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[ 本格 ]
野獣死すべし
ナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ
ニコラス・ブレイク 出版月: 1954年02月 平均: 7.71点 書評数: 14件

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早川書房
1954年02月

早川書房
1973年01月

早川書房
1976年01月

No.14 9点 YMY 2023/11/27 22:29
推理作家フィリクス・レインは最愛の一人息子を轢き逃げで失ってしまう。しかし六カ月にわたる捜査にもかかわらず、警察は犯人の車を発見することが出来なかった。レインは独力で犯人を捜し出し、自らの手で復讐することを決意する。
作品の約三分の一にあたる第一部がレインの日記形式、その後は三人称で語られるという、異色の構成による本格ミステリ。この構成により単なる謎解き小説にとどまらず、心理サスペンスとしても強烈な印象を残す。

No.13 8点 ボナンザ 2023/07/02 16:45
恥ずかしながら初読。流石に噂にたがわぬ傑作。真相は今では驚きはないものの、そこまでのミスリードが実にうまい。

No.12 9点 Kingscorss 2020/11/15 21:35
同名タイトルの日本の小説があるのでもしかしたらこっちが本家で、日本版がオマージュ作品か何かかな?と思ってたんですが、全く違う作品でした… (;´∀`)

日本のやつは復讐モノだとおもいますが、こちらは復讐モノに見せかけた本格ミステリーでした。最初に一人息子をひき逃げされた推理作家の復讐の告白日記みたいなのが半分占めてて、その後は本格謎解きミステリーという変わった構成。法月綸太郎の『頼子のために』と同じ手法ですね。こっちのほうが発表が早いですが。

内容を詳しくは書きませんが、大変面白かったです。もちろん古い作品なので、この手のトリックや構成は手垢にまみれてる気がしますが、気無しで読んでたため最後まで犯人もわからずに、大変楽しんで読めました。作者は有名な桂冠詩人なので文章もうまかったです。

難点を言えば、逆に作者が詩人であるがために、少し気取った文章(英語原文だと特に謙虚に)と取られる傾向があること、変に教養をひけらかすような部分(探偵が初登場時の意味不明な質問の数々)があること、探偵のナイジェル・ストレンジウェイズのキャラクターが少し弱いこと(シリーズ物みたいなのでたまたまこの作品だけかもしれませんが)と完璧ではありません。

とはいえ、『野獣死すべし』という無骨なタイトルから大味な復讐アクション巨編みたいなイメージが先行して読むのをためらっていた(自分もそうです)方、上質な本格ミステリーなので是非読んでみてください!

No.11 5点 クリスティ再読 2019/05/12 18:21
皆さん何か高評価の方が多いようだ...けどねえ、評者は本作悪い意味で心理的、悪い意味で凝りすぎな作品のように感じるな。心理的な手がかり、って意外に逆な説明をされても何となく納得してしまうようなところもあるからね。毒殺のHowが謎のようで謎でないのが、ミステリとしては減点対象なんじゃないかと思う。どうだろうか?
何となく本作あたりのイギリス新本格って、戦後じきくらいに感じがちなんだけど、本作だと1938年だから「ナイルに死す」とか「ユダの窓」くらいの年代の作品なんだよね。これらと比較したら...なんかチマチマしてヘンな方向に凝った作品だと思わないかな。轢き逃げに対する復讐(まあ「そして誰もいなくなった」でも取り上げられているが)という、20世紀的な動機を取り上げながら、意外に内容が古臭い印象だしねえ。新しい要素・古い要素、ミステリ・小説とバランスの悪さみたいなものが目につく。
あと、これは訳なんだけども、子供に「ヴァージルを読ませる」はないでしょうよ。ヴェルギリウスだよね。マトモな古典教養がある作家なんだけども、例の22個の質問もそうだが、こうやってマトモに教養が出てみると、なかなか嫌味なものである。
(あとどうにも気になるので書くが、悪役のラタリーって Rattery で、「野獣」ならぬドブネズミ扱いなんだよね...いくら悪役とはいえ印象よくないな。どうも評者そもそもニコラス・ブレイクとは相性極めて悪そうだ....)

