けた感はある。(そもそもCC設定に雄大さなんて求めるな!とは思うけど)

いかんいかん。書いてるうちに何だか粗探しのような書評になってしまった。
久々に楽しめる読書になったのは間違いないし、今後もレベルの高い作品を期待したい作家なのは確かです。
(<ジェリーフィッシュ>っていうと、最初TDSのマーメイドラグーンにあるアトラクションを想像してしまった・・・)

No.14 6点 ミステリ初心者
(2018/12/07 01:37登録)
 ネタバレをしています。

 また、だまされてしまいましたw
 非常に読みやすかったです。ジェリーフィッシュ内の話、事件を追うマリア達の話、インタールードと、場面や時間や人物や真空気嚢式なんたらかんたらの説明の話が飛びながら少しずつ明かされていきますが、とても理解しやすかったです。
 大掛かりなトリックも面白かったです。最初から2機あったとは思いませんでした・・・。

 いくつかの解決を妄想しました。
 エドワードが、全ての犯行を終えた後、あらかじめ止めてある2機目のジェリーフィッシュか気球かなにかの移動する乗り物がある地点へ、乗っているジェリーフィッシュを動かしたのかと思いました。バラバラ死体はあらかじめつんで置くか、その地点においてあるものを使ったと思いました。
 また、マリアのバカ推理(ジェリーフィッシュの中にジェリーフィッシュ)ではないですが、気球的な、小型の移動手段を仕込んでいるとも妄想しました。
 いずれにしても、一人だけで完遂することが難しい点と、ウィリアムがバラバラ死体(サイモンだった)をエドワードと認識した点がわかりませんでした。


 以下、難癖や好みでは無かった点。

 犯人以外に隠し事をしている人物が多すぎ、また亡命組はレベッカの件とは別に壮大な嘘があります。亡命を示唆する伏線はありますが、ちょっと難易度は高かったと思います。

 ウィリアムがサイモンの死体をエドワードと認識した点は少々苦しいと思います。たしかに、死体を発見したときはパニックになっていたし、ややあいまいに書かれていましたが・・・

 犯人の計画が成功するかは、結構、運がいる・・・かもしれない・・・ 


 全体的に、大トリックを実現するために、それにあわせて少々強引な所もあったと思います。そのへんに目を瞑れば、面白かったです。

No.13 8点 虫暮部
(2018/08/21 12:33登録)
 この動機はいいね。ミステリには時々、表層的な関係性の種類を基準に心情の動きを決め付けるような描写が見られる。親子や恋人なら復讐をして当然だがただの同僚がそこまでするのは変、とか。しかし心の距離はケース・バイ・ケースであってそんな単純に測れるものではない。本作は短いインタールードで当該人物が行動に至るに充分な説得力を示しているし、それが事件の全体像に関する目隠しとしても機能していてグッジョブ。

No.12 6点 VOLKS
(2018/07/29 01:19登録)
色々な矛盾は楽しめたし、キャラクターも楽しめたし、設定も楽しめたのだけど、とにかくその背景というか、ジェリーフィッシュの構造やらなんやら、その部分の理解がなかなか追い付けなくて、読んでは戻り、2度読み返し、3度読み返し…。
どうもそこが私には引っ掛かってしまい、どんどんと読み進むことが出来ず、読み終えるのに4日もかかってしまった。

No.11 6点 sophia
(2018/07/13 02:24登録)
ネタバレあり

「ジョジョの奇妙な冒険」のような、ウイダーインゼリーを冷凍庫に入れようとする人への注意のような洒落た(?)タイトルの作品。文章が読みやすく展開も速いのでグイグイ引き込まれました。しかし竜頭蛇尾。一方だけを描写するというのは叙述トリックとしてはちょっとあざとく感じるんですよね。一団のキャラ造形はステレオタイプで、「エイリアン」や「インビジブル」等のハリウッド映画のよう。事件の背景は「金田一少年の事件簿」のよう。「21世紀の『そして誰もいなくなった』」と評される割にはそれほど新しさを感じません。しかし「DNA鑑定のない時代ですよ」と登場人物の雑談で念押しをする手法は素敵でした。

No.10 6点 蟷螂の斧
(2018/06/03 14:24登録)
クローズドサークルに係る構想は高く評価したいと思います。しかし構成が良くなかったような。ジェリーフィッシュ(過去)と地上(現在)の時間軸が相違している点ですね。このことで、サスペンス感・スリラー感が削がれてしまったように感じました。「そして誰も・・・」は犠牲者の恐怖感が主体のスリラーに対し、本作は、それを捨て?警察側のストーリーに力点を置いたということですね。まあ、次回作が念頭にあったから仕方ないのかもしれませんが・・・。

