home

ミステリの祭典

login
図書館の殺人
裏染天馬シリーズ

作家 青崎有吾
出版日2016年01月
平均点6.89点
書評数19人

No.19 10点 hsiyehmeipo
(2024/04/15 01:34登録)
裏染天馬シリーズの中でも一番推理パートのロジックが好き。
裏染天馬の過去等サブエピソードはやや冗長に感じる。

No.18 5点 虫暮部
(2023/12/14 13:30登録)
 ①意外な犯人を一応論理的に指摘してはいる。
 しかしあの人を犯人にするなら、相応の動機が必要だったと私は強く思う。被害者との関係がアレだからではなく、“守る為” に殴打した直後に掌返し、ってのが不可解。
 読者には推理不可能な事情が犯人の告白で明らかになるパターンでもいいから。事情を一つでっちあげるくらい、やれば出来ることでしょう。

 ②イニシャルK氏が図書館に忍び込んだ時、“テンキーのカバーは開いていた” “事務室やカウンターのドアは開いていた”。一方、死体発見場面の記述を見ると、“いつもは閉まっている” とのこと。K氏は自分が不正行為をする立場で、誰かが中にいる可能性を考えなかったのか。

 ③殺人のタイミングで、被害者の従妹が図書館の前に来ていた。K氏と遭遇するが、彼女はK氏が探していたまさにその人である。
 と言う状況が全くの偶然で成立している(私は、あまりに作為的だから従妹が犯人だと思った)。

 ④問題の本と被害者を結び付ける直接の証拠は無いのだから、脅迫のネタにはならない。本を挟んで被害者とK氏が睨み合う構図は、両者とも考えが偏っていて、夜中に忍び込む理由を作る為のこじつけに思える。

 ③が最も気になる。個人の気持で説明出来る事柄じゃないからね。
 総じて、全体を俯瞰した視点でチェックしないまま発表してしまった感じ。

No.17 7点 ミステリ初心者
(2023/09/30 01:46登録)
ネタバレをしております

 絶対に書評を書いたと思ったていたのに、見たところ書評に自分の名前が無く、記憶力のなさに絶望しました;;
 読了から大分時間が経ってしまったため、思い出しながら書きます。間違っていたらすいません。

 このシリーズは、明るくてユーモラスな登場人物が多く登場して読みやすく、かつクイーン国名シリーズを思い出させるような論理的な犯人当てが魅力です。本作もそうでした。
 漫画的な感じで読める反面、漫画的すぎてちょっと登場人物の性格が変人っぽくなっていることもありますが、3作目にして登場人物のキャラクターや配役の数と立ち位置が決定してきたと思います。
 これからも大変期待!…なのですが、23年9月現在ではこの作品を最後にシリーズが止まってしまっているのですね;; このまま殺すにはあまりに惜しいシリーズです;;

 推理小説的要素について。
 前作、前々作よりも洗練されていると感じました。前作は、個人的にはあまりにも細かい要素が積み重なりすぎて犯人を当てるのが不可能に感じてしまいましたw しかし、本作は完全にすべてを当てられなくても、犯人にたどり着けるようにできております。ちゃんと作者が読者に解かせようとわかりやすくヒントを書いていると感じました。頭パープリンの私でも犯人を当てることができました(すべての謎は解けなかったですがw)。
 ただ、細かいところに少しだけ不満がありました。いろいろあるのですが、例えば犯人がカッターで髪を切るしかないみたいに言われてますが、いきなり血の付いた部分だけ切ると違和感がすごいので逆に危険かと思いますw

 総じて、読みやすく論理的な犯人当ては希少価値が高く、この作品も好きです。早くシリーズ最新作がみたいですね;;

No.16 6点 mozart
(2023/06/23 08:28登録)
本作も十分楽しめたのですが前作や前々作と比べると「衝撃度」が若干少なかったような。犯人の行動原理にもちょっと理解できない部分があったし。それでもこうしたロジック重視の本格モノは好みの作品なので引き続き「館シリーズ」を(続編が出るのであれば)注視していきたいと思います。

