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[ 本格 ]
赤い館の秘密
別題『赤い家の秘密』『赤色館の秘密』『赤屋敷殺人事件』
A・A・ミルン 出版月: 1955年08月 平均: 5.80点 書評数: 25件

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早川書房
1955年08月

新潮社
1956年01月

新潮社
1958年01月

東京創元社
1959年05月


1959年05月

中央公論社
1960年01月

角川書店
1962年04月

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1975年01月

集英社
1998年12月

東京創元社
2019年03月

論創社
2022年12月

No.25 7点 ミステリ初心者 2024/03/08 19:16
ネタバレをしております。

 乱歩ベストに入っている作品だし、くまのプーさんの作者の推理小説ということで、存在は知っておりましたが古典なせいか食わず嫌いをしていた作品でしたw 
 しかし、非常に雰囲気がよく、キャラクターもいい意味で嫌味がなく、古典にもかかわらず極めて読みやすい作品でした。特にギリンガムとベヴァリーの探偵とワトソン役は、どこか楽しみながら推理をしているのが良かったです。秘密の通路を探すことや、ケイリーにバレないように芝居をうったりするところはドキドキわくわくとしますねw
 ただ、館の図は挿入されておらず、トリックにはそれほど重要でないとしても幾らかの読みづらさを感じてしまいました;

 推理小説部分については、さすがにメイントリックは今ではやや古さを感じましたねw 普段、あまり真相を当てる事のできない私でさえ、序盤でトリックに気づきました。それを示唆する伏線をすべて回収したわけではありませんが。同じようなトリックの作品はちょくちょく見ますしね。
 ただ、トリックがみえみえだったから価値がないというわけではなく、やっぱり面白く感じました。似たような作品が後世に多く出たのなら、それは優れている証じゃないかとおもいますw

 不満点を挙げるとすれば、やっぱりコレ系トリックはちょっと現実的に難しいのかなっていつも思ってしまいますよねw 誰もロバートを見たことがないですし、死体となったマークを見たのも限られた人物ではありますが…。
 あと、鋤と馬亭にいったベヴァリーの集めた情報の「女が飲みに来ていた」というくだりは余分なミスリードだったかもしれませんw あそこで私はとんでもない勘違いをしたかと思いましたw まあ作者の術中にハマっただけですがw

 総じて、雰囲気が良く読みやすく、かつ本格度の高い素晴らしい作品でした。現在の読者が読むとトリックがバレるのは古典あるあるなので差し引いて考えた方が良いですねw 甘めですが7点で。

No.24 6点 E-BANKER 2024/02/10 12:39
ミステリーファンにはもはやお馴染みのクラシック作品。
「くまのプーさん」(←中国なら消されてるかもしれんな)の作者ミルンの書いた唯一のミステリー(ただし「四日間の不思議」は本サイトで書評済だが)。
1921年の発表作品。

~田舎の名士の屋敷。「赤い館」で一発の銃声が轟いた。死んだのは十五年ぶりに館の主マークを訪ねてきた兄ロバート。発見したのはマークの従弟と館に滞在中の友人に会いに来た青年ギリンガムだった。発見時の状況からマークに殺人の疑いがかかるが、肝心のマークは行方不明。興味を惹かれたギリンガムは、友人をワトスン役に事件を調べ始める。英国の劇作家ミルンが書いた長編探偵小説~

“今さら”である。
確か小学生の頃にジュブナイル版で読んだ覚えはあるんだけど、まさかこのタイミングで手に取るとは思わなかった。ただ、これは予想外に引き込まれた。
別にたいしたトリックや緻密なプロットがあるわけではない。フーダニットも最初からほぼ自明。例の「秘密の通路」にしたって、それほどの目を見張るような仕掛けがあるわけではない。
そんな本作に惹かれてしまう自分・・・なぜか?