No.10 8点 2018/03/03 23:23
名作とされることも多いわりに、最初読んだ時はそれほどとも思わなかった作品です。たぶん「驚けなかった」という人が多い結末がその最大の理由です。しかし久しぶりに再読してみると、なるほどよくできた小説だと評価を改めました。その趣向が、読者を驚かせることが目的なわけではないところに感心させられます。
倒叙とか犯罪小説風とか言われる第1部の日記部分は、全体の1/3強ぐらいですが、その中にもまずは憎むべき轢き逃げ犯人の捜索という謎解き要素があります。そして殺人決行当日朝の記述で終わった後の短い第2部で、第1部が日記でなければならなかった理由も納得できる構成になっているところがうまくできています。
終盤のミスリーディングは全く覚えていなかったのですが、これも読者を騙すためだけでなく、結末の付け方と関連付けられていて味わいがありました。

No.9 6点 nukkam 2016/09/15 19:06
(ネタバレなしです) 1938年発表のナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ第4作は前半を犯罪小説、後半を犯人当て謎解き小説という構成が斬新で、法月綸太郎の「頼子のために」(1990年)に大いなる影響を与えました。前半が緊張感豊かな分、後半の謎解きプロットは緩いとは言わないまでも普通にしか感じられませんでしたが登場人物のキャラクター分けは大変見事で、特にフィル少年の描写は実に秀逸です。

No.8 9点 ロマン 2015/10/20 14:06
冒頭の日記からは倒叙ものなのかと思いきや違い、後半怒濤の本格ミステリになり、本格ミステリの部分はどんでん返しが、という三重四重の構造も秀逸でありながら、細やかな心理描写や人のありかたが読んでいて心にしみる小説だった。

No.7 8点 mini 2014/11/06 09:57
先日に論創社から、ミルワード・ケネディ「霧に包まれた骸」と、ニコラス・ブレイク「死の翌朝」の2冊が同時刊行された
ニコラス・ブレイクの長編最終作は「秘められた傷」だがこれはノンシリーズなので、探偵役ナイジェル・ストレンジウェイスが登場するシリーズ最終作が今回刊行の「死の翌朝」である
このシリーズはナイジェルが作品が進むのに合わせて作中でも年齢を重ねる要素が有るので、作者が最終作だと想定して書いたわけじゃないにせよシリーズ最終作がどうなるのか気になるところだ

ナイジェルが登場する最終作が「死の翌朝」ならばシリーズ第1作がミステリー分野デビュー作(本職は詩人)が「証拠の問題」で有る
しかし「証拠の問題」は未読なので同じナイジェルシリーズであり作者の出世作の「野獣死すべし」を採り上げよう
イネス、クリスピン、ヘアー等と並ぶ英国教養派ブレイクの代表作の1つである「野獣死すべし」はまさに名作の名に恥じない
とにかく○○トリックという視点ばかりが強調されがちな本作だが、書き手の心理を客観的に読んでの心理分析という手法は、当時としては斬新なのは勿論だが、現代の視点でも読むに耐えるし、歴史的価値だけの作では無いと私は思う
植草甚一だったかな、「Yの悲劇」の影響を論じていたと思ったが、「Yの悲劇」とは発想が違うし植草氏の指摘は飛躍し過ぎとは思うが、10年後に書かれたマクロイ「ひとりで歩く女」などを見ても手記を前半に置くというプロットは、30年代末期の黄金時代本格派が行き詰まりかけていた中で、新たな方向性を模索していた時期らしい作品である

No.6 8点 E-BANKER 2013/06/21 21:30
1938年発表の作者を代表する長編作品。
「野獣死すべし」といえば、個人的には、松田優作主演で映画化もされた大藪春彦の代表作という感覚だったのだが、もちろんこちらの方もミステリーの世界では押しも押されぬ名作。