No.15 7点 ボナンザ
(2021/05/09 21:50登録)
これまた良作。やや意外性に寄った感があるか。

No.14 6点 パメル
(2019/11/27 18:58登録)
探偵役のキャラが前2作に比べて薄まっているという事で読んでみた。(このようなキャラはどうも苦手で・・・)
平成のエラリー・クイーンと呼ばれている作者は、このシリーズで「密室」「アリバイ崩し」とテーマを決めて発表してきた。今回のテーマは「ダイイングメッセージ」。ダイイングメッセージもので、解読がそのまま犯人の指摘につながる例は、あまり見たことがない。その点で本書は成功していると思う。
探偵役の推理も実にロジカル。怪しいと思われる人物を何人も配置しながら、ちょっとした手掛かりから犯人を絞り込んでいく展開はとてもスリリングで好印象。
不満な点は、ミステリとは関係のない余計な会話が多いことと、犯人の動機に納得がいかないところ。犯人と被害者の関係を考えれば、あまりにも現実離れしている。その分、意外性には成功しているのだが・・・。

No.13 7点 E-BANKER
(2018/10/27 11:50登録)
「体育館」「水族館」に続く、裏染天馬シリーズの長編三作目は『図書館』ということで・・・
今回も“平成のエラリー・クイーン”の仕掛けるロジックは炸裂するのか?
2016年の発表。

~9月の朝、風ケ丘図書館の開架エリアで死体が発見された。被害者は館内に忍び込み、山田風太郎の「人間臨終図鑑」で何者かに撲殺されたらしい。現場にはなんと二つの奇妙なダイイングメッセージが残されていた。警察に呼び出された裏染天馬は独自の調査を進め、一冊の本と一人の少女の存在に辿り着く。ロジカルな推理と巧みなプロットで読者を魅了するシリーズ第四弾~

全体としては、他の皆さんの書かれているとおり、実に好ましい、好きなタイプの作品。
「体育館」「水族館」でも味わえた、真犯人たる条件がロジカルに提出され、裏染天馬の頭脳によって真犯人が炙り出される瞬間の刹那!
まさに本格ミステリーの面白さはここにあり!というところだろう。

細かく見ていくと、まずは肝心のフーダニット。
これは意外性で言うならかなりのレベル。例えて言うなら、「斜め上からの真相」とでもいうべきか・・・
犯行現場に残された数々の物証から“犯人たり得る条件”を提示するのはいつものとおりなのだが、どなたかがご指摘のとおりで、「ロジックのためのロジック」感はある。「鏡の件」や「カッターの件」も不自然と言われればそうかもしないし、他の解釈も可能だろう。
でも、まぁ十分許容範囲ではないか。正直、これだけの伏線をよく混ぜたなーという気にさせられた。

で、「ダイイングメッセージ」なのだが、これは・・・どうかな?
わざわざこれだけのボリュームを割いて書くほどのことでもなかったな・・・と感じていたのだが、最後の最後で「仕掛け」を出してくるとは・・・でも、あまりスマートな使い方ではなかったとは思うし、被害者がこれを残そうとした理由に今ひとつ納得はいかなかった。
「動機」に関しては・・・あえて触れないけど、納得感は相当薄いよね。

まぁでもスゴイ才能だと思う。
四作目になってシリーズキャラクターもだいぶこなれてきたというか、ますます魅力的になってきている。
天馬をめぐる恋の鞘当て的な話も今後どうなっていくか、など興味も尽きないところ。
いずれにせよ、回を追うごとにパワーアップしている感のあるシリーズも珍しいし、次作にも大いに期待したい。

