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[ 本格 ]
死のとがめ
ナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ
ニコラス・ブレイク 出版月: 1963年01月 平均: 5.50点 書評数: 2件

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早川書房
1963年01月

No.2 6点 人並由真 2021/10/21 16:02
(ネタバレなし)
 1960年代初めの英国。その年の2月。名探偵ナイジェル・ストレンジウェイズは恋人の女流彫刻家クレア・マシンガーとの同棲を始めていた。ふたりは、やや偏屈だが近所の市民から人徳のある医者として知られる老人ビアーズ・ラウドロンの一家と懇意になる。ビアーズには、それぞれ成人した二人の息子と長女、そして次男の嫁、さらにビアーズの親友の遺児だったという二十歳になったばかりの養子がいた。だがある夜、そのビアーズが失踪。やがて彼はテームズ河の周辺で、死体となって見つかる。当初は自殺の可能性も取りざたされたが、死者の左右の手首にはほぼ同じ深さの切り傷があった。これではそこから失血死したにしても、先に傷ついた方の手ではもう一方の手首を切ることはできない? ナイジェルは友人の捜査官ライト主任警部とともに、本件を殺人事件として捜査するが。

 1961年の英国作品。
 ポケミスのナイジェル・ストレンジウェイズシリーズの中では『呪われた穴』に次いで稀覯本のはずで、古書価も高めな一冊であった。それで一年ぐらい前にAmazonで少し安めなタイミングで古書を買ったら、今ではさらに少し下がっているようで、ちょっと悔しい。まあ美本が来たからいいけれど。
 ちなみにブレイクの邦訳でのクレアのハウスネームはマシンジャー表記が多いはずで、マシンガーというのが珍しい。Zかグレートかカイザーか。

 序盤で殺人事件が起きたあと、なかなか次の犯罪的な進展がないのでやや地味な感じだが、その辺は個々の登場人物(ラウドロン家の周辺)をみっちりと書き込んでいくブレイクの小説的な技法でじっくり読ませる。家族とその主要関係者の全員に程度の濃淡はともあれ殺人の動機が伏在するという王道の趣向もよろしい。

 ただしフーダニットとしては、とにかく容疑者の頭数が少ない上に、二つ目の事件ではナイジェルの視点を外れた客観描写を採用。そこで描写がフェアなことを前提にすると、さらに容疑者の枠組みが狭まってしまう。こうなると、それでもサプライズを達成する秀作になるか、それとも、なんだやっぱり犯人はこいつか、という凡作になるかのどっちかという感じだが、残念ながら本作は後者っぽい。うーん。
 ただし犯人像のキャラクターはちょっと鮮烈で、ああ、よく考えればこれはブレイク版の『(中略)』(アメリカの黄金時代の某名作)だね。
 
 読んでいる間はまあ、面白かった。ただしナイジェル・ストレンジウェイズシリーズのファンがほかの評判のよい作品をまだ読んでないのなら先にそっちから読むことをオススメします。本シリーズのファンなら読んでおいてもいいけど。
 佳作。

No.1 5点 nukkam 2016/05/29 09:44
(ネタバレなしです) 1961年発表のナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ第14作の本格派推理小説ですが、死体の傷の詳細な描写が私は苦手でした(首なし死体の登場する「旅人の首」(1949年)は平気だったのですが)。ナイジェルと恋人クレアの関係説明があってシリーズファン読者には外せない作品ですが、肝心のナイジェルがやや精彩を欠いているように思います。犯人との対決場面なんか完全に後手を踏んでいます。対照的にクレアは推理にはほとんど役立っていないものの「闇のささやき」(1954年)以上の立ち回りが目立ちます。おかげで謎解きが霞んでしまった感があります。でも女性にアクション担当させていいのかなあ(笑)。


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