皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
斎藤警部さん |
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平均点: 6.70点 | 書評数: 1307件 |
No.24 | 8点 | サウサンプトンの殺人- F・W・クロフツ | 2024/10/09 23:02 |
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「これは、ある生物のように」 彼は快活な調子で言った。「尻尾のほうに針があるようですな」
A社とB社はセメント会社。A社の未来を守るためB社に侵入しヴァイタルな技術情報を盗もうとした二人の社員。ところが時の弾みで、目撃者となった夜警を過失致死。。。 この悪夢の瞬間から紡ぎ出される、創意と工夫と悪意に満ちた右往左往驀進蛇行の顛末は、小説構成の企みこそが色鮮やかな下支え。 第Ⅰ部~第Ⅳ部と進むにつれ主体は A社 ⇒ フレンチ ⇒ A社+B社 ⇒ フレンチ と推移する。 倒叙推理の積み残しがフーダニット、さらには××ダニットへと舞台を変えては炸裂する。 フィジカルなエコノミー、いやインダストリー冒険描写の質実な締まり具合。 頼りになる男と、頼りになり過ぎるロジック展開、あるいはその解きほぐし。 仕事が鬼出来る者だからこそ挑む事の出来たアリバイ工作の、拭いきれぬ一抹の怪しさよ。 A社とB社の間には、あの短篇以来の「9マイル」! シューベルトの「軍隊行進曲」を口ずさむ男! んんーーー その “ヘンゼルとグレーテル” は ・・・ いやいや本作は随分と攻めてます。 溢れ出るスリルとサスペンスとイヤミスと、ドラマチックなツイストにいや増す謎。 試行錯誤には希望という名の置き土産。 やがて訪れた、フレンチ急襲型チェックメイトの、ホトバシる旨みと輝き! 最初のチェックメイトを引いて更に追い詰める、繊毛が微妙に蠢いて弱光を見せるような暗い蜃気楼の晒しっぷり。 その結果なのか経過なのか、涙腺を刺激する “巧まざる” 名台詞もあった。 最後のフレーズの連なり、最高過ぎます。 クロフツは、頑張りました。 |
No.23 | 6点 | ホッグズ・バックの怪事件- F・W・クロフツ | 2023/11/19 16:02 |
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事件の○○点を巧みに隠蔽する技が本作の肝でしょうか。 一方で、ごく限られたエリアで執り行われるきめ細やかなアリバイ工作。徒歩や自転車、せいぜい自家用車での移動に頼るそれはなかなかに地味で、地味な良さがあり、あまりに地味なので「まさか某S30年代日本著名作の様に『実は◯◯◯を使ってました』ってな限界突破トリック使ったんじゃないだろうな?」と半分冗談で妄想してみたりもしました。(本作の場合は『実は〇〇を』の方向で。。) 地味ながら奥行きある真相が解きほぐされる最後のシーン(フレンチが上役二人と酒を酌み交わしながら会話)は実に味わい深く、本作の魅力が凝縮されていると思います。「六十四個の手掛かり」はわざわざページを見返すほどの事もなし。
ご指摘の方もいらっしゃる通り、古い創元推理文庫(’80年代)の表紙絵は、ネ●●レ的に流石にちょっとね。。 登場人物表にある人物が載っていないのも明らかにおかしい。(了然和尚さん、新表紙版でも直っていませんでした!!) |
No.22 | 6点 | 船から消えた男- F・W・クロフツ | 2022/09/25 00:58 |
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夢の ”ガソリン不活性化” に関する(巨大なマネーを産み出すのは間違いない)画期的発見をした化学者二人組が、実用化(≒企業への売り込み)へ向けた研究継続に必要なキャッシュの出所を接点に、婚約中の男女、および女性の親戚に当たる資産家とタッグを組み、研究も実を結びいよいよ大金を当て込んだ売り込みに乗り出したその時・・・アイルランド海を挟んだ或る重大事件に巻き込まれて行く様をクールに、恋愛模様を綺麗に交え描いた好篇。
