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ミステリの祭典

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夏と花火と私の死体

作家 乙一
出版日1996年10月
平均点6.80点
書評数51人

No.51 8点 虫暮部
(2024/08/29 13:10登録)
 サスペンスとしての構成の巧みさに、“私” の一人称記述を掛け合わせると、何気ない会話や田舎の情景描写(コレも上手い!)が微妙に色調の狂った画像のように見えて来る。何のツッコミも無しでそれが続くうち、自然にくふふと笑いがこぼれているのだった。
 手法としては一回限りの賭けだろうが、それでキチンと正解の中心を射止めた傑作。

 表題作だけで一冊に出来なかったことが欠点。

No.50 7点 みりん
(2024/08/03 18:44登録)
夏なのでホラーを。ホラーで書評数50件ってすごい人気ですね。
ホラーだなと思って読んでいると、なぜか私は猜疑心がゼロになるのでラストのオチでやられました。田舎の雰囲気や情景描写がうまくて、花火を見に行きたくなりましたね。

No.49 5点 レッドキング
(2024/05/03 00:06登録)
十六歳(!⚙⚙)の処女作とな。坂口安吾「風と光と二十の私と」への次韻なんだろな、このタイトル。「桜の森の満開の下」「夜長姫と耳男」風味も狙った、ホラーファンタジーまたは残酷童話の趣が良く、サスペンス巧みで、少しミステリ。この後のブラック展開が見え見えだが・・露骨に提示しているし・・手前で終わらせている所がよい。
※もう一作、短編のオマケつき。

No.48 6点 パメル
(2024/03/24 19:41登録)
乙一らしさが凝縮された類稀なる才能の片鱗を感じさせる2編からなる短編集。
「夏と花火と私の死体」ある夏の日、ふとしたきっかけで友達を殺してしまった妹に、兄が救いの手を差し伸べる。二人は必死に死体を隠そうとするが。まずこれを書かれたのが16歳の時だというからビックリ。死体目線で語られ、サスペンスを盛り上げる絶妙な描写力、無駄のない構成力。淡々とした中に、陰鬱な世界を生み出し恐怖を感じさせる表現力に圧倒された。そしてラストの恐るべき真相は衝撃。
「優子」鳥越家の使用人として働く清音は、主人である政義の妻の優子の姿を一度も見たことがなかった。実際に存在しているのか気になっていた。優子は生きているのか、いないのか。幻を見ているのは、清音なのか政義なのか。どこかのどかな語り口なのに、不気味な雰囲気。淡々とした展開からのクライマックスの炎上のイメージ喚起力がすごい。

No.47 5点
(2021/10/09 13:26登録)
表題作
「スタンド・バイ・ミー」みたいな冒険物語として楽しめる。いやそんな生易しいものではない。怖すぎる。といっても読者に襲いかかるような恐怖感はない。
いちおうオチがある。それが作者の狙いなのか。

「優子」
こっちも仕掛けがある。でもありがちかな。
でもじつは映画で有名な「サ〇〇」みたいなのを想像していた。ちょっと発想が貧困だったかな。
こっちのほうが中途の展開が怖いように思う。

No.46 6点 zuso
(2021/03/24 23:16登録)
怯える妹と冷静沈着な兄の行動に、終始ハラハラさせられる。ラストはまさかのどんでん返し。物語としての完成度はまずまずだが、ミステリとしては今ひとつ。

No.45 7点 バード
(2020/01/01 11:14登録)
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・表題作
はっきり言って読んでる途中はあまり面白くなかった。私の基準でいうと4点くらい。その理由は、自己中なアホガキ(弥生)と狡い悪ガキ(健)の死体隠蔽をだらだら読まされたからである。この子らにもう少し魅力があれば、死体が発見されるかどうかのハラハラ感を共有でき、面白かったのだろう。しかし、私はさっさと彼らに天誅が下れとしか思えなかったので、イマイチと感じたのである。
ところが、最後まで読みきった所で本作の評価はひっくり返った。

本書の良さは、健君の悲惨な未来を想像させるホラーオチなのだが、ホラーオチにもかかわらず読後感が悪くない。それどころか、寧ろすっきりさすら感じた。
この締めの綺麗さは、弥生と健のキャラクター性を好感度が低くなるように書いていたことによる。

つまり、途中イマイチと感じた子供らの描写がオチで一転し、効果的な描写に変貌したのである。本書はいわゆる叙述トリックでは無いのですが、文章構成を利用したより高次の意味での叙述トリックと勝手に命名したい気分です(笑)。

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・優子
こちらはそれほどですね~。
乱歩さんや横溝さんが昔に書いた話、と言われたらそんな気がする程度には新しさが無く、現代の作家さんがわざわざ書く話でないと思った。

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私にとっては、二冊目の乙一さん本なのだが、本書を受け一筋縄では評価できない作家さんだなと思った。特に表題作の構成力は私がこれまで読んできた小説の中でトップレベルです。

No.44 6点 いいちこ
(2019/01/04 15:11登録)
奇抜極まるアイデアは買うが、それ頼みの印象が強く、いわば「掴みはOK」という作品。
ただ、執筆当時の年齢が17歳であるという事実を考慮しなくても、その乾いた筆致には高い筆力が感じられ、後日の飛躍を伺わせるデキではある

No.43 5点 ニックネーム
(2015/12/20 17:07登録)
17歳が書いたにしては凄いかもしれません。しかし巻末に小野さんが書いているように作品の出来と作者の年齢は関係ないと思います。