ひとつは探偵役となるギリンガムの魅力かな。嫌味のまったくない、まっすぐな性格の英国紳士。これが逆に新鮮。最近は何かしら妙なキャラ付けがしてあることが殆どだからねぇ
もうひとつ挙げるとしたら、作品世界の雰囲気かなあー。
他の皆さんは「あまりに牧歌的で冗長すぎる」とのご意見が多いけど、こういう典型的な田園ミステリー、何のてらいもないこの雰囲気を楽しめたのも確か。
そう、新鮮だったのだと思う。

「本作はこういう特殊な設定、環境下のお話です」・・・どんどん複雑化していくミステリー。それはそれでもちろんいいのだけれど、たまにはこういうシンプルで雑味のないミステリーも味わうべき。
そういうことにしておきたい。
(ただ、メインの大仕掛けはいくらこの時代とはいっても、警察も雑すぎだろ!)

No.23 5点 ◇・・ 2022/09/10 06:20
全編に漂う呑気さ、殺人事件が起き館の主人が失踪しているのに、全く緊張感のない面々。探偵役のアントニー・ギリンガムとワトソン役のビル・べヴリーの漫才のような掛け合い。ユーモラスな各登場人物の言動・行動。
プロットが雑でトリックに無理がある。本作はお伽噺として読むのがベスト。

No.22 5点 クリスティ再読 2022/01/22 17:42
そろそろ赤とか黄とかやらなきゃね、とも思うんだ。やっぱりここらへんに手が伸びにくいのは、子供の頃にジュブナイルで読んでいて、その後大人向けで読み直したかどうか今一つはっきりしないし、退屈だった印象があることにも原因がある気がする。大人向けで読み直したことがないならば、それなりに「昔と今とどう反応が違うか?」と割り切って楽しみにはなるんだけどね。
だから読む前から犯人もトリックも先刻承知、という前提。本作だとさらにチャンドラーの「簡単な殺人芸術」がネタバレして批判しているのも当然、読んでいる。さらに予備知識がなくても当然で推理できるくらいの内容。...なかなか読む条件としては、キビシい。でも頑張ろう(苦笑)

としてみると、要するに本作、コージーの先駆的な作品、でもいいんじゃないかしら、ギリンガム君、鋭いというよりもイイ奴じゃん。全体的な雰囲気がほんわかしていて、ファンタジックなオモムキもある。ペヴリー君ともナイスなコンビで、二人で一生懸命「ホームズごっこ」しているのが微笑ましい。地下トンネルの話とか、サスペンス出そうという気がないみたいだしね。モールス信号だってマンガみたいな話だし。
で、一種の巻き込まれ型みたいな話なのが、ミステリとしてはちょっとキモかもしれない。実際、パズラーとしてはややアンフェアなのが、逆に味になっているとも感じるんだ。というのは、探偵自身に「直観像」の特殊能力がある件。稀だけどいるんだよね、写真的にシーンを映像記憶できる人。これがうまく推理に噛み合っていて、ちょっとした名場面になっているようにも感じる...「フェア」は全然気にしてないのが20年代。

まあだけどね...全体に冗長。のんびり読むにはいいかもしれないが、だったらコージーに徹して「余計な」描写をガンガン入れた方のが楽しめたかもしれない。似た立場にある作品と比較したら「トレント」の方がおすすめ。

No.21 4点 文生 2021/08/25 20:54
ミステリー黄金期の幕開けを告げる作品の一つですが、今読むとさすがに牧歌的すぎていささか冗長です。開幕早々事件が起きるのはよいのですが、それ以降は素人探偵が同じような議論を繰り返すだけなので飽きてきます。事件は最初の1件だけなのでサスペンスは盛り上がりませんし、肝心のトリックもいまとなってはありきたりです。ウリであるはずのユーモアもいまひとつピンときませんて゜した。結局、古き良き時代の探偵小説の味わいを楽しむだけの作品だといえます。