物語の転機となった或る “隠し事” の機微がミステリとしてどう機能して来るのか、その展望に興味津々。 捜査する側とされる側、その故意混じりのすれ違いを打ち出す趣向が面白い。 中盤から犯罪小説的展開を内蔵し出すのも実に熱い。 裁判シーン、それ自体のスリルもまずまずながら、物語のポイントを整理するのに良し。 結末は若干もやもや。これだけのページ数を掛けた割には小ぢんまりと真相暴露されたもんですが、 ”シャープペンシル” の一件で持たせたひとくさりはそれなりのスリル有り。 ミスディレクションで引っ張ったアリバイトリックは小味ながら堅調。 まさか “あの人” が真犯人では?? なんて方向にちょっと引っ張られもしましたよ。 フレンチの、事件に対する付かず離れず(?)のスタンスも面白い。 爽やか過ぎるエンドは本作のある意味小さくまとまった感とよく調和している。 見せ場を絞った北アイルランド旅情も程良し。 そうそう、肝心な事を敢えてオープンにして終わらせたのも、本作に一種の深みをくれていると思います。 |
No.21 | 5点 | 殺人者はへまをする- F・W・クロフツ | 2022/04/01 15:05 |
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MMM ... Murderers Make Mistakes .. 殺人者はへまをする .. ま、俺は例外だけどね。今まで一度たりとも捕まっちゃいねえや。
フリーマン・ウィルズ・クロフツ先輩が往年のラジオ番組用に書いたショート・ショート・ミステリーズ23篇。溢れる古趣。難事件をじっくり解決する長篇のフレンチと異なり、簡単なヤマなら容赦無く秒殺でホシを挙げてしまう掌篇のフレンチ。 出来上がってるクイズを小説の枠にねじ込み直したブツとは似て非なる、クイズ要素を織り上げて小説の形にまで仕立てた、ちょっとしたオードブルたち。一篇読んだら気の合う仲間とうっかりリッツパーティーでも開きたくなること請け合いです。 新しい出発(たびだち)の春、これから殺人にでも手を染めようかという方は、本書をじっくり研究して、殺人者がどんな時に失敗を犯すものなのかよく理解しておくのがよいでしょう。 先輩面してごめん。 ではまた。 |
No.20 | 7点 | ギルフォードの犯罪- F・W・クロフツ | 2021/07/16 17:05 |
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典型的クロフツ、むしろ鮎哲w!彼のファンだったら、鬼貫警部モノ幻の長篇みたいなつもりで充分読めるのでは。 宝石商の会社とその社長宅を舞台に、殺人と重窃盗、立て続けに発覚した二つの事件を巡り、犯人捜しとアリバイ破りの幸せな共存で魅せる快作。というか「そこに密室トリックはあるのか?」「そこにアリバイトリックはあるのか?」って何とも微妙な霧の深さが重なり合ってるんです。ダテに事件二つも起こしてないな有機的クロフツ、って感心します。 伝言ゲームを捻ったような電話のトリック、いいねえ。死亡推定時刻の妙、イカすねえ。指紋の在った場所にも(ミステリ的)緩急が。。金庫破りの大胆トリック、こいつは現代のSNS写真を使った或る悪事までをも彷彿とさせます。いっけん普通のようで実は特殊性を秘めた「物理的」殺人動機! んんん~、堅実ながら思わず唸る本格ミステリのポイントがいくつもあって愉しいぞ!もちろんフレンチや周りのコップ達の地道な捜査過程こそ実に味わい深くて、しかも鮎哲っぽくって、最高なんですが。 終盤タナーの登場もまた嬉しからずや。 最後の章だけは、クロージングの捕物だけでなく、もちょっと派手な意外性を弾けさせてもよかったかな、、とは思う。 でもいいさ。
どうでもいい事ですが「フレンチはたいぎそうに姿勢をあらため、坐り直した。」を「フレンチはたいそうぎに姿勢をあらため、坐り直した。」と読んじゃって噴き出しました。 冒頭地図にブライトンやらベルギーやら出て来るんで、三笘薫(川崎フロンターレ)の移籍を思い出しました。 しかしこの平成復刊版の表紙(宝石いっぱいを絶妙に犯罪っぽく配置)、何度見てもいいな。 |
No.19 | 6点 | 蜘蛛と蠅- F・W・クロフツ | 2020/11/13 18:20 |
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ストーンズファンのみなさん、お待たせしました!… と言いたいとこですが、あちらの原題”The Spider And The Fly”と違い、こちらの原題は”A Losing Game”。「魯迅亀」と読まないでください。 本業金貸し、副業で恐喝を嗜むくそじじいが頭打ってくたばって、家も火事になって、さてこれは事故でしょうか殺しでしょうか、殺しだとしたら誰が手を下した正義の味方でしょうか、ほんとに正義の味方なんでしょうか、という物語。 この本にはですね、7点以上には無い、6点本ならではの緩い良さがありますよ。色んな登場人物の人間くささも一々あけすけでなごみます。中甘のユーモアもよく撥ねてます。 前半、シンプルな様でいて枝葉が凄まじく伸びる恐喝心理描写(する側もされる側も)には掴まれました。後半、何気に アレ、真犯人あの人じゃないの? って何度かに渡って迷わせてくれるのがいいですね、 そしてチームワークの勝利に向かって進む仲間たちのキラキラ感が良いです。 炸裂リアリティの空気の中に、意外と絵空事な展開もあったりしますが、、だからこその味も出ています。物理に振り切りの古典的アリトリもまた愉しからずや。 「多忙な休暇」のブリテン&アイルランド島巡航ツアーで知り合った人が登場します。万が一そいつが犯人だったら、気絶しますよね |
