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ミステリの祭典

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しゃんさんの登録情報
平均点:6.75点 書評数:88件

プロフィール| 書評

No.68 8点 彼女が死んだ夜
西澤保彦
(2002/11/11 18:40登録)
ハコちゃん、ガンタ、ボアン先輩、タカチといった登場人物の会話や行動が風変わりで面白い。事件そのものはこういう小説ではありがちなのだが、この風変わりな登場人物たちの行動が盛り上げているように思った。
 ラストはひねくれていて、驚かされた。本格推理に期待していた驚きがこの作品にはある気がする。


No.67 8点 触身仏
北森鴻
(2002/11/11 18:37登録)
 前作『凶笑面』よりも、民俗学の薀蓄が理解しやすくかかれていたように思う。
 一話目では「山人と五百羅漢」が二話目では「大黒とスサノオ」三話目では「三種の神器」という言うようにそれぞれの短編で描かれる民俗学的な要素が、微妙に間れっがあるせいもあると思う。
また、前作よりも、キャラクターが面白く描けていると思う。ミクニはさらに情けなく割愛すべき人物になっているし、那智はさらにエキセントリックに。この二人だけではなくほかにも魅力的な人物が新たに登場している。
 解き明かされる真相も面白いし、説得力があり、民俗学に興味がもてる内容である
 
 此処からネタバレになるが、いくつか疑問がある
 二話目で杉本尚子が内藤をけしかけたのは、最初からアースライフたくらみではなかったのか?
 「密教という奴は解釈次第で恐ろしい思想に変貌する」と一言であっさり書かれているが本当にそうなのか?
 それぞれの事件の真相解明後、警察が犯人を逮捕するには、やや証拠不十分ではないのか?


No.66 8点 私が捜した少年
二階堂黎人
(2002/11/10 18:09登録)
できるだけ主人公の立場と使われる語彙とギャップの凄さに思わず笑った。シンちゃんは実に愛らしい。
 何とかして、大人に混じって謎を解こうとする様がいじらしいというか。
謎解きもそれだけで十分に楽しめるものが多い。「アリバイのア」が一番私の好みに合った。


No.65 2点 学園祭の悪魔
浦賀和宏
(2002/10/26 21:35登録)
それまでの氏の作品に感じた、勢いも毒も華麗さも感じなかった。
気持ちの悪さばかりが印象に残った。後味がものすごく悪い。
締めの台詞が「世界は愛で満ちている」とそれだけとってみれば実にすがすがしいものでありながら、この後味の悪さは特筆に価するといってもいいと思う。
「気持ち悪さ」だけを追求した作品といっても言いように思える。人にはすすめられないし、再読も余りしたいとも思わない。


No.64 9点 暗いところで待ち合わせ
乙一
(2002/10/26 19:00登録)
目の見えない女と警察から逃げている男の話。二人のそれぞれの視点から物語は語られる。
 二人の登場人物は二人と、人と溶け込もうとしない性質で孤独である。実にじめじめとしていて掬いようが無いように思える。男が女の家に住み着いてからもそのじめじめ感は続く。しかし、お互いが地温も区の中でありながらも互いの事を認識し、生活していく様子はじめじめしているにもかかわらず、温かい。似たもの同士の馴れ合い、傷のなめあいといってしまえばそれまでなのだけれど、私はこの場面が好きだ。
 ミチルとカズエとの和解の場面では不覚にも涙ぐんでしまった。一番最後は少し物足りない感じがした。あの台詞には余り感動しなかった。


No.63 9点 死にぞこないの青
乙一
(2002/10/15 20:40登録)
怖い描写なんて何一つないのに、恐ろしくて胸が痛くてたまらない。
 ラストは不思議な終わり方。


No.62 8点 親不孝通りディテクティブ
北森鴻
(2002/10/13 19:19登録)
 どの短編も書き出しは穏やかで、楽しげ。滑稽ですらある。魅力的な謎の提示、魅力的な主人公二人による捜査の描写は非常に面白く、またテンポもよくすらすらと読めた。
にもかかわらず、どの短編の終わり方も後味はけしてよくない。人間の暗い、冷たい、そして悲しい面を垣間見えて、少し切ない気持ちになった。
 個々の脇役も非常に面白い。


No.61 8点 世界の終わり、あるいは始まり
歌野晶午
(2002/10/12 15:50登録)
 息子が殺人犯ではないかと疑う父親の物語。
 ミステリ的な仕掛けは緊迫感をそぐのでないほうがいいのではないかとも思ったが、父親を理解するためにはこの仕掛けは必要だったかもしれない。
 父親が良く書けていて、実にいい。息子のことによる悩み、焦りが非常に良く伝わってくる。
 ラストはやや物足りない気がする。でも、先がとても気になるのはやはり全体として優れているからなのだと思う。
 歌野さんの作品は余り読んだことがないのだが『…家の殺人』シリーズから、随分作風が変ったなと感じる。別人が書いたもののようだ。


No.60 9点 狐闇
北森鴻
(2002/10/07 12:03登録)
 張り巡らされた陰謀と壮大な謎の物語。余りに壮大すぎて、何処まで言っても解けることのなさそうな謎にひきつけられ、敵との油断ならないやり取りには胸をときめかせて読んだ。

 最後の謎の解明の仕方には少し呆気にとられたが。
 しかし、さすが北森鴻。トリックにこだわらず此処まで見事なミステリを書くなんて…
ミステリというと、どうしてもトリックやキャラが主になってしまう最近おミステリ業界。こういう物語中心で読ませる作者はものすごく貴重かも。