No.9 5点 ねここねこ男爵
(2018/05/02 11:06登録)
ネタバレ気味です。

かなりの計算のもと書かれた作品であることはよく分かります。が、瑕も多いように思います。
作品全体を通じて、一つの章の中で第三者視点と一人称視点がシームレスに入れ替わるためかなりギリギリというか、都合の良いところだけ一人称視点になっているのが気になります。隠蔽のためでしょうが、その割に固有名詞と代名詞の切り替えが露骨すぎるため読み慣れた人はここで色々気付いてしまうでしょう。
同様に、身元の曖昧さから真っ先に(読者に)疑われるであろう人物を容疑者から外すため、幸運や偶然にかなり恵まれ、「この人物が死なずに済んだのは運なのでこの人物は犯人ではないよ!」がミエミエです。緻密な計画なのか出たとこ勝負なのか…。盛んに「自分は神ではない」「すべてが計算のうちではない」と言うのは、そこはツッコまないでくれという作者のエクスキューズでしょう。メインは別の仕掛けであるにしても…。雪山に突っ込むまでの緻密さと比べて、殺人があまりにも無計画。あれだけ幸運に恵まれなければ確実に失敗してるでしょ。そもそもなんで一気に殺さないんだろう?ちまちま殺ってたら警戒され反撃されるのは当たり前だろうに(そうしないと話が盛り上がらないからなのは分かってます)。
ジェリーフィッシュの残骸をきれいに回収した軍が、遺体はほったらかしの理由が分かりません。万一の可能性に備えて一旦は回収するはずでは?(そうしないと話が始まらないからなのは分かってます)
新しい書き方とも言えますが、三つの時間軸が同時並行というのはちょっと難しいのでは。
最後の質問がなぜ一つだけで、なぜアレで正解なのかがよく分かりません。あんな呑気なやり取りの前に軍の機密が絡んでるんだから即座に拘束でしょ。野暮かな。とにかくドラマチックにする事を優先してしまってかなり不自然。

別に粗探しをしたいわけではないのですが、メインの仕掛けの力の入れ具合とそれ以外の部分の落差があまりにも目につくので…。緻密に計算して書かれていますが、むしろ細かいことは気にせず大枠の仕掛けを楽しむのが正しい読み方なのでしょう。
結局、一番怪しいやつが普通に犯人だったね、というオチですし。

(ここからは思いきりネタバレ)
やはり独白と地の文が故意に混ぜられているのはあまり…。それまで固有名詞だったのが突然「青年」になり、次に「誰が(固有名詞)を殺したのだ?」と書くことで露骨なすり替えを狙う、しかも文体から独白である事は分かるにしても明示はされておらず、他の場面では独白のような地の文も多い。ここがメインでない事は分かっていますが、これではいくらでも嘘がつけてしまうのではないでしょうか。嘘を書いておいて、「あれは地の文ではなく独白です」と言われたらどうしようもない(クドいが、文体から区別はつくとかそういう事ではなく)。これだけギリギリアウトな事をしてこの程度か、という思い。

No.8 5点 いいちこ
(2018/04/27 11:38登録)
伏線・ディテールに至るまで非常によく考えられた作品。
ただ、そもそもフーダニットを放棄した作品であろうから、犯人が直感的に分かってしまうのはよいとして、肝心のハウダニットも想定の範囲を脱していない。
各所で綱渡り、ところによってはアンフェアな仕掛けが講じられているのに、それだけの効果が挙げられていない。
著者の確かな実力は感じられるものの、作品の構想自体に難があり、それが十全に発揮されていない

No.7 7点 パメル
(2018/03/27 22:18登録)
21世紀の「そして誰もいなくなった」という謳い文句に惹かれて読んでみました。
登場人物は外国人ばかり(カタカナ名前は覚えるのが苦手)だし、物理学、化学など理系ミステリなのかと思わせるような記述があり、読むのに苦労するかなと思ったが、専門的な知識は必要なかったため、楽しむ事が出来ました。
誰が犯人なのかと仮説を立てるが、誰を当てはめてみても矛盾が出てくるし、外部の人間かというとこれまた考えにくい。捜査を進めれば進めるほど、不可解になっていくところが読みどころでしょう。
大胆なトリックが解明した時の衝撃的な真相はミステリとして理想的だし、トリック自体も洗練されており、説得力もあった。
フーダニット、ハウダニットともに十分楽しめた。装丁も幻想的で美しい。

No.6 8点 HORNET
(2018/02/04 19:29登録)
 航空工学やら、化学やらが出てきたり、舞台が外国だったりで、「難しい感じなのかな?」と構えて読み出したのだが、まったくそんな心配はなく、引き込まれて一気に読めた。純粋に面白かった。
 雪山に遭難した航空艇「ジェリーフィッシュ」内で、一人、また一人と殺されていくいわゆるクローズドサークルはベタなのだが、こういうのが好きな人たち(もちろん私も)は何作読んでもそのこと自体に飽きることはないので、非常に面白かった。そして何より本作は「最後の一人」も殺されてしまうという「そして誰もいなくなった」スタイルで、そのからくりが非常に斬新、よく考えられた仕掛けでよかった。
 物語は閉じ込められたジェリーフィッシュ内の恐慌と、その後の捜査が交互に描かれる構成だが、捜査過程で描かれて伏線が、最後の真相で見事に回収されているとともに、ジェリーフィッシュ内の描写ともきちんと結び付いていて本当によく考えられていると感じた。
 