No.18 | 7点 | 死の鉄路- F・W・クロフツ | 2019/07/10 06:44 |
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「あなたに対して使ったのと、まったく同じ手口です!」
”仕事ミステリ”の快作。舞台はイングランド南部の臨海鉄道。偽装アリバイを●●のではなく●●●●という素晴らしいトリック!叙述欺瞞もどきの要素があり、中途半端にアンフェアな(ツブシが足りない)所も見えますが、、いっそ完全なる叙述トリッカーに仕上げてたらどんなもんになってたんでしょうか? フリーマンが専業作家に転じて間もない頃、直前まで身を置いた鉄道業界内で起きる連続殺人(なのか?!)を扱った充実の本格推理です。フレンチの人間臭いとこも例により適量見え隠れ(探偵役を他の登場人物に持ってかれ気味だが!)。“目の高さをゆっくり上下するたくましい主運棒と連結棒”のピクトリアルな描写、“面積計”を上手に使いこなす事務所のシーン等々、男心に響く(?)現場報告が続く様は壮観!! アリバイ工作は、、、そっかソレ言うとネタバレになるんでしたね。。 nukkamさん仰る通り、’80年代創元推理文庫の表紙絵(この小説ロマン溢れる危険な構図!)、惹き込まれますねえ~。 |
No.17 | 7点 | スターヴェルの悲劇- F・W・クロフツ | 2018/10/08 14:28 |
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「嵐が丘」を思わせるヨークシャーの荒野(ムーア)に建つスターヴェル邸で強盗放火三重殺人。第一容疑者(ホンボシ)は被害者の一人でもあり悪評芬芬の使用人。ところがこやつはぐんぐんの体で物語の中に生き還る。挙句の果て’実は生きてんじゃね?’との疑惑にフレンチも照準を合わせるが。。。 クリスティ的人間関係煙幕を俗物系ならではの渦へ巻き込み返した、これぞ心理的物理トリックスプラッシュ全開の眩しさ!真犯目星が狂っていたからこその結末意外性と意外な冒険アクション展開も見逃せない、が、そこが同時に本作の弱点を晒しちゃってるのも確か。こりゃ諸刃の剣だ。 とは言え全体通してたいへん面白い本なんだぜ。’指輪が降って来た’エピソードとミッチェル主席の粋なアレも忘れ難い。 やっと思い出して取ってつけたかのようなラスト一文さえ心地よし。もう少しで8点行った(7.4超)。惜しい。 或る場面でスコッチソーダをオーダするフレンチに、俺も乾杯だ!
創元推理文庫巻末の、旧いクロフツ鼎談(河太郎先生登場)&エッセーは良いね。 |
No.16 | 6点 | マギル卿最後の旅- F・W・クロフツ | 2017/07/11 23:07 |
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なんと、この小説にはハーバート ブリーンが登場します。 それと、どうしても少年隊の『仮面舞踏会』を思い出してしまう名前の人物が。。 さてベルファスト出身ロンドン在住の老実業家は、故郷である出張先の北アイルランドで行方を失い、やがて遺体で見つかります。容疑者と目されたのは息子と甥。被害者は繊維関係の特許と莫大な財産に繋がる画期的技術文書を携行していたと目されており。。。 海路陸路の旅情は沁みるが、他は小味な長篇。犯人糾弾とアリバイ粉砕の併走と思いきや、、意外な非犯人?? ドンデンまで行かないトンテン返しの様な奇妙な味わい深さがある。ソウルファンとして“ウィガン通過”シーンはちょぃと萌えました。
お喋りは喉の乾くものなのだから、何か舌を滑らかにしてくれるものを。。 ←気に入ったフレーズ |
No.15 | 7点 | チョールフォント荘の恐怖- F・W・クロフツ | 2016/10/25 01:06 |
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嗚呼愉しいクロフツ。湧き上がる。。。フレンチの着実な部下指導ぶり、若い部下の優しい切れ者ぶりも善き哉!