No.12 6点 メルカトル
(2018/10/08 22:27登録)
個人的には、ロジックをあまりに重視したため、面白みと外連味がいささか足らなかったように思いました。しかし、サプライズ感はないものの、消去法を用いた裏染の推理は首肯せざるを得ません。ただ裏を返せばそれは重箱の隅をつつくようなもので、カタルシスを得られるような興奮は齎しません。少なくとも私にとっては。
更に言えば、そういう観点で語る作品ではないのは重々承知で敢えて書きますが、スケールが小さいです。論理性は重量級ですが、ストーリー性、プロット等に関してはあまり期待しないほうが良いですね。トリック重視、どんでん返し大好きという方にはお勧めできません。

意外な犯人像という点においては申し分ないですが、意表を突きすぎて「へ?」としかなりませんでしたね。まあしかし、普通に考えれば容疑者の中に明らかな動機を持っていそうな人物は見当たりませんし、結局そうなるのかーって感じですよ。論理と引き換えに、動機と犯人の心理面にまでは手が回らなかったような印象を受けます。

事件と並行して風ヶ丘高校の期末テストを巡る、各生徒の想いや意気込みなどが語られますが、正直どうでもいい気がしました。ただ、裏染と八橋の攻防はなかなか面白かったですが。

No.11 8点 測量ボ-イ
(2018/07/28 12:01登録)
僕と相性のいい作家?この作品も良かったですね。
特に「解答と解説」がわかりやすい!
犯人の行動に一部疑問あるも、ロジックはしっかりしていて近年稀に見る
直球勝負の本格ですね。読み応えありました。
次回作も期待

(余談)
真犯人は僕にとってはノ-マ-ク、意外性ありました。
ただこの犯人だと、動機が理解しにくいこと以上に、この殺害方法が本当
に可能なのか?いう疑問があります。
(ネタばれになるので、これ以上はやめときます)
僕は正直リアリティ重視派ではないので、あまり言いたくないツッコミな
のですが、その辺りは気になりました。

No.10 7点 makomako
(2017/11/12 12:24登録)
 このシリーズも3作目となり、登場人物のキャラクターが読み初めからわかってくるにつれ、より楽しめるようになりました。
 天馬の推理は今回もさえて、悩みながら少しずつ真相に迫て行く姿はまさにクイーンといったところでしょう。さらにひとめ見て色々なことを当ててしまうのはシャーロックホームズみたい(この作者だと「みたく」)でもありますね。
 3作続けてこういった作品を書けるというのは本当にすばらしい才能と思います。
 次作がとても楽しみです。
 ただし気になっている点もあります。
 ほかの方も書いておられるように犯人が意外過ぎて、犯行に至る現実味が乏しくその後の態度もこんな状態でいるはずもないところです。いくら理論的に詰めていったといっても、この人がやったとしたらその後もっとおかしくなるんじゃないかなあ。勿論推理小説なので、態度様相の変化で簡単に犯人がわかってはいけないのではありますが、ちょっとひどすぎるように思います。この傾向はこのシリーズ1作目からも感じていたものですが、今回が一番ひどかった。
 もうひとつ。
 会話や描写が「いまふう」なのはある程度認めますが、「いまふう」というのは後の世代の人が読んだら古臭く感じるような表現となりそうです。関東の方言のような「みたく」もやめていただきたいですね。この作家は将来推理小説の古典となりうる作品を書き上げる可能性を秘めていると思いますので、あえて苦言を呈しておきます。

No.9 6点 ねここねこ男爵
(2017/09/30 23:25登録)
館シリーズ3作品の中では一番のおすすめです。
登場人物のキャラ設定も落ち着き読みやすいです。
ただ気になるところもあって、(①にネタバレを含みます)