No.20 8点 弾十六 2019/10/13 22:42
1922年出版。初出Everybody’s 1921-8〜12(5回分載, 題名The Red House Murder) この雑誌は英国小説を多く載せてる感じの米国誌。当時25セント、180ページ。(FictionMags Index調べ。FMIはこの頃の英国誌情報が欠けがちなので、英国誌連載が先の可能性も大いにあり。) 創元文庫の新訳で読了。翻訳は上品で良い感じ。WebにあるFolio Society “The Red House Mystery”のページには斜めで見ずらい写真ですが「赤い館」の1階平面図があります。(中央の階段があるHall左上がOffice、その下がBilliard-Room。Hall右下がLibrary、その上左側がDrawing-Room、右側がDining-Room。) 創元旧訳の「赤い館見取図」(検索条件: japaneseclass 赤い館 創元)と位置関係は概ね合っていますが、構造が微妙に違ってます。(多分、両方とも小説内の描写に基づく独自の再構成。流石にFolio Society版の方が現実の英国建築に近い印象。)
タイトルがRed Houseなので、読み始めはJimi Hendrixの傑作ブルースが脳内で炸裂してました。BGMには全く相応しくない曲ですが。
実に探偵小説らしい探偵小説。もしも素人が実際の事件に立ち合ったら… という状況にふさわしい展開をとても現実的に(そしてユーモラスに)描いています。和やかな会話が良いですね。暖かい芝生に寝転んでるような幸せな気持ち。探偵小説について私が言いたいことは作者の再版時の序文(1926, 何故か巻末に収録。)に全て書き尽くされています。
この小説を読んでいて気づいたのですがInquest(検死審問)という手続きは、随分と変死事件の「見える化」に貢献している感じです。こーゆー住民に情報公開するプロセスがあってこそ、民主主義(少数の専門家が決めるのではなく民衆が知恵を持ち寄って決定する)が健全に成りたつのだ、と珍しく真面目な感想を持ちました。
銃の詳しい描写がないことが唯一の不満。(←あんただけです。)
有名なイチャモンについては『チャンドラー短編全集4』に記載予定。(まーチャンドラーさんもこの頃[1944-1950]にはいろいろ溜まってたんでしょうね。)
以下トリビア。ページ数はkindle版のもの。
作中時間は、戦争(WWI)の影が全くなく、登場人物の話題にも(数年前の話にすら)一切のぼらないことから、戦前の話だと思われます。それと矛盾する要素も見つかりません。年代のヒントは唯一、曜日が記されてる「十二月 、水曜日(Wednesday, Decem)」(p3473/4200) これは去年のクリスマスにやった素人劇のポスター(ところどころ破れてる)に書いてあった日付。ということは前年12月25日は水曜日?戦前で探すと1912年12月25日が水曜日。ただし「去年のクリスマス(Last Christmas)」の上演がぴったり25日だったのかは不確実。(Christmastideの意味ならたっぷり12日間の可能性すらあり。) ミルン30歳(本作の探偵の年齢)は1912年。ならばこのくらいで妥当かも。以上から事件発生は1913年8月(p117)の火曜日(p3194)。なお、この日は「スタントンで市の立つ日(p3425)」と書かれてますがStantonは架空の町なので特定には役立ちません。
現在価値への換算は英国消費者物価指数基準(1913/2019)で114.43倍、1ポンド=15465円。
献辞はお父さんに。バークリー『レイトン・コート』(1925)と書きぶりが似ています。ミルンさんの本作への序文(1926)には「とある熱烈な探偵小説ファンには 、本書はほぼ理想的な探偵小説だとみなしてもらえるにちがいないと思っている… 本書を書いているあいだは絶えず、彼の願望を考慮し、それを尊重した … なのに、こうして本になっても、彼には決して読んでもらえない探偵小説なのだと思うと、じつに寂しい。」と書いていて、ああ、お父さんはこの本の出版を見ずに亡くなったんだな、と早合点したら、このファンとは「顔を合わせたことはない」と書いてあり、ミルンの父John Vine Milne(1845-1932)は出版時に存命です。この「熱心な探偵小説ファン」とは誰なんだろう… (Gillingham?序文の原文は残念ながら未入手。)
p63/4200 客間メイド(parlour-maid)、料理人兼家政婦(cook-housekeeper, p71)、台所メイド(kitchen-maid,p793)、ハウスメイド(housemaid,p812): この頃の英国小説には使用人が沢山出てくるのですが、その中にも役割分担と上下関係が決まっていて、housekeeperはmaidの総括。parlour-maid, housemaid & kitchen-maid は同格、皆19くらいの若い娘が多い。parlour-maidは屋敷の共用空間(sitting, drawing, dining room)担当。housemaidは汎用。kitchen-maidはcookの補助。(The Complete, Annotated Whose Body? ed. by Bill Peschel 2016による)
p108 郵便貯金が15ポンドある(fifteen pounds in the post-office savings’ bank): 23万円円。パーラーメイドの恋人の蓄え。
p178 ファイヴスという球技(playing fives): 詳細は英語wiki “Fives”。スカッシュ風の壁打ち球技らしい。