No.5 7点 名探偵ジャパン
(2017/04/25 19:57登録)
魔法やオカルトではなく、科学的な特殊設定を持ち込んだ本格ミステリというのは珍しいのではないでしょうか。タイトルにも冠されている本作のオリジナル設定「ジェリーフィッシュ」の特性が、そのままメイントリックを成立させる要素となるなど、奇をてらっただけではない必然性が感じられて楽しめました。
文句ではないのですが、ラストシーンはちょっと笑ってしまうというか、椅子からコケそうになりました(笑)。次回作は、敵科学者が送り込んでくる悪のジェリーフィッシュを、主人公側の正義のジェリーフィッシュが迎え撃つというSFアクションものになるのか? などと考えてしまいました。

No.4 7点 まさむね
(2017/01/15 14:09登録)
 昨年の鮎川哲也賞受賞作で、各種年間ミステリランキングでも評価が高かった作品。
 閉鎖空間での連続殺人という本格ど真ん中の設定の中に、気嚢式浮遊艇(通称ジェリーフィッシュ)というSF要素を持ち込んだセンス、さらには、その上で近未来を舞台とせず、時間軸を現在に合わせたセンス等々、評価の高さは素直に首肯した次第です。
 このサイトをご覧の皆様は、読書中にほぼ100%「十角館の殺人」を思い浮かべると思いますし、実際に一定の類似性はあるのですが、それは同じ「型」であるという意味であって、この作品としてのオリジナリティは出ていると思います。シンプルかつ大胆な仕掛けで、ここまでガッチリとした本格を読めるのも嬉しい。(勿論、気になる点はあったのだけれども…)続編もあり得そうなので、期待しましょう。

No.3 8点 青い車
(2017/01/02 21:36登録)
 SF要素ありの本格推理小説と聞いていましたが、難解な説明は殆どなく、難しいワードを飛ばして読んでも差し支えないためけして敷居は高くありません。
 上空のジェリーフィッシュ内でのサスペンスと、地上での捜査を交互に見せることで、事件の背景が徐々に明かされると同時に謎が増幅するプロットが上手いです。「発見された六人が全員他殺であった」謎は物語を十分魅力的に引っ張ってくれ、最後の最後の解明に至るまでテンションを保って読むことができました。
 トリック的には『十角館の殺人』に近いものですが、題材をうまく応用した良作で、ちょっと異質な幕引きも印象的でした。

No.2 7点 メルカトル
(2016/12/30 21:50登録)
『そして誰もいなくなった』を意識した作品としては出来はいいほうだと思います。構成はしっかりしているものの、なぜか全体的にすっきりしない感じがします。飛行船の中で起こる殺人劇と、それから遅れること数か月の捜査が交互に描かれているプロット自体は悪くないのですけどね。
一つとても気になる点もあります。検死に関することなんですが、ややあっさりし過ぎているような。まあ、あまり突っ込むと自らネタバレしてしまう可能性が高いですから仕方ないですかね。
トリックはそれほど大胆なものではなく、手品のタネを明かされた時のがっかり感が漂います。ただし、それをうまく隠ぺいしている手腕は確かなものがあると思います。
エピローグがそのまま解決編になっている辺り、センスを感じますね。

No.1 7点 人並由真
(2016/11/30 20:12登録)
(ネタバレなし)
 飛行船内での連続殺人という特殊な舞台装置、明快な2つの謎の提示(フーダニットとハウダニット)、それぞれが鮮烈。そしてそんな趣向が基幹の大トリックと、さらにその大技を支えるこもごもの伏線やロジック、中小トリックと融合した世評通りの快作。それと、なんでこの物語が過去時制なのかのイクスキューズがちゃんと成立し、さらにそこからホワットダニット的なもうひとつの真実が見えてくるのもいい。

 とはいえ作者は、当然<あの先行作(某・国内新本格作品)>は読んだ上で、本作を書いたんだろうなあ。いや、ちゃんと別ものになっているんだけれど、その上で言いたいことが、ムニャムニャ…。まあ乱歩の言う通り、既存のもののバリエーションは確実にひとつの新たな創意だけどね。

 ちなみに今回の鮎川賞は選考者のコメントをざっと読むと(しっかり読まないのは、こういう場で、今後世に出る可能性もある応募作のネタバレをついうっかり? しちゃう作家先生も少なくないから)本作と競い合った作品のなかにも面白そうなものがいくつかある感じ。歯応えのある作品は推敲を重ねて、明利英司の『夕暮れ密室』みたいに、いつか刊行してほしいものですね。

20レコード表示中です 書評