さてクロフツの犯人当てだ。推理より捜査過程を愉しむ類。勘で攻めたいオイラにはむしろそっちが歓迎。おいおい本作、実はアリバイ崩し超絶応用編だったりする(交通機関は絡みませんが)。。? おっと超絶は言いすぎか。別にいいけどキャリー・アンダーウッドっていうおばさんが出て来たよ。 最後まで面白いお話だ! 鮎川ファンに薦めたい! |
No.14 | 5点 | フレンチ警部とチェインの謎- F・W・クロフツ | 2016/09/30 00:25 |
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軽い冒険ミステリ。ヴィジュアル的に魅力ある暗号の図が記憶に鮮やか。それくらいかな。 |
No.13 | 8点 | 英仏海峡の謎- F・W・クロフツ | 2016/06/28 18:28 |
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こんなご時勢、海峡を挟んで英仏両警察の友情物語をじっくり味わうのも乙だ。
滑り出しから最高品質の抑制あるスリル。早くも胃の辺りがゾワゾワするあからさまな疑いと、目を疑うキラメキへの期待。仮にヒネリの浅い結末でもそれなりに満足させてもらえそうな予感さえ溢れ出る。 ウェールズはスウォンジーのハウエル署長、最高だ。彼の描写に続くノールズの知識持ちぶり暴露も最高にリフレッシング!クェイル船長も素敵さ、アイウィルキッシュー! 最終コースに至って俄然切実さが屹立する証人達の描写の全てがジャスト・ヴィヴィッド!!鮎川さんは実際やはり最高の手本にしたんだろうなあと腹落ち実感。そして最初に来た逮捕のタイミングのキラメキ!くっそう、誰が本命本ボシなのやら終盤よいとこまで来てさっぱり五里霧中の四面楚歌のビーフカレーメンチカツやなぃか、まして真相ザ・ホール・バディなど見えん、楽し過ぎるぜ人生のくせにこの野郎!フリーマンが如何にしてスリルや心臓直撃と言った光沢あるポイントでエラリーやジョンはもとよりアガサまでばっさり凌駕してやろうと意気込んだか、そのアイディア結着の脳髄を探る思いだ。土壇場前に来て容疑者レイモンドの的確精妙な、冷静保身を射程に賭けたかの推理絵巻。それから更にまだ幾悶着越えて。。。リアリティ有るどんでん返しの閃きが、そこにはあった! 或る単純な幾何学計算の魅惑! 今度こそ犯人をこいつと絞って良いのか、まだもう一段来るのか。。ラストラップ前から、会話も地の文も徹底した逆説表現にガッチリ掴まれた信頼と友情の暖色タペストリーを繕い始めた。まるで夕陽だぜ。。。。最後の一文が某ハードボイルド著名作そっくりなのは笑った。 海洋活劇でも経済サスペンスでもないが、その二つを背後に匂わせた甲斐は充分にある本格推理「アリバイ破り<<<犯人捜し」警察小説。鮎川好きには悪くない。 そうそう、本作には「ポンスン事件」のタナー警部も結構な役どころ(フレンチの同僚)で登場しますよ! |
No.12 | 6点 | クロフツ短編集1- F・W・クロフツ | 2016/03/25 02:12 |
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抒情と言ったら大げさ、薄っすら漂う雰囲気が魅力的。そこに倒叙ミステリクイズ的タイムリミット感に後押しされたスリルが噛み合い、通常の短篇集には見られない密かな愉しみを撒き散らす。言ってみりゃきれいな推理クイズ本。シムノン「13の秘密」に通ずる良さがあります。原題’Many a Slip(失敗いっぱい)’なる本国英国での企画短篇集。
床板上の殺人 /上げ潮 /自署 /シャンピニオン・パイ /スーツケース /薬壜 /写真 /ウォータールー、八時十二分発 /冷たい急流 /人道橋 /四時のお茶 /新式セメント /最上階 /フロントガラスこわし /山上の岩 /かくれた目撃者 /ブーメラン /アスピリン /ビング兄弟 /かもめ岩 /無人塔 (創元推理文庫) 真相が明かされてみれば本当にちょっとした、常識の延長の様な解決の話が目立つが、そんな日常感さえ愛おしく味わえる対象になっているのはやはり作者の誠実にして端正な筆運びに依るもの。わたしは最後の二篇「かもめ岩」「無人塔」がその犯罪舞台のうら寂しい仄暗い口数の少ないムードも手伝ってか、特に印象深い。そんな二篇で〆るのがいい。 こういう本こそ何度も読み返しちゃうんだよな。。 |
No.11 | 6点 | 製材所の秘密- F・W・クロフツ | 2015/12/03 07:06 |
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むかし実家の近所に製材所があって、この題名には萌えたもんだ。
後年のフレンチもの「紫の鎌」にも通ずる”何をしているんでしょうか?”の謎を追うストーリー。やってる悪事の内容とトリックは蓋を開けてみると(文字通り?なんちゃって)単純至極だがなかなか強力なワンパンチ。しかし安易に推理クイズ市場に流れそうな超シンプルさ加減ではある。 探偵役が死んで次の人にバトンタッチしたり、なかなか命を賭けた展開。 みんな、ナンバープレートはむやみに付け替えないようにしようぜ! |