p205 新しい靴を買うのに、五シリングがほしくて: 3866円。パーラーメイドが欲しい額。
p308「なんと!(Good God!)」… 「失礼しました、ミセス・キャラダイン、ミス・ノリス 。すまない、ベティ (I beg your pardon, Miss Norris. Sorry, Betty.)」マークはみだりに神の名を口にしたことを詫びた: そこに男たちも居るけど、謝ったのは女性に対してだけ。エチケットは難しいですね。なお翻訳ではキャラダイン夫人も同席してるけど、私の参照した数種の版(Gutenberg含む)ではこの場に登場していない。理論上、朝食の場に居なきゃ変なので訳者が補正したのか。
p352 海軍によくあるタイプの、きれいに髭をあたった…(a clean-cut, clean-shaven face, of the type usually associated with the Navy): 英国陸軍(British Army)と海軍(Royal Navy)では髭の規則が異なり、陸軍では1916年まで口髭を伸ばすのが義務、海軍ではツルツルかfull beard(口髭から顎髭まで満遍なく覆う)のいずれかしか許されなかったらしい。
p352 年に四百ポンドの収入: 619万円(月収52万)。たいした収入です。
p406 古い赤煉瓦の建物(the old red-brick front of the house): Red Houseという名の由来。red-light(=whore house)と同じ意味かな?とずっと思ってたけど、今回、良く調べるとそーゆー意味は無いらしい。(JimiのRed Houseもそーゆー意味ではないようです。)
p825 贔屓の作家の作品が掲載されていると雑誌の表紙に謳ってあるうえに 、崖から悪党が落ちている挿絵がついていた… (a magazine... a story by her favourite author was advertised on the cover, with a picture of the villain falling over the cliff.): ミルン関係の楽屋オチでPunch?と思ったら、そんなイラストの表紙じゃないですね。1913年でこーゆー表紙の小説雑誌は、ああ、これも楽屋オチのEverybody’s誌ですね。(もちろん他にもPearson’s誌とかStory-Teller誌とかStrand誌米国版とか色々あります…)
p912 犯罪を追う猟犬 、私立探偵(our own private sleuthhound): our ownの意味が良く分かりません。ヒーローものでよく言う「ぼくらの味方」の「ぼくらの」の意味?
p1088 ギリンガムはベヴァリーの腕を取り(Antony took hold of Bill’s arm): ヴィクトリア朝風に腕を組んだのかな?
p1159 ボウリング・グリーン(bowling-green): 日本で良くやるボウリングではなくローンボウルズやクローケーをやるための芝生コート。
p1331 いっしょにやるかい、ワトスン?(Do You Follow Me, Watson?): ホームズのセリフ、と書いてますが、全く同じのは無し。シャーロック全集でホームズがワトスンにfollow meと言ってるのはこれだけ。“... at the same time, raise the cry of fire. You quite follow me?” “Entirely.” (A Scandal in Bohemia) 延原訳だと「わかったね?」です。本書のここの意味も、わかったね? わかるかい?のほうが相応しい。
p1339 階段の段数(number of steps): 17段。A Scandal in Bohemia冒頭からの引用。この作品で言及されるのはホームズとワトスンねたばかりです。
p1891「じつをいうと[彼女は]いま、あの、へんてこりんな作家にぞっこんなんだ。なんて名前だっけ…(As a matter of fact, [she] happens to be jolly keen on—what’s the beggar’s name?)」 「いや、気にしないでくれたまえ。いまの話で充分だ(Never mind his name. You have said quite enough)」: この作家って自分のこと? (追記2019-10-14: Jolly BeggarsでRobert Burnsのことか?詩人の話題だしね。)
p1899『代々の宮廷の思い出』Memories of Many Courts: なにかの本。調べつかず。
p2139 取りはずされたカラーが一本(There was one collar): シャツの襟が外せる仕組み。カラーというと学生服の詰襟のセルロイド?カラーしか経験ないなぁ。
p2623 ふつう、午前中に、殿がたが婚約者を訪なうなどということはありえません(Not in the morning, no.): エチケットは難しいですね。
p2797 ヒッポドローム演芸場(Hippodrome): The name was used for many different theatres and music halls, of which the London Hippodrome is one of only a few survivors. (...) The London Hippodrome was opened in 1900. (Wiki)
p3620 週給二ポンド(two pounds a week): 30929円(月収13万)。グラマースクールを出た“a London office”の事務員の給与。