No.59 9点 夏と花火と私の死体
乙一
(2002/10/03 22:32登録)
 表題作では、淡々と、さわやかな子供らしい語り口で語られているのにもかかわらず、語り手たる私は死体(?)であり、語られている内容は私の死体の処理についてである。不気味であるはずなのに語り口は何処までも日常的。最後の1ページに体が震えた。
 「優子」語り口は此方のほうが読みやすいが、私は「夏と花火と〜」のほうが好みである。本格ミステリ的な仕掛けは、最後の台詞「少し寂しかった」をものすごく生かしているように感じる。胸が痛んだ。


No.58 7点 ルール
古処誠二
(2002/10/03 22:28登録)

 真面目な分体で書かれた、読みやすいエンタテイメント。しかし扱われているのは飢餓と人間の尊厳。
 敗戦の決定した行軍、最早自分のやっていることの意義も見出せない状況、絶対的な飢餓の中で、人はどうやって人たりえるのか?
 なかなかに読みやすく、すらすらと読み進められた。しかし、最後のミステリ的な要素は私には余り面白く感じられなかった。その点が残念。

 しかし、この作者は、いわゆる日本礼賛主義的な要素があるのだろうか? いや、あるからどうだとは言わないし、この作品が良い作品であることには間違いないのだけれど。


No.57 7点 追いし者 追われし者
氷川透
(2002/10/01 19:13登録)
(ネタバレあり)
ストーカーとストーキングの対象をめぐる本格ミステリ。
 本格ミステリ以外の何者でもない。最後まで騙された。
 間に入れられたミステリ編集者とミステリ作家の卵の、やり取とりがいいアクセントになっている。
 しかし、作品外の作者に騙す必然性は合っても、ストーカーに騙す必然性はない。しかも、ストーカーは自分が誰かに向けて発言していることを知っている節がある。では、ストーカーは誰かを騙そうとしていたのか?誰を、何のために?さっぱり分からない。
 それは、ストーカーが推理作家の卵が創作した、という設定でカバーできているといれば出来ているのだが、少し、物足りない。

しかしN氏の『D』とトリックはほぼ同じ。追うものと追われるものという構図もほぼ一緒
この作品はN氏への挑戦なのだろうか?
勿論作品自体は別のものに仕上がっているのだが…


No.56 7点 沙羅は和子の名を呼ぶ
加納朋子
(2002/10/01 15:55登録)
 表紙がよい.女の子はやはり「沙羅は和子の中を呼ぶ」の和子なのだろうか?
 お勧めは「海を見に行く日」と「オレンジの半分」そして「沙羅は和子の名を呼ぶ」。
 全編に優しさが漂うが「海を見に行く日」には特にそう感じた。最後の2行「ねえ、分かった? 約束よ。/きっとね…」の部分にはほろりと来た。
 逆に「エンジェルムーン」はよくわからなかった。釈然としない。


No.55 9点 GOTH リストカット事件
乙一
(2002/10/01 15:53登録)
 生まれながらの殺人鬼の話。
 感情の欠落した少年と、感情表現を失った少女の組み合わせもいい。少女の存在によって少年の感情のなさが浮き彫りにされる。
 淡々とした文章は作中全体に貫かれている。たとえ手首を切る場面であっても、人が生き埋めにされる場面であっても何処までも淡々としている。しかし、淡々と、さわやかともいえる文章で書かれたそれは実際にはとても残酷で、狂気を内包している。文章と内容との落差が、不可思議な味を出している。
 ミステリ的なトリックも残酷さを柔らかく包んでいて、いろんな意味で痛い作品。
痛いが、凄い…


No.54 9点 猫丸先輩の推測
倉知淳
(2002/09/22 11:14登録)
「失踪当時の肉球は」「カラスの動物園」がとくによかった。
ね困る先輩の推理は推理というよりは口先三寸という感じがする。凄く小気味いい


No.53 7点 パンドラ’Sボックス
北森鴻
(2002/09/13 16:50登録)
作品、個々には魅力を感じる。
ただし本格ミステリではない、だが、読みやすく、面白い。
エッセイは作家の生活について面白、おかしく書かれている


No.52 8点 メイン・ディッシュ
北森鴻
(2002/09/13 16:47登録)
読んでてお腹が減る減る作品です。読み終わって早速ゴールデンチャーハンを作ってしまいました。
途中まで読んで「こういう構成になってるのだ、ありがちだな」と考えたが、いい意味で予想を裏切られました。
個々の短編の謎も面白く、また主人公たちが魅力的。


No.51 5点 凶笑面
北森鴻
(2002/09/13 16:43登録)
薀蓄が多すぎて、民俗学に興味がない私には、ちょっと読みづらかった。
それから民俗学的なことと関連した事件が起こるのだが、どうにもこじつけのような感じがした。


No.50 2点 水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪
佐藤友哉
(2002/09/13 16:39登録)
前半が部分の文章が、私の趣味に読みづらかった。気持ち悪く、不可解。
ラストで明らかにされる真相は…複雑に三つのパートが絡み合っていたのは分かったが、だから何?という気がした。
というのも、三つのパートのいずれも、私がひきつけられるものを感じなかったので
それぞれのパートが結びつき1つの物語になったからといって何の感慨も抱けなかったからだろう


No.49 4点 袋綴じ事件
石崎幸二
(2002/09/12 19:48登録)
相変わらず会話は読んでてあきさせない
さくさく読める
ただし、ラストのインパクトが弱かったような。
もう少し長いほうが楽しめたのではないだろうか

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