~推理小説家のフィリクス・レインは、最愛の息子マーティンを自動車の轢き逃げ事故で喪った。警察の必死の捜査にもかかわらず、その車の行方は知れず、半年が虚しく過ぎた。このうえは、何としても独力で犯人を探し出さなくてはならない。フィリクスは見えざる犯人に復讐を誓った。優れた心理描写と殺人の鋭い内面研究によって屈指の名作と評される、英国の桂冠詩人C.Dルイスが別名義で発表した本格傑作!~

出版された年代を勘案すれば、特筆すべき出来だろう。
ちょっと(というか結構)驚かされた。

序盤は倒叙形式そのもので、愛する息子の復讐を誓う主人公(フィリクス)が、野獣たる真犯人を探し出し葬り去るまでの苦悩と冒険が、読み手のない「手紙」という形式で描かれる。
ラストには、ついに成就するかに思えた渾身の殺人計画が不発に終わるところで次章へという展開。
探偵役のナイジェル・ストレンジウェイズの登場に至り、ストーリーは大きな転機を迎えることになる。

もちろん、数多のミステリーに親しんだ現代の読者であれば、この「手紙」という代物に作者の欺瞞が詰め込まれているということは分かるだろう。
本作についても例外ではなく、作者の精緻な技巧が惜しげもなく投入されている。
まぁ、真犯人についてはほぼ予想どおりという結果なのだが、ここまで複雑なプロットをきれいにはめ込んで収束させる作者の「腕」に敬意を評したい。

果たして本作がこの手のプロットの先駆的作品なのかどうかは定かでないが、他の黄金期の作者&名作に勝るとも劣らない秀作なのは間違いない。
(法月綸太郎の「頼子のために」が本作のオマージュなのはよく知られてるようだけど、「頼子」はここからもうひと捻りしているわけだな・・・納得)

No.5 8点 蟷螂の斧 2012/04/14 22:35
前半の手記部分で、犯人を確定(推定)してしまうのに心証だけでいいのか?と疑問だらけになり、くじけそうになったのですが、後半でその意味がわかり評価が上がりました。この時代に、このような心理トリックを描いたことに敬意を表します。本作が「頼子のために」のモチーフになっていることが理解できました。

No.4 7点 あびびび 2012/04/02 16:41
題名のイメージより繊細で、精緻を極めた物語だった。大事な息子をひき逃げされ、警察を頼らずに自分で復讐しようと行動した矢先に目撃者に出会う僥倖。

前半は日記による復讐劇の披露、そして後半は一転、一触即発のミステリになるわけだが、半世紀以上前の作品とは思えないスピード感があった。

No.3 7点 kanamori 2010/07/21 17:30
私立探偵ナイジェル・ストレンジウェイズが登場するシリーズ第4作ですが、本作はプロットが凝っていて、従来とテイストが違う異色作です。
前半は、息子をひき逃げ事故で亡くした推理作家の手記で語られる復讐サスペンス、一転して後半が本格ミステリ。
現代では、斬新な叙述ネタとはいえないかもしれませんが、心理描写の精緻さと先駆的な試みは評価できると思います。

No.2 8点 ロビン 2008/12/11 21:08
あの人物に関しては、作中やたらと触れられていたので、もしかしたら……と思っていたのに、そっちか!
僕も『頼子のために』にそそられて本書を読んでみたんですけど、期待を裏切らない素晴らしい出来だと思います。犯人の正体自体は、確かに現代の読者にとっては一つのパターンですけど(しかし自分は意表をつかれた)、問題となる手記の、書き手が意識していた読者の違いという仕掛けはすごいです。

No.1 8点 こう 2008/05/07 00:26
 法月氏の頼子のためにと比較しても面白いと思います。こちらを先に読んだほうが面白いかも知れません。犯人探しのための前半の手記の部分はこちらが本家です。後半は普通の探偵推理小説ですが普通に面白いです。ただ現代の読者では驚けないかもしれません。


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