No.19 5点 虫暮部 2019/05/07 11:28
 好感の持てる筆致でテンポ良く進む、のだが何だか薄味でいまひとつ乗り切れなかった。しかし真相には膝を打った。館の部屋の配置はしっかりイメージして読むべきだったか……。

No.18 6点 ボナンザ 2019/04/15 20:53
単純ながらツボを押さえた作品。ミルンの推理小説という点だけが有名になってしまったが、乱歩が黄金期のベストテンに入れただけのことはあると思う。

No.17 7点 ロマン 2015/10/20 22:15
暖かみのあるテンポのよい会話と分かりやすい背景や状況の表現によって、作品全体が殺人事件にも関わらずユーモアに包まれている。この作品が名作と云われる理由は、殺害された遺体のトリックを初めて創作した事でしょう。今では何と言う事もないトリックと思うが、それだけにたくさんの作品に影響を与えたと言える。そして素人コンビのやり取りが、陰惨さを感じさせないメルヘンチックな雰囲気をかもし出している。児童文学を書くのは高いセンスを必用とするのだと認識した。

No.16 5点 2015/10/05 13:45
『くまのプーさん』の作者が書いたミステリーということで有名な作品です。

注目すべき点は、ギリンガムとベヴリーのコンビによる、小説の全体に流れる穏やかな雰囲気でしょう。それに尽きます。
ようするに、サスペンスといってもハラハラするようなものはなく、謎解きミステリーとしても今となれば、褒めるべきところはほとんどない推理小説といえるでしょう。
とはいえ、探偵や警察の立場で誰が殺したのかということは考えずに、あくまでも小説の読者の立場で、館の主であるマークとはどんな人物なのか、そして彼はどこへ消えたのか、ただそれだけに着目して読めば、ミステリーとしての価値を見出せるかもしれません。

ところで、作者がこの作品を書いた理由は、ホームズへの対抗心からなのか、ホームズへの敬意からなのか、あるいはたんにユーモアで茶化したかっただけなのか、いずれだったのでしょうか。

No.15 6点 nukkam 2015/10/03 23:58
(ネタバレなしです) 童話の「クマのプーさん」シリーズで有名な英国のアラン・アレクサンダー・ミルン(1882-1956)が1921年に書いた唯一の長編本格派推理小説(単行本化は1922年)として知られるのが本書です(ちなみに本書が書かれた時点ではまだ「クマのプーさん」は書かれていませんが)。ミルン自身が後年の自伝(1939年)の中で「多くの作家たちが多くのすぐれた探偵小説を書いている近頃では人目にもつかない作品だが、当時はそれほど競争作家がいなかったので驚くほど成功した」と振り返っています。確かにトリックは単純だし、犯人の正体も見え見えです。しかしそういった弱点を補って余りある価値があります。それはギリンガムとベヴァリーのコンビによる探偵活動です。良きかな友情、良きかな探偵、これだけ探偵活動が楽しく読める作品は今なお貴重です。ジョン・ディクスン・カーやクレイグ・ライスのように大仰な冗談やどたばた劇があるわけではないのに何とも微笑ましい雰囲気に溢れてます。こういうのを上質なユーモアというのではないでしょうか。謎づくりや謎解きの上手さでは同時代のアガサ・クリスティーに到底及びませんが、本書には本書の良さがあります。