①論理で犯人を特定するゥーンだ!!が強すぎて、犯人の行動が証拠を置きにいっているようにしか見えず不自然。
カッター周辺が特に。探偵がかなり細かいことを根拠にしているのでそれに習うと、
『それが現場に落ちるのを極力避けるために、とのことだがトイレまで移動する間はどうする?2階のトイレにしてもそれなりに移動しなくてはならない。どうにかして現場をトイレに隣接させたほうがよかったんでは』
『行動の言い訳として他に心理的理由があるかもと言っているが、探偵の推理どおりなら恐ろしく冷静にロジカルに行動する犯人であり、これは読者へのエクスキューズでしょう』
『ハサミなら最小限の切断が可能だろうが、カッターで紐状のものの先端だけ切るのはとても難しい。切断したい部位の両端を押さえなければならず、そうするとかなりの長さを切断する羽目になる。目撃されたら相当印象に残るし、後日長さを揃えるにしても店に行くわけにもいかない。さらに確実に現場に細かく舞うのでかえって証拠品を増やすことにしかならないのでは?』
2階のトイレまで落ちない事を前提にするなら、張り紙のテープの粘着力が残っている部分を破って抜け落ちそうな部分に貼り落ちないようにすることも可能では、とか色々あります。
おそらくクイーンの超有名作の『トラブル回避の些細な痕跡から特定』をやりたかったんでしょうが、それにオリジナリティを加えたろ!としてひねりすぎた結果かなり行動も推理も不自然で苦しい。

②他の方も指摘済みの通り、①を優先したため動機が??
個人的にミステリの動機はどうでもよい派(過去の復讐とか実は親子とかあとづけされてもなぁ)なのだが、ロジックと意外性を優先したため本作の場合とってつけた感が。
③ラストで一対一を書きたいのは分かるが、今作は特に無理やりじゃないか?

この辺気にならない向きは7〜8点の作品だと思います。面白かった。

No.8 8点 名探偵ジャパン
(2017/04/15 22:23登録)
解答編パートが前二作品(『体育館』と『水族館』)よりも短く、かつ分かりやすくなっています。前二作品(特に『水族館』)が数学の問題を解くかのごとき、あまりにスパルタンな構成だったことに対する反省なのでしょうか。分かりやすく、かつ、あくまでロジカルに。これは大変よい傾向だと思います。
初登場時は不愛想で慇懃無礼な変態だった、探偵の裏染天馬のキャラクターも、次第に軟化してきているように思われます。

私も、多くの方のご指摘にあるように、犯人の動機に最後まで「?」が拭えませんでした。「最後の最後で納得のいく驚きのホワイダニットが明かされるのか?」と身構えていたのですが、そこまでは行きませんでした。そこをしっかりと締めてくれたら、「古典的なロジカル推理と現代的なサプライズ性が融合」した文句のつけようのない大傑作が生まれていた可能性があっただけに、(このレベルの作品に対して言うことでは本来ないのですが、それほどの期待を込めているため)残念に思いました。

しかしながら、奇襲的サプライズやキャラクター、専門的な知識に頼ったミステリが多い現代の中で、ここまでロジックにこだわった本シリーズの存在は稀有で貴重なことに変わりはありません。この作者の年齢で、ここまで書ける作家というのは、そうはいないでしょう。ゆくゆくは、本邦ミステリ界を牽引するようなビッグネームになってほしいと切に願います。

No.7 6点 人並由真
(2017/01/13 15:01登録)
(ネタバレなし)
 犯人に関しては早々に察しがつき、実際にその通りだった。
 当方は長編ミステリを楽しむ場合は傍らに白紙を置いて登場人物の一覧表を作り、そこにキャラクターのデータを随時メモ的に書き込んでいく読み方をしている。これはロジカルに手掛かりや伏線を拾うためというより、話を潤滑に読み進めるための備忘だが、本書内の<ある登場人物>に関してはそんな作業をするなかで、どうも叙述のバランス具合が気になる。そこで「この人じゃないかな…」と勘付いてしまった(過去には、P・D・ジェイムズの某作品などで、似た経験があり)。まあ本当はパズラー読者としてもっと緻密に読み込み、考えていかなければならないのだけれど。

