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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 告解 競馬シリーズ |
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ディック・フランシス | 出版月: 1995年10月 | 平均: 4.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1995年10月 |
早川書房 1999年09月 |
No.1 | 4点 | 雪 | 2018/12/18 21:43 |
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「私は・・・彼を殺したことを告白します・・・」「私はナイフをデリイに預けたし、あのコーンウォールの若者を殺し・・・」
26年前に競馬界で起きた自殺事件を題材にした映画『不安定な時代(アンステイブル・タイムズ)』製作中の映画監督、トマス・ライアンは驚愕した。死病を患う旧知の老装蹄師ヴァレンタイン・クラークが、彼を牧師に見立て、突然謝罪の告白を始めたのだ。 必死に告解を請うヴァレンタインに、トマスはラテン語の赦免を与える。彼は微笑み、程無く昏睡状態に陥った。 再び撮影に戻るトマス。やがて老人の死を知った彼は、ヴァレンタインが競馬に関する全ての資料を遺贈したことを知る。だが甥のポールは己の所有権を頑ななまでに主張し、書籍を盗もうとする素振りすら見せるのだった。 映画スタッフの間にも対立が起こり始めた。トマスを敵視する脚本家のハワードはモデル一家の側に立ち、監督を中傷する新聞記事を載せ、さらにそれを映画会社幹部たちに送り付ける。窮地に立たされるトマス。 更にヴァレンタインと同居していた老妹ドロシアがナイフで重傷を負わされ、遺宅が荒らされる。そして問題の書籍は全て持ち去られていた。 『不安定な時代』に全てのキャリアを賭けることとなったトマスは、撮影に平行して自殺事件の謎解きを試みるうちに、やがて取調べを受けた調教師、ジャクスン・ウェルズとヴァレンタインの関係に注目する事になるのだった。 「決着」に続く競馬シリーズ第33作。代表作「利腕」以来一定レベルの作品が続いてきましたが、今回あまり芳しくない。26年前の調教師の妻の縊死を扱う「回想の殺人」形式ですが、この事件の真相そのものがボーダーライン上。予測の為のデータ提示が不十分なので、作品自体が散漫になってしまっています。トマスの罠に嵌って襲撃を行うことで犯人も判明しますが、伏線が軽すぎる上に描写も僅かなので別の人物でも良いようなもの。いくつかのアクションもあまりパッとしません。 主人公が映画撮影に忙しいという設定なので、ヒロインに関しても漠然とした予感程度。盛り上がったのは最初の中傷記事によるダメージを撥ね付ける為、主演男優の否定インタビューを競馬場から生中継で幹部たちに放映するアイデアと、悪印象を持ったエキストラ騎手たちと一緒に、元障害騎手であるトマスが実際に模擬レースを行う場面ですかね。 シリーズでも長めの作品ですが、枚数の割にはぼやけた印象。シッド・ハレー登場の次作「敵手」も疑問符の付く出来栄え。円熟期も終り、この辺りからフランシス後期が始まると思った方が良いかもしれません。 |