No.14 6点 蟷螂の斧 2015/06/06 20:56
1921年の作品なので、トリックの古さ云々より、私的には先駆的であるかどうかの方に興味があります。トリックは、黄金期の前(1890年代~1910年代)の短篇時代の作品にあるのかもしれません。「黄色い部屋の謎」のガストン・ルルー氏、「不連続殺人事件」の坂口安吾氏に引き続く、”まさか、この作家がミステリーを?”の1冊でした。ワトソン役のビルの存在が際立っていました。

No.13 9点 斎藤警部 2015/06/02 11:30
この可愛らしさこそかけがえの無いもの。殺人起こしといて可愛いもあったものではない筈なんですが、やっぱりどういうわけだか可愛い。証人や被害者でプーさんやイーヨーが登場するわけでもないのに、全体を包むムードはやはりどこか可愛いらしいものです。可愛さ一点だけでなく、全体的にとにかく明るくもスリリングな雰囲気が素晴らしい。

真犯人(と事の真相)は早々に見えてしまいましたが、物語への興味はまったく薄れず、いつか終わってしまうのを惜しむ様に最後まで読みました。 大叔父から生前いただいた本で読みました。

クラシックなネタではありますが、ストーリーの根幹に関わる大きな心理的トリックを使っています。そこがまた大きな魅力です。

No.12 5点 バード 2013/10/06 22:55
全体的に元々ユーモアを書いてた作者の良さがでていて物語が明るい調子なのはよかった、こういうミステリも嫌いじゃない。

しかしミステリの核であるトリックには不満がある。やはりマークの死体をロバートと誤認させるのには現代人から見れば無理があるすり替えである。さらにキリンガムが真相を見破る理由が弱いというか薄いというかで読者からしてみれば唐突な印象がある(相当にホームズを意識しているようなのでその影響も大きかったのかもしれない)
と、このように気になる点はあるが探偵・ワトスン役共にいいキャラでミステリの一定の水準は満たしていると思えるので総合的には中々面白かった。

No.11 6点 TON2 2012/12/10 17:00
集英社文庫「乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10⑧」
 「クマのプーさん」の作者が、生涯ただ1冊書いた長編ミステリーです。
 ホームズがまだ書き継がれていた頃の作品で、トリックは途中で分かりましたが、全編にユーモアがあり、軽い気持ちで読める作品です。

No.10 7点 makomako 2011/11/06 13:56
 すごいトリックやおどろおどろしい雰囲気もなく、いたって平凡といえば平凡。連続殺人などは起きず、一人の殺人事件を解決していく物語。でも翻訳物独特の変な人物ばかり登場ということはなく、むしろ登場人物の巧妙な会話や雰囲気を楽しむといった嗜好となっていることは私にとっては好ましいことでした。
 ずいぶん昔に読んだときはやっぱり変なやつが登場する違和感のある小説といった感じを受けたことを思い出しますが、最近は日本のミステリーでも変な人間がやたら出るし、文体も翻訳文のようなものも結構あるので慣れてきたのかもしれません。

No.9 7点 isurrender 2011/09/22 22:47
一番のメイントリックは、今となってはありふれたトリックで見破る読者も多いだろう
しかし、探偵の推理は論理的で高水準にあると思うし、探偵役とワトソン役の掛け合いもなかなかユーモアがあって面白い
そのあたりはさすが「プーさん」の作者といったところか

No.8 1点 toyotama 2010/10/19 17:09
子供のころ、子供向けに読んだとき、かなりワクワクした記憶があるんですが、大人になって文庫で読むとまったくつまらない。
なんとなく子供にもわかるような原作を大人向けに翻訳したような気がして、ちょっと合いませんでした。

No.7 4点 kanamori 2010/07/22 21:36
のんびりした英国の田舎の雰囲気が漂う古典ミステリ。
トリック、プロットとも時代を感じさせる、もはや書誌的な価値しか見いだせない作品だと思います。

No.6 6点 測量ボ-イ 2010/07/07 18:14
童話作家として有名な作者が結唯一書いた推理小説ですが、
有名古典作品です。
驚天動地のトリック、意外性、どんでん返しがある訳では
ありませんが、普通に楽しめるミステリかと思います。


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A・A・ミルン
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