No.10 | 7点 | フレンチ警部最大の事件- F・W・クロフツ | 2015/11/30 10:56 |
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存外ヒューモーミスタリィの手触り。フレンチ初登場シーンもそんな所。でもコンスタントにオモロなわけじゃなくて、時折思い出したようにくクスクス笑いを誘うほどの奥ゆかしさが心地よい。中盤に至り 読者としてもフレンチ警部としてもワクワクする展開大滑空。X夫人と来ますか。。冒険の果て、物語の思慮ある終わらせ方は心に残る。趣深く色褪せた古典名作だ。 【さてここからネタバレ】この小説、アリバイトリックめいたものはあくまでダミーなんですよね、それでも旅情たっぷりのアリバイ捜査劇が物語興味の重要な根幹を成しているという軽い騙し絵構造がニクいですよ。二人七役(という数え方でいいのか?)トリックもちょっとバタバタですが悪くありません。奇妙な帳簿に見せ掛けた暗号とその解読過程も興味津々です。 |
No.9 | 7点 | フローテ公園の殺人- F・W・クロフツ | 2015/09/26 01:42 |
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心地よい退屈も時折入りつつ愉しい読書。上質の倦怠は歓迎だ。6点本の典型だなと安心していつもよりゆっくり読んでいたら、まさかの反転にやられた! 最後の数ページで1点加算! 意外にも犯人が意外な人物で。。
捜査途上の描写が、まるで(作者なのに)事件の真相を知る由も無い人が書いているかの様に無色透明ニュートラル、まるで湧き水か甲類焼酎の様(詰まらないのではない)。その独特の静謐感には打たれます(けっこう動きの激しい物語なのに)。 創元推理文庫『名著復活』(いい言葉!)に選ばれただけの価値はまず有り。 |
No.8 | 4点 | 二重の悲劇- F・W・クロフツ | 2015/08/28 18:03 |
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中学の頃、母または父からもらった創元推理文庫で読んだ何冊かの中の一つ。
どう面白いのか理解出来ませんでした。。大人の倒叙ミステリの雰囲気はなんとなく味わえたが。。 今読んでもあまり面白くないと踏んで、この点数。 ごめんねフリーマン。 |
No.7 | 4点 | クロイドン発12時30分- F・W・クロフツ | 2015/08/28 17:51 |
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小学生の時、いかにも意味ありげな題名に惹かれてこども向け翻訳を読んだんだけど(そんなのが図書館に置いてあったんだなあ、としみじみ思う)渋過ぎたのか馴染めず、のめり込めず。
高校生の時だったか、既に「樽」に大感動している後、大叔父からもらった古い創元推理文庫で「今なら面白いかも?」と期待して再読。いまひとつ引き込まれず。いったい何処がどう合わないのか。単にスリルに欠けるだけなのか。分からない。。 |
No.6 | 10点 | 樽- F・W・クロフツ | 2015/07/08 08:02 |
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とてもとても若い頃、玉砕承知で手に取りました。クロフツでは4冊目でした。
ところがですね、読み始めてみると豈図らんや、このさっぱり子供向きでなさそうな地道な捜査の物語が面白くて面白くて、予想外のスピードで読み切ってしまった次第! 捜査は地味でも犯罪そのものは派手(特にそれが樽の中から露見する冒頭シーン)で動きもダイナミックでスケール大きい、というのが助けになったのかな。 とても頭のいい樽の動かし方はクールなパズルの様でありながらそこには必ず海の匂い、鉄と油の匂い、微かながら屍体の匂い、、が生々しく付き纏うのが堪らない。やっぱり小説描写が上手いんだな。 名作中の名作と思いますよ。「黒いトランク」という忘れ形見も残したね。きっと再読するだろうなあ。 |
No.5 | 7点 | ポンスン事件- F・W・クロフツ | 2015/06/17 10:56 |
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「ペトロフ」で鮎川哲也がもう一ひねりしたくなった気持ちもよく分かる、既に一ひねり施された、最後何とも不思議な気持ちになるアリバイトリック巧篇。
(「三つの棺」を敢えて密室物と呼ぶ流儀で「ポンスン」は単純にアリバイ物と呼んでおく) 「樽」に尻込み中の方も、こっちは読んでおくといいですよ。 |