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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 騎乗 競馬シリーズ |
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ディック・フランシス | 出版月: 1998年10月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1998年10月 |
早川書房 2003年01月 |
No.1 | 6点 | 雪 | 2018/11/21 11:17 |
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十七歳の少年ベネディクト・ジュリアードは、麻薬の常用を理由にアマチュア騎手から降された。身に覚えのない疑惑に彼は抗議するが、調教師ダリッジは取り合わず、ただ窓の外の車に乗るよう告げる。行き先も知れぬまま到着したブライトン海岸のホテルには、父ジョージが待っていた。
ザ・シティの成功者であるジョージは、悲願である政界進出のチャンスを得たことをベネディクトに伝える。そして彼に、満十八歳になるまでの三週間の間、フープウェスタン選挙区の下院議員選挙を共に闘ってくれるよう要請するのだった。 競馬シリーズ第36作。フランシス作品初の未成年主人公。といってもいつもとさほど差異はなく、主人公がやや直情的で純粋さを露にすることと、ストーリーが一本道なことくらいでしょうか。浮ついた部分が皆無なので、この年頃にしてはかなり大人っぽいです。 全体の2/3が選挙戦で、残る1/3がダウニング街10番地の首相の座を争うジョージと、選挙戦後のベネディクトの成長が描かれます。前半は半ばジュブナイル、後半はいつものフランシス。 選挙戦の中でベネディクトとジョージは銃撃・車への細工・放火と三度に渡って命を狙われ、これが後半の展開に繋がっていきます。ベネディクトは学生として得た知識から問題の銃弾を発見し、自動車事故を未然に防ぐのですが、この部分は射撃の名手である息子フェリックスがモデルなのではと思われます(冒頭の献辞は十八歳になる孫のマシュウに捧げられていますが)。 前半の選挙戦部分はかなり面白い。特に候補に選ばれなかった前議員の妻のかたくなな心を、ベネディクトが解きほぐすシーンは印象に残りました。後はぎごちない親子関係がしだいに親密なものに変化していく過程でしょうかね。 原題は 10-lb PENALTY(十ポンドのペナルティ)。勝利した馬が次のレースで課せられる最大ハンディキャップ重量を意味します。意訳すると「ギリギリの勝利」。いつもより若干短めですがアクションや乗馬シーンも題材の割にはそこそこ多く、フランシスが楽しみながら執筆した作品だと思います。 |