皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 死の殻 ナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ |
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ニコラス・ブレイク | 出版月: 2001年10月 | 平均: 6.33点 | 書評数: 6件 |
東京創元社 2001年10月 |
No.6 | 7点 | E-BANKER | 2016/11/08 22:20 |
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1936年発表。
「証拠の問題」に続いて発表された作者の第二長編が本作。 で、探偵役はナイジェル・ストレンジウェイズだ(長い!)。 ~ファーガス・オブライエンは空軍での人間業とは思えぬ戦績や数々の伝説的逸話から英国の空の英雄と讃えられていた。その彼の元に、復讐を誓う脅迫状が届けられた。殺害予告の日はクリスマス。私立探偵ナイジェル・ストレンジウェイズは彼の護衛を引き受けたものの、まんまと犯人に出し抜かれてしまう。事件の真相を探るナイジェルは、オブライエンの秘められた過去に辿り着くのだった。終幕で浮かび上がる悲劇的な復讐者の姿は、強く読者の胸に残るだろう・・・~ 十分に佳作と呼べる出来だと思う。 これがシリーズ二作目とするなら、やはり作者は只者ではないと言える。 何よりプロットの秀逸さが光る。 序盤~中盤まで、本作っていわゆる「雪密室」がメインテーマなのか? っていうふうに読み進めていた。 ナイジェルも警察もそこを中心に捜査してるし、いかにも黄金期の本作ミステリー追随って感じだなと思っていたのだ。 ただし、連続殺人事件に発展する終盤以降はテーマが一変。 被害者の過去に遡る動機&事件の背景探求がメインとなる。 そして何より、真犯人の○で収束したはずの後、終章こそが本作の白眉となる。 ナイジェルによって事件の反転した構図が語られるわけだ・・・(ネタバレっぽいが) これが実に見事に嵌っている。 伏線の妙というか、これはやはりミステリーとしてのクオリティの高さだろう。 ナイジェルの造形は確かに後の作品に比べて若いというか、溌剌という感じだ。 それもなかなか好感度が高い。 いかにも英国風ミステリーという味わいも本作では心地よかった。 |
No.5 | 7点 | nukkam | 2016/08/24 08:41 |
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(ネタバレなしです) ブレイクのミステリーは文学性豊かと評されることも多いのですが1936年発表のナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ第2作である本書で早くもその本領を発揮していると思います。後半で語られる冒険記や昔の思い出話には読み手の心に訴えるものがあります。本格派推理小説の謎解きプロットも大変緻密に構成されており、(足跡トリックは大したことありませんけど)心理分析と推理が無理なく両立しているのが評価できます。 |
No.4 | 8点 | ロマン | 2015/10/25 12:05 |
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一癖ある登場人物たちの中でも光を放つファーガス・オブライエンのアンビバレントな存在感が、その死の謎を際立たせる。連続する事件の中で最重要容疑者も推理も二転三転する謎の転がし方の上手いストーリーテリング。14章のチェイスシーンは黄金期的結末のオマージュとしてわざとやっているな。その先に見える悲しき復讐者の姿は、推理小説でありながら推理だけの物語からの脱却を示しているよう。会話に引用を挟むペダンティズムがあからさまとも言える伏線となり、ラストに言いようのない余韻を与える。 |
No.3 | 4点 | mini | 2013/07/23 10:01 |
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明日24日に論創社からニコラス・ブレイク「短刀を忍ばせ微笑む者」が刊行予定、毎度論創だから書店の取次ぎにバラツキが有りそうだが
森事典によると今回の新刊は未訳で残っていたシリーズ第5作で、シリーズ探偵ナイジェル・ストレンジウェイズの夫人が活躍するスリラー長編らしい ちなみにこの夫人は第2次大戦時の空襲で亡くなり戦後に新たな彼女が出来る設定なのだが、作者ブレイク自身も2度結婚しており、再婚した夫人との子供がスピルバーグ監督『リンカーン』でのアカデミー主演男優賞俳優ダニエル・デイ=ルイスである ナイジェル登場のシリーズ第2作が創元文庫の「死の殻」だ、しかしこれはやはりシリーズ初期の作っぽいなぁ 良く纏まっているし完成度は高いので決して習作ぽさは無いのだが、正直言って面白くも無かった どちらかと言えばオーソドックスな本格を求める読者には合いそうではあるが、私がブレイクに期待するものが欠けているのだ 何たって「野獣死すべし」「殺しにいたるメモ」の2大名作を持つブレイクである、「死の殻」みたいな正攻法真っ当過ぎる本格を読まされてもなぁ 「死の殻」ってたしかに人物造形などは流石と思わされるのだが、プロットや根本の 仕掛けがアマチュア臭くて嫌なんだよなぁ ”館もの”みたいな舞台設定も全く気に入らない 探偵役ナイジェルの描写も中期以降の作に比べて何か俗っぽくて、と言うか全体に悪い意味で黄金時代本格の影響を引きずっている感じだ 逆に言えば、何かと言うと黄金時代本格の観点で評価したがるタイプの読者には、「野獣死すべし」みたいなものよりこちらの「死の殻」みたいな方が合うかも知れない おそらくは「野獣死すべし」よりも「メリーウィドウ」とかこの「死の殻」の方を高く評価する読者というのは、本格派に対して一定の理想的な形式を求めるような、つまり型破りなものを嫌うオーソドックス至上主義なタイプの読者なのだろうと類推する まぁ私はそういうタイプの読者じゃなくて、様式美が嫌いで作者個々の個性を重んじる主義なので |
No.2 | 6点 | kanamori | 2010/08/07 20:43 |
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私立探偵ナイジェル・ストレンジウェイズ登場のシリーズ第2作。
往年の名飛行士への脅迫・殺人事件を扱っていて、テーマは復讐です。足跡のない殺人のトリックは陳腐ですが、もともとトリック主体のミステリではなく、プロット自体の仕掛け(構図の逆転)がキモで、登場人物の性格描写がしっかりしているため、真相にも説得力があるように思いました。 |
No.1 | 6点 | ロビン | 2008/12/10 19:43 |
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雪上の足跡トリックに関しては、「おい!」と思わず声を上げたくなるくらいしょぼい、というか、これを実際に作品にする勇気があるか、というほど初歩的なもの。
推理にしたって、どれも仮説の域を出ていない。心理的要素がが多く重視され、伏線が効いていない。まあラストで探偵の口から語られれば、たとえそれが仮説であろうとも真相なのだろうけど。 ただこのどんでん返しの構造は上手いなあ。 |