 全体的には面白かったし、細かい複数のギミックも存分に盛り込まれていると思うが、一方で蟷螂の斧さんなどのおっしゃるいくつかの苦言もよく理解できる。くだんの犯人像も横溝の某作品などに通じる、ちょっとそれはなかなかありえないでしょうね、という印象がある。ただしこの作品の面白さにはその意外性(犯人そのものというより、事件の真相)も大きな意味があるので、一概に否定はできない。また例の最後の劇中では曖昧なダイイングメッセージの本当の意味付けのくだりも、そういう迂路を経て言葉にし合う意味があるのか? という疑問が残る。

 あとまったく個人的な話だが、裏染のキャラ付けとしてのアニメ好きは自分のようなおっさんアニメファンからすればいわゆる<嬉し恥かし>の演出で、非常に摩擦感を抱いた。こういう形で天才型探偵の敷居の低さを形成されるのは、勘弁してほしい。ヒロインのぱんつを見るのが伏線になる辺りは、まあいいけれど。

No.6 5点 蟷螂の斧
(2016/10/31 16:46登録)
うーん、犯人の行動が不自然です(苦笑)。著者の売りである「論理」を優先したあまり、結果として不自然な犯人像が出来上がってしまったとの印象です。つまり、無理やりに論理づくりをしたためではないでしょうか?。5つの条件に当てはまる人物、それが犯人である。それはいいでしょう。しかし、犯人に関する伏線が生きていません(まあ、数行あるといえばあるという程度ですが)。これでは「あっ、そうなの」で終わってしまいます。伏線の妙(おお!あそこが伏線か)があってこそ論理が生きてくるのでは?・・・。
理解できない犯人の行動は、①被害者の後をつける行動。非常に稀なケースです。②動機が弱いとの評が多いのですが、それは突発的な要因で犯行に及んでしまった、あるいは咄嗟の判断で保身を図った、ということで許容できるものと思います。しかし、精神的に動揺している犯人が、犯行直後に冷静に証拠隠滅を図るという行為が、どうもアンバランスで納得しにくいのです。③血のついた○をトイレで処理する。これはまったく理解不能です(笑)。そんなことをする人がいるのかなあ?。もっとほかの方法をとるでしょう。この行動が犯人特定の重要部分になっているので、個人的には大きなマイナスポイントになってしまいました。④ポケットに○○○○を戻す行為。さて何のため?。
その他の疑問は、①犯人が「鍵の国星」を読んでいるのかどうかは不明です。この点はいただけないですね。②それに関連し、「ラストの一行」的な意味での「く」を理解できる読者は果たして何人いるのでしょうか?。読者は「鍵の国星」を読んでいないわけだし、それほど伏線があったとは思えないし・・・。実は「く」ではなく「ク」でしょうか?。最後に”若き平成のエラリー・クイーン”の宣伝文句はどうなんでしょう。評価が高いので、あえて辛目の採点で。一行一行読むのではなく、サラッと流して読むタイプなので、読み落としによる理解不足があると思いますので、この苦言は気にしないでください。

No.5 7点 HORNET
(2016/09/24 21:03登録)
 図書館が舞台ということで、必然的に本とかミステリとかいったことがチラチラ出てくるのがまず楽しい。山田風太郎の「人間臨終図巻」に早速興味がわき、それこそ行きつけの図書館で借りてしまった(笑:さすがに書庫からの取り出しでした)
 ロジカルな仕組みには定評のある作者だが、基本的に「風ケ丘」メンバ―のキャラクタ―、ウィットに富んだテンポのいい展開が、リ―ダビリティを大きく高めていて、その中で披露されるロジックだから心地よいと感じる。
 ただ、私としては意外にロジックに飛躍を感じる部分も結構ある。裏染天馬のあまりにもスマ-トで天才的な推理は、見ている分には気持ちがよいが、意外に他の選択肢を主観で切り捨てていたり、「それ以外は絶対ない、ってこともない」と思えたりすることもある。だから、天馬の不可思議な行動を、種明かしの前に看破できることはまずなく、結局「解答待ち」になってしまうのがちょっと悔しい。
 ただ前2作よりは確実に面白かった気がする。なぜなんだろう。「やっぱり1作目がよかったよね」とならないことは嬉しいことなので、今後の作品にも期待したい。