No.42 5点 ∠渉
(2015/02/22 21:26登録)
どうやら初乙一ではないっぽいけど(ジョジョのノベライズをたしか読んだ)、ほぼ初乙一の気分で読んだ(なんだそりゃ)。
しかもデビュー作。読む側もほんの少し力が入る。でも気付いたらいつのまにその力も抜けて、自然体で乙一作品の世界に入り込めてました。物語設定の異色さに比べて乙一氏の作品へのスタンスは非常に明快で、素直な気がした。自然体で書いたからこそ、死体の一人称が際立つし、「優子」の世界観は美しかったのかなと、勝手に自分の中で乙一像を作ってました。シンプルで凡庸な作品だという世評も多いけど、ライトな作風はかなり作者も意識してると思うし、簡単に書ける代物ではないかなと、個人的には感じた。まぁ、フツーに衝撃的だった。

No.41 7点 Tetchy
(2012/11/19 21:58登録)
そのあまりに鮮烈なデビューとなった表題作は一言、上手い!いわゆるアンファンテリブル物だが、ことさらに恐ろしさを強調するわけでもなく、あくまで静かに淡々と語ることで恐ろしさを助長しているのがすごい。わずか16歳でこの文体で子供による死体遺棄事件の顛末を語る着想に至った乙氏の才能に戦慄する。
しかし語り手である犠牲者の五月とその母親が何とも浮かばれないなぁ。

もう1編の「優子」はありがちな作品と思わせておいてひっくり返すという読者の先入観を逆手に取った趣向が見せ所だろう。相変わらずその筆致は時間の流れをゆっくりと感じさせる独特の雰囲気に満ちている。
しかし本書では逆にそれが物語の深さを減じているように感じた。最後に明かされる政義の業深き出生の秘密などはやはり情念を滾らせるような濃い文体で書いてこそ深みを増す。坂東眞砂子ならばもっと土着的な濃厚な物語を繰り広げただろう。主題と文体が結びつかなかった、そんな印象を受けた。

しかし久々に語るべき物語を持った作家に出逢った思いがした。次に我々に見せてくれる物語が楽しみだ。

No.40 4点 スパイラルライフ
(2012/02/07 20:13登録)
10代で書き上げた才能には脱帽。
無邪気な狂気がうまく描けています。
でもミステリではない。
ラノベのホラー。

No.39 1点 ムラ
(2010/12/18 20:57登録)
文章がちょっと拙かったという印象でした。
ホラーとしても物足りないし、ミステリーとしても世間に有り触れたプロットって感覚。
オチも普通でした。
死体の一人称って所は面白かったですけど、ときどき視点可笑しくなってたのがなお残念。
「優子」のほうも、どっかの怪談話で聞いたような奴でした

No.38 5点 まさむね
(2010/10/04 18:33登録)
確かに,書かれた当時の作者の年齢を聞けば,驚かざるを得ません。(描写力などは,年輩の作家よりも巧く感じたりも!)
ただ,作品自体を冷静に見れば,標準レベルのような気もします。
表題の「死体の一人称」は結構斬新で面白かったけど…
逆に「優子」は,結末が想像できてイマイチでしたね。
総合して,この評価でしょうか。(ハードルを上げ過ぎて読んでしまった面もありますが…)

No.37 6点 メルカトル
(2010/05/06 00:09登録)
うーん・・・微妙かな。
ホラーと言っても全く怖くはないし、あのオチがなければ、ただの凡作としか言いようがない。
世間の評価は高すぎる気がするね。

No.36 6点 白い風
(2008/12/20 19:53登録)
初めての乙一さんの作品でした。
推理系じゃなくてホラー系は個人的に苦手なもので…。
作品自体は読みやすい方だと思う。
確かに書かれた年齢を考えるともう少し高評価もありかな、とは思います。

No.35 8点 おしょわ
(2008/12/07 15:35登録)
ラスト良かったです。そうくるかと、という感じでした。
途中展開の遅さに結構いらいらするけどラストで納得です。

No.34 9点 かづき
(2008/07/02 11:42登録)
この作品に出会ったのは、単行本としてではなく「怖い話」というオムニバス作品集のラストに掲載されていたものを読みました。はっきり言って、他作品はどこが怖いんだって感じのものばかりだったのですが、ラストのこの話は読んでいて思わず世界観に引き込まれてしまいました。通勤電車の中で読んでいたのですが、読み切る前に駅に着いてしまい、慌てて降りた後も頭が切り替わらず、物語を引きずる程衝撃を受けました。
その後、これを書いた乙一はどんな人だろうと調べ、彼の作品を読み漁る切っ掛けとなりました。

No.33 4点 深夜
(2007/11/14 19:02登録)
周りが絶賛するので、ハードルを上げ過ぎていたようだ。ラストまでは健くんにイライラさせられたし、ラストもそれ程驚けなかった。それでも、17歳で賞を取っただけあって、文章力は相当なものがあると思う。

No.32 5点 こもと
(2007/10/13 12:34登録)
 「そろそろ一冊くらい」と、手にした乙一氏作品です。
 確かに、おもしろかった。 いや、それ以前に読みやすかったと言うべきか。 その点は、高く評価。
 ホラーという括りのこの作品ですが、乙氏が意図した怖さって、何だろうか、と。 ホラーによくある超常現象のようなそれよりも、私は生身の健くんの一挙手一投足に恐怖しました。

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