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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 烈風 競馬シリーズ |
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ディック・フランシス | 出版月: 2000年07月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 2000年07月 |
早川書房 2004年11月 |
No.1 | 5点 | 雪 | 2019/05/09 01:29 |
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イギリスBBCの気象予報士ペリイ・ステュアートは、同僚クリス・アイアンサイド所有の低翼機チェロキイに便乗し、有力馬主キャスパー・ハーヴェイの昼食会に招かれる。招待客たちに紹介され会自体は無事に終わるが、二人に見せようと自慢の馬房を開いたハーヴェイの顔は、誇りから驚愕に変わった。オークス本命の牝馬は膝をついて呻いており、苦痛のほどは明らかだった。原因はまったく不明。当然、金曜日のレースには出られなかった。
それから三週間後、ペリイはフロリダ滞在中のクリスに誘われる。カリブ海で発生したハリケーン"オウディン"の中を飛ばないかというのだ。招待客の一人、ロビンとエヴリンのダーシイ夫妻がスポンサーとなり、最新機器が搭載された双発プロペラ機パイパーを提供するという。二人にとって願ってもないチャンスだった。 「行かないほうがいいわ、ペリイ。とても悪い予感がするの」 霊感を持つ祖母の警告を無視し、彼はクリスの待つアメリカに向かう。だがサンド・ダラー・ビーチのダーシイ邸で彼を迎えたのは、違和感の数々だった。 過剰な警備、告げられぬ飛行計画、無線連絡の遮断―― そしてオウディンの直撃する、牛と鳥しかいない長さ一マイルほどの孤島トロックスへの事前の着陸。いったい、このフライトの真の目的は何なのか? ペリイは見逃せぬ機会を前にあえて目を瞑り、クリスと共に"オウディン"を目指し飛び立つが・・・ 1999年発表のシリーズ第38作。とはいえ競馬要素の薄いいくつかの作品の一つで、馬の病気も意図的なものではありません。トロックスでロビンの依頼を果たした二人は意図をいぶかしみながらもそのまま離陸。無事ハリケーンの目に侵入しますが、脱出の際二次渦に巻き込まれ機はカリブに水面着陸。クリスと離れ離れになったペリイは再びトロックス島に打ち上げられます。 数日のサバイバルの後、彼がハリケーンに破壊され露出した隠し金庫を開けた事から一気にヤバネタに突入。ラスト付近にサプライズは用意されていますが、あまりにヤバ過ぎて、ストーリー半ばにも達しないこの時点で大枠がほぼ確定してしまうのがいただけないところ。 紆余曲折の後、扱いは悪いもののとにかく救出されたペリイはBBCに復帰。イングランドでフロリダの事件との関連を探りますが、彼とクリスの命を狙った再度の飛行機事故後に事態は急変。併せて体調を悪化させた主人公ペリイが、新種の結核菌に感染したことが明らかになります。この部分はいらなかったですね。ヤバネタ一本で十分です。 それもあってか焦点のぼやけた印象の作品。悪役組も統制が取れておらず、意味ありげな描写ののちそのまま放置されたキャラも数人。ラストのフロリダでの対決もアクション味は薄く、メイン悪役も考えなしの浅墓さが目立ちます。次作「勝利」では幾分持ち直しますが、本作はあまりお薦めできません。採点は5点寄りの4.5点。 |