No.4 8点 まさむね
(2016/03/06 19:13登録)
 ロジック全開の青崎・館シリーズ3作目。直球ど真ん中の本格パズラーはやっぱり楽しいですな。
 個人的に好まないダイイング・メッセージを扱ってはいますが、当然それだけではないし、伏線の配置と回収も見事。名探偵コナンなどの実作品を使った遊び心や、登場人物の会話も楽しく、飽きさせない工夫にも感心。
 正直、動機は理解しがたいというか、相当な矛盾を感じるのですが、まぁ、やむを得ないのかなぁ…。
 ちなみに、高校生探偵・裏染天馬は、次第にまともになってきているような気がしますね。続編も楽しみ。

No.3 8点 青い車
(2016/02/13 15:45登録)
つい昨日読んだばかりで、いざ書き込もうとサイトを覗いたらみなさん続々と書評をアップされていて驚きました。個人として読んだ感想は素直に「面白かった」。学生には痛い1900円の出費に見合うだけの内容でした。
実を言うと、刊行前からダイイング・メッセージものと公表されているのを見て、メッセージの謎一辺倒で味気ないものになるのではないか、と不安も少しありました。しかし蓋を開けてみると、核となるのはダイイング・メッセージなのですが、思いもよらない方向からいくつもの推理を導き出すことでその真相に迫るアプローチが楽しめる秀作でした。若干雑多なきらいもあった『水族館』より全体的にシャープな造りという印象で、それはたとえば容疑者が前作よりずっと少ないところも大きいでしょう(それでいて意外性も確保しているところが油断できません)。図書館という舞台を手がかりのみならず動機の背景にも密接に関係させているところもいいです。
ところどころ飛躍気味なロジックも見受けられますが、その飛躍が作者の持ち味でもあり、その軽やかさは大山誠一郎さんと並んで国内作家の新勢力と言ってもいいと思います。次作もタイトルの館しばりをするのかは不明ですが、面白い趣向なので個人的にはもう一、二作続けてほしいところです。

No.2 7点 kanamori
(2016/02/13 14:19登録)
風ヶ丘図書館に夜中に侵入した大学生が、翌朝、撲殺死体で発見される。現場には凶器となった山田風太郎の「人間臨終図鑑」と、2つのダイイングメッセージ。神奈川県警のアドバイザーとして駆出された高校生・裏染天馬は、消去法推理で犯人を絞り込もうとするが--------。

特殊設定や叙述トリックものが氾濫する最近の国内本格ミステリ・シーンの中にあって、当シリーズのようなロジック展開の面白さを中心にした王道のフーダニット・パズラーはかえって新鮮に感じられますね。本作も面白かったです。
ダイイングメッセージの扱いに変化を持たせているのは、作中の天馬の台詞がそのまま作者の考えなのでしょう。本家のクイーンがそれに拘り過ぎて変になってしまった、という思いもあるのではと愚推します。
本書の難点は、やはり動機の弱さ(個人的には理解できないレベル)ですが、これは、”真相の意外性”とロジカルな推理との両立を狙った結果かな。両立できれば、それは”傑作”ということになるのでしょうけど。
あと、本筋とはあまり関連しないですが、図書館本のビブリオ・ネタや、学園もののコメディ部分も愉しいです。とくに”黄色の蛍光ペン”のくだりでは爆笑させてもらいました。

No.1 7点 はっすー
(2016/01/31 17:14登録)
やはり綱渡りなところもあるが論理にこだわる姿勢が好印象そしてクライマックスは衝撃的
ダイイングメッセージの存在・扱い方も独特で面白かった
ただ納得できない点もありそこの伏線をハッキリとさせてくれていたらもっと高評価だった



ネタバレ
犯人はいつ鍵の国星の内容を知ったのかが気になる…自分が伏線を読み落としただけ?

19レコード表示中です 書評